トップ > ライフスタイル > 環境 > 黄土高原だより

特定非営利活動法人・緑の地球ネットワークは中国山西省大同市の黄土高原で緑化協力活動をつづけています。そのなかでのできごとを、事務局長の高見邦雄がつづっています。




黄土高原だより(NO.288)

発行日: 2004/12/27


 中国山西省大同市の黄土高原の農村での緑化協力活動のなかでの体験を
 書きつづっています。不定期の発行です。
 バックナンバーを緑の地球ネットワークのWebページにおいています。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

  黄土高原だより(NO.288)
     (2004.12.27)
            高見 邦雄(緑の地球ネットワーク事務局長)

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 ヤナギハグミ(沙棘)

 今回の大同滞在中、右玉県まで、足を伸ばしてきました。
 1992年、私たちが渾源県で、協力をはじめたときは、
 渾源県と同じ、雁北地区に属していました。
 93年、雁北地区の7つの県が、大同市と合併したとき、
 右玉県は、朔州市に併合されました。
 以前の雁北地区10県のなかで、右玉県だけが特別だったのは、
 ほかの県が、海河の水系に属するのにたいし、
 右玉県は、黄河の水系だったことです。
 早くから、緑化の先進県として、知られていました。

 右玉県にはいって、すぐ目にとまるのは、
 ヤナギハグミ(沙棘=サージ)が、とても多いことです。
 ほかの県でみるのより、背丈が高く、
 たくさん実をつけています。
 私も、けっこうこの地方を回りますが、
 これほどのヤナギハグミは、みたことがない。

 ヤナギハグミは、グミ科の灌木です。
 秋になると、アキグミくらいの
 甘酸っぱい、小さな実を、びっしりとつけます。
 熟したものの色は、オレンジ色から赤まで。
 枝には、鋭いトゲをもっています。
 根に、放線菌、フランキアが共生し、
 空気中のチッソを、固定する作用があります。
 根を掘ってみると、小さなコブが、たくさんつき、
 ネマトーダ=センチュウが、ついたようにみえますが、
 これがそれです。
 マメ科の根粒菌と、同じようなもの。

 自分で、肥料をつくりますから、痩せ地に強いんですね。
 乾燥にも強く、黄土丘陵や、山のかなり上まで、
 広がります。
 この特性をいかして、マツなどと混植するのに、
 適した樹木です。
 私たちも、多くの造林地で、そのようにしてきました。

 ところが、大同の農村は、
 1999年が、建国いらい最悪、といわれる旱魃、
 2001年が、100年に1度、といわれる旱魃、でした。
 それにあわせて、毛虫が大発生したのです。
 しかも、春と秋の2回。
 さしものヤナギハグミも、枯れるものが多く、
 大きな被害がでました。
 
 右玉県には、中国科学院の、沙棘研究所があり、
 優良系統の選抜と固定、製品開発などに、とりくんでいました。
 前回訪れたのは、1997年で、
 このときの目的は、ここから優良品種を導入し、
 環境林センターに、ヤナギハグミの見本園をつくることでした。
 そのほかに、寧夏回族自治区銀川市の、沙棘研究所からも、
 中国以外のものも含めた、20品種ほどを導入したのですが、
 その後の結果をみると、右玉県から導入したものが、
 圧倒的に、成績はいいのです。
 やはり、近くのものがいいようです。

 今回は、製品開発に、関心をもっていきました。
 ところが、沙棘研究所は、すでに撤退し、なくなっていました。
 かわりに、いくつかのジュース工場が、生産をはじめています。
 ヤナギハグミの果実には、
 ビタミン類をはじめ、たくさんの栄養素が含まれており、
 果物の王様、といっていいのだそうです。
 健康増進、免疫強化、美容痩身、その他、その他。
 ジュースのほかに、種子を搾って、沙棘油もできるそう。

 それにしても、ですよ。
 あの実は、大きなものでも、直径5mmほどしかない。
 ジュース、その他に、加工するには、
 その実を、集めないといけない。
 あのトゲのなかでの作業は、ほんとに、たいへんでしょう。
 そんなことが可能なのは、内陸の農村が、たいへんに貧しく、
 人件費が、低廉であるからです。
 
 さすがに、1粒1粒、採取するんじゃないんですね。
 実の密集した枝を、切り取ってきて、
 工場の庭に、山積みしてありました。
 枝ごと搾って、ジュースにするわけです。
 この工場では、缶入り、ペットボトル、紙パック、
 その他のかたちで、商品化していました。

