『電子耕』No.228-2008.02.21号
発行日時: 2008/2/22
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隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」 第228号
−環境・農業・食べ物など情報の交流誌−
2008.02.21(木)発行 山崎農業研究所&編集同人
<キーワード>
環境・農業・健康・食べ物などの情報提供、高齢者と若者、農村と都市の
交流ミニコミ誌。山崎農業研究所&『電子耕』編集同人が編集・発行。
http://www.taiyo-c.co.jp/public_html/yamazaki/yama_index.htm
*************************************発行部数 1340 部***************
山崎農業研究所 第128回定例研究会のお知らせ
◇日 時:2008年3月1日(土) 13時30分〜17時00分
◇場 所:太陽コンサルタンツ(株) 3F会議室
(新宿区四谷3丁目 不動産会館)
◇テーマ:海外農業
(その1) 環境保全と合意形成
「米国東海岸・チェサピーク湾環境復元計画にみる合意形成と農業」
谷口 敏彦氏
前(財)農林水産奨励会 農林水産政策情報センター調査部長
(その2) キューバ農業と社会
(平成19年11月、日本・キューバ科学技術交流委員会を機会にキューバを
訪問された当研究所会員からの報告)
「キューバ農業の変容(5年前の見聞と比べて)」
山崎耕宇氏 東京大学名誉教授
「土地利用についての印象」
安富六郎氏 元農工大学教授、当研究所代表
「垣間見たキュ−バ社会」
林 尚孝氏 茨城大学名誉教授、当研究所顧問
◇会員以外の方の参加を歓迎します。
参加費(資料代等)として500円をお願いします。
◇問い合わせ先(事務局)
TEL.:03-3357-5916(益永) e-Mail:y.masunaga@taiyo-c.co.jp
□ 目 次 □----------------------------------------------------
<巻頭言> 農と食に対する世論を聴こう 大山勝夫
<読者の声>原田千鶴さんから
<垣間見たキューバ社会> その1.「チェ・デバラ」 林 尚孝
<82歳からのメッセージ> 養父の思い出(前編) 原田 勉
<まぼろしの青山上水> その4. 火災と上水 安富六郎
<編集後記> 食料自給率を問題にするのならば
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<巻頭言> 農と食に対する世論を聴こう
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このたびの中国ギョーザ事件はわが国の食と安全の問題にさまざまな波紋を
投じた。早速、朝日新聞2/3の声欄では「口に入れる物は国内で作って」、
同2/9声欄には「農業の存続へ消費者も協力」がそれぞれ掲載された。
前者では中国産が全て粗悪品と決めつけないが、私たち消費者は多少値段が
高くても、口に入れる物は安心して食べられる国内産でという主張である。後
者では食の安全はもちろん農業が持つ多様性に着目すれば、農業は国民全体で
守らなければならないという。
このような意見と逆の世論もある。団藤保晴氏は自身の『ブログ時評』で
「専業農家の救出を急がねば稲作は崩壊」と題した記事を書き、これに対して
さまざまな意見が寄せられている。
http://dando.exblog.jp/7826917/
その主な意見をあげてみるが、「電子耕」の読者の皆さんはどのように答え
られるだろうか?
