西洋思想の散歩道 |
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◆◇◆「思想の世界」Vol.2 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
No.117 2003.12.13
西洋思想の散歩道
-A Promenade of Western Thought-
K. Wiseman 著
Assisted by Mai O.
◆◇Presented by K`s Community ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
読者の皆さんへ:
寒くなりましたね。これから、この冬一番、という日が続くのでしょうね。け
れども、寒ければ寒いほど、クリスマスのイルミネーションがきれいに感じます
し、夜空の冬の星座のまたたきが鮮やかです。
お変わりありませんか。
このところ、ずっと痛めていた肩の痛みが激しくなって、とうとう病院通いの
日々となりました。医者曰く、「身体に錆が出ているのですよ。」というこで、
錆落としの日々です。
先日、モンゴルの民族楽器である馬頭琴と胡弓のコンサートに出かけました。
涙が出るほど素朴な素晴らしい音色に浸りつつ、「生きることの悲しみを知るこ
との豊かさ」を感じました。
馬頭琴は、小学校の国語の教科書にも取り上げられている「ス−ホーの白い馬」
という物語でよく知られた楽器ですが、愛馬を殺されたス−ホーが、その愛馬で
作った楽器という伝説を偲ばせる音色を奏でてくれました。
演奏者は、この楽器で滝廉太郎の「荒城の月」も弾かれましたが、文化や思想
が情感として残る時、それが本物になるのかも知れないと思いました。
僕は、非論理的であっても情感豊かであることの方を大切にしたいと思ってい
ます。思考の論理性は極めて重要なことですが、東洋の情感をもって西洋の論理
を見る。これが僕の思想の営みの基本かも知れないと、胡弓のもの悲しい響きの
中で実感したのです。
そういえば、クリスマスこそ情感の豊かさの季節なのかも知れませんね。今年、
キャンドルの光の中で、その豊かさが感じられれば良いな、と思っています。
では、今回は「国家の思想(14)」です。
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第3章 人間と社会
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2.「国家」の思想(14)
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10.19−20世紀の国家観
ダーウィン(1809−82)の「進化論」の影響は、人間の生物学的な自然淘汰
や弱肉強食、適応存在性などの視点をもたらし、国家や社会論においても、一方
ではスペンサーらの楽観的な自由放任主義の論理的基礎づけを提供しましたが、
他方では、ニーチェが主張したような「力(権力)への意志」を生み出しました。
ニーチェが、どれくらいダーウィンのことを知っていたかどうかは定かではあり
ませんが、生存の適応性は権力への意志を持つ弱肉強食によって淘汰され、強い
ものが勝利し、権利を持ち、弱いものは滅び、弱者が強者に道を譲ることによっ
て世界(宇宙)全体は善へと向かうと考えました。
彼は、人間には差異があり、その差異は拡大されるべきで、強者が支配し、弱者
が被支配者となるのは当然のことであり、多くの人々が唱えた平等や民主主義的
な事柄は、「ごまかし」であり、偽りであると否定しました。
従って、彼にとって、奴隷制は自然なことでしたし、女性は男性よりも弱いので
あるから、男性と同じ権利を持つことは期待できない、とも主張しました。
今日では女性の方が実際には男性よりも強いという実感もありますし、今日の
博愛主義者やフェミニストが聞けば怒濤の如く怒るに違いないことを、彼は平気
で主張したのですが、自然や人間の自然的社会(国家)の原理が不平等である以
上、そこに平等を強制して置き換えることこそが不自然だと考えたのです。
ニーチェが指摘したように、人間は、基本的に不平等の中に生まれ落ちます。
生物的な自然淘汰も起こります。人間の遺伝子そのものが、そのような自然淘汰
を選択することは、今日の遺伝子生物学でも常識となっています。
しかし、だからといって、弱肉強食を肯定することは問題だろうと思いますが、
現代の自由主義的経済構造や競争社会原理が、概ね、ニーチェが語ったことを根
幹にしていることは、認識されるべきでしょう。
近代の植民地主義や戦争論、あるいは、現代でもある一部の人々が唱える国家と
