いよいよアテネの(週刊 自転車ツーキニスト172)
発行日時: 2004/8/13----------------------------------------------------------
【週刊 自転車ツーキニスト】"Weekly Bicycle Tourkinist"
いよいよアテネの172号
■ギリシャといえば「地震予知」
さて、アテネ五輪開幕なわけだが、ギリシャといえば、私にとっては「地震予知」なのである。
何のことかというと、1995年の阪神淡路大震災の時、私はギリシャに取材に行ったことがある。元々ギリシャは欧州屈指の地震国であって、住民の地震との付き合いは深い。
で、何でもギリシャのとある町では、大地震が来る際にそれを事前に予知したとの報道があったのだ。その予知に従って、住民は町郊外の高台に避難した。すると、避難終了後に地震が本当に起き、町は壊滅したが、住民には誰一人、怪我人が出なかった、というのだ。
そういう話が、日本の某新聞に、1面丸々使った特集記事でバシッと載っていたのだよ。
そりゃすごい、ギリシャの地震予知は優れている! と、私は取材に行った。
■まずは市役所にて
アテネからクルマで4時間。随分山深い山岳地帯にその町はあった。その地震から3年。町のあちこちにはその当時もまだ「大地震」の爪跡が若干残っていた。壊れたままの粗末な家が放置してあったりする。
だが、そこの市役所に聞きにいき、地震研究所に聞きにいき、現地の新聞社に聞きにいき、私は意外な現実を知ることになった。
正直言って、私はハラホロヒレハレであった。
まずは市役所……。
「事前情報で高台に逃げたかって? いやー、そんなことはありませんでしたな。研究所は『地震が来る、地震が来る』と、20年も前から言い続けてたんで、まあ、そういうことを偶然、直前に言ってたかも知れませんが、誰も信用してませんでした」
つまり研究所はいわば長いこと「狼少年状態」だったわけだというのだ。
「確かにこの町としては未曾有の被害でした。死者こそ出なかったものの、怪我人は多かったですよ」
あれ? 住民は無傷というのは何だったの?
■研究所のハカセ
地元には○○地震研究所というのがあった。
今回の話、地震予知の本丸だ。当然、我々はそこで話を聞く。白い髭の博士が取材に対応してくれた。
「私は前々からこの地域は地震の危険性があると思っていたのです。ですから、ことあるごとに警告してきました。『私の事前警告で市民が避難した』ということは、残念ながらありませんでしたが、私の長年の警告によって、市民が地震に備えていたということはあるのではないでしょうか」
うーむ、何かが微妙に違う……。で、私は、博士の観測道具を見せてもらった。
「町の5つの地点にこの機械を埋め込んでいるのです」
山を登り、博士が指さすそれを見て、私は絶句した。
くー、それは素人の私の目から見てもハラホロであったよ。単に電極を地面に埋め込んでるだけの、至極、原始的なものなのだ。細くのびるコードも赤と緑の、何だか小学校の豆電球の実験で使ったようなものだ。その先に、通電テスターのようなものが付いている。
「こ、こ、これが、地震予知の機械……?」
「そうです」と博士は胸を張る。何でも博士の新理論では、地面に流れる微弱な電流を測るだけのシンプルな計測器で地震予知は出来るのだそうだ。だんだん目の前の白髭の博士がマッドサイエンティストに見えてきてしまったのは、私だけではなく、カメラマンも、ギリシャ人通訳も同様であった。
■地元の新聞社
我々は何か勘違いしていたのだろうか。地元新聞社とテレビ局に最後の望みをかける。ウン百万円の予算を使ってココに来てるのだ。何かがないと日本に帰れない。
「地震予知? よく分かりませんな。どういう話が日本には伝わってるんですか?」
……。
そうだろうなぁ。もうここまでで私は何かを確信してたよ。
それでも「神戸よりもはるかに被害が少ない理由は何ですか」と聞いてみる。真面目な話、何かがないと日本に帰れないのだ。
「その理由はよく分かりません。でも、3年前の大地震は確かにスゴい地震でしたよ。マグニチュードが5以上もありましたからね。凄い揺れでした。このオフィスの本棚の本などもみんな落ちたりしましたから……」
そうなんだろうなぁ。本棚の本か……。
でも、神戸の地震はそれどころじゃなかったんだよ。
