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『電子耕』No.233-2008.05.02号

発行日時: 2008/5/2






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隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」  第233号
−環境・農業・食べ物など情報の交流誌−
2008.05.02(金)発行      山崎農業研究所&編集同人
<キーワード>
環境・農業・健康・食べ物などの情報提供、高齢者と若者、農村と都市の
交流ミニコミ誌。山崎農業研究所&『電子耕』編集同人が編集・発行。
http://www.taiyo-c.co.jp/public_html/yamazaki/yama_index.htm
*************************************発行部数  1360  部***************
□  目  次    □----------------------------------------------------
<巻頭言> 地域振興における農業と商工業との連携 石川秀勇
<82歳からのメッセージ>  映画・明日への遺言 原田 勉
<まぼろしの青山上水> その9. 麻布水道 安富六郎
<山崎農研会員の著作紹介> 「水資源管理と環境保全」 千賀祐太郎著
<編集後記> 古い奴だとお思いでしょうが…
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<巻頭言> 地域振興における農業と商工業との連携
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 一頃は「地方の時代」ともいわれた。しかし、経済のグローバル化などから
状況は著しく変わり、地域振興のあり方についても、視点を変えての取組みが
大切になってきている。

 農業と商工業との連携による推進は、その一つと思われる。現況では、農業
者にあっては「農協」などを主とする農業関係の組織に、商工業者にあっては
同じく「商工会」などを主とする関係組織に所属して、それぞれが分かれた事
業活動をしており、双方が連携してという意識は、総じて乏しいのが普通であ
る。

 とはいえ、その連携の取組みを既にしており、或は具体化の検討は未だが潜
在的な意識(発想)は持たれている、という状況などは一部で見られるのであ
る。例えば、2年前にある地域での調査で知りえた事例であるが、次のこと等
が挙げられていた。

・農業生産者の組合と地元ス−パーとが契約し、特別栽培米を生産・販売をし
 ている。
・食品加工業者と加工用ポテトの生産契約をし、農業生産者がグル−プで遊休
 農地等を活用してその省力生産をしている。
・地域産の特色ある食材を使った加工食品の開発をする(商工サイドからの発
 想で、具体化については未検討の段階)。
・消費者を引きつけられる地域のブランド農産物づくりを進め、市街部の空き
 店舗対策に役立てる(同 上)。

 今国会に、農林水産業と商業・工業等の連携の促進を掲げる、「中小企業者
と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律案」が上程されてい
る。その説明の骨子は、“中小企業者と農林漁業者とが有機的に連携し、それ
ぞれの経営資源を有効に活用する事業活動を促進することにより、地域を支え
る中小企業の経営の向上及び農林漁業経営の改善を図るため、税制・金融面を
はじめとする総合的な支援措置を講じます。”というものである。

 国政レベルでのこのような動きは、時宜を捉えたものであり、地域振興での
農業と商工業との連携の考え方を当たり前のものとする、確かな方向づけの基
盤となっていこう。そして、広がりには年数を要するかも知れないが、具体的
なその事業活動への取組みの事例を増加させることが期待されよう。

石川 秀勇
山崎農業研究所、千葉県野田市在住
y.noken@taiyo-c.co.jp

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<83歳からのメッセージ>  映画・明日への遺言 小泉堯史監督
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 昭和二十年五月十四日、名古屋市北部の絨毯爆撃により市の北部80%が焼
失、名古屋城も炎上した。無差別爆撃したB29も撃墜され米軍搭乗員も捕獲
された。七月数回に分けて米兵十六名を斬首処刑。終戦を知り陸軍大臣に報告
したが、その時すでに陸相は自殺していた。

 九月二十一日、元東海軍司令官岡田資中将は米軍搭乗員処刑の罪に問われて、
関係した部下と共にB級戦犯として裁判にかけられた。

 「司令官は、その部下が行ったすべてにおいて、唯一の責任者である」と岡
田中将は部下を守り全責任を負う覚悟を見せる潔い姿は、次第に、敵国の検事
や裁判官をはじめ法廷内にいる全ての人を魅了し心動かしていく。

 岡田中将が命を懸けてまでも守り抜いたものは何だったのか?

