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臭い料理ナンバーワンの(週刊 自転車ツーキニスト252)

発行日時: 2006/7/3

 
 
 
 
 
【週刊 自転車ツーキニスト】"Weekly Bicycle Tourkinist"
 臭い料理ナンバーワン決定戦の252号

■「臭い料理」と言えば

 普通の日本人にとっての「臭い料理」といえば、まず俎上にあがるのが「クサヤ」の干物でありましょう。確かにあの臭気は強烈だ。特に焼いたり炙ったりすると、周囲の人が確実に眉をひそめてこちらを振り返る。
 私の会社がある赤坂には「クサヤ専門店」があったりするが、これは裏を返すと、クサヤは「専門店」でしか出せない、という現実を物語っている。普通の店で普通にクサヤを焼かれた日にゃ、クサヤの嫌いな一般客が、モノを食べられなくなるからね。
 でも、実のところ私は結構好きなのだ。
 そもそも魚好き、干物好きでもあるのだが、クサヤには特に干物魚の旨味が凝縮されていて、慣れると、あの臭気すら旨味を増すものだと感じられる。
 伊豆諸島なんかに行くと、必ずお土産物として買ってくる。最近のクサヤ土産は、最初から食べやすいように裂かれたりしていて、結構おとなしいんだよね。臭いもさほどじゃないし、清潔。衛生的。
 あと、これ以外の日本の料理で匂いといえば、琵琶湖の「鮒鮨」の手合いか。アレはアレで臭気というよりも、あのグズグズの半ナマ感が気味の悪さを盛り上げてる。ただ、食べてみれば一応は旨いのだ。やはり日本人にとって和食カテゴリー内の臭さなんて大したことはない。
 だが、いったん海外に目を移すと、この世には実にトンデモないモノがあるのだよ。

■この世にこんなに臭い食べ物があろうとは(中国編)

 私の経験では上海で食った、その名も「臭冬瓜」というものが、まずはスゴかった。
 冬瓜(トウガン)と言えば、あっさりした大振りな瓜というのか、あまり「臭さ」に馴染まないモノのような気がするが、この臭冬瓜というモノは、何だか肉の腐ったモノを周囲にまとい、自らも腐り果て、全体的に崩れて、その周りに腐汁を滴らせてるような、見た目にも凶悪な代物ではあった。
 どう臭いかというと、この冬瓜、そのものずばり、ウンコの臭いがするのである。
 とある上海取材の時に、現地コーディネーターに騙されて食べたのだが、同行したカメラクルーのうち2人は最後の最後まで手をつけられなかった。私は例の回転テーブルを回し、食え食えと言うのだが、あまりの臭気に手をつける前にギブアップという様相なのである。何しろその臭いのテイストは、あたかもテーブルの上に小さなバキュームカーが置いてある、というような風情なのだから。
 味はといえば、ふーむ、不味いとはいわんが、この臭気を我慢してまで食べるというようなものではなかったな。
 だが、その臭冬瓜のさらに上をいくのが、朝鮮半島南部で出会った料理だった。

■この世にこんなに臭い食べ物があろうとは(韓国編)

 私の実体験の中で、最も臭い食べ物のひとつには、韓国の釜山で出会った。その名を「ホンオ・フェ」という。
 エイ料理である。魚のエイを瓶(カメ)の中に詰めて発酵させる。エイは元々内部に自己発酵の消化酵素を持っているのだそうで、その結果として、放っておいても内部から猛烈な発酵が始まるらしい。
 言っておくが、これはものすごく高級な料理すなわち高価な食品である。私は何十万ウォンか払った記憶がある。特に木浦地方などでは結婚披露宴に欠かせないらしい。見た目も何だかピンク色の切り身という感じで、そんなに凶悪には見えない。
 ただ、その香りの強烈さといったら!
 一言でいうなら、この料理はオシッコ……、というより、アンモニアの塊なのだ。
 箸で摘んで、唐辛子味噌を付け、口の近くに持っていった瞬間に、強烈なアンモニア臭が鼻と目を直撃し、咳き込む。目が痛くなる。
 それでも意を決して口に含むと、目から滂沱の涙が止まらなくなる。これはまったく大袈裟でなく、だいたい私にこれを食え食えと勧めた当の韓国人の友人からして、涙を流しながら、咽せながら食っているのだ。「臭い」というようなレベルではない。本当の意味での毒ガスである。文字通りの阿鼻叫喚の風景が目の前に現出する。事実、ときどきこれを食べて気絶する韓国人もいるのだそうだ。
 そこまでして何故にこれを食う? てなもんだが、そこは食文化というヤツなんだから仕方がない。旨いかと言えば、そんなに旨いもんでもない。これを積極的に好む人が世の中にいるとすれば(でも確実にいるのだ)、それこそ脳神経のどこかが麻痺しているとしか思えない。

 私の実体験としては、この「ホンオ・フェ」こそが、世界の臭い料理の堂々ナンバーワンであった。フランスやドイツあたりのチーズにも時折トンデモないモノがあったが、ホンオ・フェに勝てるとは到底思えない。
 ところが、やはり世界は広い。
 さらにスゴいものがスウェーデンには存在するのだそうだ。

■この世にこんなに臭い食べ物があろうとは(スウェーデン編)