文化の自然淘汰主義や適応するものだけが生きる権利を持つという適応主義は、
現実には、たとえば、「優生保護法」などにも見られるような事柄は、まさに、
ニーチェが唱えた「力への意志」そのものに他ならないのです。
ニーチェにとって、社会は競技場のようなものであり、国家はその競技を保護し、
推進させるものに過ぎないのです。その意味では、ニーチェもまた、国家の権力
は制限されるべきであり、個人の自由はもっと徹底されるべきだと考えたのです。
しかし、ニーチェ自身は、決して強者ではなく、むしろ、彼の論理に従えば、
滅び行く人間の一人でした。そのことが、彼の論理を考えるべきものにしている
ことを、僕は付記しておきたいと思います。
20世紀になると、国家論の主流はアメリカ合衆国の民主主義的観点に移ってい
きました。それは、アメリカの民主主義が成熟したからではなく、新しく民主主
義に基づいて形成された国家としてのアメリカが、世界情勢の中で大きな位置を
占めるようになったからです。
二つの世界大戦を経て、アメリカは強大な国家としての位置を占め、また、その
社会体制である民主主義に自信も深めました。このアメリカの国家観を思想的に
顕著に表しているのは、おそらく、ジョン・デューイ(1869−1952)だろうと思
います。
デューイは、「人間のパーソナリティに対する尊敬」を最も重要なものと考え、
人は、それぞれ固有の目的を持って生きており、他者の道具や手段として取り扱
われてはならないと主張しました。個人の自由を尊重することからあらゆる思想
的営みを始めたのです。
しかし、その個人は、社会の中にあってこそ人間なのであり、集団の中での人間
の活動が、本人にとっても集団のすべての構成員にとっても、より豊かになるよ
うに行動すべきであり、個人が集団(社会)の真の構成員になるに従って、全体
の福利に寄与し、それによって全体から真に人間らしく取り扱われることを受け
取るという方法で、集団に合体していく、と語ります。
人間の尊厳としての基本的人権と自由は、社会の中で保証されるものであり、そ
れは、個人の社会に対する寄与によって与えられる、というのが彼の基本的な姿
勢でした。従って、社会や集団生活は、個人が充実した生活をおくるために必要
不可欠なものに他なりません。
アメリカで、個人の社会参加ということで、職業的役割の他にボランティア活
動が活発になってきたのには、こうした社会観の背景があるのです。
もちろん、このデューイの社会観は、まったく新しいものではなく、ロックや
ルソーが唱えてきた流れの中にあるものですが、アメリカ合衆国の初期の段階か
ら、個人の自由を守るために国家の権力を制限し、個人の労働やその報酬を守り、
個人の繁栄を保証することが指向されてきたことの結果とも言えます。
しかし、近年、このアメリカの理想は、「強いアメリカ」の主張で壊れつつあ
るのも事実です。
次回は、これまでの国家観や国家論をまとめて、その課題を探ってみたいと思
います。
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☆現代社会は、従来の国家論や国家観が崩壊しつつあります。これは、インター
ナショナリズムやグローバリズム以前に、物理的な交通網の発達と経済活動の
拡大、資源や環境の共有などが不可欠のものとして起こってきたからでしょう。
ビザ(入国審査)という国家観に基づいた制度がなくなりつつあるのも一例で
しょうね。
☆しかし、他方では、国家の統制を厳しく行う傾向もあります。何をもって「国」
としたり、「民族」としたりするのかが、大きな問題です。集団の論理が崩れ
ましたので、アイデンティティ・クライシス(どこで生きているのかが分から
なくなること)が起こりました。
☆また、社会、特に集団と個人の問題も大きくなりました。結局は、人間の幸福
や充足感をどこで見いだすのかというのが根本の問題です。
☆僕自身は非組織的人間ですので、いつも、集団や組織的を維持しようとする全
体主義的傾向にはなじめないものを感じますが、集団単位で社会が構成されて
いる以上、いつも、その悩みを抱えてしまいます。加えて、いくつかの組織の
運営の責任もあって、どういう集団にするかを問われます。
☆僕は、現代社会を、「経済支配的社会(エコノミカル・ドミネェィティッド・
ソサエティ」と呼ぶことがありますが、その結果の存在の意味の喪失が起こっ
ているような気がするのです。
☆寒くなりますね。風邪など引かないように、暖かくしてお過ごし下さい。
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