 一般民衆への無差別爆撃を批判しながら法廷闘争を「法戦」と呼び、飽くま
で自分の信念を曲げることなく、すべての責任は指令を下した自分にあると主
張、あくまでも戦い抜こうと立ち向かった

 連日法廷に立つ夫の姿を傍聴席から見守る妻・温子(はるこ)と家族の存在。
言葉交わすことは許されないが、笑顔を交換することでお互いを深く支え合う
夫婦の姿がそこにあった。


 映画はすべて法廷の中だけに設定して、一般観客向きではないが、その迫力
は感動を振るわす力が充分にあった。映画を観た後で、醜い自殺未遂した東條
英機などに比べて、実に眞の日本人らしい岡田中将の姿に誇らしさを感じた。

 誇りや品格を忘れてしまった現代。ことに政界・財界の指導者の醜さに比べ、
岡田中将の姿こそ、次の世代に伝えたいメッセージと思った。時代に一石を投
じる、潔く人間味溢れるこの映画を是非若い人たちに観てもらいたい。そして
あの戦争は何だったのか。無差別爆撃はドイツ軍のスペイン・ゲルニカに始ま
り、日本軍の重慶爆撃と続き、最大、最悪なのは米軍の日本各地に展開した悪
魔の乱行だった。

 あれから六十三年たっても私の悪夢は今でも続いている。


 映画の主演は、藤田まこと、富司純子、脇に西村雅彦、田中好子など。
 
 監督・脚本は小泉堯史(こいずみ・たかし)

 黒澤明の助監督をつとめ、黒澤明の遺稿『雨あがる』で劇場映画デビューを
果たす。

 原作は大岡昇平の『ながい坂』(角川文庫)、十五年前に読み、脚本を書い
て黒澤さんに見ていただくのを楽しみにしていたが、機会を逸し、長い間机の
中に眠っていた。今回、原正人プロデューサーの勧めで映画化実現。

 共同脚本はロジャー・パルバース

映画・明日への遺言 公式サイト
http://ashitahenoyuigon.jp/

 
 岡田 資(たすく)1949年9月19日処刑、享年60歳

 死とは

 生を享けたものには死は必然だ。生まれた時已に吾人は神や仏−大自然の法
則でもよい−から死の宣告を受けて居る。期日が通告されないだけの事である。
然らば一体、死後の不明と云う以外に、死について何を恐怖するのであらうか。
(中略)

 故に、生を整へ終えるならば死の恐怖など起きる余地がない。東西何れの宗
教も、此の生を整へる教である。教理、哲学で道理を通し信仰で柔らかに包む
のだ。生を整へるとは端的に云へば、永遠の生命を発見し、大死一番、とくの
昔に、死のみか生をも超越して了ふ事だ。仏教は死の後始末や、死者の思ひ出
に関係するものかの如き観察を下すならば、それは笑えぬ茶番である。

大岡昇平著『ながい坂』(角川文庫)より引用


山崎農業研究所会員・『電子耕』編集同人
原田  勉
tom@nazuna.com
http://nazuna.com/tom/

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<まぼろしの青山上水> その9. 麻布水道
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 青山上水は、廃止された後(1722)、庶民の生活水として利用された。しか
し木樋の耐用年は約20〜30年と見なされていたから、保守管理の無かった時代
には朽ち果て、明治時代には汚水の混入も起こるなど、不衛生な状態にあった。

 明治12年(1879)、明治天皇は地域市民の衛生施設の改良、発達のための資
金を下賜され、その一部は麻布区にも配布された。有志はこれを契機に区に働
きかけて水道の開設を進めた(港区史)。

 この下賜金、有志からの寄付金と区からの支出を加え、計2万円で麻布区が
工事を担当した。明治14年(1881)に着工、翌15年に完成した麻布水道は、麻
布、赤坂、芝の3区(現在の港区)に給水した。給水線は5線に分かれ、その
うちの2線は旧青山上水の道筋をそのまま引き継いだ。

