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黄土高原だより(NO.279)

発行日: 2004/11/1


 中国山西省大同市の黄土高原の農村での緑化協力活動のなかでの体験を
 書きつづっています。不定期の発行です。
 バックナンバーを緑の地球ネットワークのWebページにおいています。

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  黄土高原だより(NO.279)
     (2004.11.01)
            高見 邦雄(緑の地球ネットワーク事務局長)

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 2つの国での災害体験

 この通信、べつの原稿を、先々週中に書いてたんですけど、
 その後、台風や、地震の被害が、発生し、
 イラクの拉致事件まで、あったものですから、
 発送するのを、つい、ためらってしまったんですね。
 で、別のテーマで、書き直したものを……。

 1995年の阪神大震災で、自宅も半壊になりました。
 震度7の東北のはずれで、
 地域では犠牲者もでましたし、
 たくさんの家が、倒壊しました。
 直後から、私も、救援活動に、走り回りました。

 中国の大同というところが、これまた災害が多いんですよ。
 たとえば、大同県と陽高県、広霊県、渾源県の境界で、
 89年、91年、99年と、10年で3回の地震がありました。
 そのほか、この15年ほどのあいだに、
 厳しい旱魃が、93年、97年、99年、2001年の計4回、
 水害が95年と2004年の2回、
 イナゴ、バッタの害が、98年、2002年というふうに発生し、
 数えてみると、これだけで、11回になります。
 陽高県の、西団堡村なんか、震源の真上にあるということで、
 40kmほど離れた、別のところに、村ごと引っ越したんです。

 以前に、何回も、書きましたけど、
 貧しい一帯の農村のなかでも、
 県境の村は、とくに貧しいんです。
 山や丘陵などで、自然の条件に恵まれず、
 人口の薄いところが、行政の境界になるわけですから、
 当然でしょうね。
 そこに、地震まで、集中するんですね。
 まるで、災害が、貧乏な村を、狙い撃ちしているようにみえます。

 前2回の地震を、私は直接、知らないんですけど、
 99年のときは、発生を知って、
 すぐさま、現場に駆けつけました。
 12月の寒い時期で、最低気温は、零下30度近くになります。
 とくに気の毒だったのは、
 この年が、「建国いらい最悪」といわれた
 大旱魃の年だったことです。

 1年の旱魃なら、まだ、いいんですよ。
 たいていの農家は、旱魃その他の災害に備えて、
 最低1年分の、食糧の備蓄に、つとめています。
 ところが、97年が、大同全域で、旱魃だったんです。
 98年は、市全体では、悪い年でなかったのに、
 この付近では、雨が少ないうえ、バッタの害が発生しました。
 つまり、自然災害が、3年つづいていたんです。
 食糧も、尽きていたんですよ。
 
 ジャガイモから、デンプンを搾ったカスが、
 農家の軒下に、干してありました。
 それを、おかゆに混ぜて食べていました。
 という話をし、写真をみてもらうんですけど、
    それは、そのときのことです。
 貧しい農村のなかでも、もっとも貧しく、
 困難ななかでも、もっとも困難な時期に、
 そのときの地震は、起こったんですね。

 1998年1月の、河北省張家口市の地震は、
 北京が揺れたこともあって、国外にも報道されました。
 たまたま私は、震源から70kmほどのところにおり、
 翌朝、被災地にかけつけて、
 救援活動のようすなどを、みました。
 帰国したあと、阪神大震災の被災地を中心に、
 たくさんの人の協力をえて、
 被災地の村の、小学校を再建しました。

 被災地の中心は、張北県で、万里の長城の外です。
 河北省に、135ある県(県クラスの市を含む)のなかで、
 ビリから7番目の、貧しい県でした。
 となりの尚義県も被害を受けましたが、
 こちらは、ビリから2番目。
 震源は、その2つの県の県境ですから、
 ここも、貧しい地域のなかでも、貧しいところです。

 1995年9月には、大同で大規模な水害がありましたが、
 このときも、発生直後の農村を回り、
 救援活動にも、とりくみました。
 そういう体験をつうじて、感じることは少なくないのですが、
 とくに印象的なのは、2つです。

 第1に、救援活動が素早いこと。
 かならずといっていいほど、市のトップの幹部が現場にいき、
 陣頭指揮を、とっています。
 決定権限のある人間が、現場にいき、
 その場で、決めていくことが、
 救援活動を、迅速にしていると思います。

 内容は、けっして、十分とはいえないですよ。
 端的にいえば、餓死はさせない、凍死はさせない、という
 2か条です。
 たとえば、張家口の地震のときは、
 年間でいちばん寒い1月で、零下30度に、気温が下がります。
 被災の翌日、私がいったときは、
 寒さが一服中で、それほどでもなかったんですけど、
 直後からの寒波で、救援のトラックの燃料が凍り、
 立ち往生したくらい。
 
 私がみたのは、こんな光景です。
 地震発生後、半日足らずで、部隊がでて、
 生き埋めになった人たちを、夜通しで、掘り出していました。
 犠牲になった人が、毛布にくるまれて、
 道ばたに、寝かせてありました。
 軍用トラックで、最優先に運び込んでいたのは、テントと食料です。
 被災地が農村で、道路が狭いため、それ以外の車両は、
 現場に、近づけません。
 軍用トラックも、一方通行で、循環させていました。
 医薬品の搬入と、重傷者の搬出は、ヘリコプター。
    あざやかなものです。
    災害が多いから、慣れてもいるんですね。

 もう1つ、大きくちがうのは、
 被災者が、ジッとしていないことです。
 大同の農村でも、強く感じたことです。
 被災の直後から、ありあわせの材料で、
 一家が暮らすための、避難小屋を建てはじめます。
 倒壊した住居からはずしたレンガ、窓ガラス、毛布
 いろんなものが、使われています。
 屋根が低く、立って入るのがやっとですが、
 それでも、オンドルが据えられ、寒さを防げます。
 余震が激しいときは、政府支給の、テントにもどるけど、
 テントでは寒くて、冬を越せない、というのです。

 西団堡村では、学校も、すぐさま再開されていました。
    私がいったのは、週末だったんですけど、
 被災で遅れた分を、取り戻しているというのです。
 大きめのテントを、2つ、連結して、教室です。
 風のたびに、裾が、バタバタあおられ、
 雪が、吹き込みます。
 日中でも、外は、零下20度ですけど、
 ストーブは、ありません。
 こどもたちは、着込めるだけ、着込んでますけど、
 それでも、凍える。
 机の下で、足をガタガタ、踏みしめます。
 そんななかでも、笑い声が、あがるんですよ。

 災害にたいして、頑健なんです。
 とくに、精神的に強い。
 誤解をおそれずにいえば、
 ふだん、低いところで、生きていると、
 多少、転げ落ちても、痛みを感じないのかもしれない。

    おなじことを、いまの日本で求めても、
    それはムリでしょう。 
    でも、被災者も、それぞれに可能な自助、互助の努力に、
    できるだけ早く、とりくむべきだし、
    そういう保障が、必要でしょう。
    そのほうが、立ち直りも、ずっと早いのです。
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『ぼくらの村にアンズが実った
           〜中国植林プロジェクトの10年』
 高見邦雄著・日本経済新聞社・四六判280頁・1600円+税
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