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鼻汁の(週刊 自転車ツーキニスト247)
発行日時: 2006/5/28
【週刊 自転車ツーキニスト】"Weekly Bicycle Tourkinist"
鼻汁の247号
■のどが痛い
風邪をひいてしまいましてな。
週末をじっと家に閉じこもっているわけだ。ま、風邪をひこうがひくまいが、どちらにしても家でやることは山積しているわけで、今週末は家から一歩も出まい、と思っていたので、好都合だ……、
なわきゃない。
風邪をひくとアタマがぼうっとして、原稿が書けないのだ。書こうとしても話が先に進まない。おまけに今書いているのが、武田勝頼(信玄の息子)の話で、一般的にそこまで馴染みのない武将、ということで、私としてもスラスラと出てくるわけじゃないところがツラい。
んで、こうして、気分転換に、といっては何だが、メルマガなど書いてるわけ。
風邪なのだ。のどが痛いのだ。肩の関節が痛くて、鼻水が出るのだ、と。
ところで「鼻水」というと、まあまあ普通の名詞だが、「鼻汁」というと、異様に汚い気がしませんか?
「汁」がいかんね。汁が。どうもこの汁という字ってのは、あまりいい語感を持ってない。宮崎県(私の出身県)を代表する郷土料理「冷や汁」なんてのもあるんだが、どこか語感がキチャナイ。極端な話「味噌汁」なんてメジャーな言葉でも、どこかビンボ臭い語感を持ってる。ナンデかね? あろうことかどこか隠微な雰囲気すら漂っているぞ。
どうでもイイ話だが、例の「叶姉妹」ってのが出てきたとき、私は最初「汁姉妹」かと思ってしまった。彼女たちの見た目もあいまって、どうにも何だかエッチなヤカラが出てきてしまったもんだなぁ、なんて思ってしまったよ。
何のこたぁない、エッチなのは私の方ですね。すいまそん。
■大学生と会う
どこでどう調べるのか、私のところにアプローチしてくる大学生と会うことが結構ある。
ひとつには「テレビ局に就職したいんで」という後輩学生の就職相談で、もうひとつはなぜか「自転車のヒキタさんに会ってみたい」というもの。私はこういうときには、なるだけ時間を空けて会うようにしている。
以前から学生と会うのは基本的に好きなのだ。若い人の雰囲気に触れてみたいというのは勿論だが「だはは、キミキミィ」などと先輩風を吹かしてみたいのかもしれん。
だが、昨今、そういう大学生と会って、イライラさせられることが、ものすごく増えた。私が齢をとって、随分と価値観に相違ができたからかもしれない。だが、それだけとも言えない何かがあるのだよ。
一言でいうならば、彼らの「オレに何か聞きたいことがある?」という感じ。あれに辟易してしまうのだ。
不思議でしょ? そもそも彼ら自身が望んで私に会いに来る、というのに、実際に会うと、奇怪なことに、彼らは基本的に黙っているのだ。
私の方がサービスしてやらなくてはならない。面白いエピソードで話題を繋いで、私の方が質問をして、それに答えていただいて、それではじめて会話が成り立つのだ。
最後に店代を私が払って、基本的に彼らは気持ちよく帰っていくんだが(だと思ってる)、私の方は何だかドッと疲れてしまう。
私はそういうサーヴィス精神が旺盛な方だから、望まれて会う以上、楽しい会話にしたいと思う。だが、就職相談にしても、何にしても、なぜこちらから一方的にエンターテインメントにしつつ、説明してやらなくてはならないのだ。「で、結局何を聞きたいのかね?」と喉まで出てくることはしばしばだ。
■考えられる二つの要因
仕事柄、私は思うが、インタビューというのは「答える方」よりも「聞く方」の方が、圧倒的に気を使う。私の場合、両方が仕事となっているので、そこのあたり非常に分かるのだが、そんなことは日常を普通に生活していれば、実感として当たり前だろう。
ところが、最近の大学生と会うとき、私はしばしば、その「聞き出す側」にまわらなくてはならないのだ。場合によっては「聞き出しておいて、自ら答える」と、一人で二役を担わなくてはならない。気がつかれる。
正直なところ、こっちは忙しい時間を割いて来ているというのに、その上で、こちらが気を使い、神経をすり減らしている。いいツラの皮とはまさにこのことだろう。
何なんだろうな、この感じ。
実はこれとまったく同じような内容を、つい最近、同年代の新聞記者、学者、雑誌編集者、と3連続で聞いたことがある。3者3様に皆、私と同じことを感じていたというのだ。
今朝の読売新聞に、日産ニート……、じゃなかった、ニート(NEET)についての結構大がかりな分析調査が載っていた。私はその詳細なレポートを読みながら、ふと件の大学生たちを思い出していた。
別段、彼らがニートであるわけじゃない。どちらかというと明るい、屈託のない若者たちだよ。
だが、その根本で共通するのが、他人とコミュニケートする能力の圧倒的な劣化だ。彼らは自らのサークルの中でもコミュニケーションをとるのに苦心している。ましてや別の世代の人間と対話をするというのは、苦手中の苦手なのだ。だから、私のような人間と会うと、何を言いだしていいか分からず、相手が喋るのを待っている。
