今回はちょっと長い(週刊 自転車ツーキニスト142)
発行日時: 2003/9/18----------------------------------------------------------
【週刊 自転車ツーキニスト】"Weekly Bicycle Tourkinist"
優勝の興奮もだいぶん冷めてきた142号
■自己認識って難しい
いや、阪神タイガースファンの皆さま、おめでとうございます。目玉をもぎ取られたカニさんはご愁傷様であります。
と、私としては珍しいことに野球ネタを時候の挨拶に代えさせていただくワケだが、道頓堀は何だかシャレにならないことになっている昨今だ。盛り上がるのもほどほどに。
いやまあ、それとこれとは、まーったく関係ないのでありますが、随分前に、ある人から「オレは短気だからなぁ」と言われたことがありましてね。あれ? と思ったことがあった。
この人、実を言うと、周囲の人々に、とーっても嫌われてる人だったのだ。
嫌われる理由は実にはっきりしていて、とにかく、他人の言うことを聞かない、昨日言ったことと今日言うことがまったく違う、自分の言葉について自分で責任をとらない、権利ばかりを主張する、自分の利益だけが何より一番の優先事項、などなど、いや、これで嫌われなかったら、そっちの方が世の中どうかしてるよ、というぐらいのものだった。
中でも、この人の一番の特質は、自分の思うとおりにならないと、すぐにキレてしまうことで、周囲のみんなはいい加減、辟易していたのだ。
その人が、ある日、自分を嘆くようなポーズで一言こう言う。
「オレって短気だからなぁ……」
「?」
「短気だから、人に嫌われるんだよなぁ」
私は、おや? と思った。
この人は、自分が嫌われていることについては、気づいてないワケじゃない。だが、嫌われる理由を、まったく誤解している。あえて正確に言うなら、嫌われる理由を「美化」している、と。
■嫌われる理由
似たようなことは結構ある。
これまたちょっと前に、ある同僚のディレクターが、私にこう言ったことがある。
「オレは仕事にはキビシイから、ADに嫌われるんだよ」
このディレクターもまた、ADにかなり厭がられるディレクターだったんだけど、私はその理由をはっきり知っていた。彼は仕事にキビシイから嫌われるわけじゃない。自分のことには大層甘いのに、その反面、他人にはスゴく厳しくて、他のミスをあげつらうことが異様に好きだから嫌われていたのだ。
それを「仕事にキビシイ」とハードボイルドに解釈してしまう。私は「ちょっとちょっと、アンさん」と、苦笑を禁じ得なかったよ。
まあでも自分の短所について把握するのは難しいとは思うのだ。薄々認識している短所にしても、そのまま認識するのを脳は拒否してしまう。人は往々にして「イヤな、自分で許せない短所」を「我慢できる短所」に変換してしまう。「逆ギレしやすい幼児性」を「単なる短気」に。「自分にだけ甘い、自分勝手」を「仕事にキビシイ」に。そして、人によっては「単なるバカ」を「お人好し」にね。
でも、そういうことって、あると思う。
私だって自分がそうでないとは言い切れない。そういう部分はどこかにあるのではないかと思う。いや、きっとある。自分に関しては、人は目が曇るものだもの。誰もがそういう「うぬぼれ鏡」を持ってるものだから。
まあ、人のフリ見て我がフリ直せ、に越したことはないですね。
他山の石、とも言いますね。
犬も歩けば棒に当たる、とも言いますね。あ、言わないか。
■差別?
さてさて、先日、このメルマガの読者の方から、次のようなメールを受け取ったのだ。
前々回の中に「啓蒙」という言葉があって、それが「差別用語」としてとらえられているというご指摘だった、とまあ、そんなことだと思いねえ。以下、ちょっとだけ抜粋ね(*本人の転載許可あり。括弧内は筆者註)。
>(前々回のメルマガの中で)1点だけ、表現で気になった部分があったのでお節介ながらもメールをさせていただきました。
>(中略・ヒキタの文の中で)「啓蒙番組」と表現されているのですが、じつは「啓蒙」という言葉が差別用語になっている、ってご存知でしたか?
