>> 記事トピックス一覧 
トップ > ライフスタイル > 環境 > 黄土高原だより

黄土高原だより(NO.447)

発行日: 2008/1/16

  中国山西省大同市の黄土高原の農村での緑化協力活動のなかでの体験を
 書きつづっています。不定期の発行です。
 バックナンバーは緑の地球ネットワークのウエブページとブログにあります。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

  黄土高原だより(NO.447)
     (2008.01.16)
            高見 邦雄(緑の地球ネットワーク事務局長)

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 信頼

昨年12月に、大同にいったときのことです。
夕刻、私たちがホテルに着くと、出迎えの武春珍所長が、
「明日の朝から、すぐに相談したいことがあります」と、せかしました。
「それはだめです。
プロジェクトの現場をみるのが先。
あしたは、いくつかの拠点をみて回ります」と、私は答えました。
現場をみないことには、私の頭は、中国モードになりません。

それに、こういうときの話は、ろくなことではありません。
私が大同にいるときは、どんな問題でも、こと細かに話してくれます。
そんなこと、どうでもいいよ、と私が思っても、
彼女は、熱心に話しかけます。
私を、教育するつもりなんでしょうね。
ところが、私が日本にいるときは、
困ったことが起きても、私たちには知らさないで、
自分たちで、解決しようとします。
心配をかけたくない、と思うのでしょうね。
遠くにいて、なにもできないのに、やきもきするのは、
たしかに、つらいものがあります。
それに、なにかあると、すぐに駆けつけた前科がありますから、
そこまでさせたくない、とも思うのでしょう。

その翌々日、大同事務所できいた話は、たいへんなこと、でした。
日本の外務省草の根無償資金協力のプロジェクトを、
大同市総工会の名義で、北京の日本大使館に申請しました。
実際のしごとは、緑色地球網絡大同事務所が担当します。
大同事務所は、大同市総工会に属しており、
もちろん、こういうことに経験があります。
事業の内容は、大同県周士庄鎮の、三十里鋪村に、
中心小学校を、ひとつ建てます。
この村だけでなく、周囲の小さな村からも、こどもたちが集まって、
勉強するわけです。
教室のほかに、寄宿舎も必要です。
小さな問題はありましたが、外壁の塗装を残して、ほとんど完成。

もうひとつは、同じ鎮の、遇駕山村に、井戸を掘ります。
この村は、2000年に、7県の21の村で、私たちが調査をしたとき、
1人1日の水使用量が、わずか15.6Lで、最低の村でした。
日本大使館の公使だった、杉本信行さんが視察し、
中国の水問題に、つよい印象をもったのも、ここの村です。
彼は帰ってからすぐに、中国の水にかんするレポートをまとめました。
杉本さんの遺著『大地の咆哮』(PHP研究所)にも、
このレポートのことが、書かれています。
そんな事情で、私たちは、井戸を掘りたかったのです。
杉本さんが大同にきたのは、夜行列車できて、その晩の夜行で帰る
ほんとの強行軍で、1日たらずの滞在でしたけど、
大同の人たちは、彼の人柄を、懐かしんでいます。

着工前の探査では、地下130mのところに、水脈があるようです。
これくらいの深さなら、機械式の「上総掘り」のようなやり方で、
井戸を掘ります。
ワイヤーでつり下げた、直径30cm、長さ2.5mくらいの、
鉄製の大きなモリを上下させて、少しずつ、掘りすすむわけです。
掘った穴に、水を注ぎこみ、ドロドロの状態にして、
細長いバケツで、泥を汲み出します。
それを、交互に、繰り返すわけです。
単純で、原始的なやり方ですけど、安価ですみます。

ところが、想定外のことが、連続しました。
まずは、60mほどのところに、固い岩盤がありました。
苦労して、それを突破したんですよ。
すると、こんどは、やわらかい砂の層があって、
すぐに崩れ落ちるので、それ以上、掘れなくなってしまった。
スチールの太いパイプをいれて、そこは越えたんですけど、
100mほどのところで、にっちもさっちもいかなくなった。
水脈には、遠いわけです。

簡単には、退却もできません。
技術者たちは、水は確実にある、といいました。
村の人たちの、期待は高まります。
水道用に、圧をあげるため、水道塔(タンク)が必要ですけど、
冬になって、凍結すると、レンガを積む、セメントを練れません。
確実に水はでるんだから、水道塔を先に建てておこう、
そういうことになったんですね。
それも含めて、かなりのお金をつかいました。

そのうえ、日本大使館との契約では、
井戸を掘って、仮に水がでなかったときは、
でるまで掘るという、誓約書を求められたそう。
誰もサインしたくありませんから、けっきょく、武春珍がしました。
彼女は、夜も眠れなくなった、というんですけど、
その気持ちはわかりますよ。

関係者に集まってもらって、進退を協議したそうです。
鎮の党書記は、大同県の青年団書記だった謝志海で、
古くからの友人ですけど、一部の費用負担を承諾したそう。
県の水務局長は、私たちの采涼山プロジェクトや
カササギの森のある聚楽郷の、こないだまで党書記だった張春さんで、
彼も協力を約束しました。
それから、ボーリングによる、井戸掘りの設備をもつ、
「打井隊」の幹部のひとりが、その遇駕山村の出身で、
母親は、いまも村で暮らしているそう。
それで、打井隊の協力もえられることになって、
工事再開が、決まりました。

