将軍様のMTBの(週刊 自転車ツーキニスト220)
発行日時: 2005/12/9
【週刊 自転車ツーキニスト】"Weekly Bicycle Tourkinist"
将軍様のMTBの220号
■将軍様のマウンテンバイク
東京新聞(12月6日付)の外報面に興味深い自転車記事が載った。
なんでも北朝鮮製のMTB「モランボン」号が、北朝鮮国内で大ヒットしているのだそうだ。写真を見ると「あー、絵に描いたようなMTBルック車ね」という感じだが、労働新聞(朝鮮労働党機関紙)も「デザインが良く、好評な自転車」だとして大きな特集を組んだのだという。
値段は日本円にして1万円。我々としては、またまた「なんだ、やっぱりMTBモドキか」という値段ではある。が、現地では平均的労働者の一ヶ月分の給料より高い。それなのに売れている。そこが画期的なのだそうだ。
売れている理由の一つは、将軍様のご推奨だ。
金正日総書記は、この自転車工場を視察して「交通問題解決だけでなく、生活を便利にし、健康にも良い」として、普及と生産拡大を指示したのだという。人民は「そこまで人民のことを考えて下さる偉大なる将軍様マンセー」とか言いながら、この自転車を買ったのだろうか。
ただし、平壌の市民だけだ。
工場の関係者は「すでに販売1000台を突破。年末まで2万台の注文がきており、在庫も底をついた」と胸を張っているらしいが……、1000台か。北朝鮮の人口はおおよそ2200万人いるのだ。地方では相変わらず厳寒の中の飢餓が続いている。
■新たな外貨獲得のために
ご存じの通り、北朝鮮国内を走る自転車は、日本などから輸入した(「盗んだ」とまでは言わない)中古品がほとんどだ。境港などから大量に出ていくママチャリを見るとおり。
その結果、世界に冠たる日本のオリジナル歩道専用自転車「ママチャリ」は、日本の次には北朝鮮で普及しているという奇妙な事態になった。だから北朝鮮の一般市民にとっても自転車とはママチャリのことなのである。または大昔の運搬車。そこに現れたMTBはすごく新鮮に見えたのだろう。労働新聞が「現代的なデザイン」などと書く理由がここにある。
工場は中朝合弁で造ったのだという。まあそうだろう。現在の北朝鮮にはフレームのチューブを作る技術がないし、中国の力を借りるしかない。だが、この工場は、国内販売の好調を受けて「次は日本や韓国に輸出する」と言っているのだという。
やめた方がいい。そりゃ調子に乗りすぎだ。
「1万円でMTBモドキ」では、現在のホームセンター販売価格とさほど変わらない。北朝鮮では斬新なデザインかもしれないが、我々の目からはただの「ダッセえ子供用自転車」だ。日本の消費者は品質に厳しいし、何より日本では将軍様の威光が通じない。
それにしても、北朝鮮は時々奇妙なモノを作るなぁ。
すべてが将軍様の気まぐれなのだ。彼の言葉は絶対だから、正日クンが「アレはこうだ」と提案すると、人民は他をなげうってそこばかりに猛進してしまう。トウモロコシの時も、ジャガイモの時も、偽米ドルの時も(これは「恐らく」)そうだ。結果、経済はどんどん疲弊する。
今回のMTBがそうでないことを祈るばかりだが、普通の予想としては、これまたそういうことになるだろう。農地は荒れ放題となり(地元の農民が工場に駆り出されるから)、結果としてMTBモドキの大量在庫だけしか残らない、ということになる。
だいたい多くの国民が飢えている国で、自転車にサスペンションが必要だろうか。北朝鮮のお粗末な道路事情には合ってるのかも知れないが、もっと別のところに力を入れた方がよろしい。
■「天下を獲り損ねた男たち」
例の拙書最新刊なんだけど、1巻に較べて、随分反応がいいのだ。「面白かった」というメールが結構寄せられてくる。ありがとうございます。ヒキタ感謝感激です。
このままジワジワと売れてくれればと思うんだけど、ご承知の通りの出版不況の中、書店に並ぶ期間が、最近はかなり短いのだ。現在の分を売り切ったらそれでお終い、という書店も多い。
前作と並べて、末永く置いていただければと思うんだけど、私がベストセラー作家でもない限り、なかなかそうも行かない。赤坂(私の職場近く)の文教堂では平積みタワー状態になっているんだけど、それもいつまで続くことやら。
私としてはここのメルマガ読者だけが頼りです。よろしくお願いします。真面目な話。
あと、昨日のメルマガにも書きました通り「メルマガ・オブ・ザ・イヤー・2005」の投票も出来得ればよろしく。いや、ずうずうしいとか、厚かましいとか、臆面もないとか、自分でも分かってはいるんですけどね。
http://melma.com/contents/moy2005/
私のメルマガは、
タイトル 「疋田智の週刊自転車ツーキニスト」
マガジンID 「m00016703」
であります。
■「萌え」について
それは違うぞ、とのメールがありました。
