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『電子耕』No.174-2005.12.29号

発行日時: 2005/12/29

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隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」 第174号
−環境・農業・食べ物など情報の交流誌−
2005.12.29(木)発行   山崎農業研究所&編集同人
<キーワード>
環境・農業・健康・食べ物などの情報提供、高齢者と若者、農村と都市の
交流ミニコミ誌。山崎農業研究所&『電子耕』編集同人が編集・発行。
http://www.taiyo-c.co.jp/public_html/yamazaki/yama_index.htm
*************************************発行部数 1383 部***************
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□ 目 次  □----------------------------------------------------
<今週の提言> 経済効率追求の破綻 大山 勝夫
<80才からのメッセージ>「墓碑銘」と「惜別」の追悼記事 原田 勉
<山崎農業研究所情報>
◇第119回定例研究会要旨――地域社会の動きと高校農業教育(その2)
2.農業高校の担う役割について思う
――菅谷 明氏[千葉県立茂原農業高校教諭]
<老兵の戯言> 鶏卵の話 藤原 昇
<編集後記> この年を忘れてなるものか
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<今週の提言> 経済効率追求の破綻
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 年の瀬も押しせまり、それぞれの分野で今年の10大ニュースが取り沙汰され
る頃となった。国民生活の安心・安全に着目してみると、それにかかわる事件
や事故が多かったことも今年の特徴だ。

 春にはJR西日本で多くの犠牲者を出した尼崎の鉄道脱線事故があった。これ
などは、他社との競争で少しでも利潤をあげようとした経営姿勢のあらわれと
いわれている。
 身近なことに目を向ければ、BSE牛肉輸入問題がある。かねてより筆者は
「輸
入再開は科学的判断を優先」と主張してきたが、現実には政府のシナリオどお
りの結果となった。そもそもBSE問題の発端は飼料効率を高めるための肉骨粉
の利用であった。これで食の安全はまたしても裏切られることとなった。
 そして、年末に人々を驚かせたのは、建築 設計の偽装問題である。国会に
呼ばれた参考人の一人は、経済性の追求が何が悪いのかとひらきなおった。

 ここにあげた事件や問題は、つまるところ、経済性追求の破綻のあらわれで
はないか。そして、人々の心はすさみ子供たちの命までも守れない世の中にな
ってしまった。

 そんななか、明治維新後のわが国近代化に貢献された渋沢栄一翁がフランス
から帰国後提唱した「道徳経済合一説」を読み返してみた。
 翁曰く、経済・社会の進歩にともなって人々の道義心が低下するのが懸念さ
れる。それゆえに行動の規範として『論語』の精神に学ぶ必要があると。渋沢
栄一が存命であったら,この1年わが国の経済活動をどのように見られたであ
ろうか。

大山勝夫
山崎農研会員・日仏農学会会長
y.nouken@taiyo-c.co.jp

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<80才からのメッセージ> 「墓碑銘」と「惜別」の追悼記事
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 近藤康男先生が亡くなって死亡記事が新聞各紙に載ったのは当然であったが、
有名人は、亡くなっても追悼記事の取材があるものだ。

 「週刊新潮」の12月15日号に「墓碑銘」という1ページの欄があった。もう
一つは、「朝日新聞」12月19日夕刊の「惜別」という追悼記事であった。

 新聞に訃報が載った夜、まず、今まで縁もゆかりもなかった新潮社から私に
メールが入った。「近藤康男先生の生前の思い出話をお聞かせいただけないで
しょうか。」という。次の日の晩までに、電話でというので、お別れの会の配
布資料(年譜・履歴・著作年表)を向こうが用意したバイク便で送り、電話で
答えた。

 朝日新聞の方は、7年前近藤先生の自宅にインタビューに訪れた記者だった
ので、これは最近6年の様子を知らせ、また、お別れの会にも参加してもらっ
た。

 有名人は最後まで名を残す、といわれることを実証したものだった。

 「週刊新潮」の「墓碑銘」の見出しは、「百歳を超えても一人で通勤 近藤
康男さんの健康法」だった。

 杉並の自宅から、理事長を務める練馬の農文協図書館まで、バスと電車に乗
り継いで45分、。
 若ければどういうこともない道程でも、104歳になるまで一人で通ったとな
れば奇跡に近いのではないか。という驚きである。

