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起こるときには起こる(週刊 自転車ツーキニスト179)

発行日時: 2004/10/29

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【週刊 自転車ツーキニスト】"Weekly Bicycle Tourkinist"
 起こるときには起きる179号

■地震だ

 先週土曜日、私は赤坂TBSの14階で、まさにエレベーターに乗ろうとするところだった。
 足下がぐらりと揺れて、あ、めまいがする、疲れてるからなぁ、と思ったら、目の前でエレベーターの電灯が
ぷつりと切れて、それっきり動かなくなった。あ、故障だ、と思った。
 で、めまいがどんどん激しくなってきて、あれ、と、まわりを見ると、まわりもぐらぐら揺れている。オレの
めまいはスゲエなぁ、周囲まで巻き込んでるよ、と、一瞬思ったが、もちろんそんなワケはなく、地震だった。
東京23区、震度4。
 その後はご承知の通りだ。
 私の用意していたVTRはすべて吹っ飛び、テレビはすべて特番に切り替わり、やがて入ってきた小千谷の映像
は(翌日になって入ってきたものの方が多かったのだけれど)、まさに阪神淡路大震災を彷彿とさせるモノだった。
 私は95年の阪神淡路大震災の際、4カ月間、現地取材に当たっていたことがある。地震はホントにたまらない
よ。新潟県中越地方、今も8万5000人が避難してる。被災された方には、本当にお見舞い申し上げるしかない。

■「被災者」という人々

 今回の地震に関して言うべきことはあまりない。現地取材にも行ってないし、オレ。
 ただ、阪神の取材の際に、妙に心に残ったセリフがあるのだ。それを一つだけ。
 それは、被災したお婆さんの話だった。彼女は避難所のテントの前に座ってこう言った。
「本当はこんな汚い顔をお見せしたくないんです。きっちりお化粧して、恥ずかしくない姿でいたいの。神戸は
お洒落な町だし、私もお洒落なんですよ、本当はね。でも、こんなジャージみたいなのを着て、被災のお婆さん
の一人になっちゃった。それが何か悲しいの。……でも、家も全壊だし、仕方ないわよね……」
 避難所でもどこでも、人はいったん「被災者」ということになると、十把一絡げの、顔のない「被災者」という
人になってしまう。それは、肉親を亡くしたことや、病気や怪我、食糧や寝床、そうしたこととはまた別の悲しみ
だと思う。
 本当はそれぞれに、それぞれのあるべき自分、それぞれにしかない固有の事情、歴史があるはずなのに、そこに
いるとただ単に「被災者」。
 そのお婆さんに話を聞いて、自分も彼女を「ワンノブ被災者」として扱おうとしていたことに気がついた。反省
すべきだと思った。
 こうした災害現場の取材の際、取材者は往々にして厭がられる。その理由の根幹は、こういうところにあるので
はないか。
 被災者という名前の人間はいない。そのことは、個々の尊厳、プライド、というようなものに堅く結びついてい
る。

■起きるときには起きる

 台風被害だっていまだに復旧途上だ。イラクの人質事件も起きている。
 起きるときには起きる。ニュースは重なるものなのだ。

■さて、そんなこんなの状況の中

 さて、そういうタマラナイ状況の中、恐縮ではありますが、例によって宣伝っす。
 私ヒキタの最新刊「日本史の旅は、自転車に限る!」(木世(えい)出版社)の発売が、来月17日に決定しました。
この日に書店に並びます。税込価格で1470円(最近は税込み表示しか許されないのね)。結構分厚い本です。

 前回の宣伝に対して「猟奇殺人とか、海堡とか、そういうマニアックな話題ばっかりなの?」という質問をいただい
たもので、そんなことないよん、と、ちょっとだけ釈明。
「奈良の大仏が建ったワケ」「北条早雲と天狗な戦国時代(何のこと?)」「神武天皇はなぜ宮崎スタートなのか」
「土方歳三の函館戦争」など歴史のメジャーどころも多数登場します。あと「ハワイに平等院が建ったワケ」「父島母
島に残った日本兵」など、(なぜか)島関係も豊富であります。
 是非是非よろしゅうお願い申し上げます。

 なお、偶然ではありますが、ほとんど同時期に既刊2冊が増刷になりました。
「自転車生活の愉しみ」(東京書籍)第8刷と「快適自転車ライフ」(岩波書店)第3刷が、書店に並ぶであります。
こちらの方も、どーぞ、よろしゅうに。

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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

「電車男」中野独人著 新潮社

 インターネット世界最大の掲示板「2ちゃんねる」で、リアルタイムに展開した、伝説の純愛物語の書籍版。著者の
「中野独人」とは「インターネットの中に集う独身の人たち」というほどの意味だ。基本的には「匿名不特定多数、中
でも電車男」である。

 内気でオタクで「彼女いない歴=年齢」であるところの青年「電車男」が、電車の中で酔っぱらいに絡まれた「エル
メスちゃん」を助けた。その後、彼女が「お礼に」とエルメスのティカップを送ってきた(彼女のニックネームの由来
はこれ)ところから物語が始まる。
 今まで女の子と付き合ったことがない電車男は、掲示板の中で、掲示板の他の住民「2ちゃんねらー」に助けを求める。
いわく「デートに誘いたい」「服は何を着ていけばいい?」「髪は美容院で切るべきか?」「喫茶店はどんなところがいい
の?」などなど。
 その度ごとに、聴衆である「2ちゃんねらー」たちが、的確な、または、的確でないアドバイス、叱咤激励をしていく
ワケだ。電車男は、彼らの支援をバックに、勇気を振り絞って、エルメスちゃんを誘い、デートを繰り返し、信号待ちで
手を握り、最後に愛を告白する。
 その度ごとに、彼は家に帰ると「本日の成果」をネットに報告する。その度に親身な反省会、および、次回への作戦会
議となる。
 聴衆たちは基本的に「電車男」に優しい。月並みな言い方だが、たぶんそれは「電車男」が自らの分身だからだろう。
だが、それだけじゃない。電車男の情けなさの裏にある意外なクレバーさ、素直さ。そして、エルメスちゃんの異様なほ
どのいい女ぶりが、この物語を暖かいものにしている。二人にはちょっと好感を抱くぞ。

 活字は横組みで、パソコンの絵文字が頻出し、おk(「OK」のこと)、乙(「お疲れさま」のこと)、キター(「やっ
た!」など、色々な意味に用いられる)などの2ちゃんねる用語が飛び交い、最初のウチは、慣れないとかなり読みにくい。
 だが、じきにそれにも慣れ、読み進めるうちに「2ちゃんねる」もそんなに捨てたものじゃないじゃない、とも思えてく
る。2ちゃんねる的なるモノにアレルギーのある人(私もその一人かも)には、ちょっとオススメかも知れない。
 それにしても思い出すね。恋愛こそが人生最大の一大事だった頃。時々読んでて恥ずかしい。朴訥とした電車男が、恥ず
かしくも、甘酸っぱい一時期を想起させてくれる。それがいつ頃だったとは言わんけどさ。

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ペンネーム : ヒキタ

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