西洋思想の散歩道 |
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◆◇◆「思想の世界」Vol.2◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
No.138 2005.05.14
西洋思想の散歩道
-A Promenade of Western Thought-
K. Wiseman 著
Assisted by Mai O.
◆◇Presented by K`s Community◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
=======================新刊本のお知らせ=============================
HP『思想の世界』とメルマガの主幹者である小副川幸孝先生の新しい著書
『説教集−日々の糧を与えたまえ』が、いよいよリトン社より5月20日に発
行されます(定価 2,500円)。どこの書店でも注文できますが、メールで直
接注文されますと著者割引で1割引です。下記アドレスでお申し込み下さい。
kosoe@kumin.ne.jp
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読者の皆さんへ:
新緑がさわやかな皐月、お変わりありませんか。連休はゆっくり過ごされ
たでしょうか。
昨年末のスマトラ沖の地震から連続する地震や天変地異、中東のテロの激
化、中国での反日デモ、経済界での企業戦争の激化、国政の混乱、無意味な
殺人事件の続発や詐欺事件。このところ社会の全面に渡って、落ち着きのな
い現象が続いています。
考えてみるまでもなく、現代社会は、本当に「落ち着きのない社会」です。
「ぼやぼやしていると危ない」という感覚が無意識のうちに働いてしまうの
でしょう。人間が本来持っています生命のリズムを無視した早さで物事が進
んでいきます。
『不思議の国のアリス』に登場する時計をもって走り回っている「ウサギ」
や『モモ』の「時間泥棒」が、真に、リアリティーをもって感じられます。
僕自身も、このところの仕事量に目を回してしまったのですが、ハナミズキ
が咲く公園のそばを急ぎ足で通り抜けようとした時、ふと、旧約聖書の『イ
ザヤ書』にある「あなたがたは、穏やかに、落ち着いて、信頼しているなら
ば力を得る」という言葉を思い起こし、「そうだなぁ』と思って歩調をゆる
めました。
そして、周りを見回してみると、新緑の透き通るような葉が風に揺れ、花び
らが舞い、皐月の青い空にはきれいな雲が浮かび、「すべて世はこともなし」
だったのです。
そこで、公園のベンチに座り、鞄を開け、読みさしていたダン・ブラウンの
『ダ・ヴィンチ・コード』を取り出して、しばらく続きを読みました。スト
ーリーは映画並みの早さで急展開していくのですが、気分は、実に豊かなの
んびりしたものでした。
五月は、「あえて急がない」ことを心に留める時なのかも知れませんね。
では、、現代の教育論(その11 教育環境の整備−4−「教師論(2)」)
です。
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第4章 人間と教育
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7.まとめとしての現代教育論(その11 教育環境の整備−4−2−)
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<その10 教育環境の整備−4−「教師論(2)」>
教師というものが職業として登場してくるのは、恐らく、古代ギリシャにお
けるソフィストと呼ばれる人々が最初だと言えるかも知れません。もちろん、
それ以前にも、村落共同体で若者に伝承を伝える長老や教師の役割を果たす者
はおりましたし、貴族や王家での子女を育てる養育係はいたでしょうが、ソフ
ィストたちは、職業的教師としての生活を送りました。
彼らは、一定のところに居住したのではなく、アテネなどの教育を求める市民
(多くの青年たちが演説などの自己主張をすることによって社会的地位を向上
させることを願いましたので、主として、雄弁術(修辞学)を学びました)の
ところへ出かけ、そこで生活をしましたので、今で言う家庭教師のような存在
だったと言えるかも知れません。学校という制度は、まだ、整ってはいません
でした。身分的には、彼らは奴隷に属したのです。
やがて、アテネでは、市民教育のための「ディダスカレオン(知識を学ぶ)と
「パライストラ(体操教習所)」ができ、男児は7歳になると父母から離れて、
教僕(パイダゴゴス)と共に生活をし、躾や成人教育を受けるようになりまし
たが、教僕は、身分的には奴隷の身分であり、形態的には家庭教師のようなも
のだったのです。
市民階級のプラトンは、アテネ郊外に「アカデメイア」と呼ばれる学校を設立
