【PUBLICITY】1705:読者から〜「ブレードランナーは「完全版」がよい」
発行日時: 2008/2/1
■■メールマガジン「PUBLICITY」No.1705 2008/01/27日■■
▼セブンイレブンで買った「焼さば寿司」を食べながら「ちり
とてちん」を観て、またまた唸っている竹山です。「子はタフ
ガイ」のラストは、必ず喜代美が落語を引き延ばして、必ず誰
かが五木ひろしの「ふるさと」を歌うと思っていたが、まさか
ああいうことになるとは。
しかも夫婦(めおと)落語会のシークエンスを早めに切り上げ
て、あらゆる局面で急展開を見せた。そして「やさぐれA子」
登場!! 脚本の力業でしたナ。いよいよ来週は師匠・草若に
死の影が差す。師弟の出会いで始まった物語は、やはり師弟の
別れで終わるのだろうか。
しかし、「糸子」と「子糸」を引っかけていたということは、
藤本有紀は当初から既に最後まで仕上げてたのか。うーむ、つ
くづくおそるべし。
▼「2007年の12冊」をあれこれ考えていたんだが、今回
は、やめにした。というより、今回から、やめにした。
2007年も終わろうかという12月に、いい本がたくさん出
たんだよねえ。翻訳や映画批評もので、
『エコノミック・ヒットマン』
『メイキング・オブ・ブレードランナー ファイナルカット』
『江頭2:50のエイガ批評宣言』
などなど。あと、12月ではないが『ステータス症候群』とい
う衝撃的な一冊を知ることとなり、それまでの選案が完全に破
綻。で、わざわざ12冊とかいって選ぶのがバカバカしくなっ
た次第であります。
1冊だけ選ぶとすれば、何度も書いているが、西山太吉の『沖
縄密約』(岩波新書)だが、もう1冊だけ選ぶとすれば、
中村哲『医者、用水路を拓く──アフガンの大地から世界の虚
構に挑む』(石風社/2007年12月)だ。
この2冊は、マスメディア批評としても、公共性を問う意味で
も、2007年のニッポンを代表する本である。
▼さて、上に挙げたポール・M・サモン『メイキング・オブ・
ブレードランナー ファイナル・カット』(品川四郎・石川裕
人監訳/ヴィレッジブックス)は、待望のハリソン・フォード
へのインタビューなどをつけ加えた、実に600頁を超える大
著だ。3800円+税。高ぇ〜。
以前『ブレードランナー』について触れた時、これまた以前、
本誌で紹介した『福沢諭吉の真実』で知られる平山洋さんから
「個人的には「ディレクターズ・カット」より「完全版」のほ
うがよい、と思っております。あちらの映像と音声のクオリテ
ィを上げた版を見たいものです」という、「おお、わが心の友
よっ!」なメールが届いた。
本人の快諾を得て、メールのやりとりをインタビュー風に要約
した。「ブレードランナー」を未見の人には、何のことやらさ
っぱりわからん話だろうが、観た人にとっては興味津々。
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Date: Thu, 06 Dec 2007 09:16:36
竹山:メールありがとうございました。リアルタイムでご覧に
なっているのですね。
平山:1982年9月、大学1年のとき信州松本で最初に見ました
。「燃えよドラゴン」との二本立てでした。版はおそらく欧州
版(完全版に近いもの)だったでしょう。プリスがデッカード
の鼻に指を突っ込んで、引っ張り上げるシーンがありましたか
ら。
1987年11月、大学院2年のとき早稲田の名画座で二度目です。
版は北米版だったと思います。その後レーザーディスクを購入
して「完全版」を見ました。
1992年11月、静岡の大学に就職した直後にディレクターズ・カ
ット(DC)が公開されました。それも見ています。
そして今回、2007年11月、新宿バルト9で大画面・高画質・高
音質を堪能しました。
結局劇場では4回見ていますね。しかも全て別の版。残念なが
らLDのみの「完全版」だけは劇場で見ていません。
竹山:完全版の方がいいのですか。
平山:DCはジャンルが混乱しているのです。とりわけ問題は、
ユニコーン登場のイメージシーンで、2時間の映画でここだけ
が現実ではない、想像上の映像となっています。それに今回の
ファイナル・カット(FC)も、このシーンが無ければまだしも
我慢できるのですが、ユニコーンが出てくるところで、全体の
流れが滞っています。
「完全版」は、フィリップ・マーロウものなどのハードボイル
ドの形式に忠実に則っていて、安心して観賞できます。ワーナ
ーのプロデューサーはそれを狙っていたはずで、英国人の監督
がその意図を理解できなかった、ということなのでしょう。
一部では不評の説明過多とも思えるナレーションですが、無く
なったことで完全に説明不足の映画になってしまいました。一
人称で即物的に語る、というのがハードボイルドのお約束です。
ゾラ射殺後のナレーションなどは興ざめですが、冒頭のスシ屋
台前と最後のロイの心情を思いやる部分は、残しておくべきで
した。ユニコーンは削って。
タルコフスキーではないのですから、1回見ただけでは理解で
きない映画とすることが、いいこととは思いません。それに完
全版までの、ラストの空撮も好きでした。『シャイニング』(
1981)の余りフィルムだっていいじゃありませんか。
竹山:ぼくは、とにかく映画館で観れたことがうれしいです。
ところで、「デッカードは人間かレプリカントか」という議論
は、監督たちは人間だと主張しているのですが、ぼくはどちら
でもいいと思います。どちらなのかという議論が起きること自
体、名作の証拠であると考えています。
平山:それには同意します。ただ、デッカードはレプリカント
ではないか、という問題は、DCに観客を呼び込むための制作側
の「煽り」と思います。92年より前にそのような疑問は、ファ
ンからは出されていませんでした。現在は削除されているナレ
ーションによって、そのような疑問の生じる余地はなかったの
です。
竹山:ほぉー。
平山:東京女子大の黒崎政男でしたか、『哲学者はアンドロイ
ドの夢を見るか』(1987)という本をDC以前に書いていますが
、結論は心をもつものが人間である、というようなものであっ
たと記憶します。
つまりレプリカントも人間でありうるし、人間が非人間に堕す
ることもある、ということです。この場合、デッカードが生命
体的人間であることは、前提となっておりました。この映画を
哲学的な問いとして捉える場合、デッカードが生命体的人間で
ないと、思索の前提が失われてしまうのです。
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▼メール感謝です。ま、ぼくはユニコーンが出てきたところで
も、あんまり気にならなかったです。興味を持った方はDVD
をご覧あれ。
「攻殻機動隊」を観た時の「既視感」の根拠は、やっぱり「ブ
レードランナー」なのよねえ。「スワロウテイル」の阿片窟も
、完全に「ブレードランナー」を意識して作られている。岩井
俊二監督自身が語っていた。
えとせとらえとせとら、いまも「ブレードランナー」の影響は
拡がり深まるばかりだ。
さて。電気がなければありえなかった本誌との関係にある読者
の皆さんは、「ブレードランナー」を観た後、どんな夢を見る
だろうか?
freespeech21@yahoo.co.jp
http://www.emaga.com/info/7777.html
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