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プロを目指す学生たち〜学生時代にできること〜

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プロを目指す学生たち〜学生時代にできること〜

発行日: 2003/6/23

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■ ■       E T I C.      m a i l    m a g a z i n e
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■ ■ ■             2003.6.23   Vol.69-1(全3話)
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         密着取材!プロを目指す学生たち

          〜学生時代に出来ること〜
                 
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                 〜This week CONTENTS〜    
  
     今回3日連続でお届けする内容のご紹介
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●第一話 :桜、散る
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〇第二話 :弟、妹よ
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○第三話 :父、来る
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■今回の「プロを目指す社会人」 の横顔


□名前:藤本 大道(ふじもと たいどう)さん

□所属:株式会社シナジック
    http://www.synergic.jp/

□インターン先:NCAコンサルティング株式会社
    http://www.ncac.co.jp/index1.html

▼NCA関連サイト:NPO法人美@NCA(ビアンカ)
    http://www.bia-nca.net/

□プロフィール:
1976年、奈良生まれ。現在27歳。
京都大学農学部卒。同大学院生命科学研究科修士課程修了。
学部生時代はテニス部に所属し、部活動に明け暮れる。大学
4年次の実験でバイオテクノロジーの面白さを知る。以来、
生命科学における未知の世界を解明したいという強い欲求に
突き動かされ、同大学院に進学。

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       〜第一話〜 桜、散る
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■■
■■ 悪夢
■■


例年よりも桜の花が早く散った2002年4月のある日。
時計の針が午後2時を指そうとする頃、
藤本大道は手にしていた紙を床めがけて投げ捨てた。

「くそっ!なんでや!」
掃き捨てるように言うと、そのまま頭からベッドに倒れこんだ。
一本のFAXを受け取ってからというもの、彼は明らかに苛立っ
ていた。

その日の昼、寮の部屋の電話がなった。
「もしもし?」
電話に出ると、
「大道か?」
父親の声がした。久しぶりに聞く父親の声は、懐かしく感じら
れる。
「東京はどうや?元気にやってるか?」
「ぼちぼちね」

現在、藤本は生まれ育った奈良を離れ、東京に出てきている。
というのも、4月から新宿にあるNCAコンサルティング株式会
社でインターンシップをするのだ。

この春、3月に京都大学大学院修士課程を修了し、慣れ親しん
だ京都大学に別れを告げた。秋から別の大学院の博士課程へ
進もうと考えている。それまでの期間を就労体験にあてたい、
と考えた上での上京である。

「お前宛に手紙が届いたんやけど」
父親の声がどこか弾んで聞こえる。
「ほら、例のやつや、お前が待っとった」
それを聞いて藤本、
「ほ、ほんま!?それでどないなった?」
声がうわずる。
「それがな、英語で書かれててわからへんのよ」
電話の向こうで父親は苦笑している様子だった。
「これからな、そっちへな、FAXで送るからな、見てみぃ」
「うん、わかった。じゃあね、はい」

電話を切った藤本は、ホッとした。
それもそのはず。

東京に出てくる前から長いこと、
(なんでなかなか来んのだろう?どないなってるんだろう?)
と気をもんでいたが、ようやく待ち望んだものが来るというわ
けだ。

まもなく、「FAXを受信しました」との音が部屋に響く。
だんだんと心臓の鼓動が、速く、強くなってくる。

FAXに伸ばす右手が震える。
紙を掴む指先が汗で濡れている。
手の震えが用紙に伝わる。

用紙を見る――や、いなや、
藤本はその右手で用紙を握りつぶした。

グシャっという鈍い音を残して、
用紙はあっという間にピンポン球ほどの紙くずになった。
それは、彼の進路を阻む、大学院不合格通知だった。


■■
■■ バイオテクノロジー
■■


先ほどから、藤本はベッドで横にながら、
(今まで何のために、やってきたんや!)
と、同じことばかり考えていた。

親の家業がキノコ栽培であったために、幼い頃から生物の不思
議さに興味を持ち、京都大学農学部に入学。大学4年のある日、
実験でバイオテクノロジーの面白さにはまって以来、バイオの
面白さに病みつきになっていった。

