すまん、ちょっと長いかもの(週刊 自転車ツーキニスト119)
発行日時: 2003/1/24----------------------------------------------------------
【週刊 自転車ツーキニスト】"Weekly Bicycle Tourkinist"
木枯らしが身に応える119号
■とある事情で
とある事情で、現在、自転車通勤が出来なくなっておりまして、地下鉄に乗ってるわけです。来週半ばには、また復帰するつもりですが、何だか自転車に乗れないと「自転車ドーパミン」が出なくなるようで、ちょっとイライラ。いや、イライラという感じじゃないな。ちょっとドンヨリ。
たぶんランナーズハイに似たライダーズハイってあると思うのですよ。それを失ってしまって1日の活力が出ないのだ。
原稿を書く気も起きない。毎日バタリとデスクに突っ伏しています。
でも、書いても書かなくても〆切だけは必ず迫ってくるわけなのだ。
私の仕事は、テレビの方も活字の方も、結局のところは「原稿を書く」というのが一番最後の仕上げの部分なワケで、これがないと始まらない。テレビの〆切は毎週土曜日。土曜日放送だからそうなのだ。当たり前なのだ。今週はイラクだ。はたまた何かが起これば北朝鮮……。どちらにしたってうんざりな話には違いないね。
■号外って?
貴乃花が引退して、潜在的相撲ファンの私としては、残念は残念なのだ。
個人的には、あんまり好きな力士ではなかったけれど、類い希な素質は確かに角界随一のモノで、相撲協会は宝を失ったなと思う。今場所だって、観客のほぼすべてが貴乃花の「最後のドラマ」を見に来てたものね。語弊を恐れずにいうと、相撲を見に来たんじゃない。「貴乃花の最期」を見に来てた。
私としては貴乃花にこそ「憎らしいほど強い」というヒールをやって欲しかった。最盛期の北の湖のような図太い横綱。彼ならそれが出来た。だけどケガが許さなかった。そういう不運というものはある。残念だった。
だが、今回、私が書きたいのはそこじゃない。
貴乃花が引退発表をして、銀座で、新宿で配られた「号外」。
号外っていったい何だ?
■号外を受け取ると
あまりないけど、結構ある。東京で暮らしていると誰もが一回ぐらいは受け取ったことがあると思う。私はダイアナ妃が亡くなったとき、偶然、銀座を歩いてて受け取った。おおおおっと思う。私は同妃にほとんど関心がない人間だったのに、受け取った瞬間「そうかー、1つの時代が終わったなぁ(しみじみ)」なんて思った。ホントは思ってなかったけど。でも、そんな気にちょっとだけなった。
何か嬉しいんだよね、号外って。自分が受け取ると。
何だか、歴史のイベントに自分が参加している気にちょっとだけなる。おまけにタダだし。受け取った号外、四つに畳んでしばらく本棚に挟んでいた、なんて人も多いと思う。
だけど、新聞社にとってはどうなんだろう。速報性では、号外出してみたところで、電波、ネットに完全に負ける。だいたい配ってるその銀座の電光掲示板で、ニュースが流れまくってたよ。たぶん、発行するための費用もバカにならないと思うのだ。 新聞の宣伝にも多分ならない。「あの号外が良かったから」なんて理由で新聞を換える人はいない。
それでも号外は出る。一種のイベントなんだよね。「このニュースはこんなに大きいぞ」ということを言うためのイベント。
■号外の役目
現在の号外の意味はひとえに「テレビのための材料、舞台の提供」だ。そういう狙いはなくても、結果としてそうなってる。
テレビを見るとすぐに分かるよ。ある大事件が起きる。アナウンサーがリードを読んで、VTRになる。状況の説明がある。そこに至った経緯がある。関係者それぞれのインタビューがある。今後の展望がある。そして街録。街録のトップカットは必ず号外を配る新聞販売(?)員だ。
その後で、大袈裟に驚いたり溜め息をついたりするコメントが入ると、画面が落ち着くのだ。
号外が出るほどの大事件だよ、大ニュースだよ、そして街角の人々「驚きました」。
その中で画面を見てる人の気分も醸成されていく。最初は「ふうん」だったのが、「へぇー」になり、そうだよなぁ、すごいよなぁ、に。
