【聖書】怒りと不満の原因
発行日時: 2005/8/6 〓/†/【聖書を開けば・・・】〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 第247号 〓〓〓
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ダビデがあのペリシテ人を打って帰って来たとき、みなが戻ったが、
女たちはイスラエルのすべての町々から出て来て、タンバリン、喜び
の歌、三弦の琴をもって、歌い、喜び踊りながら、サウル王を迎えた。
女たちは、笑いながら繰り返してこう歌った。「サウルは千を打ち、
ダビデは万を打った。」サウルはこの言葉を聞いて、非常に怒り、不
満に思って言った。「ダビデには万を当て、私には千を当てた。彼に
ないのは王位だけだ。」その日以来、サウルはダビデを疑いの目で見
るようになった。
(旧約聖書 サムエル記第一 18章 6−9節)
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どんな事においても「華々しい成果・結果を手にする」ということは、本人にとって喜ばしく誇らしいことです。それは、これまで苦しみもがいてきた心を慰め癒す特効薬であり、本人に深い満足と平安を与えるものです。またそれは、他人の口をもって、自分に対する称賛と賛辞のご褒美をもたらしてもくれます。
サウル王は、当初は負け戦になると思われたペリシテ人との戦いにおいて逆転大勝利を収め、意気揚々と町に帰って来ました。人々は、彼らの凱旋を踊りや喜びの歌をもって総出で出迎えたのですが、ときにサウル王は、女たちが歌う歌の中に、自分をたいへん不愉快にさせる歌詞のあることに気づきます。
女たちはこう歌っていたのです。『サウル王は千人を打ち殺し、ダビデは万人を打ち殺した』と。
明らかにダビデに対する評価のほうがサウルのそれよりも高かったのです。
イスラエル軍の長として、勝利という大成果を携え人々の前に戻ってきたサウル王の顔は、まさに『やったぞ!』と言わんばかりに誇らしげで、群集の歓声にも手を振りながら応えていたことでしょう。しかし、ふと王が耳にした歌によって、彼は人々の歓声が決して自分に注がれた賛辞ではなく、むしろ当時はまだまだ無名に近かった「ダビデの武勇」に対してのものであったことを知らされたのです。「何たる不愉快か。」王の気分は大きく損なわれました。
たとい現場の兵士が大きな手柄を立てるという事実があったにしても、一般的には軍の総指揮者である王に賛辞は集中して贈られるべきでした。もちろんそのためにこそ人々は沿道に出て彼らの帰還を待っていたのですから。
ところが人々は、以前からゴリアテというペリシテ人戦士の強豪ぶりを噂に聞いていましたから、しかもダビデが剣という通常の武器を使わずにこの相手を倒したということを聞きましたから、人々の関心はサウル王よりもダビデの方に一気に傾いてしまったのです。(たとえばプロ野球中継などで、勝利したチームの監督インタビューよりも勝利を直接引き寄せたヒーローインタビューの方が、より多くの歓声声援をマイクが拾うことを私たちは経験します。この場合それとよく似ていると思います。)
サウル王はすっかり気分を悪くしてしまいました。自分が受けるはずの名誉も称賛もダビデの手柄に横取りされて、彼は自尊心を深く傷つけられたと感じたことです。ダビデに対する人々の評価が自分に比べてあまりにも高いと感じたサウル王の心には、たしかにこの時「ひがみ」と「ねたみ」の思いが生じていたのです。
そしてそれは、さらに次の余計な不安を生じさせました。すなわち「ひょっとしたら民はこの私ではなくダビデを王にしたいと言い出すのではないだろうか」と。
他人の成功を羨む、とはよく経験することです。自分の成果以上に他人のそれがもてはやされる現実を見せられると、正直「羨ましいなぁ」と思います。しかし次の瞬間、その思いは心の片隅に不安と危機感を生じさせ、やがて他者への「ねたみ」「ひがみ」という攻撃的怒りとなって、ついには故もなく他人を恐れるようになるのです。