色々な話を聞くにつけ、ここでの揺れは強めに言ってせいぜい日本の震度で6弱というところなのだ。家の造りが貧しいから、その程度の地震でも倒壊する家屋はあった。怪我人も出た。だけど、そこは人口密度の少ない、山間の小さな町だったから、被害は少なかった、と。それだけの話だったのだ。
本当にただそれだけだったのだ。
私はいったい何をしにココに来たのだろう。
■「外国に学べ」
番組の当初のコーナータイトルは「ギリシャに学ぶ地震予知」だった。
だが、結局、放送されたのは「ギリシャの小さな町の一例」と、話は大きくトーンダウンした。内容は、もうここでは言いたくないほどツマラナイものとなった。有り体に言って「だから何?」という手合いのモノだ。
ギリシャ人たちは明るくてのんびりしてて、皆、いい人たちであったよ。
でも、こと「地震予知」については、学ぶものは皆無だった。少なくともその町に関しては。
ちょっと笑ってしまったのは、現地のテレビ局の機材だ。カメラは普通のハンディカム。編集の機械も、電気屋さんで売ってる、普通のビデオデッキだ。みんな日本製。しかもかなり古いもの。
「さすがに日本人クルーはスゴいのを使ってますなぁ」と、我々の機材を見て、みんな感心してた。
つまりは、そういうところだったのだよ、この長閑な町は。
我々日本人は何か事件や事故が起きると、ともすれば「外国に学べ」となる。某国ではこんなにうまくやっている、それにつけても日本は……、という論調を作りがちだ。
そういう謙虚な姿勢が、現在の日本を作ってきたと言わば言える。だが、それも状況によるとは思うのだ。
私なども「日本の自転車政策は、どうのこうの……、ドイツを見ろ、オランダを見ろ」なんてしょっちゅう言ってる。だけど、それは日本よりも明らかに優れた何かがその国にあり、それがきちんと事実である場合だ。
日本という国に住む人々は、色んなケースにおいて初動が遅いけど、いったんコトが始まったら、驚くほどの緻密さと労力とカネをかけてやることは間違いない。結果が他国より優れていることの方だってむしろ多いぐらいだ。特に科学技術の面に関しては。
何でもかんでも「だから日本は」だとか「外国はこんなに凄い」だとか言ってるのは間違いだよ。そんな当たり前のことを、極めて馬鹿馬鹿しい例で実感した出来事であったな。
それにしてもなぁ、10年前の某大新聞○○紙。現地で聞いてみたら、そういう日本人記者から電話はきたけど、現地取材には来なかったと、皆、言ってたぞ。誰も知らないと思って、見てきたようなウソを書くんじゃないよ。ホントに。
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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】
「キッパリ! たった5分間で自分を変える方法」上大岡トメ著 幻冬舎
売れてるんだそうだ。で、読んでみた。結構、面白かったよ。かわいい漫画とともに、60の「自分を変えるヒント」というようなものが書いてある。
私が好きなのは、7番目の「忙しいときはやらなきゃいけないことをすべて書き出す。- 優先順位を付けて、紙に覚えてもらって、頭の中はからっぽ、あとは紙の通りに動くのみ」というヤツ。そうだよな、と思う。
見開き2ページで教訓1つ。これ以外にも「冷蔵庫を片づける」「メールは短く」など、何ということもない日常の知恵が並んでる。一見「だから何?」という項目もあったりするけど、その解説と漫画を読んでると、そうだよな、そういうことあるよな、なるほどな、と思える。
実は、この本の構成、コンセプトは、ずっと前にこのコーナーで紹介した超弩級非オススメ本「ゼッタイ、必ず……」と、ほぼ同じなのだ。見た目の違いは、文字数が圧倒的に多いことと、著者(本業はイラストレーター)の漫画が載っていることぐらい。
なのに、この差は何だ何だと思う。
でも、ちょっと考えれば、そりゃ当然だ。項目に上がった内容が全く違う。アレと違って、コレには実体験に基づいたノウハウがきっちりある。
著者の前向きな態度と、地に足のついた感じが好ましい。ココロが弱ったときなんかには、結構オススメ本かも知れないよ。
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