『電子耕』No.231-2008.04.03号
発行日時: 2008/4/3
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隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」 第231号
−環境・農業・食べ物など情報の交流誌−
2008.04.03(木)発行 山崎農業研究所&編集同人
<キーワード>
環境・農業・健康・食べ物などの情報提供、高齢者と若者、農村と都市の
交流ミニコミ誌。山崎農業研究所&『電子耕』編集同人が編集・発行。
http://www.taiyo-c.co.jp/public_html/yamazaki/yama_index.htm
*************************************発行部数 1349 部***************
□ 目 次 □----------------------------------------------------
<巻頭言> 名前を変えれば良いか 小泉浩郎
<読者の声> 原田千鶴さんから
<山崎農業研究所 第128回定例研究会要旨>
(その2) キューバ農業と社会
2)「土地利用についての印象」安富六郎氏
<82歳からのメッセージ>
樋口一葉の転機となった『大つごもり』 原田 勉
<まぼろしの青山上水> その7. 隱田の水車 安富六郎
<編集後記> 無法国家日本
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<巻頭言> 名前を変えれば良いか
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過日、後期高齢者医療制度の説明書が役所から届いた。長生きして医療制度
は、どう良くなるのか。何度読んでも分からない。指示に従わないと被保険者
証を取り上げるという文字が冷たく目に入る。
制度が開始する4月1日、福田首相は「後期高齢者医療制度はネーミングも
悪いから、長寿医療制度とせよ」と指示し、これからはそう呼ぶことにしたら
しい。
4月2日の毎日新聞「みんなの広場」で投稿者は、後期高齢者の住民健診か
ら「これまでやってきた心電図・眼底・貧血検査、血液検査中のクレアチニ
ン・尿酸なくなる」という説明を聞き「住民健診は、早期発見を目的とするが、
後期高齢者の方は病気も後期で、早期発見にならないというのか。これが医療
制限の不吉な前兆か」と嘆く。
名前が変わったから中身が変わる訳ではない。長寿と持ち上げながら、後期
高齢者、もう先がない。世の中への最後のご奉仕、政府や若者にあまり世話を
かけず独立採算で頑張れと一鞭あてられた感じである。
小泉浩郎
山崎農研事務局長
y.noken@taiyo-c.co.jp
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<読者の声>
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■3/25 原田千鶴さん:『電子耕』楽しみです
勉兄の手記、面白く見ています、馬使いの事、馬が笑う瞬間を思い出していま
す、私はお湯で茶碗を洗ったあとたっぷり糠を入れて飲ませる時、餅をついた
ら、馬は待ってるから、私と雅晴が、ちぎって食べさせることになっていて声
も出さずに笑ったもので2匹とも可愛かった、・・・
田の耕すのも洲添え橋を越えた森田さんの田が四角で道繰りで観客が多く、何
度も三冨志兄が優勝したのを見学に行った、タバコやの積男叔父さんなど、叔
母さんに、三冨志は上手なのにと比較文句を言われ喧嘩しては私の家に逃げて
きていたのを思い出しました、早次叔父さんが、馬好きであったとは知らなか
った、兄は馬好きだから馬車引きで稼ぎました、勉兄の手記で子供の頃を思い
出します。
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<山崎農業研究所 第128回定例研究会要旨>
第128回定例研究会要旨―海外農業―
2008年3月1日(土) 太陽コンサルタンツ(株)新宿区四谷三丁目 不動産会
館
参加者 23名
(その2) キューバ農業と社会