だけど、そんなに大ニュースだったかしら。そんなにみんな○○に興味があったのだろうか。
■ニューススパイラル
↑そんな言葉は本当はないんだけどね。
でも、そういうしかない状況は確かにある。あるメディアが「スゴいぞ」と言い、それを引用するメディアが「そんなにスゴいのだ、で、ウチラはさらにスゴい」と言い、さらに……、と。
テレビは「新聞が号外まで出すんだから」と、その様子を写しつつエスカレートし、新聞は「テレビがここまでの尺(時間)を費やすんだから」と扱いが大きくなる。そこに「さらに凄いこと言わなくっちゃ」とコメンテーターが登場する。
そして、最初は「おいおい」と思っていた一般の人々だって、「そんなものかもな」になっていくのだ。
今までだって毎回似たようなことは起きてきたのだけれど、今回は特に思うわけですよ。
みんなそこまで貴乃花のことを好きだったのかなぁってね。これは「嫌いな人が多かった」という意味じゃないよ。正直言うと無関心、という人の方が多かったでしょ、という意味合い。
でも、それが平成の名横綱になり、歴史に残る大横綱になり、国民栄誉賞受賞?! になり、国民すべてが引退を悲しんだ、とまでなっていく。どんどん現実味がなくなる。どこかで見た構図だ。
どこで見た? 彼が最初に力士になったときだよ。
この「ニューススパイラル」が、貴乃花について、異様に顕著にみえるのは、この貴乃花という存在ほど、そういうメディアの特性に翻弄された人間はいないからだ。
親子鷹の伝説(カッチョイイ)。理想の家族(コウアリタイ)。横綱に(スゴイ)。日本一の美女との交際(ウラヤマシイ)。破局(ソレミロ)。愛がなくなった会見(サイテー、ヒトデナシ)。怪しい整体師との交際(バカ)。などなどなど。
その後「感動した」も「休場続き」もメディアのエスカレートによって、極限の針の振れで語られる。
そして貴乃花は無口になった。
しんどい話だったよな、貴乃花。
ホントはどんな青年だったのだろう、貴乃花。
今の状況をどんな気持ちで眺めているのだろうか。
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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】
「二十三時的」金平茂紀 著(スウィッチ・パブリッシング)
かつての私の上司が書いた本。
TBS系「筑紫哲也ニュース23」の名物デスク、金平茂紀氏の「デスク日記」だ。現在はJNN(TBS系ネットワーク)ワシントン支局長だから、アメリカの政治レポートに必ず出てきます。ちょっと出っ歯の、ちょっとシニカルなオジさんだ。
彼と私はイデオロギー的に言えば、まったく考え方が異なるのだけれど、この本を貫く「『テレビというメディア』と『自分が表現したいこと』の乖離」はすごくよく分かる。テレビは必ずしも軽薄なノータリンが集まって作っているわけじゃない。だけど、往々にしてそう見えてしまうのもまた確かなことで、事実そうだったりする。それを止められない。この業界に入ると必ずどこかでその壁にぶち当たる。ぶち当たって、解決策があるかというと、これまたなかったりする。
その現場で彼は常に戦い続けてきた。低視聴率にも社内のゴタゴタにも負けず頑張ってきた。エー年のオッさんなのに驚くべきパワーの人だ。私なんかには到底真似できない。
だからして、そういうところでストラッグルするのに疲れて、活字に別の活路を求めてしまったりしたんだ、私は。たぶん。
でも、彼も……。
ものすごく分厚くて、活字の多い本。
テレビというメディアの一つの側面を、狭く、深ぁぁぁぁぁく知ることが出来ます。
実は私としては、彼の本の一番のオススメは、これの前作「電視的」というヤツ。大田出版から出てます。
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【自転車通勤で行こう】
http://japgun.infoseek.ne.jp
バックナンバーはこちら。
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