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黄土高原だより(NO.224)

発行日: 2003/9/22


 中国山西省大同市の黄土高原の農村での緑化協力活動のなかでの体験を
 書きつづっています。
 不定期の発行です。
 バックナンバーを緑の地球ネットワークのWebページにおいています。

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  黄土高原だより(NO.224)
     (2003.09.22)
            高見 邦雄(緑の地球ネットワーク事務局長)

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 バカくらべ

 霊丘自然植物園の建設は、
 私にとっては、冒険でした。
 その意義を確信し、見通しをもっていたのは、
 言い出しっぺの、立花吉茂代表と、
 遠田宏顧問くらいのものだったでしょう。
 私は、その言いつけに従っただけで、
 自信なんて、なかったんですね。
 大同のカウンターパートには、
 その意味は、もっとわかりにくかったでしょう。

 着工は、1999年の春だったので、
 これまでに、5成長期が、すぎたわけです。
 ことしは、谷筋に、作業道を建設しました。
 いちばん高いところまで、通じています。
 上のほうは、雨に流されないよう
 コンクリートの、階段ができています。
 谷筋のほうが、植物種が多いので、
 足の弱い日本人にも、
 それをみせてやろう、という、
 ここの責任者、李向東の配慮でしょう。

 植物園の敷地は、86haあり、
 いちばん低いところは900m。
 高いところは、地図のうえにも
 「南天門」というりっぱな名前があり、
 1340mほどあります。
 ですから、高低差は400mあまり。
 途中は、かなり急ですから、
 ラクになったとはいえ、ひと汗かかないといけません。

 1000mを超えるあたりから、リョウトウナラが出現します。
 北向きの、日陰斜面が中心です。
 大きなものは、樹高が8mを超え、
 胸高直径も、15cm以上あります。
 ぐんぐん伸びています。
 その下には、各年齢のものが、
 たくさん生えているんですね。
 5年前に、このプロジェクトをはじめたときは、
 こんなに早く育つとは、
 とても、イメージできませんでした。

 植物園建設を思い立ったとき、
 李向東たちに、候補地探しと、植生調査を頼みました。
 彼らは、そのなかで、いくつかの自然林をみつけてきました。
 私たちも、みにいったんですけど、
 いちばん印象的なのは、リョウトウナラでした。
 ひと抱え以上のものまであり、
 林床には、腐葉土が厚くたまり、
 その下は、まっ黒の土に変わっているんですね。
 この地方の緑化のイメージは、
 それをみたことで、ガラッと変わってしまったんです。

 そういう状況を、再現してみせるのが、
 この植物園の、最大の意義だと考えましたよ。
 遠田先生と、8か所もまわって、
 最後に決めたのが、いまの場所なんですね。
 自然林から遠くないし、
 標高も、方位も、地形も似ているし、
 上のほうには、ナラやハシバミが育ちつつあったので、
 ここでだいじょうぶだとは、思ったんです。
 でも、もっと時間がかかると思った。

 自然の再生を待ついっぽう、
 人の手で、それを加速することも、必要なんです。
 あの自然林から種子を集め、
 苗を育て、
 敷地内に植えていくんです。
 ことばで表すと、一行ですけど、
 実行するのは、たいへんなんですね。

 まず種集め。
 リョウトウナラのドングリひとつとっても、
 最初は、熟す時期が、わからないんですね。
 未熟なものをとってもダメですし、
 地面に落ちてから、時間がたち、乾燥してしまうと、
 発芽率が落ちます。
 それから、リスやノネズミ、
 シカなどに、食べられてしまいます。
 私たちの足だと、片道5〜6時間、
 彼らの足でも、その半分はかかるところから、
 ドングリを、毎年、200〜300kgも集めたんですよ。

 種子の保存だって、たいへんなんですね。
 ビニール袋に2重にいれ、
 乾かないように、気をつけて、
 環境林センターの地下室で、保存したんです。
 途中で、袋を開けてみたら、
 プ〜ンと、いい香りがするんですね。
 その年は、10月まで気温が高くて、
 ドングリのデンプンが、
 アルコール発酵しちゃったんですよ。
 最初の年は、そんな失敗もしました。

 私が、いちばん心配したのは、こういうことです。
 「この地方の主役は、おそらくリョウトウナラだろう」と
 私が、技術者たちに話したら、
 大同事務所の侯喜技術顧問は、
 即座に、
 「そんな木は役に立たない」と、いったんですね。
 もちろん、私は反論しましたけど、
 そんなことで、彼らの認識が、変わるはずがない。

 山間の貧しい村にいくと、
 生活燃料に、山の木をつかっています。
 たいていは、直径5cmくらいまでの太さです。
 いい刃物がないので、
 それより太い木は、伐ることができない。
 農家の軒先なんかに、タキギが積んであるんですけど、
 そのなかに、ナラやカエデ、カバノキなんかが混じっています。
 植物園の技術者たちも、当然、
 そういう光景をみているわけですね。

 ナラなんて、初期の生育は遅いんですよ。
 株元の直径が、3cmになるのに、
 5年も、10年も、かかるでしょう。
 遠いところまで、種を集めにいき、
 重たいのを、背中に担いで帰り、
 何年もかけて、苗を育て、
 敷地のなかに植えては、育つのを待つ。
 そこから遠くないところでは、村の人たちが、
 同じ木を、切って、燃やしているわけですよ。
 放牧のヤギやウシが、
 それらの木をかじっているわけですよ。

 じつに、バカなことでしょ。
 そんなバカなことを、何年も何年も、
 つづけることができるんでしょうか?
 私もそうですけど、
 あの技術者たちが、それに耐えることが、できるんでしょうか。
 お金のため、じゃ、だめですからね。
 心を注ぎ、愛情を注いでくれないと。
 バカらしいと思って、
 作業がおざなりになったら、
 こういう事業って、すぐに崩壊してしまう。

 ありがたいことに、
 私が危惧したことの一部は、
 乗り越えたようなんですよ。
 周金なんかは、
 敷地内の緑が、どんどん濃くなるのを示して、
 「みてくれ!
 以前は家畜が食っていたのが、
 いまは残るようになった。
 どんどん変化していく」といって、
 私に、ジマンするんですね。
 ほんとに植物のすきな連中が、集まってきたんですよ。
 すきでなかったら、こんなこと、やれないですね。

 ここの樹木が、育ってくるのをみて、
 付近の農民が、
 「あそこでは、ナラなんかを、
 お金や労力をかけて、
 あんなにだいじに育てている。
 たしかに、その値打ちはありそうだ。
 そんな木を伐って、
 ただ燃やしているのは、
 なんともバカなことじゃないか」なんて、
 考えるようになってくれたら、
 ほんとに、うれしいんですけどね。

 そうなるためには、代替の燃料が必要なことは、
 いうまでもないんですけど……。
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 特定非営利活動法人 緑の地球ネットワーク(GEN)
 552-0012 大阪市港区市岡1-4-24 住宅情報ビル5F
 TEL.06-6576-6181 FAX.06-6576-6182
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