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発行日: 2000/11/10

==========◇◆◇=============================
===============
日刊・小学校教師用ニュースマガジン380 
11月9日(木)
編集長・蔵満逸司 wahaha@po.synapse.ne.jp
  読者5462人
==========◇◆◇=============================
===============

須摩さんの著者インタビュー  第2回

〜学校は内側から、行動の中で変わってゆく〜
著者インタビュー『授業を変える学校が変わ
る』
(三善 晃作曲・佐藤 学作詞のCD付)の佐藤
 学さん
        
                    須
摩智佳子

sumac@mwd.biglobe.ne.jp

【プロフィール・佐藤 学さん】東京大学大学
院教育学研究科教授。
この20年間、全国の1万にのぼる教室を訪問
し、教師と協同で、学
校と授業の内側からの変革に挑戦してきた。学
校が変わるために、
「教室を開きあい、同僚性を築く」「学校組織
の単純化」「親の学
習参加」を提唱している。

【インタビュアー(須摩)】学校は変わらなく
ちゃいけないという
ことですか。

【佐藤さん】現在の学校は、学校としての機能
を果たしてないとい
うのが素朴な出発点ですね。小学校中学年すぎ
ぐらいまでは、どの
子も学ぶことにいろんな喜びを感じたり、自分
の可能性についてま
だ挑戦を繰り返してますよね。だけど、5年生
ぐらいから、学びか
ら逃走し始めている。昨今、日本の学校ではそ
れが非常に激しいん
です。
 まだ進学率が上昇する時代だとか、あるいは
日本の産業化がどん
どん進んでいく時代において学ぶ意味というの
はある意味で、自明
だったわけですね。しかし、経済のグローバリ
ゼーションが進み、
日本のポスト産業主義に移行している新しい時
代に学びの意味が見
えなくなった。複合的な知識を相互に理解し合
う、質の高い学習と
いうのをどう保証するのかというのが、大きな
課題です。

【インタビュアー】学ぶ意味は何でしょう。

【佐藤さん】学びが必要な理由は、第一に知識
を通して人々がつな
がり、よりよい社会を構成することですよね。
日本の政治一つとっ
ても、ほんの少数の人間が、とんでもないこと
を言い出して、まか
り通ってしまうようなことが起こってる。異常
ですよね。まっとう
な人がきちんと議論をしあう、お互い聞きあっ
て、協議しあってい
くという意識を、ねばり強く育てていくしかな
いですよね。それが、
学びじゃないかしら。学びなしには、人は自分
の人生を充実させる
こともできないし、社会さえも築くことはでき
ないですね。

【インタビュアー】学びあう学校にする方法は
? 

【佐藤さん】学校って頑固なところなんです
よ。じっくり変えてい
くしかないんです。だから、変化はゆっくりの
方がいい。学校は内
側からしか変わらないんです。教育委員会がい
ろいろやろうと、条
件づくりだけですね。学校も教育委員会も変わ
らなくちゃいけない。
 意識改革からやろうとするからみんな失敗す
る。意識で変えてい
くというよりも、行動の中で変わってゆくこと
が重要でね。学校は
非常に複雑ですから、一般論では変わらない。
教師の仕事って地味
であり大変なんですが、そのことをほとんどの
人は理解してないと
思うんです。誰でも務まると思ってるんです
ね。その無理解の中で
学校改革が叫ばれています。
 ほとんどの学校が、研究授業を年間3回やっ
てますが、3回で学校
が変わった試しはないですよ。20回やったら少
し変わります。100
回やると必ず変わる。先生方が授業をお互い見
合ったり、検討しあっ
たりするなかで、授業が変わるだけじゃなくて
学校のすべてが変わっ
てるんです。研修の目的は、授業の良し悪しを
議論するのではなく、
授業の難しさとおもしろさを共有することで
す。
 
【インタビュアー】校長のリーダーシップが大
事だとおっしゃって
いますね。

【佐藤さん】いろいろな校長がいます。教員と
校長と意見を闘わせ
たり、弱い校長を内側から支えたり、ケースバ
イケースですよね。
ただ大切なのは、校長にしっかりしてもらわな
いと、いまの学校は
機能しません。先生方同士の関係も親との関係
も悪くなる。そんな
とき一番被害を受けているのは、子どもなんで
すね。たとえば不登
校が多いという場合、不登校の子にカウンセリ
ングやったって、な
んの解決にもなりません。構造を変えなきゃい
けません。そこを読
みとるのが僕の仕事です。

【インタビュアー】求められる授業とは? 

