西洋思想の散歩道 |
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◆◇◆「思想の世界」Vol.2 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
No.17 2000.1.24
西洋思想の散歩道(第17 回配信)
-A Promenade of Western Thought-
K.Wiseman, O.Mai 著
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読者のみなさんへ:
北風が吹き抜ける寒い日々が続いていますが、お変わりありませんか。
冬真っ盛りとはいえ、先日、花屋さんの店先に、多分、温室で育てられたので
しょうが、チュウリップの鉢植えが並んでいました。そう言えば、福岡から早
梅の開花の知らせも届きました。
年々歳々ですが、季節はゆっくりと巡り来るなぁ、と思います。いつも何かに
追われたり、追いかけたりするのではなく、冬に冬を楽しみ、春に春を喜ぶ、
そんな暮らし方ができたら素敵でしょうね。
それは、「時」を受容することから始まるのかもしれませんね。良くても悪く
ても、「今の時」を受け入れる。そして、それを喜ぶ。そんな生のあり方も必
要な気がします。
ただ、これは極めて日本的な世界観に基づいているなぁ、と思います。日本人
は、元々、「あるものをあるがままに受け入れていく」という世界観を育んで
きました。
季節を楽しみ、花鳥風月を愛でるというのは、「今あるもの」を受容する精神
構造をもっています。一年を4季ではなく、豊かな言葉でたくさん区切ったの
は、「今の季節」を楽しむ知恵でした。
「今の時」を、とにかく受け入れることから始める。僕自身は、この心を貴重
な精神構造だと思っています。
しかし、アリストテレスに代表されるように、古代ギリシャの賢人たちの世界
理解は、極めて「分析的」です。現象を分析し、それを普遍化させていくとい
う方法をとっています。
彼らは現象を分析し、さらに詳細に渡って検討し、「世界とは何か」の問いに
答えようとしています。「イデア」、「形相」、「質料」、「原子(アトム)
などの概念は、その分析の結果から導き出されたものでした。
「受容と分析」、この両者の世界に対する態度の違いは、大変興味深いところ
ではあります。
さて、今回は、その分析の世界観を進めた紀元前3世紀頃の古代ギリシャの知
者たち、つまり、アリストテレス以後の人々の世界理解を見てみることにしま
しょう。
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第1章 宇宙(世界)と人間
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2.(3)人生論的・処世術的世界観
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アリストテレス以後の紀元前3世紀の初め頃、エピクロスという人が登場し、
新しい思想の方向性を指し示しました。
彼は、これまでのような科学的・客観的世界観ではなく、「どうしたらよりよ
い生を送ることが出きるのか」ということに関心を集中するように促しました。
このテーゼ自体は、一見、極めてソクラテス的です。ソクラテスもまた、「た
だ生きるのではなく、よりよく生きることが問題だ」と語りました。
ただ、ソクラテスの場合は、人間の本質に関わる問題としてこれを掲げました
が、エピクロスの場合は実践的な処世術の問題として、これに答えようとしま
した。この両者の相違にはかなりの開きがあります。
エピクロスの思想は、現代でいう「マニュアル」あるいは、「〜の仕方」でお
なじみの「How to もの」の思想でした。別の言葉で言えば、よりよく生きる
ための処世術と言っても良いかもしれません。
彼は紀元前342年頃から紀元前270年頃まで生きたといわれますが、ギリシャの
サモス島で生まれ、多くの都市国家で、その処世術を教え、最期は、アテネで、
アリストテレスと同様、学校を作り、晩年をそこで過ごしたと言われています。
彼の関心は、「よりよく生きること」でしたが、よりよく生きるためには、自
分が生きている世界について知らなければならないということから、宇宙や世
界についても、当然、語りました。
エピクロスは、原子論を唱えたデモクリトスと同じように、この世界はいくつ
かの「統一体(今で言う分子)」からできており、その統一体は最小の原子か
らできている、と考えました。
ただ、彼のユニークな所は、宇宙は全くの偶然から存在するようになった、と
主張した点です。彼によれば、原子は「曲がる力」を有しており、初め直線で
