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西洋思想の散歩道 No.144

発行日: 2005/12/24

◆◇◆「思想の世界」Vol.2◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
No.144                           2005.12.24
         西洋思想の散歩道
                   -A Promenade of Western Thought-    
                               K. Wiseman 著
                           Assisted by Mai O. 
◆◇Presented by K`s Community◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



読者の皆さんへ:Merry Christmas to you! 

 師走の月に入り、急に寒くなって、例年より早く雪が降ったりしましたが、
お変わりありませんか。

僕の住む街では、今年は目抜き通りにずっとクリスマスイルミネーションが
飾られ、凍てつく夜空を癒してくれています。今年は青色ダイオードの使用
で青い光が目立ちます。イルミネーションとしては少し寒い色合いではあり
ますが。

 先日、朝日新聞の「天声人語」で、今年は「崩」の年であったと語ってあ
りましたが、本当にそうだな、と思いました。そして、年末の悲惨な事件も
含めて、人間の欲望がむき出しになった年だなぁ、と思い、今年は「欲」の
年だったかも知れないと思いました。社会が疲弊してくると、人間の「欲」
むき出しになります。政治・経済・社会の全般に渡って「欲」が横行したの
ではないでしょうか。

 人間が本質的に「欲求」をもつ存在であることは大事にしなければならな
いことですし、禁欲主義がいいとも思いませんが、むき出しの欲求は滅びの
要因ですね。人類は全体として滅びに向かっているのかなぁ、という危惧を
抱かせるような年でした。

 ともあれ、今年のクリスマス、静まって過ごしたいなぁ、と思っています。
良いクリスマスと年末年始をお迎えください。

 では、今号は「考えること・思考の科学」の(3)です。
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第5章 知識と言語
          =================================
         1.考えること・思考の科学(3)
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 プラトンの弟子でありつつも、極めて現実主義的な思考をしたアリストテ
レスは、現に経験している世界が実在のものであることを深く認識していま
した。

現実の世界を越えたイデアの世界こそが真実であると主張したプラトンとは
異なって、アリストテレスは、経験している世界は、単なるイデアの虚像の
ようなものではなく、紛れもなく現実に実在する世界でした。

 しかし、プラトンと同じように、真の認識は、見たり感じたりすることに
よって得られるのではなく、その事物の原因や起因を知ることによってのみ
得られると考えていました。原因や起因を知ることは、事物の背後にあるも
のや事物や現象に隠されているものを考えることですから、真の認識は客観
的・理性的に考えることによって得られるというのです。

アリストテレスにとって、「考える」ことは、その原因や起因を知ることか
ら始まるのです。そして、その根本的な原因や起因に到達するためには、人
間は一定の論理的法則、つまり、一定の思考の過程に従う必要があると考え
ました。

人が物事を考える時、ただむやみやたらと考えても真実に到達することはで
きないのであり、正しい思考の過程を踏むことによって初めて正しく真実に
到達できると言うのです。

その思考の過程を論理的法則といいますが、アリストテレスは、その論理的
法則として「三段論法」と言われるものを見出しました。アリストテレスの
「三段論法」は、一般の公理から出発し、個にもどる論法で、こうして、個
を正しく認識できると考えたのです。欲引き合いに出される三段論法の例と
しては、次のようなものがあります。

すべての人間は死ぬものである。
ソクラテスは人間である。
従って、ソクラテスも死ぬ。

 すべての人間が死ぬものであることは、無数の経験から証拠立てることが
できる「公理」です。ソクラテスもひとりの人間ですから、この公理の「す
べての人間」の中に含まれ、ソクラテスという個人も死ぬことの中にあるの
です。

 このように、「一般的公理」から始まって個々の事物に至る真実を導き出
す論法を「演繹法」といい、アリストテレスは、この演繹的三段論法を用い
てあらゆる学問を体系化しました。今日の学問分野の制定や体系化は、ほと
んど、アリストテレスの学問体系の下にあるといっても過言ではありません。

 ソクラテスは、個々の事物から初めて「公理」を導き、その公理によって
真理に至る機能的な思考の過程を示しましたが、アリストテレスは、公理か
ら初めて個々の真実に至る認識方法を提示したのです。アリストテレスは、
その実例を数多く挙げています。

 現代日本の中学校数学で、私たちは「帰納法」や「演繹法」の概念に接し
ますが、それらは数学的処理方法以上に、論理、つまり、思考の過程を示す
道筋に他ならないのです。僕が中学生の時には、残念ながらそこまで教えて
くださる先生がおられませんでしたが、数学をものの考え方の筋道として示
されれば、数学はもっと面白かったかもしれません。

アリストテレスの三段論法は、ある意味で、現にある世界を説明し、個の真
実を認識する上では、全く完璧な論理方法だと言えます。近代科学の方法は、
多くの実験や観察をすることによって一般的公理を見出すという方法論を採
りましたので、個々の科学的発見は、公理に適合するという予測から導き出
される個々の真実の発見でもありました。その意味では、科学の手法はアリ
ストテレスの論理方法に従って進められているといっても過言ではないでし
ょう。アリストテレスが「不動の第一動因」という概念で超越(神)を考え
たのも、その論理によるのです。

すべての物体は運動している。
運動のためには、外から力が働かなければならない。
だから、運動の最初は、それ自体は動かないけれど他を動かす力でなければ
ならない。不動であるが運動の最初の動因がなければ、すべてのものは運動
できない。

というのです。それが彼の超越(神)理解でした。そして、この理解が、や
がては近代のニュートン力学を生んでいったのです。論理の方法としては、
近代になって弁証法というのが出てきますが、弁証法については、またその
時に、述べることにいたしましょう。

 しかし、アリストテレス以後、ものの考え方の筋道としての論理学が直線
的に発展したのではありませんでした。ソクラテス、プラトン、そしてアリ
ストテレスは、考えの基準に「理性」(ある意味で合理的理性といってもい
いのですが)を置いていましたが、後期ギリシャ哲学のエピクロスなどは、
真理の判定基準として「感覚」を置くことに戻りました。

結局、「考える」ことの基準として信頼できるのは、果たして理性なのか、
それとも感覚なのか、ということです。これは、実は古くて新しい問題でも
あります。

それで、エピクロスやストア派などの後期ギリシャ思想家たちの考えを、次
回、もう少し見ることにしましょう。
   ============================================================

☆クリスマスは、やはり、いいですねぇ。毎年、ひとりで静かに迎えますが、
 讃美歌の中で「さやかに星はきらめき」というのがあって、今年はこの曲に
 耳を傾けようか、と思っています。闇から光への転換がメロディの中で見事
 に行われています。

☆降り積もっていく雪をぼんやり眺めていました。以前、札幌に住んでいたこ
 とがあって、その時、降り積もる雪がブルーに淡く輝く現象を見たことがあ
 ります。一晩中見とれていました。勿論、次の日から雪かきにうんざりしま
 したが。

☆ゆっくり考える時間がほしいなぁ、とつくづく思います。いろいろなことを
 準備不足でしなければなりませんので、不満足感が蓄積します。お正月、せ
 めてのんびりしたいところですが、元旦から予定が入ってしまいました。

☆寒さが厳しいですねぇ。近所では風邪も流行っていますし、インフルエンザ
 も悪質なようです。ご自愛のうちにお過ごしください。良いクリスマスと年
 末年始を。ではまた。

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