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少々長くてごめん(週刊 自転車ツーキニスト148)

発行日時: 2003/11/25

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【週刊 自転車ツーキニスト】"Weekly Bicycle Tourkinist"
 マンションを見に行く148号

■マンションを見に行った

 最近、またまた多くなってるのだ、大規模マンションのチラシ。週末にになるごとにドッと新聞に入ってる。それも100平米近い(もしくはそれ以上の)4LDK程度のマンションが、かなりリーズナブルな価格で売られてたりする。
 ウチの近くにもそういう新築物件があって、つまりは見に行ってきたのだ。寒い週末だったよ。
 その物件は色々なチラシの中でも特に安値が突出していて、驚いたことに「4LDK・110平方メートルが、3600万円から…」なのだ。東京・江東区のとある駅から徒歩で12分。自転車通勤距離も今とほとんど変わらない。
 首都圏に住む人以外にはピンとこないかもしれないけど、破格の激安物件だ。もちろん新築なのよ。完成は来年。
 で、モデルルームを見に行った。やっぱり広い。10年前の感覚でいうと、もはやこれは億ション級だ。小綺麗なキッチンやら広いバスやら何やらが色々と設えられていて、セールスマンも「問い合わせ殺到中です、がはは」と胸を張る。スラブ厚(って言ったかな)だって230ミリ。十分だ。窓の防音にいたっては2重窓で-35デシベル(非常に大したものらしい)にまでなっている。安値の理由は「所有権でなく地上権の設定」だということなのだが、ふむ、それにしても安いなぁ。
 で、実際の建設現場を見に行ったのだ。
 場所は、荒川沿いの江東花火の会場からよく見えるところだった。
 現場はすでに基礎、鉄骨を終え、外壁がチラホラ外から見える、というところまで来ていた。
 だが、我々(私とカミさんということね)が目を剥いたのは、いや、耳をふさいだのが、すぐ脇を通る地下鉄東西線だったのよ。

■て、鉄橋が……

 地下鉄東西線は、ちょうどこのあたりで、地上に出て、千葉・西船橋まで「地上の地下鉄」になる。
 で、目の前の荒川の大鉄橋を渡るために、急勾配で堤防を上る、という格好になるわけ。その高さが、まさにこのマンションの南側すぐ5階部分になるのだ。5階の住民はベランダから直接地下鉄の客と目が合うコトになるのだな。
 まあ目が合うぐらいならいい。だが、問題なのは音だ。
「近くに鉄道が通る」という状況は私も満更知らんわけじゃない。事実、そういうところ(常磐線沿い)に住んでたこともあった。私としては「まあ慣れだな、住めば都だ」と思う用意ぐらいはある。だが、ここの場合、問題は単なる「線路」じゃなくて「鉄橋」なのだ。
 鉄橋というのは、ホントに音が響くなぁ。
 一本、電車が通ると、私とカミさんは怒鳴り合わないと意志が通じなかった。以前の常磐線どころのレベルじゃない。地下鉄東西線は東京を真っ二つにして走る、文字通り東西の幹線地下鉄だから、ホントにひっきりなしに電車が通るのだ。12両の最大級編成列車が上下合わせて4分に1本(昼間)、朝のラッシュ時には、ほぼ1分に1本。つまりはこのマンションは、四六時中、轟音の中に佇んでいる、と、そういう具合なのだ。

■僕たちの将来

 モデルルームを見に行って、その綺麗な展示物に、もはや目がハートマークになっていたカミさんは、ここでようやく憑き物が落ちたようになった。
「安いワケよね」
「うーん」
 我々はちょっとガッカリしながら通り過ぎる東西線をぼうっと見ていた。
 さっきまでカミさんの脳味噌の中を巡っていたバラ色の妄想がぼろぼろと落ちていくのが、見ていても分かった。やはり「110平米・3600万円から」には理由があったのだ。ちなみに「3600万円から」の「3600万円物件」が、まさにその5階部分だった。
 確かに安い。だが、将来ココに住む人には失礼な話だが、個人的な感想を言わせてもらうと、ここは人が住むのに適した場所じゃないよ。元来は川沿いの工場地帯。近くの通りには大型トラックがひっきりなしに通るし、鉄橋の下には有象無象の廃棄物が捨ててあったりする。私は「なぜこんなところにまでマンションを建てるのだろう?」と、ちょっと疑問に思ったぐらいだ。
 でも、なぜ?
 何でそこまでしてマンションを建てるのだ?
 分かってはいるのだ。別段この業者に限らず、マンション業界全般のことを言うと、あらゆるデベロッパーは、マンションを建てて、売って、その金でまた建てて、と常にカネを回し続けていないと、会社自体が立ちゆかないのだ。走り続けないと倒れてしまう、という状況に陥っているのである。
 一見、大量に売れて、売り上げアップ。増益? 増収? だが、抱えているものが重すぎて……。

