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西洋思想の散歩 No.137

発行日: 2005/4/16

◆◇◆「思想の世界」Vol.2◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
No.137                           2005.04.16
         西洋思想の散歩道
                   -A Promenade of Western Thought-    
                               K. Wiseman 著
                           Assisted by Mai O. 
◆◇Presented by K`s Community◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

読者の皆さんへ: 

 春ですねぇ。お変わりありませんか。

 桜が一気に満開になり、あっという間に散っていきました。「花冷え」と
呼ばれる肌寒い日もありますが、春陽の中をゆっくり歩くのは、なんと気持
ちの良いことでしょう。

僕の好きな良寛さんの歌に「こどもらと手まりつきつゝこの里に遊ぶ春日は
くれずともよし」というのがありますが、一日が暮れていくのがもったいな
いくらい気持ちの良い日々です。夕暮れ時に、「誰そ、彼は」などと言いな
がら、木蓮や小手毬が咲く路を歩くのは、何とも言いようのない爽快さがあ
ります。

「たゆたゆ」という春に似つかわしい素敵な言葉があるのですが、心を「た
ゆたゆ」とさせて「遊ぶ春日はくれずともよし」と詠う日々を過ごしたいも
のですね。

 では、、現代の教育論(その10 教育環境の整備−4−「教師論」)です。


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第4章 人間と教育
          =================================
         7.まとめとしての現代教育論(その10 教育環境の整備−4−)
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<その10 教育環境の整備−4−「教師論」>

 教育は、どこまでも人間の業ですから、それに携わる教師の資質が教育環境
の最大の要であることはいうまでもないことです。たとえ物理的な教育環境が
皆無であったとしても、教育は優れた教師によって完遂されます。

それだけに「教師の資質」は、常に、教育の重要な課題として問われますし、
優れた教師は、自己の資質向上のための耐えざる自己研鑽を怠ることはありま
せん。むしろ、自己研鑽をしている者だけが教育を行うことができると言える
でしょう。古今東西の多くの人々が「教師の自覚」として指摘してきたとおり
です。

教育は「感動を伝える業」に他なりませんが、感動を伝えるためには教師自ら
が感動を覚える必要があるのです。いや、教師が感動したことだけが人々に伝
わるのです。

たとえば、「1+1=2」という数理的な事柄を子どもに教える場合、単に数
理的な加算の公式や数字を教えても、それは無意味な記号の羅列にすぎず、ひ
とつのあるものにもう一つの同じものを加えると2つになるという不思議さと、
それを数字記号の組み合わせで単純に表現できる素晴らしさに心を動かされて、
その感動を伝える時、初めて、「1+1=2」の現象と数式のもつ意味の深み
と広がりが理解できるのです。

そこから、身の回りで起こっている現象を数理的に理解することや記号による
表現の可能性、普遍化することの意味などが、その感動の中で実感されていき、
こうして初めて、「1+1=2」が学ぶ者の真実の知識となるのです。

それは、英語や日本語などの言葉の教授も同じで、教える言葉が指し示す現象
の意味を示していることの不思議さ、現象から発生してきた音や表記の表現の
発達過程への驚き、などの知恵と知識への感動が伝わる時、その言葉が学ぶ者
自身の言葉となって習得されていくのです。

こうしたことの伝授には、教師の耐えざる自己研鑽による新鮮な心の感動が不
可欠です。教えるものは学ぶ者に他ならないのです。それが教師の資質を形成
します。

 しかし、このような教師の資質が論じられなければならないことの背景には、
労働と労働者意識の向上による教師の労働者化によって、本来の目的である教
師の専門化とは反対に、教育方法のマニュアル化や均一化によって教師として
の個性を失い、それによって教師の資質の喪失が起こったのは疑い得ないでし
ょう。

