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西洋思想の散歩道 No.140

発行日: 2005/7/9

◆◇◆「思想の世界」Vol.2◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
No.140                           2005.07.09
         西洋思想の散歩道
                   -A Promenade of Western Thought-    
                               K. Wiseman 著
                           Assisted by Mai O. 
◆◇Presented by K`s Community◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



読者の皆さんへ: 

 重い梅雨空が広がり、湿気のある空気がねっとりと肌を包んでいくような
天気が続いていますが、お変わりありませんか。

 先日、久しぶりに上京して新宿に宿を取ったのですが、あまりの人の多さ
に、いささかうんざりしてしまいました。東京は、また、人口が集中したの
ではないでしょうか。新宿駅を流れていく人の行列は、真に、砂糖に群がる
アリの行列のようでした。僕も、また、そのアリの一匹になって流れていっ
たのですが、疲れ果ててしまい、帰宅して発熱してしまいました。

 都心で、高速道路を造るために何年も工事をしている道路のそばを通りな
がら、渋滞を解消するための工事で、さらに渋滞が起こる矛盾があるなぁ、
と思いました。

 日本の社会は、やはり、構造的にゆがんでいるような気がします。都市計
画に哲学がないので、その場の利益だけを目的として建物が増築され、人が
行動します。こんなところでは、生きとし生けるものを慈しみ、生命の根源
的な喜びを感じることは難しい、と実感したところです。

ヘーゲルは「ミネルバのフクロウは夜飛ぶ」と語りましたが、「深い哲学は
田舎から生まれる」のかもしれません。かつて、精神を病みかけていたニー
チェがスイスの田舎シュルツを愛し、そこで、著作を執筆したように、もの
を考えていく時のテンポをもっとゆっくりと田舎臭くするべきなのかもしれ
ません。

 閑話休題。今日、今年初めて蝉の鳴き声を聞きました。この声を聞くと、
いよいよ夏だなぁと感じます。この夏は、今のところ予定が少なく、少しゆ
っくりできそうです。良い夏をお迎えください。


 では、、現代の教育論(その13 教育環境の整備−5−「生徒論(1)」)
です。今回は、専門職としての教師を取り上げます。

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第4章 人間と教育
          =================================
         7.まとめとしての現代教育論(その13 教育環境の整備−5−1−)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

<その13 教育環境の整備−5−「生徒論(1)」>

 教育論の多くは、主に「教える側」によって論じられ、「教えられる側」に
ついては、せいぜい、「学びの心得」のようなものが語られるに過ぎませんで
した。その「心得」も、「教える側」によって語られますので、「教える側」
に都合のいいような学びの倫理が語られることも多々ありました。学校で作ら
れるシラバス(講義概要)にも、そうした視点で、学ぶための準備と心得が記
されたりします。

 しかし、これまで述べてきましたように、教育は、どこまでも双方向の対話
によってしか成り立たない人間の業ですので、「教える側」には教師論という
教えの倫理が考えられるように、学ぶ側には、学ぶ側の倫理が必要です。

第一に、学ぶ者は、「教えられる」という受動的な位置では、何も学ぶことが
できないということです。「教えられる」のではなく、「学ぶ」という主体的
な意志が必要なのです。教育は主体性によってしか成立しません。

このことは、例えば、『論語』や『新約聖書』、あるいは仏教の経典などを見
るとよくわかるのですが、そこでは、弟子が問い、師が答えるという問答によ
って教えが深化されていきます。問わない者には答えは見出せないし、師は問
いそのものの中に答えがあることを指し示します。学ぶ者の主体性に従って教
えが展開していくのです。教える者は、学ぶ者が問うことができるように問題
を提示する役割を負っています。

この点では、日本の学校教育の多くは失敗しているように思えてなりません。
学校では、政府によって教育要綱が定められ、教師は、最低限「教えなければ
ならない項目」が規定されてきました。そこでは、教育は自然に「教えられ」、
「与えられるもの」になっていきがちになりますので、生徒は、自分が主体的
に「問う者」であることを喪失していきます。一方的な押しつけ教育がなされ、
学ぶ者も教える者もうんざりする教室での現象が起こっているのです。学ぶ者
の主体性の回復が急がれるところです。

問う者は問うことの必然性によって問いを発するのですから、学ぶ者は、問う
ことの必然性を自覚する必要があります。そして、その必然性は、問う者の状
況や実存から生じるのですから、問う者は自分の実存状況を自覚する必要があ
るのです。つまり、教育は実存状況の自覚から生まれるのです。そして、この
実存状況の自覚が教育の目的、つまり、なんのために学ぶのか、ということを
規定するのです。

実存状況の自覚というのは、究極的には、絶対他者との出会いや自己の限界の
認識によって生まれてくるのですが、簡単に言えば、「自分ができないことを
知る」あるいは「自分が知らないということを知る」ことです。かつて、ソク
ラテスが真理の探究をそのように位置づけたとおりです。

従って、学ぶ者にとって重要なことは、「自分が知らない」ということや「自
分ができない」ということの謙遜な自己認識に他なりません。「知らない」と
いうことや「できない」ということを知っているということは、極めて重要な
ことなのです。

 問いは、この実存状況の認識の他に、純粋な知識の「好奇心」からも生まれ
てきます。古代から現代まで積み重ねられた諸知識は、いうまでもなく、好奇
心の賜物に他なりません。「なぜ?」、「なんだろう?」という好奇心は、知
的成長の始まりでもあります。

子どもの成長過程では、必ず、こうした「なぜ?」の時期がありますが、その
時期にきちんと対応することの重要性が指摘されていますが、それはまた、学
ぶ者にとって好奇心を持つことがいかに重要であるかを示すものです。

 こうした実存状況の認識や好奇心は、個人の感性によってきり結ばれていき
ます。I.カント以降、人間の感性は知性よりも下位に考えられがちになりま
した(これはカント哲学の誤解ではありましたが)。しかし、感性の重要性は
改めて認識される必要があるように思われます。

幼児期の教育は、特に、この感性を豊かに養うことに、もっと注意されて良い
のではないでしょうか。物事を感じる心や精神なしには、知識はただの机上の
ものとなり、生きた知識とはならないのです。

 生徒論の第二は、自己の学びを深化させ、拡大していくということです。次
回は、そのことを少し考えて見ましょう。

   ============================================================

☆ここ数年、毎年夏になると、扁桃腺が晴れて発熱するということをくり返し
 ていましたが、今年も、のどの痛みから発熱してしまいました。余り高くは
 上がらないのですが、微熱でも、蒸し暑いので、ちょっとつらいですね。

☆最近、昔のことを思い出す機会がたくさんあったのですが、真に紆余曲折で、
 上京した折りに浅草まで足を伸ばしてきました。もんじゃ焼きを食べ、雷お
 こしを買ってきました。

☆学ぶ者の主体性ということは、よく言われることですが、その主体性がどこ
 から生まれてくるのかは、哲学的な課題です。通常、社会的な必然性に従っ
 て(〜の資格を取るといったことも含めて)教育を考えがちですが、主体性
 は必然性とはまた別のものです。最近、教育TVの「高校講座数学」というの
 を面白く見ているのですが、数学は主体性そのものなしには学べないですね。

☆この夏は、少し時間があきそうなので実家にでも帰ろうかな、と思っていま
 す。良い夏をお迎えください。

 ではまた。
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発行者   :K. Wiseman
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