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シンクタンク山崎農業研究所が農業を中心として健康・食べ物・人物をめぐる情報を提供し、読者との意見交換をはかる農業カルチャーマガジン




『電子耕』No.173-2005.12.16号

発行日: 2005/12/16

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隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」 第173号
−環境・農業・食べ物など情報の交流誌−
2005.12.16(金)発行   山崎農業研究所&編集同人
<キーワード>
環境・農業・健康・食べ物などの情報提供、高齢者と若者、農村と都市の
交流ミニコミ誌。山崎農業研究所&『電子耕』編集同人が編集・発行。
http://www.taiyo-c.co.jp/public_html/yamazaki/yama_index.htm
*************************************発行部数 1382 部***************
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□ 目 次  □----------------------------------------------------
<今週の提言> 「日本に農業が必要か」に応えて 小泉 浩郎
<80才からのメッセージ> お別れの会で「笑顔の写真」! 原田 勉
<山崎農業研究所情報>
◇第119回定例研究会要旨――地域社会の動きと高校農業教育(その1)
1.高校農業教育の現況―多様なコースの設定等と目指す方向
――福島 実氏[群馬県教育委員会指導主事]
<老兵の戯言> 最近の大学生 藤原 昇
<編集後記> 買い食いを恥じらう
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<今週の提言> 「日本に農業が必要か」に応えて
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 東京のある集まりで若い女性から「日本に農業が存在しなければならない理
由は何ですか?」と質問が出たという。これを聞き、「農」を生業としてきた
農業者は「自らの存在が否定され、生存の条件が閉ざされていく状況に対して
座して黙することはできない」と嘆き、その文章を読んで「農」で碌を育んで
きた農学者は「姉歯秀次一級建築士の偽装構造計算の根は、儲からない農業を
否定する思想にある」と断じた。そして、ともに「日本に農業が存在しなけ
ればならない理由は何ですか?」と問いかけている。

 改めて問われてみると、この回答は難しい。「農業が存在しないと困る」と
その必要性は、一般論として数え上げる事はできるだろう。だが、現実の農業
の後退は、学校の教科書や世間の常識での「必要性」とは係りなく進んでいる。

 わが国の食料自給率は、カロリーベースで40%である。先進国の中では最
も低い。農政は、自給率向上が最重要課題だとし効率的大規模農業者の選択的
拡大(担い手政策)と地域の農産物は地域で消費する(地産地消政策)運動を
展開している。だが、同時にWTO体制下、自由貿易を支持し、攻めの農業と
して農産物の」輸出を積極的に進めている。自国の自給率向上を問いながら、
他国への輸出を奨励する。この根底に、「農産物と工業製品とは違うという基
本的認識」が欠けている。「日本に農業が必要か」は、ここから問い直す必要
があろう。

 一杯のかけそばは、そば粉も醤油の原料である大豆も、そして割り箸までも
輸入品である。都府県別に求めた東京都の食料自給率は、カロリーベースで1
%である。先の若い女性の疑問も無理からぬ事である。だが、まだ、疑問を持
つだけ幸いという事だろう。

小泉 浩郎(山崎農研事務局長)
y.nouken@taiyo-c.co.jp

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<80才からのメッセージ> お別れの会で「笑顔の写真」!
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 近藤康男先生のお別れの会は、12月12日、青山葬儀所で行われた。参列者は
南は沖縄から北の北海道まで、およそ500人。農業・農村関係と労働組合関係
者が多かった。

 お別れの言葉を捧げた人は、農村文化運動(農文協・農文協図書館)関係代
表。全農林労働組合代表。農業経済学界代表。東大農学部長。ドイツ・チュー
ネン博物館長。であった。農林省の統計調査局長を勤めておられたので、統計
関係の担当部署や統計協会の研究者の出席も多かった。

 近藤先生は、一貫して弱者の立場に立ち、戦前は、地主的土地所有の問題を
指摘して東大を追放されることもあったが、戦後は農地改革に寄与され、また
農村民主化のための稲作収量調査などで日本の農林統計の基礎を築かれた。