(1)なぜ食料自給率だけが問題にされるのか、化石燃料は?鉄は? 石油がな
ければ、現在の農業技術水準すら保たれないのでは。
(2)何も専業農家だけが経営難なのではない。中小企業でも倒産の憂き目にあ
う事例はいくらでもある。農業だけが特別なのか。
(3)農家の経営が破綻したら田畑を売って、生活保護を受けては。
(4)零細企業の経営者やフリ−タ−、野宿労働者をさしおいて、農家だけを取
り上げるのは解せない。
これらの意見についてそれぞれ私見はあるが、ここではあえて差し控えてお
く。
私たちは、食の安心・安全や日本農業について、さまざまな意見があるのを
認識することは、世の中の空気を知るうえで必要ではないか。
大山勝夫
山崎農業研究所会員 日仏農学会顧問
y.noken@taiyo-c.co.jp
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<読者の声>
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■2/8 原田千鶴さん:映画『母べえ』紹介を読んで。
私も1月30日に母べえヲ見ました。
肉親を亡くされた方々、暗黒の時代、私にもよく解ります。
母達は、国防婦人会で精米所の屋根に上り爆弾が落ちた時の消火訓練をした
のを見てきました。
戦後は漁師の家庭などは特に引揚者で大変、佐伊津は飛行場跡の官舎が
引揚者の受け皿になり他の村より良かったのではと思います。
母べえを多くの人に見てもらう運動をしています。
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<垣間見たキューバ社会> その1.「チェ・デバラ」
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昨年末、日本・キューバ科学交流委員会設立20周年を記念して、農学部門と
医学部門の研究者がキューバを訪問した。私は、食料・エネルギーなどが、い
ずれ逼迫すると考えている。米国に経済封鎖され、ソ連の崩壊による援助が途
絶えたキューバ社会では、どんな生活をしているのか知りたいと考え、この機
会に便乗してキューバを訪れた。現地には一週間ほどしか滞在できなかったが、
わが国とは違った社会を垣間見ることができたように思う。
敗戦後の日本の食料不足は甚だしく、ヤミ米を拒否した山口良忠判事が餓死
したほどであった。キューバの人々もきっと当時の日本人のようにスマートで
あることを期待?してキューバ入りした。ところが、キューバ人通訳から意外
な言葉を聞いた。「チェ・ゲバラ」をもじった「チェ・デバラ」である。何と、
中年以上のご婦人がたが「デバラ=出腹だ」というのである。本当だろうかと
疑いの目で、街の人々を観察してみた。確かにロシアやドイツでよく見かける
実に恰幅のよいご婦人が多いのに驚かされた。若い女性はスマートなのに、ど
うしてだろうと不思議に思ったが、これは世界各国共通の現象であるらしい。
餓死するような状態ではなく、食料は十分に供給されていることは確かであ
る。その秘密は、現在も続けられている配給制度にあるらしい。敗戦後しばら
くの間、わが国でも食糧配給制度があり、外食券を持参しないと食堂で米飯を
食べることができなかった。キューバでは、現在も配給制度が行われており、
米、パン、肉類、砂糖、バター、酢、ミルクなどの食料から、石鹸、燃料、葉
巻、タバコなど30種類以上が廉価で配給されている。一戸に一冊の配給手帳が
あり、家族全員が一冊の手帳をもとに、生活必需品を得ている。したがって、
結婚やら誕生、死亡などの移動は、この手帳を見れば一目瞭然である。妙な話
になるが、この手帳を長年にわたり保存しておけば、一家あるいは一族の消長
が正確に分かるものと思われる。
毎日、配給手帳を出して配給を受け、その日の欄にチェックを受けるキュー
バの人々の生活は、われわれから見れば面倒くさくて窮屈である。だが、貧し
いにもかかわらず、敗戦直後の日本のように、皆がのびのびと暮らしているよ
うに見えるのはなぜだろう。平等に貧しく、衣食住を保証されている安心感が
背後にあるように思われてならない。
食糧が欠乏したときにどうなるかと心配していたが、キューバでさえ何とか
しているのだからわが国でも何とかなるだろうという楽観的な気分になった。
その一方、グルメに馴れ、助け合いの精神が希薄になったわが国で、キューバ