 水道使用料は井戸一つにつき年税4円、寄付をした有志はその金額に応じて
免税された。水道規模は(明治17年:1884)井戸数189、使用者は920戸を数え、
この中には官庁5件、皇族1件、銭湯10件を含んでいた。しかし完成翌年夏頃か
ら早くも漏水による水不足が生じ、隔日給水となり日常生活に支障を来すよう
になった。このため麻布水道はその維持管理に堪えられず、ついに明治17年、
事業を打切り、東京府管轄の玉川上水線に編入の余儀なきに至った。

 なぜ、漏水事故は多発したのだろうか。当時の給水は木樋によったことと、
青山、麻布、六本木あたりは地形的に複雑であることに関係するように思われ
る。高低差は10m以上もあるところも少なくない。この場合、管路に加算され
る水圧は1気圧以上になる。これに水衝撃が加わると木樋管路は壊れやすい。
さらに給水井戸の水位調節には古くから用いられてきた排水による減圧装置が
必要であった。節水のために、このような排水路を撤去すれば、水圧は増し木
樋故障の原因になろう。

 東京府に引き継がれた青山上水の水は、水質になお問題を残しながらも明治
26年(1893)鉄管による改良水道の敷設まで、地域の発展に大きく寄与したこ
とは云うまでもない。

安富六郎
山崎農研会員 電子耕編集同人
y.noken@taiyo-c.co.jp

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<山崎農研会員の著作紹介> 「水資源管理と環境保全」 千賀祐太郎著
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水資源を国内、国際的視野から、社会資本として、いかに現代的に理解する
かを分かりやすく書いた入門書。大学生、水問題研究のための本。

(目次)序章:水危機の時代にあたって。第1章:地域における水資源の特性。
第2章:水資源開発・管理の理論と手法。第3章:河川環境の保全と再生。
第4章:河川環境保全の運動。終章:21世紀の水資源管理

2007年鹿島出版、198頁本体2940円(税込み)

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<編集後記> 古い奴だとお思いでしょうが…
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という科白が昔の歌にあるが、どうだろう、「食料自給は大事だ」などと言う
と、やはり古くさい奴だと思われるのだろうか。

近頃、穀物価格の高騰や中国ギョーザ事件の影響もあって日本の食料自給率39
%がマスコミ等で取り上げられることが多い。そんななか次のような記事を目
にした。

 シリーズ 村田武の『現代の「論争書」で読み解くキーワード』/JACOM
 第1回 「食料自給率」―農林水産省編『食料・農業・農村白書 平成19年版』
 http://www.jacom.or.jp/series/shir160/shir160s07110107.html

愛媛大学教授の村田武さんは次のように言う。

「食料自給率向上という国政は、WTOやEPA(経済連携協定)の自由貿易主義で
は時代錯誤とみなされがちですが、これは、第2次世界大戦後の国際社会にお
いて、国連規約のなかで確認された人権に関わる問題なのです。」

1976年に発効となった国連の「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規
約(社会権規約)」(日本は1979年に批准)では、すべての者が飢餓から免れ
る基本的な権利をもち、それぞれの国が食糧の生産、保存及び分配の方法を改
善する措置をとるべきだとしている。

 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2b_001.html

「社会権規約」と「自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)」
からなる「国際人権規約」は、国籍・性別・社会的地位にかかわらずすべての
人が人として尊厳をもって生きるために定められた国際法である。

食料自給政策は「WTOやEPAの自由貿易主義では時代錯誤」という見方は経済最
優先の一部の人たちには根強い。

たしかに経済をめぐる状況はかわってきている。しかし状況が変わったからと
いってより大切な問題をおろそかにしていいはずがない。人権は古くからの問
題であるが、それはその実現が困難だということでもある。

やはり食料自給なんて古くさいという考え方のほうがおかしいのである。

2008年05月01日
山崎農業研究所会員・田口 均

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次回  234号の締め切りは05月12日、発行は05月15日の予定です。

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