黄土高原だより |
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中国山西省大同市の黄土高原の農村での緑化協力活動のなかでの体験を
書きつづっています。不定期の発行です。
バックナンバーを緑の地球ネットワークのWebページにおいています。
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黄土高原だより(NO.248)
(2004.03.16)
高見 邦雄(緑の地球ネットワーク事務局長)
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井戸掘りに協力
すみません。
前号で「古井戸」のDVDをみたことから、
霊丘県史庄郷石瓮村で、井戸水が涸れた話につなげました。
ところが、この村の井戸掘り、この「黄土高原だより」の
第1号と、第4号で、取り上げていたんですね。
1999年のことです。
考えてみると、この通信は、
中国北部の水問題の深刻さを伝えることで、
終始していたようです。
ほぼ5年たって、
出発点に返ってきたんですね。
同じ話題は、できるだけ避けているんですけど、
前回の話、あのままやめるわけにはいかないので、
重複を、許してください。
石瓮村には、中年の共産党支部書記がいました。
若いころは、軍にいってたんですけど、
復員したあとの半生を、井戸掘りに、かけてきたんです。
山のなかの、ほんとに貧しい村ですけど、
なんとか、井戸を掘りたかった。
あちこち駆け回って、支援を集め、
まずは電気を引いたんですけど、
これも、井戸を掘るための、準備だったというんですよ。
会ったのは、短時間だったんですけど、
思い詰めた表情が、印象的でした。
清代の井戸掘りは、人間の力でやったんですよ。
幾重もの岩盤をくりぬいて、
36mを掘るのは、たいへんだったと思います。
映画「古井戸」の井戸掘りと、似たようなものだと思います。
ところが、その深さの井戸は、
この一帯では、涸れてしまっています。
北水泉の湧き水も、つぎつぎ涸れました。
ゾーッとしたのは、浦里村での見聞です。
浦里村は、北水泉村から3kmほど下にある小さな村で、
この村も、湧き水にたよっていました。
山ぎわに、直径1mほどの、浅い井戸のようなものがあり、
コンコンと湧きだす清水が、
小さな流れをつくっているんですね。
村の老人に話をきくと、
「30年前は、ずーっと量が多くて、
畑の灌漑にもつかっていたけど、
いまはこれだけになってしまった」と嘆きました。
その半年後に、いってみると、
湧き水は、小さな水たまりになって、
外の流れは、完全になくなっていました。
人から話にきくのと、自分の目でみるのとでは、
インパクトはずいぶんちがうものです。
これから掘る井戸は、
機械によるボーリングしかないんです。
浅くても、100m以下ということはありえない。
その前年、私たちは、広霊県苑西庄村で、
井戸掘りに協力したんですけど、
水がでたのは、地下176mでした。
人の力で、命がけで掘る、というわけじゃないけど、
そのかわりに、お金がかかる。
その日のうちに、私たちは大同に帰ったんですけど、
翌日、馬秀蘭さんが、大同まで追いかけてきました。
「可能なら、ぜひ協力してほしい」といって。
太原を中心に、寄付金を集めてきたけど、
残りのメドがたたないというんです。
同様のお金の苦労を、私たちもつづけているわけで、
その気持ちは、痛いほど、わかりました。
広霊県苑西庄村で、井戸掘りに協力できたのは、
テレビ朝日の取材班が、
村に泊まり込んで番組をつくり、
それが「素敵な宇宙船・地球号」シリーズで
放映されたからなんですね。
おかげで、資金が集まりました。
郵政省国際ボランティア貯金と、
JA全中(JAグループ環境推進協議会)から
助成金・寄付金もでました。
この村の井戸掘りにも、協力することにしたんです。
村の人は、ものすごく喜んでくれたんです。
98年秋から、ボーリングがはじまりました。
10月末にいってみると、中休みしていました。
浅いところと、深いところとでは、
ボーリングの機械を交換する、ということです。
「ガオジェン(高見)がくるときいて、
機械の交換を待ってもらっていたんだけど、
あまりに遅いから、もう持ち帰った。
新しいのは、まだきていない。
残念だ。
井戸掘りは、ほんとにおもしろいんだ。
1日中みていても、あきることがない」なんてね。
寒くなると、しごとはヒマですから、
村の人は、現場に集まって、
ボーリングのようすを、ズーッとみてたんですよ。
その日は、党支部書記の家に、村の人が集まって、
宴会になったんですね。
書記はその前日、散弾銃をもって、猟に行ったそうで
ノウサギ、キジなんかを、とってきていました。
なかに「野猫」(野生のネコ?)というのがあって、
「これがうまい!」といって
私のドンブリに、その肉を取ってくれるんだけど、
うまいとも思えなかった。
ひょっとすると、保護動物かなんかで、
こんなことを書いたら、ヒンシュクものでしょうね。
そのさいに、いっしょに酔っぱらった
井戸掘り隊の隊長が、話してくれたんですよ。
「県境付近の山中では、
どこの村でも、井戸や湧き水が涸れている。
水のない生活の苦しさは、
自分たちがいちばんよくわかるから、
たとえ、お金にならなくても、掘ってあげたい。
しかし、そんな村は素寒貧で、井戸を掘るお金なんてない。
注文がこなくて、自分たちも賃金が遅れるくらいだから、
気持ちはあっても、どうにもならない」
そんなことを、くりかえし、くりかえし……。
冬は零下30度以下に、気温が下がります。
だから、井戸掘りの作業も、中断しました。
春になって、ボーリングが再開されたんですね。
99年春のツアーが、この村を訪れました。
40年近い私の友人の干場革治さんが、
昼食のあと、農家の中庭にいたら、
生まれたばかりの子ヤギが、
彼になついて、離れないんです。
どうしてかというと、その子ヤギは、
母ヤギのところに、乳を求めていったんだけど、
エサもないし、水も飲めない母ヤギが、
授乳を拒否したんです。
で、子ヤギは、しかたなしに、干場さんの
ところに寄っていった。
村の中心にほど近いところに、
ヤナギの古木があり、
その下が、小さな池になっていました。
池というより、直径10mほどの、くぼみですね。
汚れた水が、底に少々。
ヒツジやヤギの糞だらけです。
じつは、この水が、家畜の飲み水なんです。
洗濯だって、この水でするというんですけど、
逆効果じゃない?
そういうようすをみて、秋田県出身の
干場さんは、
「日本には“水呑み百姓”という言い方があったけど、
ここでは水も飲めないんだな」といいました。
そのあとも、水がでたという知らせがないんです。
大同でも、関係者がイライラしてたわけですよ。
「こんなに作業が遅れるのは、
水のでる見込みがなくなったからではないだろうか」なんて、
悪いほうへ、悪いほうへと、考えたんです。
でも、5月末には、ちゃんと水がでました。
深さ182m。
事前の調査と、ピタリ一致してますから、
そこらの技術は、なかなかのものです。
6月に、日本からのツアーも参加して、
通水式をもち、村の人は大喜びだったんです。
そのとき小学生の娘が、母親に
「これからは毎日、顔を洗ってもいいの?」と
尋ねたんだそうです。
それを小耳にはさんだといって、
祁学峰が、その話をよくしていました。
私もうれしかったんですけど、
でも、手放しに、というわけにはいかなかった。
こういう村では、どこでも水がなくなっているという、
井戸掘り隊の隊長の話が、頭を去らなかったんですね。
今回も、書きたいと思ったところに、
行き着くことができませんでした。
すみません。
この話題、もう1回つづけさせてください。
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