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TRANQUE −夢と病気と恋愛事情−

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バイセクシャルで元精神障害者の佐藤充範がマイノリティな生活の実情を語ります。自己検閲無しで書くので若干アブナイ部分もあるかもしれませんが、日々生き難さを感じる方、心の病に悩む方、また興味本位の方も是非お試しください。

創刊日:2004-08-19   最新号: 2009-10-07   発行周期:月刊   読んでる人:28人
コメント数 : 0   メルマガScore!: -点   バックナンバー: 最新号のみ   発行者サイト: あり

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TRANQUE 第92号

発行日: 2009/10/07

 
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─────────────────────────── 2009.10.07 ──

         T R A N Q U E    第92号

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ご購読ありがとうございます。

9月中に配信する筈が、間に合いませんでした。すみません。
実は月末にモニターが映らなくなるというアクシデントがありまして。
メルマガを書くだけなら、別の環境のマシン使うとか、人のPC借りるとか
ネットカフェに行くとかして、やれないこともなかったですけど、そのパソ
コンで仕事をしないといけなかったので、急遽モニターを物色、調達、セッ
ティングして、週末から週明けまではバイトに行っていて、その後やりかけ
になっていた仕事を片付けて、と、こんなわけでメルマガの方は今になって
しまいました。

それと、もう一つ、お詫びしなければなりません。次号の配信ですが、来月
ということにさせていただきたいと思います。
最近、精神的にも身体的にも具合が良くありません。少し休養を取る時間が
欲しいので、今月末の配信を休ませてください。
申し訳ないです。11月は月末ではなくちょっと早いめに発行する予定です
ので(というか毎回そのつもりが月末ぎりぎりになってるんですけど)、
暫しお待ちくださいますよう、何卒お願い致します。
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BLOG(近況) http://treacle.hp2.jp/blog/
GUESTBOOK http://www.link-jp.com/sr2_bbss/sr2_bbss.cgi?3985treacle


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 -- INDEX ------

        ・最近の事 ‥‥‥‥ 未婚者
        ・過去の話 ‥‥‥‥ 1982年・1983年・1984年
        ・フィクション ‥‥ 虚言

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最近の事
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 < 未婚者 >

年をとるにつれ、結婚していないことが変に思われるようになってくる。
数年に一回程度しか会わないような、俺のことなど何一つ分かっていない親戚
の人達からは、まだ結婚しないのか、なぜ結婚しないのかと、会うたび訊かれ
るようになってもう20年近く経つ。
勿論、この俺が何者なのかも知らない、そんな親戚は放っておくだけだが、社
会的にも、未婚の中高年の人間は、既婚者よりも信用が無いようだ。
結婚を促すそういう世の中の“声”は、俺には、「どこかの女を好きになって
その女と一緒に住んでセックスしてなるべく子供もつくれ」と聞こえる。
極めてプライベートな、アイデンティティーに係わる、全く個人の自由な意思
に任されている筈の事なのに、何故、周りから圧力をかけられなければならな
いのか、俺は不思議でたまらない。
そうしないと未来の人口が減って困るから、かもしれないが、それなら個人の
心は無視なんだろうか。自分の人生を犠牲にし、幸福を求めることすら諦め、
精神的にどんなに苦しもうとも、生き物としてただ肉体を繁殖させろと言うの
だろうか。
俺は、自分勝手と言われようが、我が儘だと責められようが、死ぬまで自分の
好きなように俺自身の人生を生きたいと思っている。そもそも人間なら、誰を
好きになろうが、誰と一緒に住もうが、自由な筈だ。
恋愛の相手を異性に限定する必要もないし、付き合っている人と配偶者になる
か恋人同士のままでいるかも互いの気持ち次第だ。住むことにしろ、独りで暮
らそうが三人四人で暮らそうが、恋人と同棲しようが友達同士で同居しようが
全ては本人達の勝手である。
だから、何歳以上の人は結婚して家庭を持っているべきだ、みたいな事を(日
本の)世間が常識の如く押し付けるのはおかしい。それは確かに、或る狭い社
会の中では「常識」かもしれないが、決して「自然」ではない。