 志を同じくする研究者を組織し『貧しさからの解放』や著作集を刊行された。
それに列なる全国の研究者・学者の参列も目を引いた。

 弔辞の中に、農林大臣や政治家などの名がなかったのも“弱者の立場”の近
藤先生のお別れの会らしく、清々しいものを感じた。本来なら文化勲章をもら
ってもよいお人だと思ったが、今回の参列者にみるように、現体制や独占資本
に奉仕する人々は見られなかった。

 106歳の長寿を保ち、百歳を超えても一人で図書館に通勤し、『七十歳から
の人生』と『三世紀を生きて』という高齢化社会の老人を励ます著作など奇跡
に近い業績を残された。

 104歳になって白内障の手術ののち視力が戻らず、自由な歩行が困難になっ
ても、足腰の筋力トレーニングなどリハビリを続けられた。何をするにしても
節制型で暴飲暴食をせず健康に気をつけられた健康法は、我々の範とすべきも
のであった。

 最晩年の今年6月3日、農文協創立65周年記念式典には出席されなかったが、
次のようなメッセージを寄せられた。これはひとえに農文協だけでなく、農業
問題に携わる人々にとって遺言となるべきものであろう。

「農村文化運動をさらに発展させて、日本国内はもちろんアジア諸国にも影響
を与え、ひいては世界平和に寄与するように、諸君の活躍に期待します。これ
からは100周年記念を目指して尽力されるようにお願いしたいと思います。」

 祭壇に飾られた遺影は、近藤先生が103歳のときの写真とお見受けしたが、
にこやかに笑っておられる笑顔は、「後輩の諸君よ、ではお別れだぞ」と言っ
ておられるような感じでした。

 先生の御志は、私たちの心に深く刻み込まれています。とお答えし、先生の
御霊の安らかならんことを心からお祈り申しあげました。

「農業経済学者 近藤康男の3世紀」
http://nazuna.com/100sai/

※12月19日(月)朝日新聞朝刊に、近藤康男先生の追悼記事が載ります。

山崎農業研究所会員・『電子耕』編集同人
 原田 勉
tom@nazuna.com
http://nazuna.com/tom/

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<山崎農業研究所情報>
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◇第119回定例研究会要旨――地域社会の動きと高校農業教育(その1)
 2005年12月3日(土) 太陽コンサルタンツ会議室 30名参加

〔講演要旨〕
1.高校農業教育の現況―多様なコースの設定等と目指す方向
――福島 実氏[群馬県教育委員会指導主事]

 全国高等学校農業教育の変遷:全国では戦後の学科別生徒数は現在、普通科
は72%、専門(農、工、商、家、水、その他)20.8%、総合3.8%、その他と

っている。農業科は最大期(昭和25年)の約1/4になった。生徒数もS40年
代を最高に、現在その37%になった。農業就業人口の推移とほぼ並行した減少
である。H17に農業専門科生徒数は9.7万人で普通科の261万の3.7%である。卒
業者の就農状況(%)は最高時のS45の33.5%でったものがH16では2%になっ
た。
 教科「農業」の目標も変わった。S45には53科目あったものがH11には29科目
となり、これに新たに情報、生物工学などが加わった。H16には全国の農業に
関する学科の分野は食料供給、バイオテクノロジー、環境創造、ヒューマンサ
ービスの4分野に再編された。ヒューマンサービスとは生物活用、グリーンラ
イフを習うところである。

 群馬県の農業教育:かつては日本一の養蚕県であった。現在は施設園芸・畜
産が盛んで首都近郊の自然に恵まれ、食料供給基地として位置づけている。県
内45校の普通科高校(普通科のみ)にたいし農業科を含む高校(農業科設置
校)は26校ある。農業に関する学科などへの入学状況では総合農学科を含む農
業に関する学科での募集定員は1080名であり、その充足率は100%、入学倍率
1.83となっている。

 教科「農業」での指導の重点:とくにプロジェクト学習や実験実習、その人
に最も適するような「学ぶ意欲を育てる教育」、および「地域に開かれた学校
づくり」につとめる。