聖書は何と語っているでしょうか。《その日以来、サウルはダビデを疑いの目で見るようになった》とあります。悲しいことです。情けないことです。言わば、もっとも信頼して良い部下の実力、能力その成果をねたむあまり、彼の存在をいつしか自分の地位を脅かす敵として疑いだしてしまったのです。
ダビデははたして、サウル王の次期王座を狙っていたでしょうか? そういう思いを積極的に持っていたでしょうか? 答えは、いずれも「ノー」です。彼ダビデは、後にサウル王のいのちを奪う機会が与えられたときでも、決して実行しようとはしませんでした。そんなことはまったく考えもしなかった、彼は良い忠実な臣下だったのです。にもかかわらず、サウル王は自らがダビデをそんな人物であると終始疑ってはばからなかったのです。なんと寂しい人生ではないでしょうか。疑心暗鬼に包まれた日々の歩み、空しいことです。
かつて日本の戦国時代には、「下克上」といっていわゆる下位の者が上位の者を狙う政変が多々あったことですが、しかし根本的には「他人に対する嫉妬、ねたみ、恐れ」を極度に抱く人間が、結果としてそういう人物(敵とする人間)を生み出してきたのではないでしょうか。私たちはその哀れな人物の名を『ドン・キホーテ』と呼んで差し支えないでしょう。
さて、あなたは自分についての他人の評価が気になりますか? あの人には絶対負けたくない、という人があなたの近くにいますか? 本当なら自分が受けるべきはずの称賛を横取りされた、と感じたことはありますか? その人のことをどう思いましたか?
ある種の競争心(闘争心)は必要でしょう。互いに成長するために。でも人の成功をねたみ、相手を恐れ、憎しみを持つほどに深い怒りを抱くようになると、それはもはやあなた自身を成長させる糧とはなりません。百害って一利なしです。そうならぬよう、くれぐれも注意深くあなた自身の心を見張ってください。私たちの心は一人一人決して強くはないのですから。
□□ 聖書の言葉 □□
人に思慮があれば、怒りをおそくする。
その人の光栄は、そむきを赦すことである。
(旧約聖書 箴言 19章 11節)
怒る者は争いを引き起こし、
憤る者は多くのそむきの罪を犯す。
(旧約聖書 箴言 29章 22節)
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サウルとダビデ
イスラエル王国初代の王として油注がれたサウルは、彼の治世の第一歩から大きなつまずきをもってスタートしました。即ち、彼は神の言葉に聞く耳をもたない、身勝手で強情な人物だったのです。人々から求められた王とは言え、その彼を任命したことは神ご自身も『悔いる』と言われています。
治世間もない頃、サウル王はペリシテ人(ことに戦士ゴリアテ)との戦いにおいて勝利を収めた者には『自分の娘を与える』との約束をしました。そしてこの時の勝者がダビデだったのです。後のイスラエル王国二代目王として選ばれた人物です。
実はサウル王にはふたりの娘がいました。メラブとミカルです。ダビデは最初、姉のメラブと結婚するはずでしたが、いよいよという段階になって突如サウル王の一方的心変わりで、彼女はアデリエルという人物に妻として与えられました。いわゆる政略結婚をさせられたのか、あるいはダビデを嫌ったサウル王の企みだったのか定かではありません。
ところで、妹のミカルはダビデのことを積極的に愛していました。それを知ったサウル王は「これ幸い」と、姉に代わって彼女をダビデの妻として与えたのです。
こうしてサウルとダビデは義理とは言え『親子関係』を結ぶことになり、後の王位継承に関する争いに巻き込まれていくことになるのでした。
聖書に何度も記されていることとして覚えておくべきは、サウル王が決して娘婿ダビデに対し心を開かなかったということ。むしろサウル王にとってのダビデの存在は次期王座を狙う脅威だったのです。もちろん一方的被害妄想でしたが。
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