【PUBLICITY】1733:「軍事ケインズ主義の終焉」上
発行日時: 2008/4/12
■■メールマガジン「PUBLICITY」No.1733 2008/04/12土■■
▼春は名のみの風の寒さや。と書きたかったが、えらく暖かく
なりました。春特有の、草花のむせかえるような匂いが快い。
というわけで(どういうわけだ)、春だ餃子だ元気ですかー!
新入社員、新1年生の皆さん、今年度もよろしくお願いします。
いやあ、書きたいことって、書かないと、溜まっていくのだね
(当たり前だよっ)。
▼ずいぶん前ですけど、1月か2月だったか、エディソン・チ
ャン(Edison Chen 陳冠希)のスキャンダル、すごかったです
なあ。
パソコンを修理に出したら、そのパソコンに名だたる人気女優
たちとのアレヤコレヤの映像が入っていて流出し、香港社会が
大パニック、というお話。エディソン・チャン本人は香港映画
界を引退したそうだが(ハリウッドに進出か)、女優たちは一
体どうなるんだろうか。
まあ、アレヤコレヤを香港の小学生も見まくったそうで、イン
ターネットの社会って、こういう社会なんだよ、という素敵な
ケーススタディになったことだろう。
香港芸能界って、「ディアスポリス」のハッチョンベイみたい
な殺し屋とかいるのだろうか。「インファナル・アフェア」を
地でいったり。どうか死人が出ませんように・・・。
▼さて、ここひと月で読んだなかで、最も重要な文章は、「世
界」4月号に載っていたチャルマーズ・ジョンソン「軍事ケイ
ンズ主義の終焉」という論文だった。
訳者である安濃一樹さんから、TUP速報での配信後なら転載
OKだとのこと。感謝です。無事配信されましたから、上下2
回に分けて本誌でも紹介します。適宜改行、▼。
▼インターネットを使い始めた20世紀から21世紀にかけて
の時期、ぼくは、こういうアメリカを批判する話はインターネ
ットのなかにしかないと思い込んでいた。
違ったのねえ。バカだねえ、薄っぺらでしたねえ。アメリカ史
を通して、国民国家という存在がどれほど狂った所行を繰り返
しているかって歴史が、ガッチリと大学で論理的、科学的、実
証的に研究され、授業され、バンバン活字になっているわけだ。
「2001年9月11日」は「テロ」ではなく、これまでアメ
リカがしてきたことに対する「報復」であることを完璧に説明
した彼の『アメリカ帝国への報復』(集英社)を読んで以来、
世界観が変わりました。アレヤコレヤを知ったうえで、生きて
いく、つきあっていく知恵。
因みにこの本では、アメリカに非道いことをされている国の筆
頭に挙げられているのがニッポンという国なんだが、その国は
「報復」しないようだ。よっぽど強く脅されてるんだろうね。
アメリカの有り様を「帝国」という一言で括っていいのか、も
うちょっと考えたい気がするんだが、ま、取り敢えず冷戦以降
は「帝国主義」の世の中ですよ。この現実は否みようがない。
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Date: Wed, 09 Apr 2008 12:16:47
Subject: [TUP-Bulletin] 速報751号
チャルマーズ・ジョンソン「軍事ケインズ主義の終焉」
国家破産への道──アメリカは帝国を捨て民主制を守れるか
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2007年、アメリカの不良債権処理額は過去最高に達した。
だが、この混乱の原因とされるサブプライム問題も、カジノ経
済も、アメリカを中心とする資本制経済システムの矛盾を告げ
る症状に過ぎない。
途方もなく巨大化した軍産複合体という怪物が、米議会を飲み
込み、アメリカを内から食い尽くそうとしている。アメリカ経
済が破綻すれば、誰もが超大国の道連れとなる。
訳=川井孝子・安濃一樹(TUP)
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軍事ケインズ主義の終焉
チャルマーズ・ジョンソン 著
▼無謀な軍事政策を続けるブッシュ政権の面々は、倒産したエ
ネルギー企業エンロンの経営陣によく似ている。みんな「だれ
よりも頭がいい」【1】つもりでいた。
しかし、ホワイトハウスとペンタゴンにいるネオコンたちは、
驕りが高じて大失敗をしでかした。帝国主義による戦争で世界
支配をもくろんだはいいが、その策謀を支える財政の問題をど
うすることもできない。
そのあげく合衆国は、2008年になって、異常事態に陥って