【佐藤さん】教育はお祭りではないんだから、
お祭りばかりしてい
ると、必ずその裏側、陰の部分を背負わされる
子どもがでてくるん
ですね。だから、毎日のおいしいおみそ汁をつ
くっていくように、
日常をより丁寧につくっていくというんでしょ
うか。
 教師たちはみんなプロですから、いい授業を
したいと思うのは当
然だと思うんですよね。でもいい授業をしよう
と思ったとたんにで
すね。子どもが消えてるんですよ。そういう問
題も教師は気づいて
ほしい。だいたいドラマチックな先生というの
は子どもが被害被っ
てますから、ドラマを作り出すような教育はや
るべきでないと言っ
てるんですね。1年経って自分が関わった子ど
もが一人でもその教
科、教室で、わからないことがよりわからなく
なるとか、学ぶこと
に対する希望を失うということを起こしてしま
うとすれば、プロと
しては問題があると思うんですね。

【インタビュアー】先生方はとても忙しそうに
しておられます。子
どもとたくさん触れ合って忙しいというわけで
はなさそうですが。

【佐藤さん】小学校でいえば、労働時間の半分
以上は、教師として
の仕事じゃなく、雑務と会議です。ここ30年
間、管理職をどんどん
増やしてきて、官僚主義をつくってきたんです
ね。地方の行政と学
校の関係との中でつくられてきたことなんです
けれども。官僚主義
が強まってくればくるほど、学校の外から入っ
てくる仕事量がどん
どん増えていくわけです。内部でもそうなんで
す。やたら書類の処
理とか、やたら会議で決めなきゃいけないと
か。
 校務分掌というのは、教師が15人いると、30
以上ありますよ。一
人が細かな末端で4つも5つも受け持って、必ず
会議しなきゃいけな
くなる。そうなると、手続き上民主主義の形を
とっているんだけれ
ども、現実には、職員会議で議決が否決される
ことはありません。
なぜなら、そうやって積み上げてきてるわけで
すからそれを否定す
るということは相当困難なわけですね。だから
議論にならないんで
すよ。学年会で全部一致させていくとかね。教
師たちは、自分たち
で自分たちの自由な議論であるべきところを全
部狭めてしまってる
んですよ。
 同時に、これは無責任体制なんですね。なぜ
なら、4人で話し合っ
たからというので全部通ってるんですよ。誰も
責任とってないです。
一番いい例が、中学校の生徒の処分の問題で
す。一人一人のケース
が全部違うはずなのに、全部同じ手続きで攻め
ていって、慣例によ
りで全部済ませている。怖い装置でしょ。重要
な問題は最初から職
員会議で話し合えばね。あとは会議なんてする
必要ないですもん。

【インタビュアー】佐藤先生も、いつもいつも
お忙しそうですね。
 
【佐藤さん】学校って変わるの大変だもの。僕
は力が足りないし、
時間も足りない。アリンコのようにやってるん
ですよ。
 いまでもね、だいたい毎日3校ぐらい、年間
1000校以上から依頼
がくるんですよ。僕だって公務がありますから
ね、9割以上お断り
せざるを得ないんだけれども。何度やめてそれ
に専念しようかと思っ
たことありましたよ。いやほんとに。大型ト
ラックでキャラバン隊
でね(笑い)。
 元々歴史を研究してますから、日本とアメリ
カのカリキュウラム
の歴史、教育改革を、アメリカの人たちと共同
で10何年間やってき
ましたからね。ある段階から、これしかないと
思いました。学校を
回ればわかることですよ。何が教育を変える力
なのかとか、何が変
わらなければならないのかとか。
 教師の仕事って非常に大変です。ほとんどの
人は決してその仕事
を理解してない。教師たちは仕事がわかればわ
かるだけ孤立してい
くんですよ。矛盾することなんだけれども。だ
からいい加減な仕事
ですまそうとする人もいるわけですね。いい加
減にする限り、皆さ
んと衝突が起きませんから。

【インタビュアー】いい加減にする方が、衝突
が起きない? 

【佐藤さん】そりゃ起きないですよ。お母さん
たちだって同じ意識
ですもん。行政や政治家だって文句をいわない
し。やっかいなんで
す。教師は教育は難しいということを知ってる
と思うんですね。ま
た自分の仕事がいい加減な人は、いい加減であ
るということをよく
知っている。でもそこから抜け出すことは大変
なんですよ。傷つく
ことは誰もいやですからね。それをどうやって
やっていくかという
ことでしょ。教育の仕事は非常に地味なんです
よ。そういうなかで
意識で変えていくというより、行動の中でつか
むことが重要ですね。

◆須摩メモ
 佐藤さんが関わっておられる、茅ヶ崎市の浜
の郷小学校の研究会に
昨年参加しました。授業が静かで、先生はあま
り声を出さず、子ども
たちの発言の流れを聞き取ることに集中してい
らっしゃるように感じ
ました。体育館に、600人以上の子どもたち、
500人以上の見学者た
ちが集まりました。校歌の合唱です。音楽の先
生が、小さな鈴をチリ
リンと鳴らしたら、ざわついていた子どもたち
が、すーっと静かにな
ったのがとても印象的でした。
☆次回インタビューは、「子どものそばでうろ
うろしているだけの」
評論家 斎藤次郎さんです。

