パキスタンより(週刊 自転車ツーキニスト71)
発行日時: 2001/12/21----------------------------------------------------------
【週刊 自転車ツーキニスト】"Weekly Bicycle Tourkinist"
東京は雪? の71号
■結局やっぱりパソコン持ってきてしまいましたがな
というようなことで、パキスタンから「自転車ツーキニスト」。書いてる本人は、当然ながらまったく自転車通勤できてないんですけど。
でまあ、テレビの通りの風景が展開されてます。
アメリカ大使館の塀には真新しい鉄条網がグルグル巻になっていて、まだ金属が新しいから陽の光でピカピカ輝いてます。その周りをパキスタン人護衛がたくさんウロウロしてるの。手には勿論、自動小銃。だけど、タマラナイのが、24時間交替で護衛してるその兵隊さんたちが、みんな交替でテントに寝てるのね。だからアメリカ大使館の周りは、鉄条網、兵士、テント群の順番でとりまかれてるってワケ。シュールだな。
一方、タリバンの大使館は閉鎖。撮影も不可。護衛兵によると「誰もいない」とのこと。あのザイーフ大使もいない。うーむ、当然といえば当然なんだが……。
■で、取材なんすけど
コレがね。取材が思いの外、難航してまして、このままではパキスタンから帰れない。
「ブロードキャスター」のボスは、結構恐いので参ってます。何も撮れないときにはシリアに亡命でもするつもりです。ビザも既にとってあります(ホント)。
アフガン難民キャンプでは、子供たちが、眼をキラキラ輝かせながら笑顔で大量に寄ってきて、カメラの前でピョンピョン飛び跳ねたりします。
同時に、背後に回って私の財布や鞄を奪おうとします。「コラッ」と少し怒りましたら、後ろから跳び蹴りを喰らわされたり、馬糞や石を投げつけられたりして、手荒い歓待を受けました。
なんちてね。ロクでもないな、ココのガキどもは。
やり方が卑怯なのだ。背後からしか狙わない。振り返ると「コイツだ」といって年かさのいかない子供を前に差し出す。数が揃うと途端に凶暴になる。石を投げるのだって男らしくないよ。
這々の体で帰ろうとすると、クルマにも雨アラレと石を投げつけられて、後ろのフェンダーがボコボコになった。次から次から湧いてくるから(100人以上)、正直、生命の危険を感じた。
何が「眼をキラキラ輝かせながら」だよな。ご承知の方はご承知だろうけど、私はこういった表現が大嫌い。
ニコニコ笑いながら、思い切り石を投げつける。子供ってのはそういうことが出来るものだ。
日本人だから、アメリカ人だから、ということとはちょっと違う。テレビが嫌いだから、というのでもない。彼らは純然たる娯楽でコレをやるのだ。退屈で貧しい日常。そこにやってきた格好の「異形の獲物」だったというわけだ。我々は。
いやはや、教育がないってのは困った病気だよ。
だけど、それは決して彼らの責任ではないんだ。
さらに言うと、あらゆるところで差別されっぱなしの子供たちだから、結果こうならざるを得ない。大人を全く信用してない。それは現実だ。生まれたときからの戦争、極貧、飢餓、教育レス、逃亡、差別、病原菌、厳寒。それが常態。理不尽のカタマリの中で、幼い人生を生きている。
死が常にそばにある。6歳まで生きることの出来る確率がほぼ半分。心だって荒むよ。すべての子供がPTSDだらけだ。トラウマと呼ぶにはあまりにシリアスなトラウマを抱えながら、彼らは峠を越えてきたのだ。パキスタン中にそれらの子供たちが200万人。
この子たちが明日のタリバンになる。それも下層兵士に。
正直言って「それでも健気に生きてます」なんてのはウソだ。そういう子も中にはいるだろう。だけど大多数は「それだから根性が捻れてます」だ。色々な国で色々な子供たちを見てきた。悲しいことにそれは現実だ。
繰り返すが、それらのことは、まったく彼ら自身の責任ではない。
誰が彼らにそうさせるのだ?