いることに気づいた。もう高い生活水準も、浪費の絶えない肥
大した軍隊も維持できない。巨大な常備軍をかかえ、7年にわ
たる戦争で破壊され消耗した機器を交換し、さらに宇宙空間で
未知の敵に備えようとするなら、その経費の負担が国を滅ぼす
だろう。
それなのに、この政府はもう支出を抑えようとさえしない。ブ
ッシュ政権は負債を次の世代に押しつける。これから何世代も
かけて借金を返済するか、あるいは踏み倒すしかない。
このような無責任きわまりない財政施策を粉飾するために、(
たとえば貧しい国々から前例のないほど借金するなど)さまざ
まな会計操作が行われてきた。もうすぐ、こんなごまかしは利
かなくなる。
▼アメリカの債務危機には三つの大きな特徴がある。
第一に、現会計年度(2008年)において、合衆国の安全保
障とは何の関係もない「防衛」プロジェクトに、正気の沙汰と
は思えない金額が支出されている。その一方で、人口の極少数
を占める最富裕層の税負担率は、驚くほど低く据え置かれたま
まだ。
第二に、国内の製造基盤が止めどなく衰退し、海外に仕事を次
々と奪われていっても、巨額の軍事費を支出していれば十分に
経済を支えられると、いまだに信じられている。
これが軍事ケインズ主義と呼ばれる思想である。
近著(Nemesis: The Last Days of the American Republic
仮題『報復の女神ネメシス アメリカ共和国最期の日々』)
で、この思想について詳しく解説した。
ここに私の定義を述べよう。軍事ケインズ主義は、戦争を頻繁
に行うことを公共政策の要とし、武器や軍需品に巨額の支出を
行い、巨大な常備軍を持つことによって、豊かな資本主義経済
を永久に持続させられると主張する。
これは誤った信仰である。実際は、まったく逆だ。
第三に、アメリカは(人材と予算に限りがあるにもかかわらず
)軍国主義にすべてを賭け、社会的インフラなど、国家の長期
的な繁栄に欠かせない投資をないがしろにしている。これを経
済用語で「機会損失」と言い、別のことに金を使ったために失
われたものを意味する。
アメリカの公教育システムは、目も当てられないほど廃れてし
まった。すべての国民に健康保険を提供することもできていな
い。世界最大の環境汚染国として果たすべき責任も放棄してき
た。
そして何よりも、民間のニーズに応える製造業が競争力を失っ
てしまったことに注目しなければならない。限られた人材と予
算は、武器の製造よりも民需製品の製造に投入するほうが遥か
に効率よく利用できる。三つの特徴について、ひとつずつ説明
しよう。
■財政破綻
▼軍事に関する政府の浪費ぶりたるや、どれだけ強調しても過
ぎることはない。米国防総省の08年度予算は、他のすべての
国々が抱える軍事予算の合計額を上回る。
現行のイラクとアフガニスタンでの戦争は、この公式予算に含
まれていない。これを賄う補正予算だけでも、ロシアと中国を
合わせた軍事予算の総額より多い。08年度の防衛に関する支
出は1兆ドルを超えると見込まれる。
史上初めてのことだ。いまや合衆国は、他の国々に武器や軍需
品を売りつける地上最大のセールスマンとなった。ブッシュ大
統領が進めている二つの戦争を勘定に入れなくても、防衛支出
は90年代半ばと比べて2倍に膨らんでいる。08年度の防衛
予算は、第二次世界大戦が終わってから最大の規模となる。
▼この莫大な予算の内訳を調べて分析にとりかかる前に、ひと
つ警告しておこう。防衛費を記す数字は信用できないことで有
名だ。
米議会レファレンス・サービスと米議会予算局から公表される
数字は一致したことがない。インディペンデント研究所で政治
経済を専門とするロバート・ヒッグズ上級研究員は、次のよう
に教えてくれる。
「信頼できる経験則がある。ペンタゴンが(いつも鳴り物入り
で)発表する基本予算の総額を見て、その2倍が本当の予算だ
と考えれば、ほぼ間違いない」
▼国防総省に関する新聞記事をいくつか選んで、ざっと目を通
してみれば、防衛費に関する統計が大きく食い違っていること
に気づく。
防衛予算の3割から4割が「ブラック」と呼ばれる項目で、こ
こに極秘プロジェクト向けの支出が隠されている。いったい何
が含まれているのか、支出の合計額が正確なのか、確かめる方
法はない。
防衛予算を巡って、このようなまやかしが行われるのには数多
くの理由がある。
大統領をはじめとして、国防長官も軍産複合体も事実を隠した
がることがまずあげられるだろう。しかし理由の最たるものは
