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葵マガジン*魔法野菜キャビッチ 7

発行日: 2008/10/12

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      ◇◆◇◆葵マガジン 2008年10月12日号◆◇◆◇

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 私は我が脳内におけるドーパミンの大量一斉放出を感知した。
「ちょっと、坂本」ルルドールが横目で私を睨んだ。「あんたすごい、嬉しそ
うな顔してるわよ。いい加減にして」
「別に、嬉しそうな顔など」
「してるわよ。でもきっとそうね。これから始まる話はきっと、あんたが涎を
垂らして飛びつきそうなことよ。つまりとんでもないトラブルって事」 

●葵マガジン文庫 1
『スペースドライヴァー坂本』
http://aoi.peewee.jp/aomagabunko/sakamoto/sakamoto.htm

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         ◇◆◇◆魔法野菜キャビッチ◆◇◆◇

              第7話(全22話)


 裁きの陣へは、聖堂の高い建物を目印にすれば良かった。
 私が着いた時、ちょうど緑の髪の鬼魔(キーマ)もそこに連れて来られてい
た。もう気絶から目覚めたようで、むすっとした顔で引き立てられて、今まさ
に、裁きの陣――罪人の上に神の裁きが下されるのを待つ間、罪人を立たせて
おく、大きな魔方陣の中へ、立たされようとしていた。
「その人を裁くの、待って下さい」私は上空から大声で叫んだ。そこにいた大
人たちと、緑の髪の鬼魔は、私を見上げた。
 私は、裁きの陣のすぐ傍に降り立った。
「こらっ、子どもがこんなところに来てはいかん」ジョバンニおじさんに怒ら
れたけど、私も負けてはいなかった。
「その緑の髪の人に、ドードーのいるところまで案内してもらいたいんです。
友達のヨンベが捕まってそこに連れていかれたんです」
 そしてこの場所にいる大人たちもまた、絶句して蒼ざめた。
 ハハハハハハ!
 一人、大笑いした者がいた。緑の髪の鬼魔(キーマ)だった。
 彼は両手を縛られたまま体をよじって、心底可笑しそうに笑っていた。「こ
の子、めっちゃくちゃ面白ぇ!」
「何が可笑しいの」私はむっとして、鬼魔に喰ってかかった。
「だってお前」鬼魔の笑いは、まだ止まらない。「“この人に、ドードーのい
るところまで案内してもらいたいんです”なんてさ、普通、そういうこと平気
な顔して言える奴なんて、いねえぜ」
「――」私が言い返そうとして息を吸ったとき、空から私を追ってきた母や他
の大人たちがするりっと降り立った。
「すいません、うちの娘がとんでもないことを――ポピー、謝りなさい」母は
厳しく私を叱咤した。
「でも、ママ」
「フリージア、ポピーを叱らないであげて」ヨンベのおばさんが間に入ってく
れた。「この子はヨンベを助けようと思って、ここまでしてくれたんだから。
でもねポピー、その気持ちだけで充分よ、ありがとうね」
「でも、おばさん」
「ヨンベのことは、もう、いいんだ」ヨンベのおじさんまでもが、私のしよう
とすることを終わらせようとしていた。「ありがとう、ポピー。君のような友
達を持って、あの子も幸せだった」おじさんの目は真っ赤で、語尾は震えてい
た。
「でも、おじさん」
「あれぇ、じゃあ俺は別に、道案内しなくてもいいわけ?」緑の髪の鬼魔が口
を挟んだ。
「お黙りなさい、この穢れた魔物」母が、すごく怖い顔で怒鳴った。「よくも
私の娘に手をかけてくれたわね。業火に呑まれて掻き消えるがいい」
「ひっでえ」鬼魔は、本当に傷ついたような顔をした。少し、目が潤んでいる
ように見えた。
「さあ、裁きは祭司様にお任せして、我々はすぐに引き上げよう」アービイお
じさんが皆を促した。
 私の心には、雨雲が立ち込めた。どうして皆、そんなに簡単に諦めるんだろ
う? 私の目からは今にも土砂降りが起こりそうだった。
「あたし……いやだ」きっぱりと言い切るつもりだったのに、喉につっかえた
塊のせいで、私の声は情けなく震えた。「もう、ヨンベに会えないなんて……
いやだ。探しに、行く」
「ポピー」母が首を振った。「辛いけれど、人は辛いことを受け入れなきゃい
けないの。耐えなきゃいけないの」
「いや、だ……」私はとうとう、顔を覆ってうずくまった。
 私の髪を可愛いといってくれたヨンベの笑顔、ベベロナおばさんちに行こう
と話したヨンベの悪戯っぽい顔、いろんなヨンベのいろんな顔が浮んで、とて
も胸が苦しくなった。
「顔を上げなさい、愛しい我が子よ」その時、少し離れたところから、年老い
た穏やかな声が聞こえた。
 はっとして見上げると、ルドルフ祭司さまが微笑みながら私に近づいてきて
いた。片手に、水晶玉のついた杖を持っている。大人たちは、怯えた。
「祭司さま」
「申し訳ありません、今すぐに退散いたしますので」
「この子が嘆き悲しまねばならぬわけが、どうしてこの世にあるだろうか?」
ルドルフ祭司さまは、私を見つめたまま、誰にともなくそうおたずねになった。
 誰も、その問いに答える者はいなかった。
「ヨンベは、まだ生きておる」祭司さまは静かに、そう告げた。
「え――」
「ほ、本当ですか」
 大人たちの声は裏返った。
 私も、腕に鳥肌の立つのを感じた。
 消えかけていた勇気の炎が、再び勢いを取り戻しはじめた。私は急いで、涙
をぬぐった。
「これ、鬼魔(キーマ)」祭司さまは、緑の髪の鬼魔に向き直った。「名はな
んという」
「――ユエホワ」鬼魔は、むすっと答えた。
「よろしい。私がこのユエホワに、纏(てん)の呪をかけよう。さすればこの
者がポピーに悪の手を伸ばそうとすれば、まとわりつく糸がそれを阻み、ポピ
ーをこの者と同行させようとも、危害の加えられることはない」
「おお」
「祭司さま」大人たちはざわめき、私の心はすっかり晴れ上がった。
「ありがとうございます。あたし、行きます!」
「ポピーを、行かせよと……神が仰っているのでしょうか、祭司さま?」母は、
恐る恐る訊ねた。「他の者でなく?」
 ルドルフ祭司さまはゆっくりと瞼を閉じ、少し置いてから答えた。
「神は私に、ヨンベの嘆きをお示しになった。そしてポピーの心に燃える炎を。
そして緑の髪の――ユエホワを。まだ見える――幾人もの、若い神たちの姿」
「ドードーを守る神たちだ」皆は驚いた。


                       ◇◆◇◆次号へ◆◇◆◇

*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v

            ◇◆◇◆後記◆◇◆◇

葵むらさきです。ご購読ありがとうございます。

最近、キノコをよく食べます。秋だからなのかどうなのかわかりませんが、鍋
物とか炒めものとかみそ汁とかスープとか、キノコ連食です。

私は、エノキダケとかブナシメジとかいう、小さくてあんまり味的に主張の強
くないキノコが好きです。
なのでシイタケはあんまり好きではなく、マツタケはそもそも価格的に手が出
ません。

そんなわけで、今夜はキノコの炊き込みご飯にしようかなと思います。でも、
キノコのグラタンてのもいいかな〜。

いやー、食欲の四季。

*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v

           それでは次回をお楽しみに。

             発行者:葵むらさき
             aoi@xi.peewee.jp
       ◇◆◇◆葵むらさき言語凝塊事務室◆◇◆◇
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