 
温故知新で、少し教師の歴史を見てみますと、日本における教師の歴史は平安
時代の「明法博士(法律教師)」や「文章博士(漢文教師)」にさかのぼるこ
とができるかも知れませんが、教師の資質が問われたのは、何といっても、学
校制度が制定された1872(明治5)年の『学制』以降だと言えるでしょう。

『学制』の第40章には、「小学校教員ハ男女ヲ論セス年齢二十歳以上ニシテ師
範学校卒業免状或ハ中学免状ヲ得シモノニ非サレハ其任ニ当ルコトヲ許サス」
と記されて、教師の任用資格が明記されています。そこで、初代の文部大臣と
なった森有禮は、教員養成制度の整備として、師範学校を各県に設置し、国家
の手によっての教員養成を行いました。そこでの教員の資質として考えられて
いたのは、「順良、信愛、威重の気質を備えること」でした。

つまり、国家の方策に従順で、信愛をもち、しかも、威厳と重みを持つことが
重要なこととしてうたわれたのです。この教師像は、今日でも、ある種の人々
によって『教師の理想像」として考えられたりしています。この教師像の下で
は、学生が教師の教えることに疑義をとなえるなどもってのほかのことなので
す。それは、全体主義的な教育には最もふさわしいことでした。

 しかし、この種の教師像は、第二次世界大戦後、教師がかって教えたことに
墨を塗って、真っ黒な教科書を使うということによって見事に崩壊しました。
戦後の米国教育使節団報告書を受けて、教師は科学的態度に基づいて知的専門
教育を行うものであり、それまでの教員養成機関を大学レベルに引き上げ、教
育職員免許法を定めて、教員の養成と資格を規定しました。また、その勤務条
件も、他の公務員と同じように労働者としての勤務とし、身分も保障しました。

それによって、身分を保障し、教師の知的レベルを向上させ、教育を客観的な
知識の伝授として位置づけたのですが、反面、それまでの情緒的師弟関係や道
徳(儒教的ではあるが)の体現者としての「師」から知識教育労働者に変え、
「聖職」としての教育職ではなく、「教育の仕事をする職業」へと変貌したこ
とも事実です。教師による労働争議も起こりました。

 個人的には、労働者の権利の主張はなされるべきだと思いますが、教育にお
いては、「師弟関係」は、やはり重要な要素をもっていると考えています。

 今日では、教師は「専門職」と考えられるようになってきています。しかし、
教育以外のあらゆる「専門職」といわれる仕事にも言えますが、その「専門職」
といわれることの具体的な内容は、いまだに議論のあるところです。同じ専門
職としての教師でも、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、大学院とい
った学制のそれぞれの段階で、内容は異なるでしょうし、人間の発達段階に応
じて、教育として必要な事柄も異なるでしょう。


 ただ、この「専門職としての教師」という教師像は、国連やユネスコでも議
論されたように国際的に主張されている事柄ですし、教師が「専門職」である
ことは教育において極めて重要な認識だと思います。しかし、「専門職」とい
われる内容は、欧米では少し異なっているような気がします。そのことを考え
るために、欧米での教師の歴史を少し見てみましょう。

(次回に続く)

   ============================================================

☆このメルマガ、ほんとに久しぶり、という感じになってしまいました。お待
 ち下さっている読者の方々には、返す返すも申し訳なく思います。

☆先日、2階の階段から滑り落ちて、全身打撲状態になりましたが、そのうち
 治るだろうと思ってほったらかしていたら、左肩が動かなくなってしまいま
 した。もちろん、痛みはずっとあったのですが、やはり不養生はいけません
 ね。まあ、そのうち治るでしょうが。

☆それでやはり、少し運動しようかと思っています。

☆今年の春は、花々が一気に開いた感じですね。近くの公園では、もう、ハナ
 ミズキが咲いていました。ツツジやサツキも、もうすぐ咲くでしょう。何よ
 り温かいのは嬉しい限りです。

☆とはいえ、「花冷え」の時も、まだまだあります。お気をつけてお過ごし下
 さい。ではまた。
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