、上下両院の議員たちが持つ利権である。
議員は自分の選挙区に、防衛関係の企業や事業を誘致して、雇
用機会を増やし助成金を獲得することで、計り知れない利益を
得る。国防総省を支持することが、自分たちの政治利益に直結
している。
▼1996年、連邦財務管理改善法が議会を通過した。行政府
の会計基準を、多少なりとも民間レベルに近づけようとする試
みだった。
この法律によって、すべての連邦機関に外部監査役による会計
検査と、その結果の公表が義務づけられた。だが、国防総省も
国土安全保障省も、いまだにこの義務を果たしたことがない。
議会で抗議の声が出たものの、法律を無視する両省に罰則を科
すには至っていない。つまり、ペンタゴンから発表される数字
はすべて疑ってかかる必要がある。
▼2007年2月7日に08年度の防衛予算が報道機関に発表
されたとき、その内容を検証するために、経験豊富で信頼でき
るアナリストのお世話になった。
新アメリカ財団で、武器および安全保障を専門とするウィリア
ム・ハータング氏と、スレイト・オーグで防衛分野を担当する
フレッド・カプラン特派員だ。
アナリストたちの見解は次の2点で一致している。まず、国防
総省が要求した4814億ドルは、給料と(イラクとアフガニ
スタン以外の)作戦にかかる経費と機器の購入に当てられるこ
と。
そして、1417億ドルが「対テロ・グローバル戦争」のため
に組まれた「補正」予算だということ。このグローバル戦争と
は、いま続いている二つの戦争に他ならない。ただし一般市民
は、両戦争にかかる経費がペンタゴンの基本予算に含まれてい
ると思っているだろう。
国防総省はこのほかに934億ドルを要求している。これは、
07年度末までにかかる経費を今まで公にしないでおいて、0
8年度に持ち越すものだ。
さらに、500億ドルを「引当金」として積み立て、09年度
の予算で埋め合わせる。引当金とは(国防予算に関連する文書
に初めて現れた用語で)よく思いついたものだ。
▼まだこのくらいで驚いてはいけない。アメリカ軍事帝国の全
貌が明らかにならないように、政府は長年にわたって、軍事に
関連する大きな支出を、国防総省ではなく、他の省庁に割り当
てた予算の中に隠してきた。
たとえば、エネルギー省の予算に組まれた234億ドルは、核
弾頭の開発と管理に使われる。国務省は253億ドルを(おも
にイスラエル・サウジアラビア・バーレーン・クウェート・オ
マーン・カタール・アラブ首長国連邦・エジプト・パキスタン
など)他国の軍隊を支援するために投じる。
この他にも、国防総省の公式予算外で10億3000万ドルが
必要となっている。無理な兵力配備を続ける米軍は、新兵を補
充し古兵の再入隊を促すために報償費を増やしたからだ。イラ
ク戦争が始まった2003年には、わずか1億7400万ドル
だった。
▼イラクとアフガニスタンの両戦争では、これまでに少なく見
ても、それぞれ2万8870名と1708名の兵士が負傷して
いる。
退役軍人省には少なくとも757億ドルが配分され、うち5割
が重度の障害を抱える負傷兵の長期治療にあてられる。この予
算では不十分なことは明らかで、もう誰もがあきれ果てている
。また、464億ドルが国土安全保障省にわたる。
こう数字を書き連ねてきたが、隠された軍事予算はまだ他にも
ある。
FBIの準軍事活動にあてて司法省に19億ドル、軍人の退職
基金として財務省に385億ドルが流れている。軍事関連の業
務も行う航空宇宙局(NASA)には76億ドルがわたされる。
さらに、過去に防衛費の不足分を借金で賄ってきたから、その
利息を支払うために、ゆうに2000億ドルを超える予算を計
上している。したがって、合衆国の現会計年度(08年度)に
おける軍事支出は、控えめにみても合計で1兆1000億ドル
を下らない。
■軍事ケインズ主義
▼これだけの支出は道義的に許されないばかりか、財政的に持
続不可能だ。たとえ防衛予算がどんなに巨額でも支払うことは
できる、と信じているネオコンは数多い。アメリカは地上で最
も豊かな国だからと言う。
この点でネオコンは、愛国心は厚くとも実状に疎いアメリカ市
民と何も変わるところがない。残念ながら、この考えはもう通
用しなくなった。
CIAの「世界便覧」によれば、今日もっとも豊かな政治統一
体は欧州連合(EU)である。2006年のGDP(国民総生
産−国内で生産された物品・サービスの総合計)で、EUは合
衆国をやや上回ったとみられる。中国の06年度GDPも、合
衆国にわずかに及ばないだけだし、日本も4番手にぴったりと
