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シンクタンク山崎農業研究所が農業を中心として健康・食べ物・人物をめぐる情報を提供し、読者との意見交換をはかる農業カルチャーマガジン




『電子耕』No.202-2007.02.08号

発行日: 2007/2/8






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隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」 第202号
−環境・農業・食べ物など情報の交流誌−
2007.02.08(木)発行   山崎農業研究所&編集同人
<キーワード>
環境・農業・健康・食べ物などの情報提供、高齢者と若者、農村と都市の
交流ミニコミ誌。山崎農業研究所&『電子耕』編集同人が編集・発行。
http://www.taiyo-c.co.jp/public_html/yamazaki/yama_index.htm
*************************************発行部数 1309 部***************
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□ 目 次  □----------------------------------------------------
<巻頭言> 年賀状の遅配と民営化 渡邊 博
<81歳のメッセージ> 【新刊案内】『十三戸のムラ輝く』 原田 勉
<三田上水紀行> 2.三田、目黒の水 安富六郎
<編集後記> 満塁ホームランを打たれた
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<巻頭言> 年賀状の遅配と民営化
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 昨年は、珍しく12月25日前に年賀状を出した。それでも、というかやはりと
言うべきか、遅配された年賀状は結構あったようである。パソコンの普及によ
る後出し集中が原因だとか言っているようだが、年賀状がパソコンで作成され
るようになったのは昨日今日ではない。それに、今年は昨年より1億枚以上年
賀状が少なく、史上最低だったというではないか。

 実際のところは、郵政事業の民営化に向けての合理化により、業務が集中す
る年賀状の集配には全く対応できる状況ではなかったのではないか、とほぼ確
信している。

 行政の失敗を民に任せることによって効率化を図る、すなわち「小さな政
府」という考え方は世界的な潮流である。「小さな政府」というと、一昨年の
ニューオリンズに大きな被害を与えたハリケーンを想起する。この甚大な被害
は、小さな政府化による行政のリスク管理の脆弱化がもたらした人災であると
いう指摘は、米国内でも広く支持されている見識である。住民の暮らしと安全
を守る仕事は「賃借対照表」では評価できない。

 米国の裏庭といわれる中南米諸国では、反米化が大きな潮流となっている。
米国流の小さな政府と市場原理の輸出が、これらの国々の貧富の差の拡大を押
し広げ、皮肉なことに国家財政まで破綻させたことが根底にあるのは言うまで
も無い。日本の為政者は中南米の状況から学ぶべきである。

 市場原理がすべて悪い等というつもりはない。しかし、そこには一定のルー
ルが必要なはずである。「正当な経済活動」とは、社会の共通規範に従って正
当に評価された対価よる交換であり、このルールを歪めることを「詐欺行為」
と言うのだそうだ。公共性を収益性という物差しだけで量るのは、そもそも正
当なルールと言えるだろうか。

 警察や消防署、自衛隊も民営化されたらどうなるだろうか、馬鹿馬鹿しくも、
全くありえない話ではないと思いつつ、年賀状騒動を振り返ってみた。

渡邊 博
山崎農業研究所会員、太陽コンサルタンツ

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<81歳のメッセージ> 【新刊案内】『十三戸のムラ輝く』
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 山崎農研の会員で山崎記念農業賞受賞者、栗田和則さんらの著書です。ふる
さと山形県金山町杉沢集落の楽しさ、次々と新しい輝きを発見し共に暮らして
いる十三戸の小さな山里の物語です。

 前回紹介した「品格ある国家」の指標の一つは、美しい田園と書きました。
その美しい田園の見本がここにあります。

 杉沢は金山町の中でも最も山奥の小さな集落である。毎年冬には2メートル
の積雪に覆われる。30年前までは、一般には古い、遅れていると形容され、過
疎化の進むムラと言われただろう。だが杉沢は違う。自然の豊かな恵みがあり、
古くからのスギの林業地として知られ、その山地と農地から新しい産物を生み
出し、十三戸の家々が自創自給の暮らしを築き生き生きと暮らしている。

<タラノキを植え、側芽を売る>
(*側芽とは、茎と葉の接合部から出る芽のこと。 頂芽:枝から伸びた茎の
頂点に出る芽。)

 杉沢には30ヘクタールの水田と約300ヘクタールの山林がある。米つくりは、
勉強の甲斐あって反当たり12俵まで行ったが生産調整・減反が始まった。山田
は米よりも作りやすいものがあると考えタラノ芽や山菜へと転換した。山では
広葉樹を切ってナメコ栽培し始めた。木を食う林業からの転換を目指した。手
始めが、広葉樹の伐採跡に植えるタラノキの利用だった。スギ山の下草刈りを
しながらタラノキを残し、スギとの混合林を育てた。そして、次の年にはビニ
ールハウスの中で芽を育てることを試みた。試作と情報収集でタラノ芽は山間
地の冬の仕事に向いているとの信を得た。