失敗した井戸穴から、数メートル離れたところで、
こんどは、ボーリングによる井戸掘りが、はじまりました。
特殊鋼のドリルを回転させて、掘っていくわけです。
私たちが大同に着いたのは、そんなときでした。
武春珍はまだ、心配で、心配で、たまらなかったのです。
責任が、自分にかかっていますし、
さらに、周囲の人を、巻き込んだわけですから。
「タカミサンに話したら、タカミサンの問題に変わるから」と、
彼女はいうんですけど、解決まで私に期待してるわけじゃありません。
苦悩を共有する人間がいたら、ラクになるのでしょう。
それくらいの信頼は、私に寄せているんでしょうね。
何度も何度も、困難にあいましたけど、
逃げないで、私も、留まっているわけですから。

これで水がでたら、一編の小説になるな、と私は思いました。
ビデオカメラを回していたら、いいドキュメンタリーになったでしょう。

その日の午後、現場の村に行きました。
鎮の党書記も、駆けつけてきました。
146mまで掘っていて、すでに、水脈にあたったそうです。
ホッとしました。
でも、最後の結果がでるまで、安心できないのが、ここでのしごと。
「地下のことは、ほんとにわからないんですから、
今後は、井戸に手をだすのは、やめましょう」と、彼女はいいます。
その気持ちは、よくわかりますよ。
村の人の歓喜をみたら、また変わるかもしれませんけど。

それからも、順調とはいかなかったようです。
もう少し、掘っておこうとしたところ、機械が故障したんだそう。
気になって、1月9日に電話で問い合わせると、
「おそらく、だいじょうぶでしょう」といっていました。
夕方になって、むこうから電話がかかってきて、
「水がでました!」とのこと。
うれしいというより、ホッとした、というところでしょうね。
こういうことを乗り越えて、人は強くなります。
 -- 
**********************************************************
 GREENなんでも勉強会 生命と環境、循環と廃棄 第2回
             〜ゴミ対策を考える
 講師:川島和義(GEN副代表・自治体職員)
 2008年1月29日(火)18:30〜20:30  参加費:700円
 大阪市立総合生涯学習センターで(大阪駅前第2ビル5階)
 参加される方は、ご連絡いただけるとありがたいです。

 ◆税制上の優遇措置をうける認定NPO法人です◆
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 認定特定非営利活動法人 緑の地球ネットワーク(GEN)
 552-0012 大阪市港区市岡1-4-24 住宅情報ビル5F
 TEL.06-6576-6181 FAX.06-6576-6182
 E-mail  gentree@s4.dion.ne.jp
 URL  http://homepage3.nifty.com/gentree/
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 
このメルマガの読者になる
規約 
>> メルマ!の会報誌もお届けします
ブックマーク: はてなブックマークに追加del.icio.usに追加Buzzurlにブックマークニフティクリップに追加ライブドアクリップに追加Yahoo!ブックマークに登録My Yahoo!に追加Add to GoogleRSS

このメルマガを読んでいる人はこんなメルマガも読んでいます

JOG Wing 国際派日本人のための情報ファイル
政治・経済・外交・社会・文化などの分野において「元気な日本」を作るためのオピニオン誌です。
NPO/NGO Walker 市民活動の情報誌
NPO/NGO、ボランティア、コミュニティ・ビジネスなど幅広い市民活動をテーマにした週刊情報誌。イベント情報や書籍紹介に合わせて、様々なNPO/NG...
週刊アカシックレコード
02年W杯サッカー韓国戦の「誤審」を世界で唯一「前日」に誌上予測し、誤審報道を「常識化」した推理作家(金正日の「遺書」で始まる「中朝戦争」後の北朝鮮...
宮崎正弘の国際ニュース・早読み
 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析
フェアウッドマガジン
環境に優しい木材を推進するため、違法伐採問題や森林管理や林産物の認証といった取り組みをはじめ、森林経営や林業、環境問題に関する情報を、研究者、業界、...


この記事へのコメント


コメントを書く
コメントはありません。

おすすめキャンペーン

利息が気になるあなたへ
オリックスVIPローンカードなら
<<年率5.9%〜15.0%、利用可能枠最高500万円>>
ゆとりのカードローンです。
←お申込みはこちら

スポーツNEWS速報!

その他ニュース 相次ぐ食品偽装 消えた年金達

メルマガデータ

  • メルマガID : 17010
  • 創刊日 : 2000-09-18
  • 最新号 : 2008-08-04
  • 発行周期 : 随時
  • バックナンバー: 全て公開
  • 発行者サイト: あり
  • 読んでる人 : 1006人
  • コメント数 : 4
  • Score! : 100点
  • >> 月間ランキング

発行者プロフィール

ペンネーム :


このメルマガの読者になる

規約に同意する



このメルマガの最近の記事


このメルマガの最近のコメント


このメルマガのバックナンバー


注目情報


新着記事トピックス