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『電子耕』No.229-2008.03.07号

発行日時: 2008/3/7





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隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」  第229号
−環境・農業・食べ物など情報の交流誌−
2008.03.07(金)発行      山崎農業研究所&編集同人
<キーワード>
環境・農業・健康・食べ物などの情報提供、高齢者と若者、農村と都市の
交流ミニコミ誌。山崎農業研究所&『電子耕』編集同人が編集・発行。
http://www.taiyo-c.co.jp/public_html/yamazaki/yama_index.htm
*************************************発行部数  1345  部**************
□  目  次    □----------------------------------------------------
<巻頭言> 現代のもう一つの不安 安富六郎
<山崎農業研究所 第128回定例研究会要旨>
(その1) 環境保全と合意形成
  「米国東海岸・チェサピーク湾環境復元計画にみる合意形成と農業」
    谷口 敏彦氏
<82歳からのメッセージ>  養父の思い出(後編) 原田 勉
<まぼろしの青山上水> その5. 上水への期待 安富六郎
<編集後記> 火を操る
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<巻頭言> 現代のもう一つの不安
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 環境という対価を無視して組み立てられた現代社会の虚構は世界に対立、混
乱を巻き起こしている。自己の主張を通すために、虚実の宣伝をすることは当
たり前となっている。これは、いま始まったことではなく、いつの時代でも誇
張宣伝、えせものの過剰な情報操作が「虚」と「実」の区別をつけにくくして
きた。

 世界には商業用原子力施設(発電所)は約439(2007年)あって、世界全体
の電力エネルギーの16%をまかない、所有国は30ヶ国に及ぶ。今後50年間にさ
らに約200の発電所建設が予定されると最近の新聞は報じている。すでに各国
で原子力への依存を減少させる努力をしているのに、これは何故だろう。最近
は原子力の評価にも天候異変が生じ、地球温暖化対策の一つになっている。

 環境への安全性の高いことを前提として世界中に原子炉を幾百も計画するこ
とは、現代社会の弊害をさらに助長することにならないか。気候変動や生態系
異変は現代社会への発展のツケなのである、という本質を見失うと、ますます
大きな誤りを積み重ねはしないか。チェルノブイリのような事故がどこかで再
び起これば恐ろしいことだ。

 世界的なニュースとなった柏崎の地震の被害を見るとどうだろう。今までに
世界には数々の人に知らされない事故があるという。その矢先、原子力の安全
性が再び尤もらしくPRされてくる。わが国では青森県での核燃料再処理工場は
安全という。しかし、施設が完全に操業した場合に排出される特別濃度の高い
放射能は地域住民はじめ、広い範囲の沿岸漁業に大きな不安を与えている。

 個人や企業、国家規模の情報隠しや虚実を見抜くのは、各人の見識が問われ
よう。今年予定されている夏のG8会議の議題、CO2削減計画の中で、もう一つ
の不安は、わが国の原子力政策への対応である。携帯ボケになってはいられな
い。

安富六郎
山崎農研会員 電子耕編集同人
y.noken@taiyo-c.co.jp

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<山崎農業研究所 第128回定例研究会要旨>
第128回定例研究会要旨―海外農業―
2008年3月1日(土) 太陽コンサルタンツ(株)
                   新宿区四谷三丁目 不動産会館
参加者 23名    
(その1) 環境保全と合意形成
  「米国東海岸・チェサピーク湾環境復元計画にみる合意形成と農業」
    谷口 敏彦氏
     前(財)農林水産奨励会 農林水産政策情報センター調査部長
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 経過:チェサピーク湾はアメリカ大陸の東海岸のワシントン市、ボルチモア
市、およびニューポートニューズ市などの大都市に囲まれた湾で、牡蛎の生産
で名高い。1960年代に漁獲高が落ち込んだ。地域住民は湾の浄化を行政に働き
かけた。地域から州レベルの問題になって連邦政府が調査を環境保護局に依頼、
調査報告書をつくった。この報告書は湾から300マイル(480km)離れた場所に
ある産業活動も湾の水質に影響を与えていることを指摘している。

 対策:1983年に周辺の州とワシントンDCの6つの組織と漁民との協定が成立
した。1987〜2000年までに窒素(N)、リン(P)の湾流入量を40%削減する協
定が出来た。今後さらに浄化を進め、汚染水域リストからの除外を求めていく。
その後NPOと公的機関との合同委員会も出来て、湾環境復元計画のパートナー
として協定にサインした。ほかにも様々なNPOの協力を得た。