 臭気を測る精密機械「アラバスター」というものがあるのだそうだが、ある時、このアラバスターで、世界中のありとあらゆる臭いと評判の料理を測ったことがあるのだそうだ(東京農工大小泉武夫教授の研究による)。
 数字が大きければ大きいほど臭みは強いワケで、たとえば納豆が352、鮒鮨が486となるそうな。クサヤはといえば、焼きたてのモノが1267と、さすがである。
 では、上記のホンオ・フェはというと、堂々の2230。ふむ、なるほどと思う。
 ところが、それをはるかに上回るものが、スウェーデンには存在するのだそうで、その名を「シュール・ストレミング」という。この料理、アラバスター測定値が、なんと驚異の8070を指し示すのだ。あのホンオ・フェの約3.6倍。ダントツの首位である。
 このシュール・ストレミング、いったい何かというと、正体は「ニシンの缶詰」なのだそうだ。
 たかがニシンの缶詰ごときが、何ゆえそんな凶悪なものに化けるかと言えば、理由は「2段階発酵」というものにあるのだという。
 ニシンに少量の塩を加えて大きな容器の中で発酵させる。まずはこれが第一段階。だが、この後、缶詰にされた時から、ニシン君は第二発酵の長い旅に出るというのだ。
 通常、缶詰というのは、密封パッキング後に加熱処理を施し、その結果、長期保存ができるわけだが、この缶詰はその工程をあえてやらない。すると発酵に携わるバクテリアの中でも、凶悪な「嫌気性細菌」がさらなる発酵を缶の中で行うというしかけだ。
 缶詰は当然、パンパンに膨らんだ状態で出荷されるという。
 そのパンパンの缶詰の内部で、邪悪な臭気が身を寄せ、濃縮され、人を襲うのを待っているわけだ。
 そんな状態であるから、この缶詰を開けるのには、細心の注意が必要となる。
 缶詰の外蓋に表示されている「注意 正しい開け方」には次のようなことが書いてあるという。

1. 開缶する前に、缶詰を冷凍室で冷やしてガス圧を下げなさい。
2. 開缶する人は、不要なもの(例えば要らなくなった雨合羽とか)を身にまとうべきこと。
3. 家の中ではなるべく開けずに戸外で開けること。
4. 風下に人がいないことを確かめて開けること。

 これを守らないと、開缶と同時に勢いよく強烈な臭気とともにドロドロしたニシンの発酵物が飛び出してきて、凄絶極まりない状況になるそうな。
 では、味はどうなのであろう。
 小泉教授によれば、日本の塩辛そっくりで、そこに炭酸水を混ぜたような面妖なものであるという。ただそこに伴う臭気。小泉教授の著書から引用しよう。
「銀杏を踏みつぶしたものに、クサヤ汁をぶっかけ、そこにウンチのような臭さが加わり、さらに魚の塩辛の臭いを強烈にしたものが混在したような、まことに奇怪なもの」
 つまりは世にいう「クサいモノ」のオンパレードなのであろう。
 にわかには想像もつかないが、何しろあのホンオ・フェの3.6倍の悪臭なのだ。私には信じられない。この世にそんなものがあろうとは。しかもそれが「食べ物」として認知されていようとは。
 読者諸兄、誰か、この「シュール・ストレミング」を食べたことがいる方はいらっしゃらないだろうか。
 実はこの缶詰、衛生面と、空輸の危険性(気圧の変化で破裂の危険がある)から、日本への輸出が全面的に禁止されているのだそうで、食べるにはストックホルムまで行かなくてはならない。ニシンの缶詰を食べるためだけにストックホルム便に乗るのは、さすがに物好きな私でも、そうそうできるワザではない。現地駐在だった外交官、商社マン、その他その他のスウェーデンコンシャスな方々、誰か私に「シュール・ストレミング」の実体を教えていただきたい。
 ちなみに現地ではこれをパンに塗って食べるのだそうだ。

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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)

「ウェブ進化論 - 本当の大変化はこれから始まる」梅田望夫著 ちくま新書

 今年の2月に発刊された隠れた大ベストセラー。今さらながら読んでみて驚いた。
 ウェブの中の世界では、今、色々なものが根本的に変わりつつある。一例をあげるなら、我々が日々使ってる「Google」は、文字通りの「世界の知の総インデックス化」を狙っていたのだ。それも多面的に。さらにはオール自動化、つまりはテクノロジーの中で。
 あまり詳しく内容には触れないが、この本は、現代のネット社会に少しでも接触している人間にとって、必読の本だと思う。読みやすいし、話の内容も非常に説得力がある。
 ふーむ、しかし、考えるべきは「ならばこれからどうすればいいのか」であるなぁ。
 私個人のことを言うなら、私は「恐竜のアタマ」で商売をしながら(主に本業方面)、そのロングテールの恩恵を受けてきた(自転車部分)と思う。だが、それは一種の偶然でもあって、一連のIT技術がどこに向かうのか知って、そうしてきたわけではない。多くの読者諸氏(=私レベル)にとっては、進化の波に翻弄されながら、偶然やってきたチャンスを、偶然つかむしかないのだ。
 ホントの話、これからのウェブ進化は、人の「個人的なる生き方」にどういう影響をもたらすのだろうか。
(小さな)希望もあるが、(大きな)不安もあるね。当然のことながら。

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「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
*昨年12月発売の最新刊。今回はなぜか「奈良・暗峠」「秩父・八丁峠」「北海道・日高峠」と、峠モノが満載。

「疋田智の自転車生活スターティングブック」ロコモーションパブリッシング
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「大人の自転車ライフ」光文社知恵の森文庫
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この記事へのコメント

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アガタクサイモノ特集、面白いです。自転車とは全く関係ないですね(笑)
シュール・ストレミングですが、以前テレビで見ました。食べさせられたタレントはスゴイ顔してましたねぇ....でも!!パンのようなモノに載せて食べたら美味しい!!と一変。どうやらそういった食べ方が一般的らしく、現地人ですら「そのままでは食べないよ」と苦笑。
ヒキタ様、ここは現地へ乗り込むしか...??(笑)

日時:2006年7月7日


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