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シンクタンク山崎農業研究所が農業を中心として健康・食べ物・人物をめぐる情報を提供し、読者との意見交換をはかる農業カルチャーマガジン




『電子耕』No.219-2007.10.18号

発行日: 2007/10/18






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隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」  第219号
−環境・農業・食べ物など情報の交流誌−
2007.10.18(木)発行      山崎農業研究所&編集同人
<キーワード>
環境・農業・健康・食べ物などの情報提供、高齢者と若者、農村と都市の
交流ミニコミ誌。山崎農業研究所&『電子耕』編集同人が編集・発行。
http://www.taiyo-c.co.jp/public_html/yamazaki/yama_index.htm
*************************************発行部数  1322  部***************
□  目  次    □----------------------------------------------------
<巻頭言> 「もったいない」と日本人 松坂正次郎
<82歳からのメッセージ> 城山三郎氏に勇気づけられて
                         …広田弘毅の生涯と激動の昭和…  原田 勉
<編集後記> 美しい日本がここにある
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<巻頭言> 「もったいない」と日本人
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 「もったいない」という日本人のことばは、今の“消費社会”でのキーワー
ドだと、外国の人にほめられたが、肝心の日本の人々は、現実生活のなかで、
この「もったいない」を、どの程度実践しているだろう。

 言葉がほめられたからといって、日常の生活で実践しなければ、幾重にも
「むなしい」。マスコミが報道しているように、日本の政治家や官僚など、社
会的にはリーダーと見られている人々の金銭にこだわる行為の「みっともな
さ」を耳にし、目にすることが、日ごと、月ごとに増える一方で、「やりきれ
ぬ」思いが溢れそうである。

 しかも、悪いことに、人間として「みっともない」ことをしでかしながら、
あれこれ「さまにならない」弁解に終始する有様は実に見苦しい。「日本人の
“もったいない”という生活感覚はすばらしい」とほめられても、無駄の多い
現実に接すると、胸のあたりは「こそばゆい」限りとなる。

 ここに並べた「もったいない」「みっともない」に加え、「むなしい」「こ
そばゆい」「やりきれない」「さまにならない」などのことばは、外国語に翻
訳するのは難儀なことにちがいない。そこから見ても、これらは、日本人が、
この国の風土と、長い歴史の営みのなかで、計りしれない長い歳月を費やし、
生み出し、はぐくみ、教え広めてきた、古めかしくいえば“やまとことば”の
真髄に属するものだろう。

 そういえば先日、安倍前首相の肝いりで設置された政府の「『美しい国づく
り』企画会議」に約4900万円の国費が投じられたと報じられた。会合は2
回開かれただけでたいした成果もなく解散している。これは「もったいない」
「みっともない」「むなしい」それともどれ?

松坂正次郎
山崎農業研究所会員、「農政と共済」コラムニスト
y.noken@taiyo-c.co.jp

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<82歳からのメッセージ> 城山三郎氏に勇気づけられて
                         …広田弘毅の生涯と激動の昭和…
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 城山三郎氏の代表作『落日燃ゆ』を最近になってから読んだ。いままでにい
くつかの経済小説は読んだが、亡くなってから、その代表作であり、東京裁判
と広田元首相のことも知りたくて、遅まきながら読んでみた。


 広田弘毅(ひろたこうき)は現・福岡市の石屋の長男として明治十一年に生
まれた。中学四年のとき日清戦争が勃発した。戦争には勝ったが外交で負けた。
講和後の三国干渉である。その屈辱が忘られず当時軍人をめざして陸軍士官学
校に入学願書を出していたが、これをとり下げ外交官を目指して一高に進むこ
とにした。

 東大生の夏休みに、郷土の先輩である外務省の山座局長に勧められて、友人
と共に朝鮮と満州・シベリア調査旅行をして報告書を提出した。それが認めら
れ、二人は東大在学中の身分のまま外務省嘱託となった。やがて外交官試験に
合格。その時の同期に吉田茂がいた。最初の勤務は清国公使館付の外交官補と
して北京に着任。ここから中国との善隣関係を確かなものにしなければ成らぬ
と自分自身に言い聞かせた。

 その後、中国、英国、米国などの勤務を経て、欧米局長、駐オランダ大使を
歴任、昭和八年に斎藤実内閣の外相として入閣、次の岡田啓介内閣では留任し
た。岡田内閣は2・26事件のため総辞職し、そのあとを受けて広田は三十二
代目の首相となる。

 すでにその前から軍部の台頭と独断専行は進んでおり、彼が駐ソ大使の時代
に満州事変が起こり、続いて上海事変、満州国建国宣言、5・15事件、国際
連盟脱退と事態がめまぐるしく展開する。その中で広田は良識ある外交政策に
よって収拾を図る事が急務になった。そして自ら計らずも彼が外相の重責を担
わされた。

