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【PUBLICITY】1696:「なぜ安倍政権はメルトダウンしたか」3

発行日: 2008/1/26

 
 
■■メールマガジン「PUBLICITY」No.1696 2007/12/31月■■


▼紅白歌合戦の中島美嘉の目が、すごろくみたいにでかかった。

▼11月に入ってすぐに、「ファシズム、或いは「部分の全体
化」について」と題して3回出したが、「自民と民主が大連立
か」と報道されて、こりゃやべえなあと思って書いたものだっ
た。

以下の4段落は、続けて書こうと思っていた要旨。

「政党」は、英語で「パーティー」というとおり、ある社会全
体において、ある「部分」を代表する意味で、そもそも日本語
の「党」ってのも「部分」を意味する言葉なわけだ。

つまり政党はある「部分」を代表する存在で、仕組みとして、
全体を代表することはできないし、する必要もない。

だから、自民党は社会の誰を代表する部分なのか、民主党はど
の部分を代表しているのかが、わからなくなっている現状のま
まで大連立すると、それこそ二重、三重に「捩れ」を孕んだま
まの「大連立」となる。

どんな真っ当な「理念」を掲げていようと、その大連立は最悪
の「部分の全体化」だ。しかもその連立にジャーナリスト=ナ
ベツネが介在していたとなると、何が何だかわからんちんにな
ってしまう。

▼ということを書こうと思っていたんだけれども、山口二郎さ
んが先にブログで政党=部分論を指摘したので、それに大連立
もいったんおじゃんになったので、書かずにきてしまった。

岩波「世界」11月号からの転載「なぜ安倍政権はメルトダウ
ンしたか」は、いったい「誰がどの部分を代表しているのか」
の視点から読んでも、考えさせられることが多い。

相変わらずずぼらな性分でして、2007年の最後の本誌とな
った。2008年、このわたしは、この社会のどの「部分」、
どの「党派」に属しているのだろうか。「全体」と「部分」と
を、見極める情理を磨きたい。「地獄絵」を見る前に。


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■有識者は地獄絵を示せ

佐藤 マルクスが『ルイ・ボナパルトのブリュメール一八日』
で言ったように、政治の世界では、代表する者と代表される者
の論理連関がなくなってしまう場合があるわけです。おそらく
現代は経済にも論理連関の崩れが生じているのだと思います。

デリバティブのようなものが異常に肥大してきて、資本主義に
おける過剰な投機が常態化した状況で、デイトレーダーをやっ
ている「引きこもり」の人が3億円儲けたというような話が生
じる。労働とそこから得られるところの貨幣の連関が崩れ、さ
らに代表と代表される者の連関が崩れてしまう。明らかに自ら
の首を絞める者を自らが選び出すということが平気で行なわれ
てしまうという構造になってしまった。

私は、このような状態が生じたのは有識者の責任だと思うので
す。もちろん有識者の端の方に腰掛けている私にも応分の責任
があります。現在の政治、社会の構造ではまずい、政治の世界
というのは遊びではない、変なことをやると自分の不利益にな
る、本当にひどいことになるという地獄絵をちゃんと描かなく
てはいけない。

沖縄の教科書検定問題にしても、歴史をどう見るか、官僚は何
をやらないといけないのか、真実の確定とはどういうことか、
一切無視したでたらめなパフォーマンスの中に入っていながら
、それが看過されてしまっているのは、ポスト・モダン的な状
況があると思うのです。まさに「人生いろいろ」というような
思想状況がある。しかし、「人生いろいろ」では許されない領
域が政治にはある。国家の基本的な役割や枠組みをきちんと思
想的に、「大きな物語」として描くことは、有識者の仕事です。

それと逆に、選挙に当選するためのイメージの技法は広告代理
店を通じて異常に発達してしまった。代理店のつくったマニュ
アル通りにすれば当選するという構造的な新自由主義化。劣化
ではなくて、新自由主義というものに慣らされ過ぎてしまって
、それに対して機械的な反応をしてしまうような刷り込みが行
なわれていう。

これは知力によって乗り越えないと、資本の力によって、人間
が弱肉強食の世界に全部押し込まれていってしまう。これは文
化の否定であり、民族や国家を否定することにつながります。

メディアも、ポスト・モダン的な状況の中で部数や売上だけを
中心に考えると、個別の事件や局面での状況対応になりますね
。その集積が日本国民をさらにバラバラな個体にする機能を果
たしている。そうすると新聞や雑誌を読んでも、時代の大きな
流れや、国際関係を動かす大きな力がわからない。刺激はテレ
ビのワイドショーやインターネットで無料でいくらでも得るこ
とができる。そうなると新聞や雑誌などの活字媒体は必然的に
売れなくなります。

ですから、逆説的に、政治、外交、経済、社会で生じている問
題を、少し表現は難しくなっても、その構造について解き明か
した論考を継続的に載せる媒体には、読者がついてくるのだと
思います。活字媒体が歴史的に担ってきた啓蒙的役割を強化す
ることが、商業主義的にも売り上げ増につながると思います。