 現在のマンションの活況は、単純に未来の需要を先食っているだけだと思う。
 各社のモデルルームに行ってみればわかるが、契約ブースには「年収○○○万円以下でも○○○○万円融資」「こんなに低金利、家賃と較べてみて下さい」などの文句がポスターに踊る。その文句に、融資枠ギリギリの若夫婦が乗るわけだ。
 だが、今日よりも明日の方がより高い給料を貰えた時代ならいざ知らず、このデフレ状況下、数千万円の借金は恐いよ。明日の給料アップどころか、明日の仕事があるかどうかすら分からないのが、今だ。
 大量に供給されるマンションが、今の水準のままの価格を保つとは考えにくい。「売っても借金がいくばくか残る」という状態を覚悟しながら、我々は、こうしたもののローンを組まなくてはならない。
 計画通りいけば、それでもいいが、もしも何かがあったとき……。
 払い込んでも払い込んでもローンは残り、自らの手元にあるのは騒音のマンションだけという現実。あるいは、そこに住み続けることができたとしても、厳しい状況の中にいるのは自分だけではないのだ。様々な事情が重なりながら、歯抜けになり始めたマンションの空室状況の中、そこがスラム化を起こさないと誰が言い切れるだろう。
 特段に寒い日ではあったけど、それ以上に寒い気持ちを心に抱えてしまったことであったよ。

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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

「残光」東直巳著(ハルキ文庫)

 久々にミステリー。
 最近、あんまり「当たり」というのがなかったんで、ミステリーここに取り上げてなかったんだけど、久々の当たりでした。それも大当たり。ミステリー系では昨今、稀なオススメものです。
 著者・東直巳は北海道在住。「期待の若手と言われて十余年」の東氏なワケだが「お待たせしました、東、完全ブレイク!」の傑作がこれだ。いや、マジで面白い。
 舞台は例によって札幌および北海道だ。札幌市内で起きた人質籠城事件の裏に潜む、邪悪かつ巨大な罠。主人公・健三は果たして少年を救えるか……!と、ちょっと聞くと、ありがちな話のようだが、いやいや、全く。そんなことよりも練りに練られた職人のワザが冴えて、読後の満足感が大きい。
 主人公のトンデモないスーパーマンぶり、悪役一派の「そこまで巨大なのかよ」という大規模邪悪ぶりなど、「ありえねえ」の突っ込みどころは満載だが、別段いいのだ、そんなことは。この良質のエンターテインメントの前には、すべてが許される。
 スピーディな展開に加えて、話者の視点がひっきりなしに入れ替わる。が、それが読みにくいかというと、全然そんなことはなく、それでも引っ張る筆力は、おお、東、いよいよこれからスターダムに駆け上がるぞ、という力量感に溢れてる。
 細かい細かい伏線が実によく張り巡らされていて、後になると、あ、なるほど、だからこの人は○○だったのか。くー、そうか、だから△△は××を選んだんだ、というような熟練のワザがビシバシ出てきて痺れる。
 中でも圧巻なのが、ラストシーンだ。
 世界のミステリー史上でも、間違いなく初出のクライマックスだと思う。類似品なし。驚いた。くぅー、だから○○は××だったのか!!
 日本冒険推理作家協会賞受賞作。読んでみなはれ。文庫だから安いし。

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【自転車通勤で行こう】
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バックナンバーはこちら。
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発行者プロフィール

ペンネーム : ヒキタ

  • 環境、ダイエットに効果抜群。どなたにもオススメの「自転車通勤」ですが、そのノウハウやポリシーを色々な人にお伝えするメルマガです。 と、思ってたのですが、ただ単に私ヒキタからのバカメールが届きます。ご容赦。

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