ガンと鈴香の(週刊 自転車ツーキニスト254)
発行日時: 2006/7/18
【週刊 自転車ツーキニスト】"Weekly Bicycle Tourkinist"
ガンと鈴香の254号
■ガン
王さんが胃ガンで、キヨシローが喉頭ガンか……。
ちょっとショック、いや、かなりショックだよ。
王さんが「ビッグワン」で「756号」だった頃、私は小学生だった。
彼こそがスーパースター中のスーパースターだった時代、私だけでなく(私にも野球少年だった時代があったのです)当時の日本の小学生のほぼ全員が、最も尊敬する人の名前に「王貞治」をあげたはずだ。
世界一のホームラン王、偉大なる王貞治、というだけでなく、人格的にも最高の人間だとされた。
それはほぼ正しかったことを、私は後年、実感する。
テレビマンとなった2年目の冬、王さんのインタビューに出かけたことがある。王さんは噂通り、礼儀正しく、誰に対しても優しかった。ADに対しても気を配った。「これはどうかな?」と思えるような質問にも、真摯に答えを返してくれた。大きくてカッコよかった。笑顔が素敵だった。
だから私は現在でも王さんを呼び捨てにできない。必ず「王さん」。
その王さんが胃ガンに倒れた。7時間にも及ぶ胃の全摘出手術。手術は成功だと伝えられるが、リンパ節に転移が見られたとも言われ予断を許さない。
なんてこった。
キヨシロー氏もガンだ。それも歌手としては致命的になりかねない喉頭癌。
私がキヨシローさんとお会いしたのは、一昨年のホノルルセンチュリーライドの時だった。「トランジスタラジオ」が一番好きです、と言ったら、そうですか、ありがとう、と笑っていた。ステージとは裏腹に、物静かで、シャイな人だった。
センチュリーライドの折り返し地点で、地面に座り込みながら、ハイライト(だったと思う)を喫って、例の口調で「うまいぜー♪」と言っていたのを思い出す。
私の高校時代、彼は間違いなくヒーローだった。それも、分かってる人だけに強烈にアピールする、ちょっとランクの高いプレミアヒーローという感じ。
ラブソング全盛の時代に、ボス、ボス、ボース♪の「ボスしけてるぜ」、逃げるんだげるんだー♪の「ベイビー逃げるんだ」などと、過激で、勢いがあって、なおかつシュールな、歌とステージを展開した。
忌野清志郎といえば、間違いなく日本のキングオブロックだった。それもデビュー以来30年もキングオブロックであり続けたのだ。
おまけに昨今では、何といっても自転車だよ。現在「カリスマ自転車人」といえば、誰をさしおいても彼だろう。
なんてこった。
恢復をお祈りしたいのは無論のことだ。
同時代のヒーローが「死に至る病」と向き合っている。そういうことの意味を、今回、はじめて実感している。
ちょっと言葉がない。
■鈴香
こうなるともうワケが分からない。
この容疑者はいったい何をどうしたかったのだろうか。すべてが行き当たりばったりだったのか、周到な何かがその裏にあったのか、それとも、誰か守るべき人が別にいるとでもいうのか。
職業柄ということで私に言えるのは、ただ一つ「このネタは視聴率をとる」ということだけだ。
連日のイヤになるぐらいのワイドショーや雑誌の大騒ぎ。アレはそのまま「数字(視聴率or部数)がとれる」からこその現象なのである。
「もういいよ」「他にもっと報じないといけないことはあるだろう」とね、私だってそう思う。だが、それでも鈴香は数字をとり続ける。いわゆる「一般大衆」は、国連決議より鈴香を選ぶのだ。
そのことに対する批判は百も承知しながら、ワイドショーはしょせん「大衆の鏡」に過ぎない。好むと好まざるとに関わらず、そうである、としか言いようがないのだ。大衆のメディアであるテレビ。これは厳然たるテーゼであって、このテーゼなくしてはテレビはテレビとして成り立ち得ない。
だがね、私としても、今回のことには何らかのヒントがあると思うのだ。
大衆は一見愚かなようにみえて、実は賢い。このような「一般大衆の耳目を集める事件」というものには、必ず社会的な土壌が存在したりする。視聴率には必ず理由があるのだ。
鈴香に関心を持つ若い母親は多い。
なぜか? 日本の多くの若い母親にとって、鈴香は「身近」だからだ。身近に鈴香のような母親の存在を知っている。もしくは、自分自身が心の中に鈴香を持っている。そういう事実を、若い母親たちは知っている。そして、彼女たちは、この事件が必ずしも「特殊例」ではないことを、敏感に嗅ぎ取っている。
この事件の特異なところは、事件そのものではなく、鈴香の人となりに、より関心が持たれているところだと思う。児童二人が殺された、という事実ではなく、鈴香の人間性を知りたいというニーズ。あたかもお酒をよく飲む人が、雑誌の「アル中度チェック」みたいなものを食い入るように読むごとく。あの人は(もしくは「私は」)まだ鈴香よりマシだ、ということを確認したいという思いがそこにはあると思う。
それを裏付ける数字がある。
ネグレクトをはじめとする児童虐待は、今も過去最高を更新し続けている。昨年度、問題となった件数が、3万5000件。
1年間で3万5000件である。
この国には「鈴香予備軍」が、毎年3万5000人も生まれているのだ。
■臭い缶
暗い話ばかりだと、シュールストレミングでも食べたくなるな。
……勿論、まったくのウソなんだが。
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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)
「中国『黒社会(ヘイサーホイ)』の掟」溝口敦著 講談社+α文庫
日本のみならず世界中に根を下ろした中国人犯罪者集団のルポ。あー、もうヤダヤダ、と思いながら読んでしまう。これを読むと中国人の裏社会はもう何でもあり、だ。命の値段が安いってのは、ホント理不尽かつ無慈悲な暴力犯罪を生むね。
それにしても考えてしまうのは、著者の溝口敦氏のことだ。
1942年生まれ、この人は、今までよく命を長らえてきたなと思う。
このような国際犯罪だけでなく、国内のヤクザ取材の精緻さ、サラ金、宗教団体、同和団体などに対しても臆せず追求する姿勢。彼こそ真に「タブーなきジャーナリスト」という名に値する。
それはそうと、明後日発売の「BiCYCLE CLUB」8月号だ。
表紙の一部が私。それと、ヒキタのライディングフォームをエンゾ早川氏が大改造、というのが特集になってる。ちょっと気恥ずかしいんだが、読んでいただければ幸い。結構タメになるかもしれない。なぜならば、私が陥っていた様々な悪弊は、多くの自己流サイクリストに共通のものだからだ。事実、私はエンゾ氏のおかげで20%程度はスピードアップ、パワーアップいたしました。
もちろんいつものコラム、歴史ツーリングなども健在であります。よろしくね♪
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「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
*昨年12月発売の最新刊。今回はなぜか「奈良・暗峠」「秩父・八丁峠」「北海道・日高峠」と、峠モノが満載。
「疋田智の自転車生活スターティングブック」ロコモーションパブリッシング
「自転車とろろん銭湯記」ハヤカワ文庫
「大人の自転車ライフ」光文社知恵の森文庫
「自転車ツーキニストの憂鬱」ロコモーション・パブリッシング
「日本史の旅は自転車に限る!」木世(えい)出版社
いずれも好評発売中。ネット内でのご注文はこちらにどうぞ。
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【自転車通勤で行こう】
http://japgun.infoseek.ne.jp
バックナンバーはこちら。
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