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インターネットを拠点に「自由な言論」を求め、ニッポン社会における「公共性」の可能性と限界を考える極私的メールマガジン。




【PUBLICITY】1747:希望の関係論3〜加藤周一入門

発行日: 2008/6/2

 
 
■■メールマガジン「PUBLICITY」No.1747 2008/06/01月■■


▼体験や感情は消える。残せない。人が後世に残せるのは思想
だけである。体験を思想としてかたちづくるためには、一度、
論理を通さねばならない──ぼくにそう教えてくれたのは加藤
周一である(著作集の、何巻だったか失念)。

ニッポンに厭戦「感情」はあっても反戦「思想」は遂に生まれ
なかったという古関彰一の指摘も、この加藤周一の一言を通し
て考えると非常に明快になる。思想なき国で厭戦感情が消えた
後、何が起こるのかを、ぼくは自分の眼で観ようとしている。

▼先日、50代後半の知人が、加藤周一の講演会を予約してい
たのだが、加藤周一が体調不良のため、講演会に来なかったん
だよ、とぼやいていた。

それを聞いてぼくは、一月の新聞の切り抜きを引っ張り出して
きたわけだ。人は必ず死ぬが、その死が時代を画すると多くの
人に感じさせる死は少ない。彼が死を迎えるとき、ニッポンは
何を画するのか、画さないのか、ということを考えてしまう。


▼細部の事実にこだわり、身近な生活感情を繊細にかたちづく
るのに長けているが、その表現世界全体には、国家を超越する
価値観に乏しい──このニッポン文化の特長を「土着的」とい
う術語で要約し、展開したのが、加藤周一の『日本文学史序説
』である。

幸い今はちくま学芸文庫に入ってます。初めてこれを読んだ時
にはぶったまげましたよ。江戸時代の章が難しかったなあ。そ
して続けて『羊の歌』を読み、さらにぶったまげた。こんなニ
ッポン人がいたのか、しかもいま生きてるのか、と。

彼の著作群から、彼の同時代人に絞れば、渡辺一夫、矢内原忠
雄、南原繁、鶴見俊輔、小田実、丸山真男、石川淳、サルトル
、小林秀雄、等々への「眼」が開かれた。

加藤周一著作集と似た装幀の林達夫の著作集は、たまたま高校
の時に読む機会があって、えれえ人がいたもんだなあと感嘆し
ていたが、加藤周一から再び彼等を知ることもできた。

もちろん林達夫に限らず、加藤周一の批評は、一度知ったもの
も、あらためてその「価値」を考え直させる力を持っている。
ちょっとつっけんどんな文体だけどね。

いま、手頃に入手できる文章の書き手ばかり挙げたが、古典、
彫刻、絵画をはじめ芸術作品全般に視野を広げれば、というか
芸術の分野でこそ、ぼくが受けた影響は計り知れない。

友人に、『日本文学史序説』と『日本その心とかたち』と『日
本文化における時間と空間』は、“加藤周一三部作”だぜ、と
薦めたら、その友人は数カ月後、「おい、お前が言ってたの、
ありゃたしかに三部作だな。うーむ」と興奮して話していた。

なんというか、それこそそれまでの「世界観」が揺さぶられる
のだ。でもって、やっぱり通史って一人で書くものなんだな、
とつくづく痛感させられました。

そしてあれだけ芸術の豊穣な海を満喫してきた彼が、知力を尽
くしてアメリカの「戦争」やニッポンの「軍国化」を批判し続
けている。その言論の歩みは優に半世紀を超える。

柳原可奈子の「マジですか〜」は、加藤周一の言論にこそ使う
べきだ。


freespeech21@yahoo.co.jp
http://www.emaga.com/info/7777.html
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