(平成19年11月日本キューバ科学技術交流委員会を機会にキューバを訪問し
た当研究員からの報告)
2)「土地利用についての印象」
安富六郎氏 山崎農研代表
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農村・その土地利用を通してキューバの実態を見たいと思った。今回学術的
グループとは別個の観光グループに入ったため、主に観光バスの内側から農地
や農村環境のごく一部を見ることができた。
稲作は主に雨季の5月から9月に行われる。今回は乾季の11〜12月であった
ので、稲作は見られなかったが、その刈り取りの跡の農地は確認できた。湿地
帯には水牛が放牧されていた。広大な草地に少数の家畜、牛が放牧されている。
灌漑はタバコ、柑橘、牧草地、水田および雑作農地に行われているといわれ
るが、面積は毎年減少の傾向にある。畑地灌漑は畑地の周辺に配管されたもの
を見た。その管理状態は望ましいものではなかった。農村風景として草地にス
プリンクラーでの散水を見たのみで、活気ある風景は見られなかったのは残念
であった。用水汲み上げには風車が使われている。
灌漑水路やその他施設維持の予算の欠乏から整備できず漏水も多いと聞く。
さらに水使用に対する賦課金は灌漑水の減少の原因とされている。水資源とし
ては各県にはダム施設があって、この水資源を使い、さらに水田での反復利用、
循環施設を整備すれば、水田農業は十分成り立つような印象を受けた。農業・
農村の活性化は経済的な要因と結びついていると思われる。
(文責 安富六郎・田口均)
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<83歳からのメッセージ> 樋口一葉の転機となった『大つごもり』
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私たちが現在お世話になっている五千円札。その肖像の樋口一葉の作品は、
映画や芝居では見ていたが、原作に接したのは初めてであった。
一葉の本名は奈津。明治五年三月二十五日に東京内幸町の東京府庁構内長屋
で生まれた。父 則義は東京府の下級官吏をつとめていたが、もともとは甲斐
の貧しい百姓の出身である。
維新直前に八丁堀同心の株を買って直参に加わった異例の人であった。武士
という身分に対する自負も強かったに違いない。さほど豊かでもない家計をさ
いて、一葉を中島歌子の名門塾に通わせ和歌や古典を学ばせたのも、武士の娘
にふさわしい教育を身につけさせようとしての背伸びだった。
三好行雄の解説によると、
一葉は明治二十四年に、当時、朝日新聞社の小説記者だった半井桃水に入門
し、小説の制作を志したが、まもなく桃水の美貌とおとなしい人柄に惹かれて、
師への密かな慕情を育て始める。一葉にとって最初にして最後のこの恋は結局、
一葉自身が桃水への愛を自ら絶って師と訣別するという形で終わる。
父 則義が明治二十二年、多額の負債を残して死んだ後、没落士族の苛酷な
運命が樋口家を襲った。一葉は相続人として責任を負わされ、母と妹をかかえ
た経済的苦闘がながく続いた。小説の創作を思いついたのも、原稿料収入を当
てにしてのことであった。
いくつかの戯作風な作品を生み出したが、いづれも成功せず、一葉の文学が
大きく飛躍するきっかけになったのは、貧しい生活経験が糧になったからだっ
た。
明治二十六年の末あたりから樋口家の家計は極度に逼迫し、そのため文学の
放棄を考えたこともある。易者で観相家の久佐賀義孝を訪ね交際するようにな
ったが、千円の借金を申し入れたところ、月十五円で妾になれといわれ、腹を
立てて断った。一葉は文字どおり金のため身を売る瀬戸際まで追いつめられて
いたのである。
何度も引っ越しているうちに、吉原の遊女や銘酒屋の酌婦を身近に見ていた。
いま身をもってカラダを売って生きる女の悲しさを実感することで、一葉はよ
うやく、陽の当たらぬ市井を生きる人間たちの心情に純粋な共感を分け持つこ
とができるようになったのである。
こうして一葉の文学の奇跡ともいうべき一年が実現した。身を売った女の悲
劇を描く傑作がやつぎばやに発表された。
明治二十七年十二月に脱稿した『大つごもり』
明治二十八年一月から翌二十九年一日にかけて「文学界」に分載された『た
けくらべ』
明治二十八年八月に脱稿した『にごりえ』