方式が果たして成り立つのだろうかとちょっぴり不安にもなった。
林 尚孝 山崎農研顧問
y.noken@taiyo-c.co.jp
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<82歳からのメッセージ> 養父の思い出(前編)
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昭和十四年九月、三人の男たちが紋付羽織を着て、昼間にもかかわらず提灯
を携えて、我が家を訪れた。
原田早次(はやじ)、原田富一(とみいち)、塩田籾次(もみじ)は若い頃
からの親友であり、ともに私の実父原田留太郎の従弟、甥、弟分の親族であっ
た。
私の母シヨが迎えて、口上を聞いた。
「早次の長男 早己男(さみお)が戦死し、跡目を継ぐものがいなくなった。
ついては貴家の五男 勉を養子にもらい受けたい」という願いであった。
内諾を得たうえのことであろう、その日は形式を整えた儀式であった。
こうして私は十四年九月から養家に入った。十四歳であった。
養父早次は、明治二十三年九月三日、寅八・トメの長男として生まれたが、
幼くして父母を亡くし、後見役の叔父に土地を騙し取られた。そのため若いう
ちは、大地主岡村の傭人となり馬の世話などをしてすごした。
成人して大正六年、塩田籾次の妹サトノを妻とし、翌年に長男早己男を得た
が産後の病で亡くなった。
早己男は里子として漁家に預けられ、大正十年早次は後妻にリヨを迎えた。
長男早己男はリヨに引き取られ、溺愛ともいえるほどに可愛がられて育てら
れた。早己男はスポーツ万能で、村では模範青年として若い処女たちに騒がれ
るほど美男子でもあった。
しかし、十八才で志願し熊本の十三連隊に入り、成績優秀で現役兵除隊の寸
前に「支那事変」が勃発、中支(上海、蘇州付近)に送られた。破竹の進撃で
南京を落とし、漢口に迫った。このとき異変が起きた。
「昭和十三年八月二十日午前六時、中華民国安徽省大湖県花涼店付近に於い
て戦死。歩兵十三連隊補充隊長有富親義報告」という公電が入った。
佐伊津村では二番目の戦死であった。享年二十才。
秋には盛大な村葬があり、私は遺影を捧げて葬列の中にいた。早次・リヨの
嘆きはひととおりではなかった。
リヨは、墓穴に飛び込んで、「早己男!早己男!なぜ死んだ」と骨箱にしが
みつき泣き叫んだ。そのあと、寝込んでしまい、半年後には早己男の跡を逐っ
た。
早次は、農作業も手につかず呆然としてすごした。好きだった映画や芝居が
来ても一切拒絶した。靖国神社にはお参りした。
やがて親友の籾次、富一に勧められ、勉を養子に迎えることになった。
私は農学校に通うかたわら、農作業の手伝いをした。とくに田植期になると
春の鋤起こし、代掻きと養父の指導で馬耕に従った。父は若い頃から馬使いの
名手で、その術も巧みであった。しかし私にとって一ヶ月も続く田植え作業は
苦しい試練であった。当時は親戚中の結いで、自分の家は三反五畝しかないに
もかかわらず、親戚のを合わせると十数町歩の田を耕し代掻きするのは難行苦
行であった。
農学校を卒業すると逃げるように東京に向かった。専門学校受験の為である。
今思うと、養子になっておきながら、その父を放棄して、自分勝手にわがこ
とだけを考えて行動した。跡に残った父はさぞ淋しかっただろうと思う。
そして私は徴用工から飛行兵となり四国松山に入隊した。昭和十九年十二月
のことである。
(後編につづく)
山崎農業研究所会員・『電子耕』編集同人
原田 勉
tom@nazuna.com
http://nazuna.com/tom/
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<まぼろしの青山上水> その4. 火災と上水
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関東では冬から春にかけて乾燥した強い北寄りの風が吹く。江戸幕府以前
(1603)には小さな町であった江戸の人口急増と路地の発達は著しかった。市
内道の多くは、もとは水田や畑の農道であったから、道幅は狭く、袋小路も多
かった。このため、火災は冬期に多く、発生すれば大火になりやすく、死者も
出た。道路や路地は一旦出来ると、よほどの理由のない限り容易に変化しない
ものだ。このために災害は繰り返された。
幕府は「火消し組」や水桶などを用意するなど、各戸に火災予防を呼びかけ