 農業経済学者の業績は二の次にして、まず長寿の健康法に関心が向けられた。
長男の淳さんにも取材して、「長寿の理由として真っ先に浮かぶのは、くよく
よしなかったこと。マイペースで、周りを気にせず、あとを顧みずに好きなこ
とをしていました。」と答えてもらっていた。

 「健康には、かなり気をつけて、暴飲暴食せず、何をするにも節制型。夜は
早く寝て、冷たいもの熱すぎるものは食べない。庭で野菜を作るのが好きでし
たが、庭仕事で疲れると胃腸も疲れているだろうから、ご飯を八分目にしてお
こうとか。それに、午前中が勉強なら、午後は庭仕事というように、毎日体を
動かしていました。しかも、庭仕事をして疲れた様子がない。中学5年間(長
距離徒歩通学で)、1日も休まなかったそうで、基礎体力もしっかりしていた
のでしょう。」

 一昨年夏、白内障の手術の後、視力が戻らず、自由な歩行が困難になって図
書館通勤もできなくなり、転んで足腰を痛めたが、筋肉トレーニングなどリハ
ビリを続けた。生きる意志を失わなかったが、ついに今年の8月、肺炎を患っ
て入院。あとひと月余りで107歳の誕生日という11月25日に息を引き取られた。


 健康法のほかに近藤先生の業績としての評価は、“弱者の立場”ということ
である。

 名古屋の第八高等学校から東大農業経済学科に進んだのは「米騒動や小作争
議が続き、我ら何を為すべきかを悟った。」ことから一貫して弱者の立場に立
ち、昭和18年には地主的土地所有の問題を指摘して東大教授の追放される。
 終戦後、東大に復職し、農地改革に腕を揮い、農林省の統計局長になって農
村民主化に寄与された。東大農学部で農政学を講じ、日本の農業統計の整備に
尽力された功績は大きい。文化勲章を受けなかったのも“弱者の立場”を貫い
たからかもしれない。


 「朝日新聞」の「惜別」は、著作75冊のうち、35冊は70歳を過ぎてから書い
た。最後の「三世紀を生きて」は102歳で出版し、ギネスブックの最年長著者
並みだ。という評価をしている。見出しは「食糧自給で平和説く」というもの
だった。生前一貫して「世界中すべての国が食糧自給できれば戦争はなくなる。
」というのが、持論だった。

 また、お別れの会の弔辞で、東大で最後の弟子、今村奈良臣・東大名誉教授
は、修士論文を出した後の近藤先生の言葉が忘れられない。「君たちも研究者
の道を歩むことになる。今日から私の競争相手だ。できれば私を乗り越えて先
に進んでほしい。」

 遺影は、7年前自宅にインタビューに伺ったとき、菜園で大根や春菊を作っ
ていた野良姿だった。書斎での顔よりも健康的なこの姿が近藤先生らしいと見
ていたからだろう。

 近藤先生の遺したものは、農文協図書館に寄贈した蔵書など1万2千点の
「近藤文庫」である。インターネットで目録が検索できる。
http://www.ruralnet.or.jp/nbklib/book/071kondoubunko1.html

 私は、近藤先生の秘書を15年も続けていたおかげで先生の死後の取材も受け、
80歳で思い出を語る記事が新聞・雑誌に載ることになった。晩年まで尊敬でき
る恩師におつかえできた幸をしみじみ感じている。

 いずれ、「最晩年の近藤先生の生き方」をまとめておきたいと思っている。

(2005年12月 農文協図書館監事)

山崎農業研究所会員・『電子耕』編集同人
 原田 勉
tom@nazuna.com
http://nazuna.com/tom/

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<山崎農業研究所情報>
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◇第119回定例研究会要旨――地域社会の動きと高校農業教育(その1)
 2005年12月3日(土) 太陽コンサルタンツ会議室 30名参加

〔講演要旨〕
2.農業高校の担う役割について思う
――菅谷 明氏[千葉県立茂原農業高校教諭]

 勤務した学校からの体験、そこから感じたことを報告する。千葉県立下総高
校15年間、千葉県立茂原高校8年間勤めてきた。前者では農業機械科は工業科
の授業に属していた。また後者では農業特別専攻科、農業機械科での教育で、
農業科での体験の不足で苦労した。