明治二十八年九月に脱稿した『十三夜』
いずれも一葉自身の体験に裏打ちされた切実な実感に支えられ、つよいリア
リティをそなえて読む者の胸をうつものになった。
なかでも大きな転機になったのは『大つごもり』である。主題も、生活の苦
闘を通じてつかんだ人生認識とかかわるきびしさを、ようやく持ち始めたので
ある。ヒロインのお峯は貧乏な叔父一家を救うために、主家の金を盗む。彼女
は封建的な主従関係の外に出る自由を持たない。その弱い人間が貧なるゆえに
落ちていく罪の世界は、疑いもなく、一葉の生活体験の内部から拾われた主題
である。
お峯の悲哀と、一葉の実感は非常に近い関係にあった。(そのサワリを引用
する)。
「拝みまする神様仏様。私は悪人になりまする。成りたうは無ければ成らね
ばなりませぬ。罰をお当てになさらば私一人、つかうても伯父や伯母は知らぬ
事なればお免じなされませ、もったいなけれど、この金ぬすませくだされと、
かねて見置きし硯の引出しより、束のうち唯二枚、つかみし後は夢とも現とも
知らず、三之助に渡して帰したる始終を、見し人なしと思へるは愚かや。」
伯父に頼まれた二円を弟のように可愛がっていた三之助に渡したが、
「その犯した罪の恐ろしさに、我れか、人か、先刻の仕業はと今更夢路を辿り
て、おもへばしの事あかれずして済むべきや……」
ところが意外な展開になった。放蕩息子の石之助が、硯の「引出しの分も拝
借致し候」という紙切れを残して去っていった。
「さらば石之助はお峯が守り本尊なるべし、後のことしりたり。」で事件は
終わった。
一葉は生前、幸田露伴と森鴎外に高く評価されたが貧しさからの解放はまだ
されなかった。
明治二十九年十一月二十三日、奔馬性結核のため死去。享年二十五歳。会葬
者はわずか十数人という寂しいものであった。
<参考・引用文献>
樋口一葉著 『にごりえ・たけくらべ』
解説 三好行雄・文芸評論家
年譜 明治五〜二十九年・新潮編集部
発行 新潮文庫 初版昭和二十四年
山崎農業研究所会員・『電子耕』編集同人
原田 勉
tom@nazuna.com
http://nazuna.com/tom/
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<まぼろしの青山上水> その7. 隱田の水車
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葛飾北斎の浮世絵、富嶽三十六景に「隱田の水車」という絵がある。
http://www.geocities.jp/freizeit_teshy/framepage1.htm
この絵には富士山を背景に大きな水車が回っている。水路で、ものを洗って
いる女性、そのそばに子どもが遊んでいる。見晴らしの良い高台から、低地の
広がりと遠景に富嶽が見える。ちょうど武蔵野南西方向に富士山を眺めるよう
な方向にある。この絵は隱田村に掛かる水車を利用して描かれたと云われてい
るから、それは青山上水(用水)の何処かの景色を表しているのにちがいない。
隱田とはいまの原宿、代々木にあった隱田村である。JR原宿駅近くにある隱
田神社あたりから代々木の方に伸びた村であった(渋谷区誌)。近くには青山
上水の水源と同じ渋谷川が流れていた。絵の背景の低地から穀物袋を背負って
上ってくる2人の男が見える。田んぼから稲モミを運んでいるのかもしれない。
水車はその穀物調製に利用されているのだろう。
時期は晩秋である。水車は水しぶきを上げて勢いよく回っている。その回転
しぶきの状態から見ると、水路の流れは絵の左から右へ、富士山位置から判断
して南側から北側へ、あるいは東側から西側へ流れていることになる。ところ
が、絵を上水の地図と照合しても、このように見える位置はどこか、よく分か
らない。
そこで、絵の景観を再現できそうな場所を隱田にこだわることなく、青山上
水路の道を歩いてみた。すると新宿内藤町の渋谷川(玉川上水吐水路の下流)
と、青山上水との間に水路を設け、そこに水車を掛けると、この絵の構図そっ
くりになる。
建物をすべて無くせば、背景には低地の新宿御苑と富士山が見えることにな
ろう。この絵の水の流れる方向を無視して、渋谷川との位置関係だけで見ると、
描かれた場所は地形的にみて新宿から青山に至る台地上にあると思わせる。外
