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西洋思想の散歩道 No.62

発行日: 2001/12/27

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
◆◇◆「思想の世界」Vol.2 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
No.62                            2001.12.26
             西洋思想の散歩道(第 62 回配信)
                        -A Promenade of Western Thought-
                           K. Wiseman, Mai. O 著
◆◇◆◇ Presented by K`s Community ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

読者の皆さんへ:

日毎に寒さがつのっていきますが、お変わりありませんか。サンタさんはあな
たのところに来てくれたでしょうか。

クリスマスが終わり、年の暮れまであと5日となり、このメルマガが今年最後
の『散歩道』になってしまいました。

21世紀の最初の年である今年は、秋以降、大変な年になってしまいましたが、
どんなに状況が悪化しても、食べ、飲み、眠るという日常性は変わりなく営ま
れるわけで、僕は、明日がゴミの回収の最終日ということもあって、「燃える
もの」と「燃えないもの」、「リサイクルに出すもの」という具合に、ゴミの
仕分け作業に精を出したりしています。

そしてふと、「使い捨てカイロ」の一生ということを思い浮かべました。振ら
れ、化学反応を起こして燃焼し、暖かい内は重宝され、やがて反応が終わって
冷たくなれば、燃えるゴミか燃えないゴミかわからないようにして捨てられて
しまう。

「使い捨てカイロ」の一生は、そんなものでしょうね。そして、この「使い捨
てカイロ」を使う現代人も、同じような生涯を送り、そこに生きることの悲哀
や空しさを覚えるのかもしれません。

しかし、「ただ暖かみを放出すること」に専念する使い捨てカイロの生涯は、
たとえそれが一時的なものでしかなかったとしても、真に敬服に価する一生で
はないか、そんなふうにも思えます。

年末年始、何かと気ぜわしい中で、「暖かみの放出」が少しでもできればよい。
この暮れに、お掃除の手を休めて、そんなことを思いました。

では、今週の『散歩道』は、プラトンの弟子アリストテレスの人間観と後期ギ
リシャ哲学の人間観を少し見てみたいと思います。

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第2章 人間とその位置づけ
        =================================
      4.アリストテレスの人間観とアウグスティヌス
======================================================================
 
プラトンは、当時の基本的な人間観と同様に、人間を精神である理性と物質で
ある肉体とに分けて考え、精神である理性がイデアを認識することによって肉
体を超越することを志向しました。

プラトン以後、このプラトンの弟子であり、ギリシャ哲学を総合的にまとめ上
げたアリストテレスも、その記述の仕方には相違があるものの、基本的には同
じ人間観をもっていました。

彼にとって、人間は宇宙の一部として、他のものと同じように創造されたもの
で、質料(物質)と形相(イデア)の両方をもつものでした。

人間は、植物や他の生物と同じように生命機能を持ち、動物と同じように、欲
望、苦痛、喜びなどを経験する力を持っています。

しかし、人間は他の動植物とは異なり、想像し、記憶し、考える力を持ってい
ます。この理性の働きによって、人間は他の一切のものと区別され、この人間
の理性が創造的であることによって、人間は聖なる輝きを発揮すると考えたの
です。

彼のこの記述は極めて観察的で科学的ですが、人間が宇宙の一個人であると同
時に、理性の形相(イデア)的働きによって、宇宙の中で最高の神聖な被造物
でありうるという考えは、プラトンと変わりません。

ただ、彼は、理性を働かせる形相が人間の中にあり、それによって、人間は自
然の産物であるにもかかわらず、同時に神聖さに近づくことができる存在であ
ると考えたのです。

この、人間の理性を働かせるイデアが人間の内にあるのか、それとも追求すべ
きものとして人間の外にあるのか、ということは後に大きな思想上の分岐点と
なることですが、それはまだ後の話です。

ともあれ、プラトンやアリストテレスは、人間を現象や事物に打ち勝ちつつ聖
なるものに向かって手を伸ばす崇高な存在として理解していたのです。

現代人のように、科学的知識を駆使して自分の理性を物質の獲得のために使う
ようなあり方は、彼らに言わせれば、理性の無駄使い、ということになるのか
もしれません。

後期ギリシャ思想を代表するストア派の人々にとっては、人間は普遍的な存在
であり、人間は自然の一部でありつつも、人間の中に全宇宙が小規模な形で現
れたものに他なりませんでした。

人間は、その中に宇宙の全部を宿し、宇宙と同じ理性に支配され、宇宙の法則
に従わなければならない存在でした。

人間は聖なる秩序の中に定められた場所をもち、それを探し、それに適応して、
理性の導きのままに自然の法則に従って生きるものでした。

それらの自然の法則からでてくる要求を理解し、これに喜んで従うことがスト
ア派の理想でした。

ストア派の多くの人々は、実際に各地を放浪しましたので、彼らが適切な生き
る場所を探し、そこでの法則に従うことを主張したことは、彼らの実存的な姿
であったのかもしれません。

いずれにしろ、ギリシャ哲学では、人間を精神と物質に分けて考え、精神を強
調し、これによって物質である肉体の様々なことを克服できると考えていたよ
うです。

そして、これが西欧のものの考え方の基底に、しっかりと横たわったのです。

旧約聖書に表されているヘブライ思想は、これとは若干、趣を異にした人間観
を提示しますが、やがて両者は、アウグスティヌスによって一本の流れへと向
かうようになります。

従って、ここでは、そのアウグスティヌスの人間観を見る前に、旧約聖書の人
間観を少し顧みてみたいと思います。

(次回へ)

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☆プラトンとアリストテレスは、人間に関しては基本的には同じような位置づ
 けをもっていましたが、その記述の仕方は、それぞれの世界理解にあわせて
 異なっています。

☆ここでも、プラトンは論述的ですし、アリストテレスは観察的・科学的です。

☆しかし、全体的な基調は、極めて楽観的です。人間を肉体を超克して永遠の
 イデアを求め続けるものと考えても、そこには悲壮感はありません。悪は克
 服できるものと考えられているようです。

☆しかし、現代では人間の残虐性や悪は、これをそう簡単には克服できない、
 という思いがありますね。「理性によって克服できる」というのではなく、
 「理性によって克服していくしかない」というのが現代の心情ではないかと
 も思えます。

☆いずれにせよ、イデアを見失うことなく、一歩一歩進んでいくしかないので
 しょうね。

----------------------------------------------------------------------
【風巻く谷通信】
 
☆本来、このメルマガは、昨日配信する予定でしたが、どうしても執筆時間が
 取れずに今日になってしまいました。待って下さっている方々に申し訳なく
 思いますが、ご容赦下されば幸いです。

☆年末、やはり、今年もいろいろなことがあったなぁ、と思います。僕自身の
 生活環境も山里から小都市に変化しましたが、何も為しえなかったことには
 変わりはないですね。「何かをすること」も重要かもしれませんが、「いか
 にあるか」がもっと重要だと思うからでしょうね。

☆越年で積み残しの「宿題」がたくさんあります。「宿題」は、やはり、ひと
 つひとつ片づけていくしかありませんね。

☆今年、このメルマガにおつきあいを下さったことを、本当に深く感謝してい
 ます。よい年をお迎え下さい。

☆次回の配信は、1月9日になります。今年、共歩者を天に送った母を訪ね、
 また、「年頭のご挨拶」とやらで京都に行ったりします。

☆冷え込みますね。お元気でお過ごし下さい。ではまた。

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