ていた。それにも拘わらず明暦の大火(1657)では10万人以上の焼死者を出
し、江戸城の天守閣も焼け、多くの貴重なものが失なわれたと伝えられる。こ
の大火以後、幕府は防火都市計画(1658)を建てるなど、防火に本腰を入れ、
火消し組織の結成、各戸の防火用水設置対策を進めた。
他によい選択はあったにも拘わらず、青山上水は道路改修もされず、居住密
集地の生活道路や低地を通過している。これには何か重要な理由をうかがわせ
る。もし防火重視なら、まず初期消火への期待であろう。そうならば、取水の
付帯工事があるはずだ。たとえば千川上水に見られたような水汲み場である。
しかしこのような跡はない。これに対し、もし送水機能を重視した水路とすれ
ば、道路拡幅や直線化である。いずれも説明は付きそうにない。しかし当時の
状況から見ると上水と消火との結びつきは無視できないように思われる。
ところが江戸時代の防火には水による消火はほとんど期待されていない(四
谷3丁目消防博物館)。火消しの主力は、風下への延焼を防ぐための家屋取り
壊し「破壊消火」と広小路や「火除け地」による防火にあった。火事場では水
を運ぶことは容易でない。さらに儒学の教えから上水路は火災誘発の原因と決
めつけられて、1722年に上水(三田、千川と荒川水系の亀戸を含め4上水)は
一斉に廃止の運命となった(電子耕No194, 2006,10,19参照)。これは上水路
は防火に大して役立たなかったことを物語っていると思う。
水による消火は江戸時代後期に水鉄砲のような消火器や手動ポンプが現れて
からとはいえ、高価な器械のため普及はしなかった。青山上水計画時代に火事
と用水路との関係を述べた資料は今のところ見あたらないが、水による消火対
策は青山上水建設の段階で萎んだように見える。
安富六郎
山崎農研会員 電子耕編集同人
y.noken@taiyo-c.co.jp
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<編集後記> 食料自給率を問題にするのならば
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中国ギョウザ事件以来、食料自給率の低さ(カロリー自給率で40%以下)がに
わかに話題になっている。しかし「にわかに」というのは表現が妥当ではない
かもしれない。これまでも各種の調査では、食料自給率は高いほうがよいとい
う結果はでているのだ。しかし、そう答える人の食事は、食卓ははたしてどう
なのか。
外食が多ければ多いほど、加工食品を口にする機会が多ければ多いほど、自給
率は下がる(輸入食品を食べる)傾向になるだろう。そういう食生活を送りつ
つ、いまさらのように食の安全・安心がどうのこうのというのは、そして自給
率を上げたほうがいいというのはいささか無理があるのではないか。
食の安全・安心について思い出すのは、民俗研究家の結城登美雄さんが紹介さ
れている沖縄のおばあの言葉である。この編集後記(221号)でもとりあげた
ことがあるのだが、なんとも胸にしみてくることばなので、あらためて記して
おきたい。
「本土の人はいつもテレビに映っけどみっとがないねえ」。104歳の伊礼カマ
ドさんというおばあから言われました。「本土の人は買いものすると手にとっ
てかならずひっくりかえしてうしろみるねえ。日付みる、何が添加されている
かみる。あんなに疑いぶかくものを買う人たちはおらんねえ。そんなに人がつ
くったものが信用できないなら、なぜ自分でおつくりにならないのだろう」。
自分でつくれないならば、信用できる人から素材を買えばいい、わけてもらえ
ばいい、信用できるのが国産であれば国産のものを買えばいい、しかし、そう
はならならかった、しなかった。外食産業や加工食品がここまでのびたのは、
乱暴にいえばこういうことなのではないか。そういう行為(消費者行動!)が
いまの状況をまねいた原因のひとつなのではないか。
2008年02月21日
山崎農業研究所会員・田口 均
y.noken@taiyo-c.co.jp
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書名:岩波アクティブ新書45『メールマガジンの楽しみ方』
著者:原田 勉 定価:735円 発行日:2002年10月4日
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