しかしながら俺自身、生涯結婚しないで時々友達と一緒に住んでみたりしなが
ら子供みたいに自由気ままに生きていたっていいんだ、と完全に吹っ切れたの
は、実は極最近のことだ。
俺は性的な問題を別にしても、人間的に欠陥だらけで未熟でもあるので、いつ
まで経っても自分が結婚生活を送れるようなまともな大人になれないことに、
正直、引け目を感じていた。罪悪感すら有った。社会に対しても誰かに対して
も結局何の役にも立たず、自分の事しか考えない俺みたいな奴は、生きている
資格なんか無いと。
けれども身近な人に「自分は世の中に不要な人間だし、病気で人様に迷惑かけ
るばかりだし、生きていても意味が無いからもう死んでしまいたい」と言われ
た時、「誰かの役に立とうなんて思わなくていい、迷惑かけてくれたってい
い、存在に意味の無い人なんていない、ただ生きててくれるだけで俺は嬉しい
から」と自分が答えていて、はっと気付いたのだ。
かつて俺にもそう言ってくれた人がいた。でも言われる側では自分の価値を見
出すことができなかった。言う側からはその人の価値が分かる。この大切な人
が楽しく過ごしてくれさえすればそれでいいと思う。
こういうことなのか、と思った。つまりこんな俺でも、俺を愛してくれる人に
とっては、生きていてもいい存在なのかもしれないのだ。
卑屈になって死ぬことばかり考えているより、どうせそのうちお迎えが来るの
だからそれまで楽しんでやろうじゃないかと、開き直ってではなく晴れやかな
気持ちで、そう思えるようになってようやく、結婚しないことについても、人
から奇異に見られても後ろ指をさされても信用されなくても見下されても、俺
は「自然」な生き方をしているだけだ、誰にも文句は言わせない、と思えるよ
うになったのである。

それで、ジョニーとの関係も、これでいいんだ、と確信が持てた。別に、こう
いう関係は良くない、とか思っていたわけではないのだが、これまでは、俺達
は何なのだろう、いつまでこういう付き合いができるんだろう、と何となくも
やもやしたものが有ったのだ。
俺達は、性的な行為は(極たまにだが)するとしても、恋人同士という雰囲気
はまるで無い。一緒に歩いていても他人から所謂「ゲイカップル」と見られた
ことは、若い頃も含めて、今まで唯の一度も無い。長時間観察でもしていれば
もしかしてあの二人は……と怪しむ人も中にはいるかもしれないが、俺達は互
いをゲイパートナーを見るような目では決して見ない。
若干年長者のジョニーに対して俺が後輩のように振舞うかといえば、そんなこ
とは無いし、では友達同士かというと、それよりは兄弟に近い気がするが、そ
れも実際の兄弟同士の感じとは無論全然違う。
俺はこの関係を「仲間」と呼ぶのが一番しっくりくる。文字通りの、同類とい
う意味の「仲間」だ。友達でも兄弟でも恋人でもなく仲間同士の関係でいるの
が、俺達にとって「自然」な形なのだと改めて思った。
だんだん高齢になってきて、先の事も考えるべきなのだろうけれど、俺は彼と
死ぬまでずっと付き合って行きたいという気持ちは有っても、例えば結婚(同
性婚)とか、養子縁組とか、そういうことはしたいと思わない。
仲間である彼と、たまには一緒に暮らしたり、暫く離れ離れになってみたり、
これからもそういうふうにしながら一生過ごして行きたいと思う。途中、どち
らかが誰かと結婚することもあるかもしれないが、それならそれで良いのだ。
(ジョニーも多分そう思っていると思う。俺に例えば「彼女」がいようとお構
い無しの人だから。)
そして俺が生涯独り身のまま最後は孤独死したとしても、俺自身にとっての
「自然」な生活を送れていたのであれば、それはとても幸福だったと言えるの
だ。

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過去の話
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 1982年・1983年・1984年

高校を卒業した年(1982年)は、俺はまだ高校時代の延長のような生活をして
いたが、その翌年になると、色々と状況が変わってきた。
結婚した涼子さんとは会う機会が激減し、典子や小原との付き合いも徐々に薄
くなっていき、逆にジョニーとの関係は密になり、そして新しい出会いも数多
くあったのだった。
最も大きな変化は、この年の春、デザイン系の専門学校へ入ったことだ。そう
いう仕事に就こうと当時考えたからであるが、結果を先に言ってしまうと、こ
の学校は一年でやめてしまい、きちんと技術を習得することはできなかった。
ただ、覚えた事も多く有ったので、後に、そういう職種のアルバイトをした時
には大変役立った。
それに、その学校でたくさん友達ができたり、高校とはまた違った感じの学園
生活を楽しめたりして、自分では充分有益だったと思っている。つまりは、遊
びに行ったようなものなのだが。