本来の「萌え」とは「心の底から溢れ出るような『愛おしい』『愛でたい』と思う気持ち」ということを指すのが正しいのだそうで、決して「幼女云々」の概念ではない、と。だからこそ人工的なもの(ロケットとか車両とか)にも「萌え」があるのだそうだ。
なるほどね。
この指摘は「萌え」の言葉の発生から10年というもの、ずっと「萌え概念ウォッチ」をしていた方からのもので、文面もきちんとしており、かなり信憑性があるものと考えられる。彼によると昨今の「萌え」の意味の混乱は、マスメディアが殊更に「おかしなオタク」のようなものを取り上げた結果、こうなってしまったもの、だということだ。
となると「萌え」の解釈、案外、私の従来の解釈の方が割合正しいということなのだね。
彼の文章はこのような話で終わる。
このように苦々しく思う一方で、「萌え」の定義は100人集まれば100通りの定義ができるとも思っていますので、「萌え」の定義は誰かがするものではなく、それぞれの個人が心の中で定義するものだとも言えます。(人の数だけ「正義」があるのと同じです)
要は、「頭で考えるな、心で感じろ」というわけですね。
ふむ。「萌え」、深し。
ただし、元来の意味は「草木が青々と芽吹く様子」なわけで、私としては、どうもそのあたりが引っかかるという気も、一方ではするんだけどね。
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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)
*今回は二つ自転車本を。
「大人のための自転車入門」丹羽隆志・中村博司著 日本経済新聞社
ベテランサイクリスト2人による文字通りの「大人のための入門書」。
丹羽氏は各地の「自転車ガイドブック」などでお馴染み、世界各国を自転車でアドベンチャーするサイクリストで、中村氏はあの「シマノサイクルセンター」の事務局長。二人の共著ときたら、これはもう「違いの分かる男による、自転車愛好本」となるしかないわけだ。
内容はといえば、ちょっと申し上げにくいコトながら、拙書「自転車生活の愉しみ」「大人の自転車ライフ」とかなり被ってくる部分がある。このジャンルの本なのだから当たり前のことではあるが。
だが、拙書に較べると、より誠実な「自転車マニュアル」となっていて、分かりやすく親切。特に「健康」「実践」が充実していて、そのあたりが私の本と若干違うところだと言えよう。私の本が「民放」だとしたら、この本は「NHK」だ。版元もお堅い日経新聞社だし。だからというべきか、割合、年輩の方に向いているのではないかと思う。
「自転車で旅をしよう 初めてでも楽しめる週末ツーリングのすべて」自転車生活ブックス編集部 (編集) ロコモーションパブリッシング
あら、表紙が「萌え系」だ。
こちらもまた分かりやすいマニュアル本だが、ツーリングに特化したのが、昨今では新鮮であるといえる。ビジュアルが多くて、見ていて楽しい。カタログ本としても結構、萌え(←使い方あってる?)。
新興出版社「ロコモーションパブリッシング」は、元BiCYCLE CLUB編集長が副社長・編集人を務めているんで(社長はあのテリー伊藤氏)今後とも「自転車」には力を入れていくのだという。拙書「自転車ツーキニストの憂鬱」もこの版元から出てるしね。
実はこの版元のこのシリーズ(自転車生活ブックス)では、私も今後、一冊出す予定。表紙が「萌え系」になるかどうかは不明ではありますが。
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「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
*25日発売の最新刊。今回はなぜか「奈良・暗峠」「秩父・八丁峠」「北海道・日高峠」と、峠モノが満載。
「自転車とろろん銭湯記」ハヤカワ文庫
「大人の自転車ライフ」光文社知恵の森文庫
「自転車ツーキニストの憂鬱」ロコモーションパブリッシング
「日本史の旅は自転車に限る!」木世(えい)出版社
いずれも好評発売中。ネット内でのご注文はこちらにどうぞ。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url/index=books-jp&field-author=%E7%96%8B%E7%94%B0%20%E6%99%BA/249-6371737-5693951
【自転車通勤で行こう】
http://japgun.infoseek.ne.jp
バックナンバーはこちら。
http://www.melma.com/mag/03/m00016703/
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