>
>私も先日、ある社内会議の中で「啓蒙活動を・・・」と発言したところ、お客様相談室の方から「”啓蒙”という言葉は、ここにきて差別用語として捉えられることになったので使用しないほうがいい。
>同意語として用いるのなら”啓発”という言葉を使用したほうがいい。」とアドバイスを受けました。
>差別用語となる理由は「知能的に劣っている蒙古に正しい教えを説く」ということらしく暗に蒙古を馬鹿にしているように捉えられるから、ということらしいです。
>そんな事実をまったく知らなかったので、今まで結構使用していた言葉ですが今後は気をつけなければ、と思っている次第です。
>
>疋田さんは、執筆もされて講演会もされる方なので、なにかと表舞台に立つ機会が多いですよね。
>もしご存知でなかったら、頭の片隅にでもこの話を留めておいていただけたら、と思い、老婆心ながらメールさせていただきました。
■私の返事
ふむふむ、非常に礼儀正しいメールでして、私としては、こういうご指摘はホントにありがたいのです。
メールを送られた方は某大手企業にお勤めで、「お客様相談室」というのは、その企業のいわば「クレーム処理係」みたいなところらしい。ご自分がお仕事をなさっている中での、そこからの指摘。よくぞ思い出していただけました、ありがとう。という感じ。
ただ、指摘の内容自体については、私はまったく納得できないのだね。
実は私も「啓蒙」という言葉が、一部で差別用語に当たるとされているというのは聞いたことがあったのだ。で、そのことをやはりヘンだと思わざるを得なかった。こういう理不尽な「言葉狩り」には、やはり従えない、と。一人、憤りを感じていたところだったのよ。
というわけで、以下、お返事メールです。
どうも、自転車ツーキニストのヒキタです。メールどうもありがとうございました。
「啓蒙」に関するご指摘、いたみいります。本当にこういう指摘はありがたいのですが、実は「啓蒙」に関しては、私は意識的に使ってます。敢えて。ワザとなのです。
啓蒙が「蒙古に対する差別用語」というのは、まったくの誤解に基づいておりまして、原義をあげるなら「蒙きを啓く(くらきを、ひらく)」であります。これは「知識が足りなく、物事の本質が見えていない者を、教え導く」というような意味でありまして、蒙という文字がもともと「知識が足りなく、その物事にくらい様子」を指す文字なのです。
それを「蒙古」すなわち現在のモンゴルにあてたのは、古代の中国人でして、日本のことを「倭」(背が低く背中の曲がっている人、転じて東方の野蛮人の意味)と呼び、その支配者に「卑弥呼」などと「卑しい」文字をあてたのと同じです。
つまり「差別だ」という本質は、どちらかというと「蒙古」という言葉にあるわけで、「啓蒙」の方こそが、むしろ正しい使い方なのですよ。そもそもでいえば「蒙古」と名付ける方が間違っている、というか適切でない。
ならば「蒙」という文字を使うこと自体が間違っているのか? そんなことがある筈はありません。
たとえば「愚」という文字がありますね。「拙」という字もあります。そういう「劣っている」ことを指す文字はたくさんあるわけです。ですが、それらの文字自体が差別的かというと、もちろんそんなことはありません。文字自体にはプラスもマイナスもない、ただ「その状態を表す」だけのことです。そういう意味では「蒙」も同じです。
○社(*お勤めの企業名)さんのように、そのような(*理不尽な)クレームに対しても、失うものがありすぎる企業の場合(クレーマーにはもとより失うものはないし、それで騒ぐバカなメディアもあるのも事実)、気をつけなくてはならないのかもしれませんが、私の場合は、失うものがないし、こうして「言い訳」することができるんで、こういうのは頑なに使い続けようと思うのです。
大袈裟に言うと、日本語文化を守るために、です。
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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】
「マンガ・金正日入門」李友情著(飛鳥新社)
このコーナー初(だと思う)のマンガ。
太陽政策の中の韓国で、一度は発禁となったものが、日本でようやく出版された。
実に面白い。金正日の特異な人間像が(本当かどうかはさておき)マンガだけに、かなり明確に分かる。
頭が良いのか悪いのか、魅力的な人間なのか恐怖させるだけの人間なのか、国民に本当は支持されているのかいないのか、酒飲みなのかどうなのか、喜び組はどうやって選ばれるのか、そういう下世話なコトも含め、謎になっていることが、色々微に入り細を穿ち、絵解きで解説される。こういう邪悪な人間は確かにいる。どこまでが正しく、どこからがウソなのか、よく分からないところもあるのだが、大枠でいえば金正日という人物は本当にこうなのだと思う。
この手の絵解き本にしては例外的なことに、絵もうまいし、構成もよく練られている。
マンガマンガと馬鹿にするなかれ。これは読み応えのある「本」だ。翻訳したのは関西大学の李英和助教授。RENKの活動で有名人となった過激な助教授だ。
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【自転車通勤で行こう】
http://japgun.infoseek.ne.jp
バックナンバーはこちら。
http://www.melma.com/mag/03/m00016703/
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