 搾った残りカスから、種子をより分けていました。
 このタネは、育苗につかったり、
 沙棘オイルの生産に、つかうわけです。
 
 工場の近くの、舗装道路に、最後の残滓が、広げてあります。
 そのうえを、車が通るたびに、枝なども、小さく砕かれます。
 これを、有機肥料として、使うわけですね。
 付近の農民が、個人で利用しているようです。
 そのほかに、葉を加工して、お茶にできるし、
 幹や枝も、燃料その他になります。
 ムダなところが、どこにもない。

 道路わきに、「国家天然林保護区」の標識が
 たくさんありました。
 しかし、周囲に、それらしき山はみえない。
 興味津々で、県の林業局をのぞいたのですが、
 ちょうど昼休みで、人影がなかった。
 「天然林保護工程辧公室」のまえに、
 写真がはってあったので、それをみると、
 たいていは、川端の、ヤナギハグミと、ヤナギなどです。
 重点工程とされている、蒼頭河沿いに、車を走らせました。

 河川敷に、ヤナギハグミと、ヤナギ、ポプラなどが、茂っています。
 ヤナギハグミも、水条件のいいところでは、
 樹高3〜4mに育ち、直径も15cm以上になります。
 こうなると、灌木というより、小喬木でしょうね。
 私たちの、カササギの森の、谷底の光景とそっくり。
 そのそばに、モンゴリマツやポプラを植え、
 鉄線で囲った、区域がありました。

 これが、天然林保護工程です。
 みる人によっては、拍子抜けでしょうけど、
 現地の、自然条件にあわせた
 すぐれた、やり方だと思います。
 なにも、全域に、マツを植える必要はないんですね。
 そして、四方八方に、目配りがしてある。
 世界銀行の借款や、日本の円借款も導入しているようで、
 表示がありました。
 
 放牧の、ヒツジの群れが、あちこちにいます。
 畑の作物の、残りのワラや、道端の枯れ草を
 さがしては、食べています。
 青いものはありませんから、これからが、つらい季節。
 親子2人で、280頭のヒツジを、追っていました。
 他人のヒツジを、あずかっているそう。

 「ほかの県では、肉のほかに、皮革も、
 いいお金になるけど、右玉県ではダメ」
 どうして?
 「沙棘が多いので、皮にキズが多くて、
 使い物にならない」
 そうです。
 ヤナギハグミのトゲは、鋭い。
 -- 
******************************************************
『ぼくらの村にアンズが実った
           〜中国植林プロジェクトの10年』
 高見邦雄著・日本経済新聞社・四六判280頁・1600円+税
 書店でお求めください。

 ★★メールアドレスが変わりました★★
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 特定非営利活動法人 緑の地球ネットワーク(GEN)
 552-0012 大阪市港区市岡1-4-24 住宅情報ビル5F
    TEL.06-6576-6181 FAX.06-6576-6182
 E-mail  gentree@s4.dion.ne.jp
 URL  http://homepage3.nifty.com/gentree/
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 
このメルマガの読者になる
規約 
>> メルマ!の会報誌もお届けします

ブックマーク: はてなブックマークに追加del.icio.usに追加Buzzurlにブックマークニフティクリップに追加ライブドアクリップに追加Yahoo!ブックマークに登録My Yahoo!に追加Add to GoogleRSS

このメルマガを読んでいる人はこんなメルマガも読んでいます

JOG Wing 国際派日本人のための情報ファイル
政治・経済・外交・社会・文化などの分野において「元気な日本」を作るためのオピニオン誌です。
NPO/NGO Walker 市民活動の情報誌
NPO/NGO、ボランティア、コミュニティ・ビジネスなど幅広い市民活動をテーマにした週刊情報誌。イベント情報や書籍紹介に合わせて、様々なNPO/NG...
週刊アカシックレコード
02年W杯サッカー韓国戦の「誤審」を世界で唯一「前日」に誌上予測し、誤審報道を「常識化」した推理作家(金正日の「遺書」で始まる「中朝戦争」後の北朝鮮...
宮崎正弘の国際ニュース・早読み
 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析
フェアウッドマガジン
環境に優しい木材を推進するため、違法伐採問題や森林管理や林産物の認証といった取り組みをはじめ、森林経営や林業、環境問題に関する情報を、研究者、業界、...


この記事へのコメント


コメントを書く
コメントはありません。

おすすめキャンペーン

■三菱東京UFJ銀行系 モビット■
【1】ネットで自動審査・来店不要!
【2】限度額300万円
【3】年利9.8%-18.0%(実質年率)

急な出費にモビット!

発行者プロフィール

ペンネーム :


このメルマガの読者になる

規約に同意する



このメルマガの最近の記事


このメルマガの最近のコメント


注目情報


新着記事トピックス