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ここは地の果てアルジェリア 技術移転奮闘記

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ここは地の果てアルジェリア【第27号】

発行日: 2007/9/6

 
                             ┌──────────┓
                             │ 第27号 2007.09.06  │
┏──────────────────────┴──┬───────┤
│    ここは地の果てアルジェリア  技術移転奮闘記    │   永尾良一   │
┗─────────────────────────┴───────┛

│ ☆私こと普通の日本人が、スイスの企業に雇われ外人部隊となって
│  アルジェリアの工場建設現場に行き、現地の生徒を一から教育する
│  ノンフィクション物語です。

│ ☆上司も同僚も外国人、生徒はもちろんアルジェリア人、
│  日本人は私たった一人でした。
│ 
│ ☆ラマダンの休暇中ロンドンで、実家に連絡をると、訃報を聞かされる。
│  やっとの思いで帰国した。
│  
┗─────────────────────────────────…
 *:...:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:...:*:..:*:..:*:..:*:...:*:..:*

┏─────────┓
│ ポーからの出発1 │
┗─────────┛………………………………………………………………
 結局ラマダン休暇は、私の帰国休暇になってしまった。

 さてアルジェリアの仕事に戻るには、往復航空券がロンドン・成田間だった
ので、何の用もないとはいえ出発地のロンドンを経由してパリに飛んだ。
だがパリでは手荷物が到着していない。

私も含め日本人三人分が出てこない。特に急ぎはしないが、空港で足止めされ
るほど無駄なことはないと思っている。

手荷物クレームのため受付に行くと、すごい美人のフランス人がいた。
これだと怒鳴るわけにもいかんなと思う。おもむろに話を切り出す。

「うちら三人、ロンドン経由で日本からきたんだけど荷物が来ないんだよね」
と事情を説明する。

「それは大変、すぐ調べてみましょう。取りあえず、喫茶店のクーポンを
 差し上げますからお茶でも飲んでいて下さい」
と丁寧に対応してくれる。

「なに、お茶が出る。それは悪くないな。
 ところで私達は機内で大したものを食ってない。
 世界でも一流の航空会社だから、まさかこんな事が起こるとは思わなかった」
受付嬢は黙って聞いている。

私は続けた。
「ああ〜!花の街、おお〜!グルメの街、あこがれのパリにやってきて、
 最初の出来事がこれだとはもう信じられない!
 お宅の会社を信じていたのに・・・
 どうしよう!
 でも、少なくとも君の航空会社を選んだぼくが、
 間違ってたなんてことだけは言わないで欲しい」

そのあたりになると私もアルジェリアで鍛えた、かなり芝居がかった話し方に
なり、オーバーなことこの上ない。

彼女は笑いだし
「あなたもうまいことおっしゃるわね。私も何も言えないわ。
 取りあえずはこれでがまんしてね」
といって食事のクーポンをくれた憶えがある。

さて、八百キロメートル離れたピレネー山麓の街、ポーには、その日飛行機で
行ったと思うが、今では思い出せない。予約しておいた真っ赤なホンダの
シビック、三ドアサンルーフ付きのヨーロッパ仕様車を受け取り、それまで
一年間ほど間借りしていた大家の地下室の荷物を全部積み込んだ。

その頃まだ日本車はフランスでは珍しく、サンルーフなどもシビックでは初め
て見た。初めて買った新車の匂いとフランスでの日本車はシックで、乗ってい
ても嬉しくて鼻が高かった。

今では珍しくもないのだろうが、それから四年以上経ったパリでも、妻がその
車をとても気に入って、そのためすぐ運転免許を取得し、
ファッションデザイナー『ジャンシャルル・ド・カステルバジャック』の職場
まで、数度の駐車違反をものともせず、毎日車で通ったぐらいだ。

ポーの荷物を積み込んで、これでフランスとも当分お別れだなと思った。後部
座席を前に倒しトランクルームとして、本、衣類、その他全てが丁度載った。
助手席の足下の空間も利用し、荷物を詰め込んだ。
ただし運転席と助手席のシートには空間を残し、助手席は横になるための場所
として確保した。

これから延々千五百キロの一人旅が始まるかと思えば気が遠くなりそうで、
ハンドルを握る前に大きく深呼吸をして、出発の決心と共にアクセルを踏み込
んだ。

旅程はここから二百キロメートルほど離れたトゥールーズを経て、ピレネー山
中の観光小国、アンドラからスペインに入る。地中海側のバルセロナまで南下
し、海岸に沿って、ジブラルタル海峡を見渡す港町まで一気に走る。

フェリーで対岸、アフリカ側の町セプタに渡る。町外れにスペインとモロッコ
の国境が待ちかまえ、そこを過ぎるとモロッコ横断である。アルジェリアとの
国境まで約六百キロ、陸の国境は二つある。

モロッコ、アルジェリア双方の国境を通って、その後また二百キロ走り、オラ
ンに着く。旅程をざっと話しただけでも、うんざりする。せいぜいアンドラか
らバルセロナしか行ったことはない私にとっては、初めての道ばかりである。

ポーを後にしたのはその日の午後だった。新車の慣らし運転では、回転数を制
限されているが、五速では時速120〜130キロくらいになるので、のろの
ろ走ることはない。ただフランス、スペインとも、これは速くも遅くもなく、
高速道路ではむしろやや遅いが、私には丁度良い。

トゥールーズでは町の外環道路から、ピレネー山脈のまっただ中にあるアンド
ラへの道に挑戦する。アンドラ国境ではフランスの警官に止められた。

「良い車だな。どこで買った」

「ポーで買いました。
 スペイン、モロッコからアルジェリアに帰るところです」
パスポートとそこにあるアルジェリアのビザを見せながら話した。

「ところでこの車の支払はどうした」
と訊ねられる。

「もちろん小切手で払いました」

「残高不足ならどうするのかね」

「それは毎回小切手にメモして、確認していますから大丈夫です。
 それ以上のことをここでは証明できませんが・・・」
まじめに答えることが大事で、理論的かどうかは二の次だと思った。

「まあ良い、ボン、ボワイヤージ」といって解放してくれた。

アンドラは観光国で、一流のホテルがところ狭しと建ち並び、目抜き通りには
土産物店が軒を連ねる。しかし深夜ではもうどの店も閉まっている。
ひっそりと静まり返った街並みを抜けるのに、五分とかからない。

十分も走ると、国境を抜けスペインに入った。
寝静まった繁華街を一人通り抜けることほど寂しいものはない。あの有名な町
バルセロナも迂回して、先を急いだのは夜中の二時か三時頃だった。さすがに
少し疲れた。道端に停め三時間ほど寝たろうか。


 *:...:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:...:*:..:*:..:*:..:*:...:*:..:*
─《★編集後記★》──────────────────────────
 これは一世一代の大旅行でした。しかも平坦な旅行ではなく、飛行機を乗り
継ぎ、車に乗り換え自分で運転してアルジェリアに戻るのですが、せっかくの
地中海沿岸の街並みも楽しめなかったのは残念です。

 しかしこのときほど日本車の新車の乗り心地の良さに感謝したことはありま
せん。何よりも信頼性があって時間さえかければアフリカ、ヨーロッパ中が走
れそうです。

まだ旅は始まったばかりで、この大移動の序章でしかありませんでした。

……………………………………………………………………………………………
最後までお読みくださりありがとうございます。
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編集・発行 永尾良一
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