 統帥権の独立を口実に暴走する軍部。これに呼応して皇道外交を主張する外
務省内の革新派。敵対する勢力を内外に持ちながら、広田は持論の協和外交を
展開しようと辛苦を重ねていく。昭和十年一月の国会答弁で「私の在任中は戦
争は断じてないと確信している」と述べたのも強い信念の表明だった。

 斎藤・岡田内閣の実績を認められた広田は、2・26事件以後の極めて困難
な時期に政権を担当し、さらに第一次近衛内閣でも外相を務めた。この一ヶ月
に盧溝橋で日中両軍が衝突、事変が拡大したことも広田にとって不運この上な
いめぐり合わせであった。彼は、現地解決、即時停戦を主張し、懸命に努力す
る。だが軍部の横暴、国内の対立強硬論、近衛首相のスタンドプレイなどが原
因で、ついに南京虐殺事件に発展し、日本は泥沼の戦争へとのめりこんでいっ
た。

 「外交の相手は軍部」という否応ない現実に直面しつつ、何とか事態の好転
を図ろうとする広田の言動やその力の限界が、この本は豊富な資料に基づいて
書き込まれている。

 『落日燃ゆ』は十一章からなっているが、九章までは、以上のようにその生
涯と激動の昭和史を感情移入せず記述している。

 最後の三章が東京裁判とこれに対処した広田の揺るがぬ態度を見本に描きき
っている。

 被告の中には自分の立場を有利にしようと他人に泥をかぶせる者がいて、時
にはかなり醜い場面もあったらしいが、その中で広田の「物来順応」の態度は、
際立った印象を伝えている。広田の「自ら計らわぬ」生き方は徹底していた。
弁護人から罪状認否で無罪と答えるように求められ、「戦争については自分に
責任がある」と語っていたほどだ。

 裁判を通じ終始自己弁護をせず、有罪になることでつとめを果たそうとした。
最終的には、文官としてただ一人、絞首刑の判決を受ける。

 他の六人の軍人は、いずれも彼の協和外交の努力を妨げた者ばかりだった。
しかし彼は教誨師の最後の面接にも「今更何もいうことは事実ない、自然に生
きて、自然に死ぬ」と答えている。

 公人としての広田は、自身の信念に従って、ほとんど感情の起伏を見せてい
ない。が彼は非常に人間性豊かな愛情深い人で、妻子を深く愛した。妻の静子
は、夫の覚悟を察知し、裁判の最中に自害した。広田は家族に送った手紙の最
後の一通まで静子宛だった。その最後を「シズコドノ」と結び続けた。その
「シズコドノ」の文字が見られなくなった時、つまり広田が死ぬ時、はじめて
静子が本当に死ぬ。生きている自分は死を用意し、一方死んだ妻を生きている
ひととして扱う。幽明境を異にすることを、広田はそうした形で拒んだ。

 この一節に広田の妻に対する限りない愛情、死生観、決意、そして彼の稀有
な人間性がはっきり集約されている。


 城山三郎の客観的記述を読み終えて、私は落涙を禁じえなかった。戦時中に
かくも偉大な人が政治家の中にいたことを感謝せずにはいられない。

 未読の方があったら是非お薦めしたいと拙い紹介をした。
 

『落日燃ゆ 』(新潮文庫)
城山 三郎 (著)  392ページ
出版社: 新潮社 (1986/11)
http://www.shinchosha.co.jp/book/113318/
http://www.amazon.co.jp/dp/4101133182/

山崎農業研究所会員・『電子耕』編集同人
 原田 勉
tom@nazuna.com
http://nazuna.com/tom/

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<編集後記> 美しい日本がここにある
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山崎農業研究所所報『耕・2007年秋号』の編集におわれている。

ほんとうは9月末に発行されないといけないのだが、諸般の事情により、とい
うよりも編集担当のわたしの都合で発行が遅れているという裏事情はさておき、
いまやっているのは、去る7月7日に開かれた山崎農業研究所総会記念講演
「地域の再生と内発的発展――新しい豊かさの獲得に向けて」のテープ起こし
である。

そのなかで、講師の西川潤氏(早稲田大学名誉教授・台湾研究所顧問)は長野
県小布施町の事例を紹介している。小布施の人の多くはそれまで、こんな古く
さい町はだめだ、という意識にしばられていた。そこにやってきたのが、長野
オリンピックの際に手伝いを志願して、長野県にやってきたセーラ・カミング
スさん(アメリカ人女性)である。小布施に住むようになったセーラさんは
「美しい日本がここにある」と感動し、そこから町並み保全運動を始め、今日、
小布施は日本でも有数の町並み保全運動の町として知られるようになった。

「美しい」という言葉もこの国では最近ずいぶんと歪んだ使われ方をしている
が、こんなふうに「美しい」といわれるのはもったいない、いや、ありがたい
ものだと思う。

2007年10月18日
山崎農業研究所会員・田口 均
y.noken@taiyo-c.co.jp

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