いずれにせよ、新自由主義がここまで進むと次の段階として、
「日本国家、日本国民がバラバラになったままではよくないか
ら束ねよう」という動きが出てくる。これが福田康夫政権で出
てくるのかこないのか。出てくるとすれば、どういう形態にな
るのかに私は強い関心をもっています。

山口 内閣の中央集権化という制度的ハコモノづくりは進んで
いるし、元に戻ることはないけれど、首相が変わったからとい
ってハコの中を埋める中身が出てくるわけではない。福田さん
にしても自民党が大変だから自分が出なければ、という以上の
ことを言っていません。権力中枢の空白というは当分続くので
しょう。

しかもこういう状況は、いままで経験したことがない。官僚が
そこでちゃんと実務を仕切ってくれるか。しかしいま参議院で
野党が過半数を持っているという状況で、国会で否決されるな
りズタズタにされるとわかっている状況で官僚が一生懸命いい
法律をつくるはずはないと思います。そうすると、本当に空白
を埋めるのは誰かという、途方もない大きな問題がこれから出
てくる。

佐藤 ちょっと衒学的になりますが、政治におけるポスト・モ
ダン、近代の超克がついに完成した、これがその姿だというこ
とですよ。

新自由主義プラス保守主義という表象は、小泉さん、安倍さん
の両方が使った。ただ、軸足は明らかに違って、小泉さんは基
本的に新自由主義、安倍さんは保守主義に足を移そうとして、
路線の根本のところから股割きになった。朝日新聞政治エディ
ターの西村陽一さんが辞任直後の9月13日朝刊に署名記事を
書いて、

〈参院選では、憲法改正など保守色の濃い政権の課題と、年金
や地方格差などの身近な国民の課題とのずれが表面化した。格
差対策を念頭に「与謝野・麻生政権」ともいわれる新体制は、
あいまいな「アナウンスなき脱小泉政権」に踏み出そうとして
いた〉と指摘していますが、その通りです。

しかし、このような「アナウンスなき脱小泉政権」では、新自
由主義の「負の遺産」を克服することはできません。西村さん
は〈後継政権は早期に衆院を解散し、信を問うべきだ〉と主張
しますが、私も賛成です。福田政権には選挙管理内閣としての
性格だけを持たせて、政局がある程度安定したところで総選挙
をするべきと思います。

新自由主義の小泉さん、保守主義の安倍さんの両方が去ったあ
との、まさに空虚な空間に福田さんが出てきた。ここで私は、
「ファシズムの強みは無理論なことだ」という宇野弘蔵の言葉
が引っかかるのです。

福田さんは、対中国もハト派だ、ハンセン氏病患者の問題に関
しては患者側の立場に立っていたと、国民にやさしい人なので
はないかという印象がある。その辺りに今後権力基盤を強化す
る資源があると、権力者だったら誰でも考えるでしょう。

そうすると、しばらくは権力の中枢から社会民主主義的な政策
が断片的に出てくるのではないか。つまり、保守主義的なシン
ボル操作と同時に社会民主主義的なシンボル操作が出てくるの
だけれど、社会民主主義のような合理性に基づいた構築はない。

そうするとイタリア社会党左派からファシズムが出てきたよう
に、非常にこわい政治になる危険性があります。それは福田さ
んが強いがゆえにこわいのではなく、むしろ弱いがゆえに出現
するこわさです。

関数体、集合体としての権力はあり、権力にとどまりたい政治
家や官僚がいるという状況で、イメージ操作だけで個別の局面
を乗り切ろうとした場合、どうなるか。初動の段階では、それ
こそ「再チャレンジ」とか「格差是正」に資する断片的措置が
とられる。あるいは周辺諸国と軋轢を起こさないために、靖国
神社参拝問題については中国の要求を丸呑みするかもしれない
。それは実は外交を一休みして、国内体制を固めるという意味
合いをもちます。ここで、どのような国家の形が生まれるかが
重要です。

ところで、いま右派は非常に疲れています。安倍政権の成立は
右派の夢だったのですよ。私自身も安倍政権に対して、小泉政
権の新自由主義を保守の立場から軌道修正してくれるのではな
いかと過剰な意味を読み込んでいた。その夢が時期尚早に実現
し、かくも無惨に倒れてしまった。

右派論壇はショック状態で、たぶん5年、下手をすると10年
立ち直れないでしょう。ここで生き残りだけを中心に政治エリ
ートと官僚が結び付いた場合、どういう絵姿になるかと思うと
、私は空恐ろしいですね。また、政権側から社民的な、国民に
対して優しい政治が出てくると、争点にならないから野党とし
てもなかなか闘えない。
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freespeech21@yahoo.co.jp
http://www.emaga.com/info/7777.html
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