 1986年仲間を集め研究会を作った。植える土地と冬期の労働力のある人が10
人集まった。植えたい苗根を求めるのに苦労したが、「蔵王」が手に入り、他
の産地と違い栽培した穂木を節間で切断し芽を出させる側芽のタラノ芽だった。
はじめ市場の評価は頂芽の三分の二止まりの価格だった。それを改良し販売対
策をたて日本一のタラノ芽産地にのし上がった。「タラノ芽植えて海外に行こ
う」の努力が実って女性優先のヨーロッパ旅行に至ったのは1993年。第2回は
1998年に「おやじたちの中国」、第3回は「女たちのアメリカ西海岸」と各地
の現実と問題点を見て帰った。

<タラノキの跡に何を植えるかを研究>
 試行錯誤の末ウルイ(ギボウシ類)とネマガリタケなどの山菜の栽培にこぎ
つけ、今ではスギ山の収入をはるかに超えるようになった。

 こうして、今では冬収穫のナメコ栽培、二月はイタヤカエデの樹液からメー
プルシロップを造る。1本のイタヤカエデからできるメープルシロップは約
200cc。何とも貴重な森の恵み−−これを楓の涙と呼んでいる。今年はさらに
地ビールメーカーと縁結びメープルビールが醸造されることになった。

<スギ山に育てられて>
 もちろん金山杉の伝統も忘れてはいない。冬の長い杉沢で山の斜面の向きと
風向きによって植栽法を変える工夫を重ねた。その山と木に育てられて栗田さ
んは現在築200年の天然杉心材の家に住む。その居間は、哲学者内山節さんの
山里フォーラムの会場にもなる。

 杉へのこだわりは栗田キエ子さんの草木染めをも発展させた。二十数年草木
染めを楽しんできたキエ子さんの杉染めは堅牢度抜群、色褪せしない染め物と
なった。

 栗田さんの息子和昭さんは、杉の根元が曲がった部分(伐根)を利用してイ
スやテーブル、車や動物までも造る。

<都市との交流でつくる元気な山村>
 都市との交流が始まったのは12年前。栗田家の母屋の隣に、父が育てた六十
年杉の間伐材を主として杉丸太組み白壁の和風ログハウスが完成した。ここを
拠点に農山村の豊かさとは何かを考えてみたいと「暮らし考房」の看板もつけ
た。

 折しも、自分探しの時代が始まり「自分に何ができるかを考え直したい」と
か「自給的な生き方をしたい」若者たちの出入りが始まった。

 こうして杉沢の「自創自給」の暮らしに共鳴する都市の人たちの体験交流が
広がった。この夏は山ぶどうの蔓細工、刺し子、草木染め、農業体験、森づく
り、森あそびの体験と民泊の共生のむら・すぎさわに発展した。

 まだまだ紹介したいことは沢山あるが、この本の終章に哲学者内山節さんが
「時間が蓄積される里」としてまとめられているので、ぜひこれを読んでいた
だきたい。

暮らし考房(自然の遊びの達人と山里自然体験)
http://www.town.kaneyama.yamagata.jp/shizen/002/

全国林業改良普及協会・森の情報館
http://www.ringyou.or.jp/
から
『十三戸のムラ輝く』栗田和則・栗田キエ子・内山節・三宅岳 共著
四六判 248頁 定価1,890円(本体1,800円)
社団法人・全国林業改良普及協会 刊 FAX(03)3583-8465
http://www.ringyou.or.jp/mail-maga/ISBN4-88138-164-4.html

■目次
はじめに

第一章 山里に暮らす(栗田和則)
 林業人として育てられ
 木を食う林業からの転換
 タラノキを植える
 日本一のたらの芽産地へ
 たらの芽植えて海外へ行こう
 地域のリーダーとして

第二章 杉沢の四季(栗田キエ子・栗田和則)
 冬/楓の涙がビールになる
 春/百年杉を育てる/杉とともに生きる/都市との交流でつくる元気な山村
 夏/山里は水清くして……/自信と誇りと希望を/次代を担う親林倶楽部森
の案内人
 秋/「薪」山里の蓄え/むらの記憶/森と街をむすぶ

第三章 山里に生きる知恵と工夫(三宅岳)
 金山町杉沢/山菜の収穫、そしてタラノメ、雪ウルイ栽培/生活資料館 栗
田梅吉さん/刺し子教室 栗田ツネエさん/蔓細工 やまと工房 栗田貞治さ
ん/藍染め・杉皮染め 栗田キエ子さん/田圃を中心にした生活 片桐久志さ
ん/暮らし考房の建物/杉沢鉱山/杉沢の炭焼き/杉沢冬季分校/ナメコ栽培
/メイプルフェスタ、初春の雪山へ/杉沢、取材記(二〇〇四年五月〜二〇〇
五年三月)

