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◇◆◇◆葵マガジン 2008年9月6日号◆◇◆◇
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今までのお話はこちらでお読みいただけます☆
ケータイ書庫-BooksLegimo(ブックスレジモ)-
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◇◆◇◆魔法野菜キャビッチ◆◇◆◇
第4話(全22話)
ある年齢に達すると、といったけど、それが何歳で授けられるのかは、一人
一人違っている。早い子は十八歳ぐらいで授けられるし、遅い人は三十歳すぎ
てからやっともらえたりする。
これはどうも「遺伝」するみたいで、代々遅い家の子は遅く、早い家の子は
早いらしい。
ちなみに私の母は、二十歳で授けられたって言ってた。だから多分私も、そ
のぐらいだろうって。あと八年が、待ち遠しい――もちろん、それまでに一生
懸命、魔法の勉強をしないと、授けられる時期はもっと遅くなるのだ。
私とヨンベはしばらく吟味したあと、それぞれ一つずつのキャビッチを引き
抜いた。
ヨンベが選んだのはオレンジ色で、指を閉じた手のひらぐらいの大きさの、
楕円のもの。
私は黄緑色で、指を広げた手のひらぐらいの、ほぼ球形のを選んだ。
その外葉のさわり心地は、キュッキュッと固くみずみずしく、気持ちよかっ
た。
私なんかは、これで充分「いいキャビッチ」なんじゃないかなあって思うけ
れど、大人たちの要求水準はずい分高いらしく、これでもまだ不満足なのだろ
う。
そうなるとますます気になるのが、ベベロナおばさんの手にしたという「い
いキャビッチ」のことで――
「うわあっ、こっ、こらっ!」
その時、台所でおじさんが悲鳴を挙げた。何か、とんでもないものを"召喚"
してしまったのだ。私たちは反射的に、そっちへ走り出した。
けれどすぐにヨンベが、私の腕を掴んで止まった。「いや、行かない方がい
い」
「えっ、なんで?」私の声は裏返った。
「キャビッチ持ってるとこ見られたら、絶対なんか訊かれるから。このまま行
こう」
「あ、う、うん」私は、一体何が出てきたのかとっても見たかったけれど、確
かにヨンベの言う通り、キャビッチ持参の状態ではまずいので(ポケットに入
れてごまかせるような大きさでもないし)、そのままベベロナおばさんちに向
かうことにした。
一体おじさんは、何と"融合"させたんだろう?
街の薬屋の前を通り過ぎるとき、私はふとそう思った。
薬屋には、キャビッチ畑の土に混ぜる用の薬の他に"融合"用の薬も、売って
ある。
キャビッチとそのどれかを魔法陣の中に置いて魔法をかけ"融合"させると、
何らかの鬼魔(キーマ)を召喚することができるのだ。
私が知っているのは、ヘーラーの骨の粉と合わせるとバータ類が出てくるっ
ていうのだけ。出てくる鬼魔のレヴェルは、魔法をかけたものの魔法レヴェル
に比例する。
この"融合"はすごく複雑で難しいので、私たちぐらいの年で学ぶことはない。
せいぜい、そう、ヨンベのように"煮る"ところまでだ。これは、キャビッチを
単独で鍋で煮ること。うまく味付けをしてそのスープを飲めば、自分自身の魔
力がアップする。このための調味料もまた、お店でいろいろ売られている。
私たちは、キューナン通りを曲がって、ベベロナおばさんちの前に立った。
なんだか、不気味なほど静かだった。
物音も聞こえてこないし、人の声もしない、リューダダの吠える声さえも。
私の心臓は、突然早く鳴り出した。
「ねえ、なんか静かすぎない?」ヨンベに訊いてみる。
「うん」ヨンベもどきどきしているらしく、眉をぎゅっと寄せて頷く。
私たちはしばらくぼけっと立っていたけれど、そうしているのも変なので、
取りあえず庭に侵入してみることにした。
ほんとうに、ひっそりとしている。
「留守なのかな?」ヨンベが囁いた。
一階の窓にはすべてカーテンがかかり、部屋の中の様子はまったくわからな
い。
私たちは、窓に耳をくっつけてみた。
すると――
ブー、ヒー
とても微かに――いびきのような声が、聞こえた。
ブー、ヒー、ブー
私とヨンベは、耳を窓にくっつけたまま、目を合わせた。
ブヒ、ブー、ヒー
おばさんは、眠っているのだろう。"いいキャビッチ"を盗み見るなら、今が
チャンスだ。
私とヨンベは、何となく頷き合った。
私たちは台所の窓のところに行き、私の方が、ゆっくりと窓枠を持ち上げよ
うとした。
と、その窓がいきなり、かたかたかた、と、微かに震え出した。
ハッとして、手を引っ込める。
でも透明な窓ガラスの向こうには、やっぱりカーテンしか見えない。
それともベベロナおばさんが、魔法で窓を開けようとしているんだろうか?
いや、ベベロナおばさんの魔法っていうのはすごく雑で、家の中の一つの窓
だけを、手で開けるように開ける、なんて繊細なことは、できないはずだ。
そう思った時。
ガシャーッ!
大きな音がして私たちは、その窓と一緒に家の中に引きずり込まれた。
「きゃあああっ」私たちは同時に叫んだ。
ごろごろっと床の上を転がって、慌てて起き上がると、そこには見たことも
ない生き物――鬼魔(キーマ)がいた。
大きな二本の角を持ち、体はでっかく、太い尻尾が生えている。顔はウシに
似ていて、顔の横から飛び出た目玉が、ものすごく不気味で怖い。
私もヨンベも、悲鳴にもならない声を挙げて、腰を抜かしてへたりこんでい
た。
逃げなきゃいけないと思うのに、脚が全然動かない。
鬼魔は大きな鼻からブー、ヒー、ブー、ヒーと音を立てながら、私たちをじ
ろじろ見た。
◇◆◇◆次号へ◆◇◆◇
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◇◆◇◆後記◆◇◆◇
葵むらさきです。ご購読ありがとうございます。
少し、涼しくなってきましたね。蝉はすっかり鳴りをひそめ、秋の夜長系の虫
たちがりーりり鳴いています。
そのうち、どこからともなくキンモクセイの香りが漂ってきたりするんですよ
ね。お月がなんだかぴかぴかし始めたりして。紅葉も萌え始めたりとか。
平和な秋でありますように。です。
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それでは次回をお楽しみに。
発行者:葵むらさき
aoi@xi.peewee.jp
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