進んでいた原子が、途中で曲がり、こうして四方八方へ広がる宇宙が成立し、
いまもまだ広がり続けている、と考えました。
これは、ほとんど、相対性理論の世界に近いかもしれません。相対性理論では
「曲がる」のではなく「曲げられる」のですが、それはともかくとして、宇宙
(世界)が偶然の産物というのは、「世界が目的を持つ」というアリストテレ
スの思想とは相反するものです。
エピクロスの世界観は全く唯物的です。そして、唯物的世界観から導き出され
るものは快楽主義です。現代の快楽主義も、経済と物質を中心にした唯物的世
界観から生まれてきていますが、エピクロスは、人間のすべての行動の目標は
快楽である、と主張しました。
しかし、この快楽は注意深く選択されなければならない、とも警告します。た
とえば、美味しいものを食べる。これは、当然、快楽ですから、人はこれを求
めます。しかし、理性の枠を越えて食べ、楽しむと、後で消化不良や腹痛を起
こす。様々な病気になり苦しむ結果になる。
だから、人はすべての快楽の結果を予測しなければならない、というのです。
また、彼は精神的快楽の方が肉体的快楽よりも遥かに優れており、人は精神的
快楽を求めるようにしなければならない、とも言います。
こうしたエピクロスの論理を見ていると、まるで、「良識派」といわれるTV
のニュース解説者の話を聞いているような気がします。
一方、同じ頃に生きたストア派の創始者ゼノン(BC.336?-BC.246)は、アリス
トテレスの考えを受けて、宇宙は二つの原理(形相と質料)から成り立ってい
ると考えました。ゼノンは、アリストテレスの「形相」を「力(エネルギー)」
と考えました。
力(エネルギー)が質料をとることによってすべてのものが成り立つ、と考え
たのです。ストア派の人々は、表現こそ違え、この力(エネルギー)を象徴す
るものとして、「火」や「熱」を考えたようです。あるいは「息」や「気」も
これに当たるものと考えました。
すべてのものには、このエネルギーがあり、それによって「生命」あるものと
なる、といいます。
彼らにとって、宇宙や世界は偶然の産物でもなければ、機械的・物質的なもの
でもありませんでした。すべては生命あるものであり、宇宙は完全な球体とし
て空間に浮かび、「魂」をもって存在するものに他なりませんでした。
こうした世界観から導き出されるのは、人間はこの宇宙の生命(魂)に従って
生きなければならないという考えでした。
このストイシズム(ストア派の哲学)は、キリスト教の倫理観と合わさって、
後にも大きな影響を与えていくことになりました。
(長くなりましたので、今週はこれまでとします。次回はこの続きです。)
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☆今回はエピクロス派とストア派の世界理解を取り上げました。いずれも、紀
元前3世紀頃の思想です。
☆古代ギリシャ思想の世界理解も、もうおしまいの方ですが、こうして見ます
と現代のものの考え方の中に、彼らの思想的影響を見ることが出きるような
気がします。
☆西欧はルネッサンスによって古代ギリシャに帰ることを主張し、そこから近
・現代が始まりましたので、当然のことかもしれません。これは、現代の科
学社会の行く末を考えるヒントになるかもしれませんね。
☆禁欲的であることを意味するストイックという言葉は、「ストア派」からの
言葉ですが、ストア派にもいろいろな主張があって、全部が禁欲を主張した
のでないことを付記しておきます。
☆それについては、「人間観」を取り扱うときに述べることにしましょう。
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【近況】
先週、温泉に行ってきました。「安・近・短」のリフレッシュ効果は抜群で
すが、あまりに長く入りすぎて、くたくたになって帰ってきました。馬鹿も
ここまでいくと一級品かもしれないと自画自笑(?)しています。
一年に一枚ぐらいの割合で、気が向いたときに油絵を描いていましたが、最
近、また描きたいなと思っています。ただ、スケッチに出るには寒すぎます
ね。春を待ちましょう。雪景色も捨てがたいのですが・・。
年頭に「今年は鬼になって書く」など身の程知らずの決意をしたのですが、
10日坊主になってしまいました。日記と同じですね。反省です。
近所のコンビニが閉店してしまいました。深夜の買い出しができなくなって
かなり不便です。コンビニはやはりコンビニエンス(便利)でした。
大寒ですね。御自愛のうちにお過ごし下さい。ではまた。
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