終章 時間が蓄積される里(内山 節)
 村を見る人々のまなざし/杉沢集落のこと/和則さん、キエ子さんのこと/
上野村と杉沢/時の蓄積のなかで/栗田さん夫妻の来村/自然について/山と
ともに暮らす/伝統とともに暮らす/杉沢という村/自分たちの物語/杉沢の
風/時間が蓄積される

お世話になった人たち
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山崎農業研究所会員・『電子耕』編集同人
 原田 勉
tom@nazuna.com
http://nazuna.com/tom/

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<三田上水紀行> 2.三田、目黒の水
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 三田上水の名前は給水地域の三田から付けられたものである。もともと、三
田は「御田」と書き、7世紀頃から広い範囲の地名に用いられたという。江戸、
明治、昭和時代に幾度かの行政改革で御田村は港区の三田と白金三田に分かれ、
さらに白金は白金と目黒区三田になったとのことだ。ここでいう三田は主に目
黒の三田である。

 給水目的とした場所を白金台の自然教育園内、またはその付近とすれば、台
地周辺には低地もあり、池もある。目黒はかなり高台になっているので地下水
は低い。深い井戸は簡単には掘れない。近くに庭園も幾つかあって、その中に
は滝も見られるところから、この上水との関わりも想像できる。しかし、雑用
水や滝を作るだけで遠路から水を引くであろうか。目黒の水はどんな水であっ
たのだろう。

 「目黒のさんま」という古典落語がある。作者、時代は不詳とされている。
鷹狩りのとき殿様はサンマを食べ、その美味を忘れず、ある時、客の 接待に
サンマを出すが、不味いので「さんまは目黒に限る」という落(オチ)である。
江戸時代には目黒の山手一帯、白金、駒場野周辺は鷹狩り場であった。この話

坂道が出てくる。

 史実によれば、富士山も見えて展望はよい、この坂上には茶屋があったので、
茶屋坂というのだそうだ。家光の時代(1623〜1651)あるいは吉宗の時代
(1716〜1745)に将軍や殿様は目黒に来た際、この坂の茶屋に立ち寄ったとい
う。前者の時代に出来た落語ならば、三田上水(1664)はまだ存在しない。後
者とすれば、茶屋坂周辺の歴史地図によると、この茶屋のごく近くを上水は流
れていた。すると茶屋坂(目黒区三田2-12)の茶屋は三田上水との関係もあっ
たかも知れない。

 目黒の名は一説には目黒不動尊に由来するとされている。江戸時代には品川
や新橋はまだ海退の浜辺であり、目黒は4kmも東南に行けば品川の海岸に達す
る距離にあった。目黒周辺の地質図から泥炭地帯や貝殻層のあることも分かる。
徳富蘆花の「みみずのたはこと」にも出てくるように、関東ローム台地の浅井
戸水も良質でなかったろう。このようなことから、良質の地下水は期待しにく
い。

 幸いにも目黒不動尊には台地下層のレキ層から清水が浸み出し滝となってい
る。だからこの滝は貴重な水源として大切にされた。飲み水に恵まれなかった
目黒周辺では三田上水(用水)は灌漑水どころか、上水として大切な生活水で
あったろう。三田上水は多摩川の水である。茶屋坂の茶屋もこれを見逃すはず
はない。この場合、「お茶は目黒に限る」という落語もできそうである。昔の
三田、目黒は、良質な水の得にくいところであったと思われる。
(山崎農研会員、「電子耕」編集同人 安富六郎)

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<編集後記> 満塁ホームランを打たれた
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先日、長男(小3)が少年野球の練習試合でリリーフとしてマウンドに上がっ
た。彼にとって野球をはじめてから初の経験である。が、その最初の登板でな
んと彼は満塁ランニングホームランを打たれたのだ。初登板でホームランとい
うのはなかなか得難い経験だろう。結果、打者一巡で攻守交代となった。

安倍内閣のキャッチフレーズに「再チャレンジできる社会を!」がある。小泉
内閣の時代、さまざまな格差が広がったことへの反省も――その多少はともか
くとして――あるようだ。しかし、小学生ならばともかく、大人にとって再チ
ャレンジというのは――そして歳をとればとるほど――容易なことではない。
そして地方の再チャレンジも、いったん経済の構造が壊れたようなところから
立ち上がるのは、なかなかむずかしいだろう。

満塁ホームランを打たれた長男は、それほど落ち込んではいなかった。三振が
1つとれたからうれしい、という。前向きなのか楽天的なのかはよくわからな
い。が、再チャレンジ社会云々についていえば、少なくとも格差を生み出した
側から安易にそう言われたくはない。人生は野球の試合=ゲームではないのだ
から。

2007年02月08日
山崎農業研究所会員・田口 均
y.noken@taiyo-c.co.jp

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となっております。投稿される方はこちらのアドレスにお願いします。
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次回 203号の締め切りは02月19日、発行は02月22日の予定です。

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書名:岩波アクティブ新書45『メールマガジンの楽しみ方』
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隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」 第202号
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