アラーはどこにいる?
それと、この国に限らないけれど、日本からの巨額な援助はいったいどこに消えてしまうのだ?
■うーん、さすがは……
NHK。パキスタンでも映りまくってます。「ひるどき日本列島」なんてやってたりするの。深夜に再放送で。今日は富山県の商店街だよ、パキスタンで。なんなんだコレは。でもNHKが映る国って増えたよね、ホントにね。
今、泊まってるホテルがね、イスラマバードの「マリオットホテル」っていうんだけど、コレが「国営パキスタンTV」の隣にありまして、ほとんどすべての日本のテレビ局がここに臨時事務所を構えてるわけね。中継回線をパキスタンTVに借りざるを得ないという都合で、これは仕方がないのだ。
各局が「イスラマバードの中継です」とか言って、何だか小高いところからレポートしてるでしょ。それ、このホテルの屋上。
ちょうど国会だの大統領官邸だのがみんな見渡せるのだ。各局そろってココ。ちょっと可笑しい。
時差が4時間だから、6時のニュース、10時、11時のニュースの時間、がそれぞれ2時、6時、7時。その時間に各局スタッフが屋上に上がるのだ。「や、どうも。ビンラディンまだですねぇ」とか言って。
■「自転車生活の愉しみ」のこと
今回はやはり色々なところに出回ってるらしく、「本屋で見た」という懐かしい人々からメールをいただいたりしてます。まったく没交渉だった中学時代の友人からとかね。表紙の折り返しに私のURLが書いてあるもので、ウェブサイト経由でメールをくれるのだ。
あまりの懐かしさに涙ぞこぼるる思いであります。
とくに馬糞まみれ、投石の切り傷だらけになった夜の、パキスタンのホテルなんかでではね。
■んで
今回は書くねぇ。なんで?
それはもちろん、この国では酒が飲めないからです。
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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】
「江分利満氏の優雅な生活」山口瞳著(新潮文庫)
パキスタンまで来て何を読んどるんだ、という感じですね。
62年の直木賞受賞作。もう40年も前の作品なのかあ……。山口瞳先生も、もう死んじゃったしね。
最初に読んだのが、オヤジの本棚から取り出しての中学の時。で、その次が大学生の時。そして、読み返し読み返ししているのが今だ。で、パキスタンまで持ってきてしまった。
中学の時には全く面白くなかったけど(それでも挿し絵があるから読んだのだ、おそらく)、今は面白いなぁ。古くはあるものの、一つ一つの文がみんな美味しい。
江分利満という(もちろんEverymanのもじりだ)子持ちの中年オヤジの日常を淡々と描いただけの、小説とエッセイの中間文芸作品なんだけど、これがね、時に軽妙、時に涙を誘いつつ、昭和という時代を匂わせながら、しみじみと味わい深い。
山口瞳が流行作家になったわけだわ。昭和30年代当時、今よりもずっと江分利満氏の日常はリアルだったのだろうから。
ちょっとショックなのは、その中年オヤジだと思ってた江分利満氏が、なんと35歳なのよ。私と同じ。どういうことなのよ、いったい。困ったな。オレは江分利氏ほどリアルな現実を生きてないって気がするよ。江分利氏は私に較べて、ずっと大人。
山口瞳が死んで、もう6年。
文庫もどんどん数が少なくなっている中で、「優雅な生活」と「居酒屋兆治」だけは、まだまだしぶとく生き残っています。買うなら今。古い本だから400円と安いしね。
すっごく読みやすい。読後感もイイ。サラリーマンだった父親(私の場合そう)の人生をしみじみと想像するにもピタリです。
新刊じゃないものの太鼓判。大オススメ。
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【自転車通勤で行こう】
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