しましたが、プラトンは自らの私財をはたいて学校を運営したのであり、授業
料を徴収して、職業的教師として生きたわけではありませんでした。プラトン
の弟子であり、全学問の大系を築いたアリストテレスがアレキサンダー大王の
家庭教師であったとことよく知られている事実です。
アテネにしろスパルタにしろ、青年の軍事教育や市民教育の重要性は広く認識
されていたのですが、その教育の携わる教師の身分は低いものだったのです。
中世においては、キリスト教会が社会全体の主導を行いましたので、一般的
に教育に携わったのは修道僧たちでした。修道僧たちは、教会によって身分と
生活が保障されていましたので、教育を受ける者たちも、特別に教育のための
費用を出すということはありませんでした。彼らは職業的教師というものでは
なかったのです。
学校そのものは、貴族が個人の資産を用いて設立した私立学校や教会立のも
のがありましたが、一般の市民や貧困家庭の子どもたちのための公教育機関と
いうものはありませんでした。修道院以外で教育の携わる者たちは、学校で教
えるよりも、貴族階級の子弟の教育にあたる家庭教師の方が、生涯年金もつい
ている場合が多かったので、学校教師よりも家庭教師を選択しました。
西欧の近代でサロンが文化を形成していったのは、知識階級や文化人が貴族の
開催するサロンで知的成果を公表して、貴族によって雇用してもらったり、生
活を援助してくれるパトロンを探すという目的で集まったからでもあります。
教師の社会的身分は、なんの保障もありませんでしたが、貴族階級や富裕層の
人々は、著名で優れた人物のパトロンであることを自らのステータスとしまし
た。
西欧においても、公教育機関としての学校制度が整えられたのは、19世紀の
後半だったのです。教育が国家の要であり、子どもの教育は国家や社会の義務
であるという考えがとられるようになって、義務教育制度が整備されていくに
つれ、教員養成機関も設立されて、国家によって資格を付与された者が教員と
して配置されるようになりました。教員養成機関はノーマル・スクールと呼ば
れましたが、ここで初めて、教員の生活が国家によって保障されるという職業
的教師の社会的地位が確立したのです。教育のための税が徴収されて、教師は、
いわば公務員として雇用されました。
世界で最初の計画的な教員養成を行ったのは、ラ・サール(1651−1719)とい
われていますが、教職の身分がキリスト教の僧職ではなく、教員養成機関で資
格を習得した世俗的な身分として位置づけられたのです。教員養成機関は、や
がて、ノマル・スクール(師範学校)から4年生大学に移行し、さらに大学院
へと質の高さが求められるようになりました。そして、それにつれて、教師の
社会的地位も高められました。
1966年にILO・ユネスコは、「教員の地位に関する特別政府間会議」で、教
員の社会的地位を世界的に高めるために「教えることは専門職と見なされるべ
きである」との勧告を出しました。教員の「専門職性」が提唱されたのです。
「専門職(Profession)」というのは、一般の商工業の職務とは異なり、本来
は知的で自由な職業という意味をもつものですが、研究職や医師、法関係職
(裁判官や弁護士)などの公共の福祉に貢献する人々を含む職業をさすものと
して使われています。
「専門職」の定義としては、M.リーバーマン(Lieberman)のものが有名で
すが、そのことは、教員の資質の問題でもありますので、次回、教師論(3)
として取り上げることに致します。
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☆近代西欧の知的・文化的行為を支えたパトロン制度の功罪はいろいろありま
すが、優秀な人材を発見し、育て、しかもその生活さえも保障していったこ
との背景には、社会全体の「ゆとり」のようなものを感じます。
☆以前、北イタリアに行った時、人々の生活はそれほど豊かではないのに、全
体的に知的なものや生活を楽しむ「ゆとり」のようなものを強く感じたこと
があります。社会的遺産の大きさもあるでしょう。日だまりにテーブルと椅
子を出してお茶を飲むだけの光景に、ふと、そのようなものを感じたのです。
☆専門職としての教職、というのは、人間の教育や社会構造全体からも極めて
重要な視点だと思います。「聖職」という考え方もありますが、どちらかと
いえば、つまらない倫理道徳の視点で語られやすい概念です。「専門書」と
いう定義によって行われる教員の社会的保障は重要なことですし、教員自身
の自覚も必要でしょう。
☆「専門職」の内容については、次回述べますが、これは、職業一般に関する
事柄でもあります。
☆最近、とてつもない疲労感に襲われることがあります。内蔵が弱っているの
かもしれませんね。お互いに自愛して過ごしましょう。
ではまた。
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