つけている。
▼もっと分かりやすい比較もできる。各国の「経常収支」を見
れば、合衆国の経済状態がどこまで悪化しているかが歴然とす
る。
経常収支は、国の貿易黒字あるいは赤字の上に、国境を越えて
支払われる利息や特許料・印税・配当金・キャピタルゲイン・
対外援助など、さまざまな収支を加算して求める。
たとえば日本の場合、何かを製造するには必要な原材料を輸入
に頼らざるをえない。原材料の輸入に途方もない額の支出をし
たうえで、なお日本の対米の貿易収支は年880億ドルの黒字
になっている。経常収支残高は(中国に次いで)世界第2位だ。
合衆国は第163位。最下位である。大きな貿易赤字に苦しむ
オーストラリアや英国よりも下だ。06年の経常収支を見ると
、162位のスペインが1064億ドルの赤字だったのに対し
て、合衆国は8115億ドルの赤字を出している。これが持続
可能であるはずがない。
▼アメリカは、支払い能力を超えようがおかまいなしに、石油
をはじめ何から何まで輸入する。これは、ただ舶来品好きとい
うだけで済まされる話ではない。この支払いに充てるために、
合衆国は莫大な借金をしている。
2007年11月7日、米財務省は、国家債務が史上初めて9
兆ドルの大台に乗ったと発表した。債務シーリングと呼ばれる
上限を議会が9兆8150億ドルに引き上げてから、わずか5
週間後のことだった。
合衆国憲法が正式に発効した1789年から1981年まで、
国家債務が1兆ドルを超えることはなかった。2001年1月
にジョージ・ブッシュ大統領が就任したとき、負債額は約5兆
7000億ドルになっていた。その後、負債は45%も増加し
ている。
▼この巨大な負債を生んだ最大の原因は、世界中の国々が持つ
防衛予算の総額にたった一国で対抗できるまでに増大した軍事
支出である(下の表を参照)。
この過剰な軍事支出は、ここ数年で発生したものでもなければ
、単にブッシュ政権の政策が生み出したものでもない。これは
、まことしやかなイデオロギーに基づいて、長年にわたって積
み重ねられてきたものだ。
▼軍事支出を続ける仕組みは、もうアメリカの民主政治体制に
深く組み込まれていて、いま大惨事を招こうとしている。この
イデオロギーを「軍事ケインズ主義」と呼ぶ。
なんとしても戦争経済を永遠に続け、軍事に金を使っていれば
経済を潤すと信じるイデオロギーである。しかし軍事支出は、
通常経済の生産にも消費にも何ら良い影響は与えない。
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世界の軍事大国トップ10と現行予算の推定総額
1 アメリカ合衆国 6230億ドル(08年度予算)
2 中国 650億ドル(04年度)
3 ロシア 500億ドル
4 フランス 450億ドル(05年度)
5 日本 417億5000万ドル(07年度)
6 ドイツ 351億ドル(03年度)
7 イタリア 282億ドル(03年度)
8 韓国 211億ドル(03年度)
9 インド 190億ドル(05年度推定)
10 サウジアラビア 180億ドル(05年度推定)
全世界の軍事支出合計 1兆1000億ドル(04年推定)
合衆国を除く全世界合計 5000億ドル
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▽訳注
【1】アレックス・ギブニー監督が、エンロンの崩壊を描いた
ドキュメンタリー映画を作成し高い評価を受けている。その映
画のタイトルが「だれよりも頭がいい男たち」だった。邦題は
「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したか」。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
▼映画の「エンロン」は、もうDVDがレンタルされている。
ぼくは渋谷の単館上映で観たが、素晴らしい作品でした。
▼アイゼンハワー大統領が軍産複合体の危険に言及した最後の
演説以来、アメリカという国は何も変わっていないんだね。桁
が違うとかいう話ではなくて、アメリカの軍事費が、全世界の
軍事費の過半数だとは。いくところまでいっちゃったって感じ
で、そりゃ維持できないだろうね。次の大統領は大変だ。
freespeech21@yahoo.co.jp
http://www.emaga.com/info/7777.html
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