だが、それにも増して、もう一つの要因があると思う。
以前「他人を見下す若者たち」(速水敏彦著 講談社現代新書)の書評として、このメルマガでも取り上げたような気がするが、最近の若者に流行る、何だか意味の分からない「根拠のない全能感」。カギはここに確実にある。
結果として出てくるのが、冒頭に書いたような「オレ様に何か聞きたいことがある?」という調子だ。
ここがよく分からない。
こちら側としては、有り体に言うと「アナタ様に聞きたいこと」なんて何もない。本来、アナタの方が私に聞きたいことがあって、この場に来たはずなのだ。
テレビってどんな職場なんですか? こういう番組をやりたいんですが、どのコースに進めばいいんですか? 就職試験はどういう準備をすればいいんですか? 自転車行政をやりたいんですが、やっぱり国交省に入った方がいいんですか? と、そういうことを私に聞きたかったんじゃなかったのか。
だが、彼らに共通して見えるものは「こんなオレを見て。有能なオレを見て。アナタもきっとこのオレに何かをしてくれるんでしょ」という根拠のない自信、そして、期待だ。
だが、そういう自信や期待に見合うだけの中身(または中身の原石)が、彼らにあった例は、一度たりともない。
何が彼らをそうさせてしまったのか。
分からないようでいて、実は明確に分かる。親が悪い? 当然だ。私はかなり根の深い問題だと思っている。だが、もう言うまい。ヴィルス君のせいで、アタマがクラクラしてきたから。
あ、そう。もう一つ言えることがあったんだ。残念なことに、そういう学生には東大生の割合が圧倒的に多いのだよ。これは私の後輩だから(会いに来る学生の中で割合が多い)というだけじゃない。一般に「いい大学」と呼ばれる大学の連中ほど、そういう率が高い。
もう書くこと自体に疲れてきた。
よって、だからどうだ、とは言うまい。事実としてそうだというだけだ。
■いかーん
咳まで出てきた。もはや本格的な風邪だ。
それなのに目の前には今日中に書かねばならない原稿が、まだあと3本もある。部屋を暖かくして、汗をかきながら、パソコンに向かっているのだが、それも悪く出たとしか思えない。
それにしても、目の前に原稿の〆切が迫っていると、他の文章を書くのがなぜこんなに楽しいんだろうか。昔からそうなのだ、オレ。試験前になると必ず部屋の片づけを始めるオレ。何らの進歩が見られない……。
学生のことを論ってる場合か、オレ。
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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)
「武田勝頼(1)(2)(3)」新田次郎著 講談社文庫
そういうわけで、仕事の必要に迫られて読んだ本。ところがコレが傑作だった。歴史の狭間に消えた男、武田勝頼は、アタマの単純な猪武者というわけじゃなかった。悲しい男だよ、彼は。詳しくは書かないが、長篠の戦いで信長の鉄砲隊に負けるところなんざ「猪武者」どころか「思慮深い武将」だ。何もかも分かっていながら、そうせざるを得なくて出撃する。万に一つの可能性にかける。そういう悲しみというのは、人間であれば誰しもあるものだ。
最初に出てくる武田家来衆の面々の名前さえ覚えれば、あとは1、2、3巻、一気読み。面白かった。
生前、新田次郎は息子の藤原正彦にこう語っていたそうだ。「一気に読めるという言葉こそが、作家にとっての最高の褒め言葉なんだよ。おまえの文章はそれとは言わないが、それに近い資質がある」と。
「若き数学者のアメリカ」(新潮文庫 コレは大傑作。オススメ)を上梓する前に若い藤原に対して語った言葉だ。
お茶の水女子大の数学科の教授を長年つとめた藤原正彦だが、遺伝なのであろうか(母親は同じく作家の藤原てい)文章に長けていた。エッセイに抜群の冴えを示した。
「国家の品格」(新潮選書)で200万部達成の最短記録を塗り替えたのは、ごく最近の話だ。
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「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
*昨年12月発売の最新刊。今回はなぜか「奈良・暗峠」「秩父・八丁峠」「北海道・日高峠」と、峠モノが満載。
「疋田智の自転車生活スターティングブック」ロコモーションパブリッシング
「自転車とろろん銭湯記」ハヤカワ文庫
「大人の自転車ライフ」光文社知恵の森文庫
「自転車ツーキニストの憂鬱」ロコモーション・パブリッシング
「日本史の旅は自転車に限る!」木世(えい)出版社
いずれも好評発売中。ネット内でのご注文はこちらにどうぞ。
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【自転車通勤で行こう】
http://japgun.infoseek.ne.jp
バックナンバーはこちら。
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