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ここは地の果てアルジェリア 技術移転奮闘記

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ここは地の果てアルジェリア【第45号】

発行日: 2008/1/17

 


                             ┌──────────┓
                             │ 第45号 2008.01.17  │
┏──────────────────────┴──┬───────┤
│    ここは地の果てアルジェリア  技術移転奮闘記    │   永尾良一   │
┗─────────────────────────┴───────┛

│ ☆私こと普通の日本人が、スイスの企業に雇われ外人部隊となって
│  アルジェリアの工場建設現場に行き、現地の生徒を一から教育する
│  ノンフィクション物語です。

│ ☆上司も同僚も外国人、生徒はもちろんアルジェリア人、
│  日本人は私たった一人でした。
│ 
│ ☆アルジェリアでは、お客様は神様であるという考え方はあまりない。
│  お客の欲しがっているサービスを提供しているのだから、
│  文句があるなら買わなくて結構、と言った感じである。
│  
┗─────────────────────────────────…
 *:...:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:...:*:..:*:..:*:..:*:...:*:..:*

┏──────┓
│ 再び授業へ │
┗──────┛………………………………………………………………………
 日本人は若く見られる。その頃の私は特に若く見られた。
まだ30歳前で、採用時にも年齢の最低限といわれた。そのとき職業にも最低
年齢というものがあることを知った。

さて生徒の方は、大半が20代前半で、たまに10代と20代後半の者が何人
かいる。

体格はさまざまだが、皆私より大きい。中には髭を伸ばし、老けたおじさんと
いった風貌の者もいて、生徒たちより私の方が若く見えるため、しばしば同僚
か弟のように思われた。

それは親近感を持つには良いが、一方でけじめが付かなくなる。すでに授業の
様子は何度か述べたが、授業の毎日がエピソードの連続である。教室に入ると
きはあたかも虎の檻にでも入るような覚悟が必要で、油断して背中を見せると
喰われてしまうと思うほどの緊張感がある。

教室内は異様な匂いがする。それは羊の肉を食べ、羊の革や絨毯に囲まれて暮
らす彼らの民族的体臭といっても良いのだろうが、はじめの頃は我慢できず、
まず窓を開け放ってから授業を始めた。

興味深いのは、その二年ほど前に東部にいたとき、その臭いはもっときつかっ
たが、近頃では朝からシャワーを浴びてくるのか、ほのかな石けんの匂いが漂
う生徒もいる。この国も発展したと思う。

フランスではこんな冗談がある。

「ある日ドイツ人とフランス人、それにアラブ人が羊小屋に誰が一番長くいら
 れるか我慢比べをすることになった。

 まずドイツ人が挑戦した。一分と経たず出てきて言った。
 『いやー臭い臭い、とても堪えられない』
 次ぎはフランス人が入る。これもすぐ出てきた。

 最後にアラブ人が入る。(ここではアラブ人とはアルジェリア人、モロッコ
 人、チュニジア人などを指す)三分経ったが出てこない。五分経ったら羊達
 が出てきて『メー、メー、臭くて小屋にいられないよ』と鳴いたそうな」

フランス人はよく隣人をからかう。
その話を生徒たちにしたが、彼らも笑っていた。

それはさておき、まず授業の最初に生徒たちと握手とともに挨拶する。
が、いろんな握手がある。手が痛くなるほどぎゅっと握るものがいれば、なか
なか手を離さないのがいるし、人差し指を使って私の手のひらをくすぐるもの
もいる。握った手を振るのもいれば何の力もない者もいる。

挨拶が済むと授業を始める。教科書を開いて内容を一瞬のうちに理解し、しか
もそこに書いてないことを加え、違った切り口で解説する。

教科書を読んではいけない。それを読まない理由の一つに、生徒が飽きないよ
うに、また単に教科書通りの話であれば、講師の話は必要ない。

それでもやがて皆好き勝手なことを始めるのである。解説は丹念に区切って最
低三回繰り返す。生徒の質問にはていねいに全部答える。いま解説した部分を
生徒が聞いてなかったからといってその質問を無視してはいけないし、怒るの
はエネルギーの消耗以外のなにものでもない。

それはやがて講師の教え方が悪いとか、分かりづらいということになって検
査官の耳に入り、最悪は講師が帰される。馬鹿な質問を笑ってはいけないし、
まじめに対応しないと生徒の信頼を失う。

むしろいつもほめて勇気づけなくてはならない。

「ムッシューこれはどうしてそうなんだ」

「うんそれに気づいたか、いや、それはとっても良い質問だ。じつは・・・」
となるが、別に大した質問でもない。
私の話を良く聞いていれば絶対出ない疑問である。

ただそれを言うと生徒もやる気をなくすか反発して喧嘩になり、授業が進まな
い。以前別の現場では、通訳と講師の二人一組で授業をやっていたが、便利な
ときもあった。

二人の役割が分担できた。生徒に対して直接喋るのは通訳だったから、講師は
生徒と一歩距離を置くことができたし、一人が怒ってももう一人がなだめるこ
とができた。しかし今回はそれがない。通訳を介するもどかしさはないが、三
倍忙しくなる。あっちこっちから質問が来て、それで授業時間の半分が過ぎる
ときがある。

ある時は怒鳴り、一転ある時はにこにこしてほめてあげる。ある生徒を叱った
かと思えば次の生徒には優しく説明し、そのとなりには静かにしろと大声で怒
鳴る。

しばしば本当に腹を立て、備え付けの木製コンパスで机をガンガンたたき怒り
狂う。虎のように私は荒れ狂い、廊下にまでその音が響きわたる。

いつぞやは何事かと同僚が覗きに来たことがある。生徒もこの時ばかりはただ
ただ耳を塞いでじっと堪えていた。しかしいつまでも怒っているわけにはいか
ず、かといっていつもにこにこしてられない。二重三重の人格が必要だった。

それが日常化したある日、生徒たちがいった。

「ムッシューは自分が俳優と思っているんじゃないか、どうしてころころ性格
 が変わるんだ。あんたは芝居ばかりやってるがアラン・ドロンじゃないぞ」

「性格は変わってない。オレはいつもオレだ。ただみんなの態度によってこち
 らの対応が違うだけだ、芝居なんかしていない」

しかし実は授業の中でも外でも、ここでの生活自体かなり芝居がかっていた。



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─《★編集後記★》──────────────────────────
人生とは芝居であり劇場であり、舞台である。
人は役割を演じ皆それぞれが主役である。

なんてどこかの偉い役者が言ったような気がするが、ここでの生活が、まさに
そうであったような気がする。

そして私も自分の劇場で主役を演じるのである。

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最後までお読みくださりありがとうございます。
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