苑東通りあたりかもしれない。いずれも絵の背景と同じように、すぐそばに渋
谷川と低地が見えることになる。
次の候補は青山上水の流れていた千駄ヶ谷付近である。今は慶応大学の病院
正門あたりである。このようにして浮世絵に対応させながら(流れ方向を無視
して)歩くとき、多くの地点はこの絵の原図になりうる。隠田村には渋谷川は
あるが青山上水は流れていない。
もし渋谷川に掛かる水車を忠実に描くとすれば、川は低地を流れるので見晴
らしはよくない。とくに隱田村にあたる現在の原宿や渋谷を流れていた渋谷川
流域はかなり低い谷津である。
この絵は青山上水の台地以外からは描けないことは確かである(ある説明書
には原宿の神宮橋付近とある)。創造力豊かな北斎は隠田村の渋谷川に掛かる
巨大な水車を見て、これを青山上水に掛けて富士山を眺めたいと思ったのでは
なかろうか。
安富六郎
山崎農研会員 電子耕編集同人
y.noken@taiyo-c.co.jp
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<編集後記> 無法国家日本
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小泉浩郎さんの巻頭言「名前を変えれば良いか」は、いつにもまして気合いの
はいった文章である。ものを考える・文章を書く原動力のひとつは不正への
「怒り」であろうが、小泉さんの怒りがひしひしと伝わってくる。
小泉さんがとり上げている後期高齢者医療制度に対して調べてみると、社会的
共通資本の提唱で知られる宇沢弘文さんが適切なコメントをしていることを知
った。
日本の医療崩壊と後期高齢者医療制度
世界に誇るべき国民皆保険制度 完全な崩壊への決定的一歩
http://hodanren.doc-net.or.jp/iryoukankei/seisaku-kaisetu/
080222uzawa.html
宇沢さんは「社会保険としての公的医療保険については、各保険者の経営的赤
字は、憲法第25条にしたがって、最終的には国が補填するのが基本的原則であ
る」「国民皆保険制度の基幹的原則ともいうべき、給付の平等性とフリーアク
セスの原則を貫こうとするとき、個別的な保険者について、保険収支のバラン
スを想定することは不可能である」という。
考えてみれば当たり前で、所得の少ない人たち、経済的に余裕のない人たち
(ここでいう後期高齢者の多くはまさにそのような人びとだろう)をひとくく
りにして独立採算にするのはどだい無理がある。
年齢にかわらず、病気になるということがそもそも経済的な負担である。もっ
とも、今回のというかこのところの流れは「だから自己責任なんですよ! 民
間の保険に入りましょうよ!」ということなのだろう。
しかしこういう流れがいきつけばどうなるのか。「じゃあ国も自治体もいらな
いね。いやそこまではいわないけれども、お前ら(公務員)はみんな辞めちま
いな。うん、政治家もいらないや。その分、保険にまわそうよ」というふうに
なっても理屈(屁理屈と言われるかもしれないが)上はおかしくない。
「後期高齢者医療制度」の図面をひいた人たちは、後期高齢者ではない。少な
くとも日々の暮らしに不安をかかえている人ではないだろう。
いまの憲法が完璧だとは思はないが、宇沢さんが言われるように、健康な暮ら
しを保証しているはずの憲法第25条とも、この制度はずれている。(ちなみに、
公務員・国会議員は憲法遵守が義務づけられている(第99条))
無法国家日本
原理原則おかまいなし日本
国家の体をなさなくなりつつある日本
そんな言葉(いや罵詈雑言か)が頭をよぎった。
参考URL
宇沢弘文 社会的共通資本としての医療
http://www1.doshisha.ac.jp/~rc-socap/publication/7iryo_uzawa.pdf
2008年04月03日
山崎農業研究所会員・田口 均
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書名:岩波アクティブ新書45『メールマガジンの楽しみ方』
著者:原田 勉 定価:735円 発行日:2002年10月4日
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