■授業を変える学校が変わる
佐藤学著/小学館/2000.8
本体価格:¥1,900
 学校改革の第一歩は、教師同士が教室を開き
あい、専門家として
育ちあう「同僚性」を回復すること。そのため
には学校組織を単純
化し、教師の時間を校内研修にあてる。このよ
うな内部からの改革
を持続させるためにも、学校を地域に開き、教
師と親との連帯を実
現する。多くの実践から導き出された著者の提
案は、明快で説得力
がある。

■教育改革をデザインする(シリーズ教育の挑
戦)
佐藤学著/岩波書店/1999.10
本体価格:¥1,700
 教育に携わる教師、教育行政の関係者、親、
市民の一人ひとりが
参加し連帯して推進する改革のビジョンを提
示。提言内容はすべて
著者が関与し、あるいは調査した実例に限定し
ている。一人の教師
が明日からでも教室で行える具体的内容を参考
に、挑戦してほしい。

★〜〜学校は変われる〜〜★関連本

■教育を変える
竹内常一著/桜井書店/2000.8
本体価格:¥2,200
 子ども・若者の暴力行為を、「荒れ」といっ
ている限りは、その
暴力は「荒れ狂っている」当人の問題であっ
て、他のだれの問題で
もないということになる。そればかりか、子ど
も・若者が、自分と
も他者とも和解できず、生きるに値する世界を
見いだせないでいる
ことを理解できない。教師たちの苦悩や親たち
の不安に真正面から
応える、目の覚めるような教育論。お薦め!

■みんなのための教育改革
関曠野著/太郎次郎社/2000.6
本体価格:¥2,000
 その名に値する教育改革があるとすれば、そ
れは教師・子ども・
親の三者をつなぐ関係をあらたに想像する試み
のことなのである。
この関係を制度的に保障し強化することが教育
改革の課題でなけれ
ばならない。教育改革は、政権党や文部省の党
派的で特殊な政治的
意思をそのまま反映するものであってはならな
いと主張する。

■こうすれば学校は変わる
汐見稔幸編/大月書店/1999.10
本体価格:¥1,700
 学校を、あらたな質のものにつくりかえよう
と努力してきた先端
の教師たちの、報告と討論から、ヒントと勇気
が得られる。明日か
らの学校改革、教室改革に一歩踏み出してほし
いというメッセージ
が詰まっている。テーマは、学習指導要領、子
どもが求めている学
びと授業改革、学級崩壊は学校再生のチャン
ス、親との関わりなど。

■学校を基地にお父さんのまちづくり
岸裕司著/太郎次郎社/1999.3
本体価格:¥1,800
 飼育小屋、ごろごろ図書室づくり、園庭一泊
キャンプ、大運動会、
大人たちの29種目のコミュニティルーム…。
「できる人が、でき
るときに、無理なく、楽しく」をモットーに、
老いても住んで楽し
いまちづくりを提唱する。

■教育改革(岩波新書 新赤版511)
藤田英典著/岩波書店/1997.6
本体価格:¥700
 学校・教育は様々な問題を抱えているが、そ
れが「改革」によっ
て改善されると期待されている。いじめ、いじ
めによる自殺、不登
校、高校中退、教師の体罰、時代錯誤の校則な
どなど、克服の可能
性は? 真の改革の指針を提示し,学校・家庭
・地域の連携による
教育の再生を考える。

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本連載は、オンライン
ブックストアbk−1の許可を得て掲載させ
ていただきます。bk−1のホームページで
は、教育関係はもちろ
ん、さまざまな分野の本に関するコラムや著者
インタビューを読む
ことができます。オンライン注文が可能です。
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http://www.bk1.co.jp/
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--------
メッセージ

●ある大学の先生から、現場との共同研究は、
大学教師としての実
績としてなかなか認められないと聞いたことが
あります。佐藤学さ
んは、全国の1万もの教室を訪問されているそ
うです。積極的な発
言に学ぶものが多いのではないでしょうか。
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▲▽▲▽▲原稿募集中▲▽▲▽▲   

◆読者の関係する研究会・講演会・書籍等の情
報原稿募集中。一行
30文字、行数20行前後。連絡先メールアド
レスは必須です。
◆感想や投稿大歓迎。感想も本MMで使うこと
があります。匿名希
望の方、掲載禁止の場合は明記してください。
匿名の御質問・御依
頼・御批判には対応していませんのでご了承く
ださい。
◆諸事情から掲載できないこともあります。掲
載についてのお問い
合わせはご遠慮ください。
◆原稿は wahaha@po.synapse.ne.jp 蔵満ま
でお送りください。
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▲▽▲掲載予告▲▽▲11月▲▽▲【変更にな
ることがあります】

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