 官民、大学も含めた協働体として合意形成が進んだ。これは官・民それぞれ
の立場が異なってもそれらの人が同じ場所で働いている、ということが成功の
一要因と評価されている。(相手の立場でものを考えることが出来たという意
味)

 チェサピーク湾財団を作り環境教育、地域環境対策を打ち出す。たとえば建
築については省力、下水を流さないでコンポスト化する、環境に優しい原生植
物栽植など、地域への環境教育を行うなど、様々な保全活動を展開した。財団
に協力する会員は20万人に達した。

 成功の教訓として12項目が揚げられている。(1)理論と緻密な知識、(2)高い
レベルの指導者がいる、(3)数値目標をおく、(4)広範な分野からの参加を促す、
(5)組織的協力者にはインセンチブ(魅力的)な手法の提示、(6)市民を巻き込
む、(7)バランスとれた運営、(8)事後浄化装置より事前防止、(9)小規模なモ
デル実験を行う、(10)政府機関の一本化を図る、(11)目標と捗状況の再評価を
する、(12)成果を広く公表する。
(文責 安富六郎・田口 均)

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<82歳からのメッセージ>  養父の思い出(後編)
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 昭和十七年実家の精米所は男の働き手が出征したため養父はその主な働き手
となって手伝った。

 もともと昭和の初め、早次は精米所に働いていて将来は米屋として独立を目
指していたが、第二次大戦後の不況のため米価は暴落してその望みを絶たれた。
つまり、精米所の仕事には慣れていたのである。

 昭和十八年、十九年と忙しくなり、農業との兼業は難しくなった。それで二
十年の稲作は、苗作りまでは行ったが田植えする余力は無く、ついに地主に返
さざるを得なかった。

 戦中の疲れ果てたところに幸い四兄の司人士(ひとし)が復員して精米所を
継いだ。続いて三兄の卯三男(うさお)が帰還し安定した生活になった。

 私は戦後幸いに予備士官学校から東京農林専門学校へ転入学を許可されて養
父の望みを果たした。卒業後養家に帰るにも農地がなく、東京で就職した。

 養父は農地もなく、お国のために買った国債は無価値になり、わずかに遺族
年金で暮らしていた。しかし、このときまた不幸が訪れた。膀胱結石で入院中、
自宅が放火のため焼失したのである。

 息子が戦死したときはもてはやされ、功六級を貰ったので有名になり、年金
もおりるので羨ましがられた。悲しみがそんなもので何になろう。その心はな
った者にしかわからない。

 村のうわさでは、遺族をねたむ者のしわざであろうと話されたが、放火犯は
わからずじまいであった。

 焼跡から金鵄勲章の箱が丸焼けで発見された。中から出てきたのは熱で金箔
がはげた鉛の勲章であった。

 卯三男・司人士兄の協力で再建された家屋はでき、同居してくれたのは司人
士であった。私の代わりに実質的に世話をしてくれたのは四兄夫婦であった。
やがて二人の孫娘もでき平穏な老後を迎えた。

 わずかな楽しみは、テレビで見る相撲であった。若い頃から草角力で大関と
いわれた経験があった。困るのはテレビを見に近所中から集まる子どもたちで
あった。

 私の孝行といえば、息子の太郎が歩けるようになった三つ位の夏、家内と太
郎を一ヶ月余り養父と共に過ごさせたことである。その頃年中出張ばかりして
いたから私の代わりに孝行してもらった。

 やがて昭和三十五年四月十日、流行性の風邪で亡くなった。享年七十一歳。

 妻と長男と三人でかけつけたのは、荼毘に付された跡だった。
 
 幼くして父母を失い、家屋は叔父に奪われ、妻を早く亡くし、僅かな幸せを
味わう間もなく長男と後妻を失い、もらった養子は離れて行った。しかも放火
されて家を失う。鉛の勲章は戦争と遺族の象徴のようなものであった。もし戦
争がなかったらこんな苦難はなかったろうに、自分の不幸は棚に上げ、今不幸
だった養父の一生を顧みるのである。

 つくづく戦争だけはやってはならない。と思う。

(了)

山崎農業研究所会員・『電子耕』編集同人
原田  勉
tom@nazuna.com
http://nazuna.com/tom/

(次回予告・「馬とのつきあい・馬耕・軍馬」)

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<まぼろしの青山上水> その5. 上水への期待
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 開府当時には多くの計画がひしめき、財政は逼迫していたと思われる。水路
掘削にも経費のかからないよう、工夫をしたであろう。その厳しさを思わせる
ものがある。玉川上水建設に幕府は6,000両の工事費は出したものの、追加工
事費3,000両を玉川兄弟に出させたといわれている。玉川上水(1654)という、
江戸都市計画に最重要な上水事業へも十分な資金を出せなかったのである。