幾つかのバイトをしながら専門学校へ不真面目に休み休み通っていたこの頃、
バンド活動も活発になっていた。プロになろうという意識は特に無かったけれ
ど、多少はファンがいてくれたこともあって、ライブは頻繁には無かったにし
ろ、定期的にスタジオに入って練習し、真剣に活動していた。
しかし本気でやるが故に亀裂も生じてきて、そのバンドは、この年の秋、結局
解散してしまった。解散というより分裂と言った方が正確かもしれない。俺も
元のメンバー一人と共に、別のメンバーと組んで、すぐに新しいバンドを始め
た。その時、新メンバーにはドラマーがいたから俺はまたヴォーカルに戻っ
た。
そして11月には別の友人達と、一緒にバンドをやろうという話が持ち上がり、
俺はそこにも加わって、バンドは掛け持ちになった。パートはそこでもヴォー
カルだった。もう一つのバンドとはジャンルが違うので歌い方も変わって面白
かった。

翌年の1984年は、春になる前にもう小原とは会わなくなっており、典子とも秋
頃には自然消滅的に付き合いが終わった。高校時代の他の友人達とも徐々に切
れて、昔からの遊び友達であるタクと、高校在学中から俺を慕ってきていた後
輩の藤沢という美少年と、バンド関係の連中を除いて、俺の周りには高校卒業
後に知り合った人達ばかりになった。
ジョニーとの仲は益々深くなっていったが、俺は他に、バイトやバンドの関連
で知り合った女性と付き合ったりもした。

一方ジョニーは、その頃、極めて危険な生活を送っていた。元々堅気とは言え
ない人間ではあるが、この時期は特に、彼自身が薬をやるとか詐欺を働くとか
人を殺傷するとかは(多分)しなかったにしろ、そういう事に係わりの有るよ
うな裏の仕事に数多く手を出していた。私生活の面でも、以前から複数の男女
と関係を持ってはいたけれど、それも手当たり次第やりたい放題であった。
とは言え、別に荒れていたとかいうわけではなく、いつも冷静で、単に自由奔
放なだけなので、俺はあまり心配もしていなかった。俺に対しても、それまで
通り、というか寧ろ前よりもっと、大きな愛情や信頼を寄せてくれていると感
じていたから。相変わらず乱暴に、ではあったが。
それに、その危ない仕事については、俺も時たま(意味も分からず軽い気持ち
で)手伝ったりもしていて、その労力の楽さと報酬の高さには魅力を感じてさ
えいたのだった。
これが翌年、かなり面倒な事態になるのだが、そんな事はまだ知る由も無かっ
たのである。

秋には、俺はまたアパートを引っ越した。しかしまだ家賃四万の風呂無しの部
屋しか借りられなかった。前年、専門学校の学費を払っていたり、バンド活動
を続けていてレンタルスタジオや諸々の費用が割とかかるので、バイト代も貯
まらないのだった。
けれども、今度の部屋は台所が結構広く、そこの一角にシャワーを浴びられる
場所が作れた為、昼間だろうが深夜だろうがいつでも身体が洗えるようになっ
て、何処かで風呂を借なければいけないという煩わしさからはようやく解放さ
れた。

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フィクション
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小説[凛ノ転性(仮題)]

