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【PUBLICITY】1742:「あなたが選んだ方法は、間違っています」と、杉下右京は言った

発行日: 2008/5/28

 
 
■■メールマガジン「PUBLICITY」No.1742 2008/05/28水■■


▼最近、数人と飲み歩くことが多く、行きあたりばったりなも
ので、店の当たり外れも多い。とりあえず、新宿駅東口の交番
前で客引きをやっている、「彩蔵」という店はひどかった。

飲み放題980円ってのが誘い文句なのだが、よくあるパターン
の、“入ってからわかる、必ず頼まないといけない食べ物”が
高いわまずいわ、男の店員の態度が悪いわ、会計の料金を間違
えたうえに開き直るわ、二度と行かない店だ。客引きのにいち
ゃんは好青年だったけどねえ。そういう役割なんだろうな。で
も、えれえ混雑してました。ま、好みによるから興味のある方
はど−ぞ。お気をつけあそばセ。

▼本の話が続いたので、最近印象深かった映画とDVDについ
てメモを。と、その前に、最近の本誌で最も反響が大きかった
のは、蟹工船ブームについて書いた前号(1741号)でした
。デカルトの『方法序説』の感想を書いた1739号は人気な
かったねえ。


▼さて、まず「バンテージポイント」。

同じ事件を何度も複数の視点から映し出す、という変わった趣
向の演出が評判かつ秀逸だったが、何といっても、たまたま事
件を目撃することになる男を演じたフォレスト・ウィテカーが
素晴らしい。え、それ誰だって?

ほら、「ラスト・キング・オブ・スコットランド」(ウガンダ
の独裁者イディ・アミンを大熱演)でアカデミー主演男優賞受
賞をとったことよりも、笑福亭鶴瓶に似ていることで有名な人
ですよ(ウソです)。

あの男の存在がないと映画自体が成り立たないし、しかも彼で
ないと成立しない役柄だった。

そして、カーチェイスが迫力満点ですよ。いいカーチェイスの
シークエンスは必ず、追いかける側の「意志」と物理的な「車
体」が一体となったように感じさせるものだが、この映画のカ
ーチェイスはまさにその典型で、手に汗握る面白さ。

脚本は、途中まで存分にハラハラさせる展開だが、以下略。編
集の妙と、一人の登場人物のド根性を味わう映画ですナ。DV
Dでも充分楽しめるんじゃなかろうか。


▼次にDVDで、「パラダイス・ナウ」。一人の若いパレスチ
ナ人の男が自爆攻撃に至るまでの友情、恋、孤独を描いた映画
だ。画面に静謐感がある。脚本が巧妙で、徐々に緊張感が高ま
る。自爆する瞬間の印象は、「シリアナ」のそれと似ていた。
誰がつくっても似るものなのかも知れない。

パレスチナの人々が歩いている日常の生活、どこかで爆発音が
起こる、彼等は一斉に、反射的に屈む、そして何事もなかった
かのように再び歩き出す……そういうシーンがある。彼等が普
段、どのような生活を強いられているのかを、まさに一瞬で観
る者に理会させる、卓越した演出だった。

しかし、ほとんどまったく上映されなかったし、話題にならな
いテーマですよ。「靖国」という映画をめぐってひと騒動起き
ちゃうような社会では、なおさらに。こういう作品がDVDに
なるのは値千金というものだ。


▼もひとつDVDで「大統領暗殺」。これはアメリカのブッシ
ュ大統領が暗殺されたらどうなるか、という物語を、まるで、
“大量のインタビューによって構成されたBBCのドキュメン
タリー番組”のような体裁でつくったもの。面白い構成を考え
たものだ。

で、ブッシュが殺されたらチェイニーが大統領になるわけだ。
ひょえ〜。この映画について、「チェイニー大統領」がとる強
硬路線にあれこれ言及する声をちらほら見聞きしたが、それは
必ずしもこの映画の主要なテーマではない。

むしろ本当に突っ込んで描かれているのは、時の政府にとって
極めて都合の悪い「真実」を、マスメディアがいかにして報じ
るのか/報じないのか、という、頗る厄介な、しかし多くの国
に共通するテーマである。マスメディアの暴走。