 県内農業科設置高校での進路状況:H6とH17を比較すると激変のようすが分
かる。進学者は24.5%から56%に増加。就職者は71.8%から39% に減少。ど
こにも行かないものは3.8%から7.6%となった。これはフリータなどにつなが
る。H17では進学大学では東京農業大学に15名と最も多かった。

 検定・資格:測量士(士補)、造園施工、農業クラブ上級試験、愛玩動物飼
養管理士準2級、初級バイオ技術認定試験などに人気がある。

 国際交流:H16年度には10ヶ月間、インドネシア、マレーシア、フィリピン、
タイ、モンゴルから県内8校へ計15名を受け入れた。国際交流フォーラムを開
催した。農業高校生23名がタイ、フィリピン、タイで研修(1週間〜1ヶ月
間)を行った。

 地域社会との協力:開放講座実施、科目履修生受け入れ、農協・有料農家等
での長期インターンシップ(2週間以上)、教育機関との協力、連携など行っ
ている。

(文責:安富六郎)

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<老兵の戯言> 最近の大学生
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 先日、筆者は、某大学の後期の講義開始に当たって、受講生の選別を行った。
前期までは、希望者全員が、筆者の講義を受講した。どうした訳か、後期は、
予想外に学生が集まったので、筆者の厳しい講義スタイルについて、詳しく説
明した。

 翌週の講義に出席した学生は、前回の1/3になった。これが、現今の大学
生で、楽な道を選ぶ。残った学生は、俗に言う「ピン学生」だけだった。これ
では、筆者の教育理念に「反する」が、彼等を相手に講義をすると、実に気分
がいい。理解力はあるし、発言力もある、まさに「現役時代」そのままである。

 40数年前、高校教師時代に、校長から「秀才を教えるは、人生3楽の一つ
なり」と云われたことを、懐かしく思い起こした。ところで、今回去って行っ
た2/3の学生は、どうしたのだろう。いい加減に「単位をくれる」教師の講
義を受けているに違いない。「いい加減」な教師がいる限り、大学の「レベ
ル」が上がる「はず」がない。教師が学生に少しでも「実力」をつけて、社会
に「送り出す」ことを考えなければ、大学の「質」が上がらない。

 現に、大学の評価について、「あの大学の栄養士は使い物にならない」とか、
「あの大学の教育実習生は受け入れられない」とか、様々な不評が飛び交って
いる。こんな現実を「常勤の教師」は、知っているのだろうか。もう、そこま
で来ている大学「冬の時代」を、このような大学が、どうして「乗り切る」の
だろうか。

藤原 昇
山崎農業研究所会員・中国・浙江大学・客座教授
y.nouken@taiyo-c.co.jp

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<編集後記> 買い食いを恥じらう
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年上の友人が恥ずかしそうに話してくれたことがある。「ぼくは一人暮らしを
しているんだがね。家では紅茶を入れるくらい。あとはぜんぶ外食。要は買い
食いだね」。

わたし自身、仕事が忙しくなるとついついコンビニなどに頼ってしまう。たと
えば、おにぎりといえば、10数年前までは家でつくるものと決まっていた。買
うなんてとんでもないと思っていた。それがいまでは、水まで買うようになっ
ている。

「日本に農業はいらない」という人は、日本は金があるのだから、国家単位で
買い食いに徹すればよいという人なのだろう。そういう人は、買い食いできな
い人びと、貧しい人びとへの想像力もほとんどないのではないか。

そういえば、学校給食について「金を払っているのだから“いただきます”と
言わなくてもいいはずだ」という保護者もいるという話を最近聞いた。これも
また、買い食いについて何らの疑問ももたない人の例といってよいのではない
か。

買い食いを恥じらう気持ちがこの国からなくなったとき、そのとき「日本に農
業はいらない」という声があたりまえになるような気がしてならない。

2005年12月16日
山崎農業研究所会員・田口 均

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電子耕への投稿アドレスは、発行人の変更に伴い、
y.noken@taiyo-c.co.jp
となっております。投稿される方はこちらのアドレスにお願いします。
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次回 174号の締め切りは12月26日、発行は12月29日の予定です。

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