 江戸時代初期には諸外国との対応など国際的な緊張もあり、また国内でも由
井正雪の倒幕を計った内乱(1651)など不穏な状態はつづいた。明暦の毎年の
大火、とくに明暦3年の大火(1657)では江戸城も焼け、その修復への多額の
出費もあったであろう。江戸城の整備は行ったものの、天守閣はついに再建さ
れなかった。

 上水の大幹線、玉川上水の四ッ谷大木戸から江戸城への水道建設は緊急を要
したであろう。このため、支線水路までは十分な手当が出来なかったのではな
かろうか。このように考えると青山上水は支線上水整備の中では厳しい財政条
件下で進められたことになる。

 江戸時代の上水への期待は生活用水だけで成り立つものではない。地域開発
として農業用水も考慮されている。青山上水の場合、上水の社会的な存在感は
どう演出されたであろう。

 江戸時代には各戸の風呂所有は贅沢であり、防火上からも好ましくなかった
。だから銭湯は繁盛した。このような生活なら、水使用量は1日1人当たり50
リットルあれば足りる。

 因みに千川上水(電子耕192)は1日6,000〜7,000トンの送水量を有してい
た。この流量は、70〜81リットル/秒であり、当時の生活用水だけなら10万人
以上をまかなえる。それでも、千川用水は幅1.5〜2.5m位の水路である。こ
のような小水路でさえ、生活水と水田灌漑面積100ha以上を潤していた。

 青山上水路の周辺低地は谷津である。千駄ヶ谷辺りの低地は谷津田で、その
南は台地と谷津との変化ある地形である。麻布、三田、芝の低地には(例えば
麻布十番、三田1丁目〜3丁目)規模の小さい水田はあった。上水に直接影響
を与えると考えられる水田面積を谷津面積から算出すると、100haはとても超
えそうもない。農業用水は使われたとしても、谷津田での灌漑は補助用水程度
で大量ではない。水をめぐる農民との摩擦も聞かない。

 青山上水の水量データはいまのところないが、おそらく他の上水規模から推
定すれば同じ程度ではなかろうか。水田灌漑水はなく、すべてが生活用水であ
ったとすれば、青山上水は潤沢な贅沢水路である。青山、赤坂は台地と低地の
こみ入ったところである。青山上水の目的もこれらの台地の開発と農業開発で
あろうから、それに見合う効果がなければ、この水路は財政の重荷になったと
考えられる。

安富六郎
山崎農研会員 電子耕編集同人
y.noken@taiyo-c.co.jp

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<編集後記> 火を操る
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イラストレーターの大内正伸さんから先日葉書が届いた。新著『図解 これな
らできる山を育てる道づくり』(農文協)の案内である。

 大内正伸著 田邊由喜男監修
 『図解 これならできる山を育てる道づくり』
  
http://nazuna.com/20080307d229-1

2004年の山崎記念農業賞は、福井県・鋸谷茂さんの‘鋸谷式間伐’を表彰した。
その際、‘鋸谷式間伐’の普及にふかくかかわった大内さんにも参列いただい
たことからおつきあいがつづいている。

大内さんは現在、群馬の山村で暮らしているが、その暮らしのまんなかにある
のが、「囲炉裏」である。ブログ「神流アトリエ日記(2)」を拝見すると、
囲炉裏が料理や暖房に縦横無尽に活躍していることがよくわかる。そしてこの
囲炉裏でつくられるさまざまな料理がなんとも美味しそうで、見ているだけで
涎がでてくるというか羨ましくてたまらない。

 神流アトリエ日記(2)
 http://star.ap.teacup.com/applet/tamarin/msgcate5/archive

巻頭言で安富六郎さんが原子力発電についてふれられている。原発は、人間の
ために天上の火を盗み出したギリシャ神話のプロメテウスと結び付けて語られ
ることが多い。いささか強引にくくれば、原発も囲炉裏も火(熱)にかかわる
のである。しかし人類がいまだ原子力の制御について万全を期せない(今後も
そうだろう)のに対して、囲炉裏を操るのは生身の人の技(わざ)であり、か
つ、どうころんでもそう間違ったことはおこならない。

世界的な原油高騰のなか、バイオエネルギーを含め新エネルギーが云々されて
いるが、囲炉裏のようなずっと使われてきた道具に注目することも必要ではな
いか。「ずっと使われてきた」というのは「持続可能な」と同義だろうから。

2008年03月06日
山崎農業研究所会員・田口 均

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