「大統領暗殺」はその虚構を通して、現在のアメリカにとって
都合の悪い、しかし、逃れようのない真実を抉り出している。
現実のアメリカの重苦しい姿を、じわじわと炙り出している。
そして観る者にとっては、観る前の想像に反した、全編にわた
った静かな展開が、だんだんと効いてくる。

暗殺は したくなっても しちゃダメよ


▼そして、「相棒 劇場版」。このあいだ好きなテレビドラマ
を挙げていったらテレ朝ばっかりだったが、これもテレ朝でや
ってたドラマの映画化。というより、テレ朝のドラマといった
らまず真っ先に「相棒」をあげるべきだった。

これ、東宝と比べて計画性がてんでなってない東映にとって最
近空前の大ヒットで、まあうれしいニュースです。今週末、も
しも何か映画を観ようと思ってる人がいるとすれば、これをオ
ススメしますよ。

▼「相棒」は、テレビでも映画でも、まず指摘しておきたいの
が、東映ラボ・セットの現像による、あの「いかにも東映」と
しかいいようのない、地味〜な映像処理である。一貫してて、
微笑ましい。ぼくは好きですよ。

それはいいとして、内容だが、殆どまったく触れることができ
ないのが残念。ただし、本誌としては、是非とも観に行ってい
ただきたい内容なんですがねえ(水谷豊演じる杉下右京風)。

そうそう、冒頭から連続殺人事件が起きるんですよ。←これく
らいは書いてもいいだろう。

番組宣伝もまだ盛大にやっているが、もしもこの文章で初めて
「相棒」の存在を知り、じゃあ観に行ってみようかナと思った
人がいたとしたら、その人には、「必ず、事前の情報を一切仕
入れることなく観に行くべし」と強くすすめておきますよ。ど
んな映画でもそうなんだけどね。

とはいっても最低限の情報は必要なんだが、この映画に関して
は予告篇を観ただけで、犯人が、わかる人にはわかってしまう
から、まあ悪いことは言いませんよ、テレビCMで水谷豊を目
にした瞬間、すぐに目をつぶって耳をふさぐべし。え、もう遅
いって?

しかし、お気楽極楽なノーテンキ映画を期待して観に行って、
「おい竹山! 話が違うじゃねえかよ!」と血相を変えて怒鳴
られても困るので、ちょっとだけ内容に触れておこう。

「相棒」は、アクションシーンを期待して観に行ってはいけま
せん。ただし「踊る大捜査線2」などより100倍優れた映画
です。

え、それだけじゃわかんないって? じゃあ、さらにちょっと
だけ。読みたくない人は読まないでね。読みようによっては、
深刻なネタバレですから。





ダメよ





実は、原幹恵の「キューティーハニー」は素晴らしかったです。
(関係ねえよ!)





「相棒 劇場版」は、近年の「日本映画」で、
1:これほど重い社会問題を真正面から扱って、
2:エンタテインメントとして成立させ、
3:興行的にも大成功をおさめた
という点で、稀有の映画である。

そんなに深刻なネタバレでもなかったね。書くのガマンしたん
ですよ。まあ、1は、テレビで観てきた人にとっては自明のこ
となんだが、2が映画版で成り立っているか否かが肝腎な点で
、これは賛否両論あるだろう。ぼくは楽しめました。

いずれにしても3がビックリですね。うれしいことです。興行
収入50億円を突破するらしいが、なぜあの映画があんなに売
れているのか、考えるに値する問題だ。

いっぽう、見終わって、すごく不快になる人もいると思う。読
者のなかに観た人がいたら、感想をくださいませ。

ということで、「えー、まじー? 観たーい、観たーい」と思
った人がいたらあたしゃ満足ですよ。映画館での上映が終わる
前に紹介しておこうと思ったわけです。全国での上映が一区切
りついたら、ネタバレ篇を書こうと思う。


最後に、ひとつだけ(これも杉下右京風)。
泣き上戸の人は、どうぞハンカチをお忘れなく。

人は、忘れる生きものですから。


freespeech21@yahoo.co.jp
http://www.emaga.com/info/7777.html
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