(遺伝子レベルで見ると、人間も大腸菌や鳥やマウスとほとん
ど変わらん。なのに、実際は、見かけも脳の作りもまったく違
う。これはなんでなのか)
知りたかった。

いまだ解明されていない未知の世界。それを思うだけで、
(このブラックボックスをぜったい解明したる!)
バイオテクノロジーの研究者になることを夢見てきた。

だからこそ、
(バイオテクノロジーの研究において最先端を行くと言われる、
アメリカの大学院で研究したい)
と思ったのである。

不合格を知った今、思い出されるのは留学のために勉強してき
たこの1年のことである。

毎日、午前9時半に研究室へ行き、研究に取りかかった。
実験の合間に5分も時間が出来れば、すかさず単語カードをめ
くり、英単語をつぶやく。5分経過を知らせるタイマーの音が
するやいなや、単語カードをズボンのポケットにしまい、

「O.K! Here we go!」

周りの友達の唖然とした顔も気にせず、すぐさま実験を再開す
る。夕方、6時にいったん実験を切り上げバイトへ向かい、深
夜2時、バイトを終えて研究室に戻った。その後、明け方まで
研究をして睡眠をとる。

そんな生活を続けること1年。
その末に獲得したTOEFLと筆記試験の高得点、国際学会で発表
という実績、教授からの推薦状だった。
これ以上ないというぐらいの成績と実績を積み上げてきたので
ある。

それなのに、
(これってどういうこと?)
なのである。

藤本はベッドから起き上がって、床に投げ捨てた不合格通知を
拾った。クシャクシャになった通知を丁寧に伸ばしたあと、も
う一度、通知に目をやる。

先ほどは気づかなかったが、文面の下のほうには不合格決定が
なされたいきさつが書いてある。どうやらこの文面は向こうの
大学院の教授が直接作った文章らしい。

(君は僕達の間で一度は合格って決定していたんだけど、本部
のほうが否決してダメでした!?って、何?)
通知をもつ右手の親指にいっそう力が入る。

深く息を吐く。胸のあたりが大きい錘でもぶら下がっているか
のように圧迫される。部屋のなかをひとまわり歩くと、途中、
床に落ちている本の角に足の小指をぶつけた。歯を食いしばる。

(なんでやねん)
再びベッドで仰向けになった。


■■
■■ インターン止めようか 
■■


「これから、どないしよう?」
藤本はポツリとつぶやいた。
今の藤本は夢を断たれたも同然の状態であった。
というのは、すでに合格していた他の大学院で出来る研究は、
彼がやりたかったバイオの研究とはズレていたからである。

自分の進路を考え直さなければいけないのに、
(インターンやってる場合とちゃうで)
インターン開始は明日に迫っていた。
(インターンやめようかなぁ)

もし、インターンをやめれば、このむしゃくしゃした気持ちを
消す時間が出来るかもしれない。
(今やめるのなら、まだましかなぁ)

目をつぶった。背中がシーツの中に埋もれていくように、妙に
体が重く感じられる。通りを走る車の音が聞こえる。

(あかん!壁に一つぶつかったからぐらいで、なんやねん!)
と、すぐさま打ち消す。

(一度インターンをやるって決めたのを途中で投げ出すのは
あかんな。今、やめたら、きっと後で後悔するし、それに
インターンしながらでも進路を考えられるんやから、
別にやめる必要はないし)

深く息を吸って、長く息を吐いた。
(ちょっと、やばそうだったら、その時考えればええ)

とりあえず明日からインターンをすると決意した藤本だったが、
(今日の朝はまだなぁ・・・)
と、不合格の知らせが届く前のことを、思い浮かべずには
いられなかった。


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