 下総高校では生産技術科(農業)、航空車両整備科(工業)、情報ビジネス
科(商業)がある。農業関係では自営者養成に力を入れている。農業系は全寮
制(1年間)であった。現在はその制度は崩れて期間は10ヶ月間となり、こ
れも不評で6ヶ月間になった。現在は農業関係外の遠隔地の生徒も入っている。
生産技術科(農業)では農業、園芸、畜産がある。寮には教師も当番で泊まる。
部屋割りも昔は8人であった。いまは2人となっている。寮生活の当番宿直で
は生徒との話しが出来たのはよい。ここから寮生活自身にも改善すべき問題が
分かった。従来の寮制度のよい面は十分には発揮されず、かえって教育への弊
害も感じた。

 茂原高校では、農業特別専攻科に属した。ここでは通常の農業関係学科以外
に農業特別専攻科がある。この専攻は高校卒業者対象の2年制である。農家の
子弟であることが主な条件で、入学は学校の裁量に任され、かなり自由である。
全国に9校ある。1週間に月火水の3日間は学内授業、残りは家庭学習である。
この専攻1年生は全国先進農家への3ヶ月の宿泊研修をする。この期間に皆は
大きく成長する。希望者は海外研修でニュージーランド農家にも行く。2年生
は農業研修として北海道士幌町に行く(7日間)。営農計画、卒業論文を課し
ている。

 以上の体験からいまの教育では教科よりも生徒指導に重点を置く。現在の偏
差値での入学割り振りの弊害がある。教科指導では基礎基本が重視され、望む
専門分野の教育がおろそかになる懸念がある。学校農業クラブも重要な課外活
動であるが、指導の先生の発表の場となっている場合もあり、一部生徒のなか
には、疑問に思っている者もいる。農業高校の先輩はいまの県内農業を築いて
きた。その先輩たちは「もう農業高校ではない」との声がある。この現状を克
服していくのが課題である。

(文責:安富六郎・小泉浩郎)

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<老兵の戯言> 鶏卵の話
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 先日、それとなく観ていたTV番組で、いま話題の「細木数子」氏が「鶏
卵」の話をしていた。筆者の「かって」の専門であった分野なので、興味深く
拝聴していたところ、耳を疑う話が聞こえた。それは、鶏が1日に、卵を「2
〜3個」産むと云う「話題」であった。

 これまでにも、これに似た偽事象は、マスコミ報道で、いくらでも「目」に
し、「耳」にしたことがあったので、それほど重要視しなかった。加えて、現
職を退き、第二の人生に「没頭」している筆者には、それほど「重大事」でも
なかった。

 ところが、数日後の新聞紙上で、この問題に「日本養鶏協会」がクレイムを
つけた。それについて、TV局側と細木氏の事務所から、「謝罪」のコメント
が公表された。

 ここで問題は、TVと新聞である。新聞記事のすべてに目をとおすひとはほ
とんどいない。とりわけ若い人達は、高機能携帯電話で、興味あるニュースだ
けを目にしている。上記の問題も、TV報道は、広く日本中に広まったと思わ
れるが、新聞紙上での両者の意見を観た人は、TV視聴者に比べたら、天地雲
泥の差であろう。

 これでは、日本中の多くの人は、鶏が1日に、卵を2〜3個産む、と云うこ
とを信じるだろう。その為に、鶏卵が「価格の優等生」だと云われては、鶏が
可哀想である。真実は何処に。マスコミを恨みたくもなる。

 そう云えば、数年前、あの「O-157」問題で、「カイワレ大根」が、スケー
プゴートにされたのを思い出す。今、世界中で問題となっている「BSE」や
「鳥インフルエンザ」にしても、真実は「あそこ」にあるのに、と思ってしま
う。消費者の猛省を促したい。

藤原 昇
山崎農業研究所会員・中国・浙江大学・客座教授
y.nouken@taiyo-c.co.jp

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<編集後記> この年を忘れてなるものか
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忘年会シーズンである。が、知人からのメールのなかで「年を忘れようとは思
いません」という一言があった。彼の言わんとすることは、そんなにあっさり
と物事を忘れてしまっていいんですか? ということのようであった。

たしかに今年も、かんたんに忘れてはならないたくさんのことが起こった。個
人的には先の総選挙のさいのドタバタ劇が悪い意味でたいへん印象にのこって
いる。

山崎農業研究所の今年最後の定例研究会で話された西川裕人先生(元千葉県立
流山高校教諭。内容は次号で紹介予定)は、怒ること・問題意識をもつことの
たいせつさを力説しておられた。

忘れてばかりでは、怒ることもできまい。

2005年12月28日
山崎農業研究所会員・田口 均

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