  虚言

「何か、精神的に大きなショックを受けたとか、かもしれないですね」
と、俺は余計な事を口走った。その場を取り繕う為に、つい、いい加減な事を
言ってしまった。一瞬で俺が記憶を失うような精神的ショックとは、一体どう
いうものなのか、見当も付かないのに。しかし、トオルがツッコんできたのは
そこではなかった。
「ところで、俺が今朝電話した時、リンがケータイ忘れて出かけたって、君、
言ってたけど、それは……」
「……あぁ、あれは(そうだった。でもそんな事もうどうでもよくないか?)
すみません。嘘です。記憶が無いので私が代わりに出て、適当な事を言いまし
た」
「なるほど、あの時はまだ部屋にいたのか。じゃあランちゃん、その後、君は
リンに、記憶が無いリンに買い物頼んだってこと?」
俺は絶句した。言われてみればひどい話だ。なんて身勝手な女なんだ。自分が
ノーメイクで外に出たくないからと言って病人の兄を使いに出す妹が何処にい
るのだ。俺の姿をした彼女も、トオルの言葉を聞いて、自分が悪者にされたと
感じたのだろう、彼には気付かれないように俺を睨み付けた。けれどもトオル
はそんなつもは無かったらしく、慌ててこう言った。
「あ、いやいや、違うんだ。別に責めてるわけじゃないんだ。そうじゃなくて
何というか、君も本当は、リンの状態がそんなに悪いと思ってないんじゃない
か、と、思って……。俺、買い物してるリンを見てたけど、記憶を失ってると
は全然思えなかったんだよな。あー、そうそう、カードの暗証番号も打ち込ん
でたしね。……でも、俺のことは分からない。これは俺としてはツラい事実だ
けど、覚えてる事もあるなら、きっと一時的な、軽いもの、かもしれないよ
ね?」
やっぱりトオルはいい奴だ、と思いつつも、予想外に話が都合の良い方に流れ
たので、俺は即座にそれに乗った。
「あっ、そうなんですよ実は、覚えてる事も多いみたいで。部分的な記憶喪失
のようです。こういうのは、或る日突然治ったりするっていう話も聞きますよ
ね」
これなら、入れ替わったカラダが元に戻った時も、急に記憶が戻ったと言って
済ますことができる。これで解決だ。と思ったらトオルが言った。
「でも早く病院に行かないと」
彼は正しい。それは俺を本当に心配してくれているからこそ出る当たり前の言
葉である。だが、俺は正直うんざりしてしまった。病院へ行くのを拒否する理
由など見つからない。嘘を言い続けることがこんなに疲れるものだとは知らな
かった。俺は返答に窮して、彼女の方に顔を向けた。
すると彼女は、病院に連れて行かれるとでも思ったのか、激しく首を横に振っ
た。そしてこれが俺にまた時間稼ぎの方法を思い付かせた。
「はい、でも今は……、土日ですし、兄も行くの嫌がってますから、もう少し
様子を見てからにします」
「そうか……」
暫く沈黙が有った。トオルは最初からずっと、彼女の方、つまり俺のカラダを
した凛の方ばかり見つめている。俺はこっちにいるのに。彼はそんな事は知ら
ないのだから無理も無く、寧ろ俺には喜ぶべきことでもあるのだが、ちょっと
寂しい気もしていた。無論、幾ら双子のように俺にそっくりだといってもこの
「女」を彼が好きになることは、この先も有り得ないわけで、俺はいよいよ、
一刻も早く「男」に戻らなければと気が急いてくるのだった。
と、ここでふと俺は思い出した。トオルは今日、夜勤に出る日の筈だ。何故こ
の時間こんな所にいるんだろう。
「それはそうと、トオルさん、今日は兄と何か約束でも……?(俺は覚えが無
いけど)」
「え、あぁ、いや約束はしてないけど、リンが今日もし暇ならちょっと寄ろう
かなあと。でもまあ朝電話したら留守だってことで。で、さっき昼メシ食いに
外に出て来たら、リンを見かけて……」
「そうでしたか(それで追いかけて来たのか)」
「そうだ。メシ食うの忘れてた。二人は? もう済んだの?」
「いえ、まだ……」
そういえば朝から何も食っていない。言うまでも無く、食事どころではなかっ
たからだが、確かに腹は減っていた。時間もとっくに昼を過ぎている。
「それなら、三人で食いに行かないか? この近くに美味い定食屋があるんだ
よ。なあ、って、お前は覚えてないか……」
トオルにそう言われて困惑している彼女を尻目に、勿論その店をよく知ってい
る俺は思わず、いいですね、と賛成しそうになった。が、口を開く寸前、はた
と気付いて思いとどまった。俺は外に出られないんだった。すっぴんで、男の
服を着た、このままの格好で出ることは彼女が許していないのを、危うく忘れ
るところだった。それに、考えてみれば俺としても、俺の姿をした彼女がどん
な事をやらかすか気が気ではない。やはり出かけるのはまだ無理だ。
「外食は、困るので……」
「あ、そうだったね。ごめんごめん。じゃあ出前でも取ろうか」
三人で食事をするということ自体に、俺は不安を感じないでもなかったが、嫌
だと言って彼を追い返すわけにも行かず、結局、宅配ピザを頼むことにした。
俺のリクエストでピザにして貰った。単純に、好きだからでもあるが、これな
ら食べ方の違いで怪しまれることは恐らく無いだろうとも思ったのだ。

・・・つづく

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TRANQUE 第92号           2009.10.07 発行(月刊)
    発行者:佐藤充範 noveltreacle@gmail.com
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