【PUBLICITY】1735:1年生になったら(上)
発行日時: 2008/4/16
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
白い人の町の景色は
わたしたちの目に痛い。
白い人の町の音は
わたしたちの耳に痛い。
『父は空 母は大地 インディアンからの手紙』
寮美千子 編・訳/篠崎正喜 画/パロル舎
1995年3月15日第1刷
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
■■メールマガジン「PUBLICITY」No.1735 2008/04/16水■■
▼さん、はいっ
いっちねっんせーになったーらっ、
いっちねっんせーになったーらっ、
友だち100人でっきるっかなーっ
(できるわけねえだろゴルァ!)
▼ということで、いろんな新入生がいると思うが、人生の節々
で、「ああ、1年生になった時に読みたかったなあ」と、今に
なって思う本をあげてみたい。こういうのは考えれば考えるほ
どどうしようもなくなるので、10分ほどウンウン考えて思い
ついたままだが、どれも4文字の表題の本を選んでみよう。
え、なんで粋なり損な子と核の買って? おっと返還ミス、い
や、変換ミス、なんでいきなりそんなこと書くのかって? ズ
バリ、気が向いたからです。
▼まず、小学1年生になったら。これは冒頭の『父は空 母は
大地 インディアンからの手紙』ですナ(殴、いきなり4文
字じゃねえよ!)。だって思いつかなかったんですもノ。でも
英語だと「FATHER SKY,MOTHER EARTH」で4語なので許してね。
「インディアン」が「白い人」を根本的に批判する絵本だが、
言葉もいいし、画もいい。1700円+税とチト高いが(古本
屋で500円だった)、小学1年生自身が買うわけじゃなし、
入学記念にいいと思いますよ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
獣たちが いなかったら
人間はいったいなんなのだろう?
獣たちが すべて消えてしまったら
深い魂のさみしさから 人間は死んでしまうだろう。
大地は わたしたちに属しているのではない。
わたしたちが 大地に属しているのだ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
▼お母さんは、「ケモノってなぁに?」と尋ねられるだろう。
どう答えたらいいだろうか。ぼくには想像もつかない。
▼次に、中学1年生になったら。
ニール・シーハン『輝ける嘘』(集英社)。古本屋で2、3千
円で売っている。
開高健に関する本ならなんでも集めていた時期があって(でも
渋谷の宮益坂上の古本屋で売っていた5万円の『夏の闇』サイ
ン本は買えなかった。まだガキンチョだったんでね。よよよ)
、そのとき「この訳書を故開高健に 菊谷匡祐」と書かれた本
書も買っていた。
で、買うだけ買って読んでなかったのだが、ある畏友に「ベト
ナム戦争を描いた本は、ハルバースタムの『ベスト&ブライテ
スト』がいいですね」とほざいたら、厳かに「ニール・シーハ
ンの『輝ける嘘』だ。あれを読まずにベトナム戦争を論じるこ
とはできない」と告げられ、なんだか聞いた事のある名前だな
あ、と思って本棚を漁ったら、奥の方から出てきたというわけ
だ。トホホ。
で、上下巻、一気に読みました。どういう本かを一言。これ、
ものすごい名著です(わかんねえよ)。本書を読まずに、ベト
ナム戦争は語れない。ということはアメリカの暴力も語れない
、ということになるかどうかはわからない。
ジョン・ポール・ヴァンという一人の軍人の生涯を追うという
手法が卓越しているし(いや、あの手法しかあり得なかったの
だと思う)、この表題も、これ以外には絶対に考えられない。
ニール・シーハンが炙り出した戦争、大義、輝ける嘘が、いま
ぼくの生きている世界を照らす。中学生だったら、夢中になっ
て読むと思う。
▼訳者あとがきから。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
もう三年半も前のことになるが、ある日、集英社翻訳書編集部
のHさんから電話があった。
「ニール・シーハン、知ってます?」
「もちろん。ペンタゴン・ペーパーズのあのシーハンだろ?」
ニール・シーハンといえば、ヴェトナム戦争の初期からUPI
の記者として──日本では特に毎日新聞を通じて──活発に記
事を世界に発信していたし、その後ニューヨーク・タイムズに
移ってから、いわゆるペンタゴン・ペーパーズ──国防省ヴェ
トナム秘密報告書を抜くという、世紀の大スクープをものにし
た人物である。いくら世事に疎いぼくでも、シーハンの名前く
らいは知っていた。
「でも、ここんとこ名前も聞かないなあ」
と、ぼくはいった。
「名前を聞かないのも道理ですよ。彼はニューヨーク・タイム
ズを辞めて、十六年もかかって、ヴェトナム戦争のドキュメン
トを書いてた」
「十六年!?」
「ええ、十六年。やりますねえ、アメリカ人ていうのは……」
「で、御社で版権とろうっていうわけ?」
「もう、とりました」
下巻p443−4
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ニール・シーハンは本書を書くために「1972年から198
8年の間に、385人にインタビューを行った」(p438)
。そしてこの本は「小説家、ジャーナリスト、学者が一体とな
って書き上げたような語り口」等々と絶讃された。
菊谷匡祐(きくやきょうすけ と読む)は、あとがきで「本書
『輝ける嘘』を手がけられたことに名誉を感じている。世に翻
訳を生業をする人は多いが、生涯にこれほどの名著を訳す機会
に巡りあえる人はごく稀であろう。それが、翻訳を職業としな
い人間にそういう幸運が巡ってきた。自分の幸運を思わずには
いられない」と書いている。
さらに、「日本人は──いや、ほとんどのアメリカ人もそうで
あろうが──ヴェトナム戦争の因ってきたるところを、ほとん
ど知らない。経過にも──むろん例外はいた──ほとんど注意
を向けないでいた。あるいは、注意を向けないようにされてき
た。が、いま、壮大な嘘にみちたこの愚かな戦争の本質を、本
書はあますことなく描きつくしている。ついこの間の、しかも
もう忘れかかってしまっているヴェトナム戦争は、先進国の錯
覚と思い上がりが惹き起こし、そして破綻した──という点で
、近代の終焉を示すものかも知れない。本書は、だから、この
20世紀の世紀末に、世界中の物を考える人間すべてが精読す
べき本なのである」と続けている。
ぼくは、彼のこの評価につけ加えることがない。ただ「ヴェト
ナム」を「イラク」に変えて、時間を少し進めてみるだけだ。
ニッポン大衆小説の最高峰である『水滸伝』を刊行した集英社
文庫にはぜひぜひ『輝ける嘘』の文庫化を切に望むものである。
ところで、イラクにジョン・ポール・ヴァンはいたのだろうか。
freespeech21@yahoo.co.jp
http://www.emaga.com/info/7777.html
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
このメルマガを読んでいる人はこんなメルマガも読んでいます
- 宮崎正弘の国際ニュース・早読み
- 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析
- 言論NPOメールマガジン
- 現在、各政党によるマニフェスト(政権公約)の作成が提案されています。言論NPOは中立的な立場で評価し、責任と実行性のあるマニフェストの作成を各政党に...
- 経営コンサルのマジな時事問題
- 練熟コンサルタントの経営手法やビジネスマンに必要な知識を基に、はずしてならない原理原則をふまえた上で、現代の時事問題のメカニズムを力説。世の中で起こ...
- コラム・ゆりかもめ
- 毎週水曜日に更新。自費出版コンサルティング・勝どき書房の編集長が文化・スポーツ・芸術・政治問題などを切れ味よくコメントする週刊コラム。現在「狭山事件...
- 世界の新聞「101紙」の視点
- 主要紙の社説もトップ記事も、このメルマガだけでOK! 表題のみ広く浅く眺めるもよし。気になる記事を深く読むもよし。各新聞の「エントランスマガジン」と...
![メルマガスタンド[メルマ!]](/img/common/melma_logo.gif)








