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ポピーは魔法世界に住む少女。彼女たちは、キャビッチという不思議な野菜を使って魔法を行使する。ある時、親友のヨンベが恐ろしい鬼魔(キーマ)にさらわれてしまう。優しいウールー、どこかずるがしこいユエホワ、そして幾人ものハンサムな神様たちとともに、ポピーの旅が始まる。冒険ファンタジー『魔法野菜キャビッチ』8月2日連載開始!




葵マガジン*多重人格の急須 29

発行日: 2008/6/28

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      ◇◆◇◆葵マガジン 2008年6月28日号◆◇◆◇

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今までのお話はこちらでお読みいただけます☆

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          ◇◆◇◆多重人格の急須◆◇◆◇

              第29話(全32話)


            “統合者”、現れる 3


「ほう。どんな?」急須くんがさも興味深げに訊ねた。まるでテレビショッピ
ングの司会だ。
「それは、大人になると消えてしまう、子どもだけがその脳から発している、
特殊な物質の存在です」
「ええっ、そんなものが?」急須くんが叫んだ。「それは一体――」蓋をぱく
ぱくさせるその姿はしかし、緊迫感という言葉とはほど遠いものだった。
「これは推測ですが、それは未知のものに対する知的好奇心を誘発する性質を
持つものと思われます」"主"は続けた。「先ほどあなたが現れた時、真央子さ
んは非常に喜び手を伸ばした――つまりあのような行動を起こさせようとする
ものです」
「――確かに、大人にはない、かも……」遥香が呟いた。
「大人は、用心しちゃうもんね」舞子は遥香に言った。「でもそれって、結局
は自分を守るためだよね」
「そう」"主"は話した。「学習を重ねることにより、その物質は急速に消える
――というよりも、深層に押し込められてしまい、表立っては見えなくなって
しまうもののようです。そして私たちはさらに、その貴重な物質が、私たちの
思念に反応して震えることをも発見しました」
「思念……ビームに?」舞子は"主"に訊いた。
「いいえ、ビームではなく思念そのものにです。小さな子どもの発する物質は、
私たちの持つ光に代って私たちの思念を伝える媒体となってくれるのです。私
の声として今あなた方の耳に届いているのは、真央子さんの発するその物質の
粒子が震えている、摩擦音なのです」
「ううーむこれは驚きだ!」急須くんは甲高い声で唸り、遥香は腕に抱く我が
子を驚愕の眼差しで見やり、舞子はこめかみを押えて眉をしかめ首を傾げた。
「そうか……だからあなたの声って、すぐ近くで聞こえてたのね」遥香の納得
した様子は、舞子にはうらやましい限りだった。
「重ねて申し上げますが、これにより真央子さんに苦痛ないし精神的肉体的損
傷を与えることは、決してありません」
「そう……まあ、本人ケロッとしてるしね」遥香はここに至ってようやく、少
しだけ"主"に道を譲ったようだった。
「さあ、それじゃあご理解いただけたところでですね」急須くんが後を引き取
った。「ぼくにいい考えがあるんです。つまり"主"さん及びブライド人たちと、
地球人とが争うことなく、傷つけ合うことなく地球上で共存する方法について」
 その場は、しんと静まり返った。
「……えー」
 急須くんは、いささか拍子抜けしたようだった。もしかしたら自分の時も、
自分がそうしたように驚きの芝居でもって応えて欲しかったのかも知れなかっ
た。知るか、と舞子は心の中で思った。
「"主"さん及び"主"さん内部の人格たちには、地表の地下深くに、このように
建造物を構築していただき、そこに住んでもらいます」
「地下に?」舞子はびっくりして急須を見下ろした。「でっでも、バレちゃう
でしょう、そんなことしても」
「大丈夫ですよ」急須くんはあっさりと請け合った。「地球の海中深くにはる
か昔の遺跡が眠っているんですが、それを少しばかりいじくれば仕事も早いし」
「えっ、何それ?」遥香もびっくりした。「はるか昔の遺跡って……ムー大陸
とかアトランティス文明とか、そういうやつ?」
「いやあ〜」急須くんは、もしそこに手がついていたなら後頭部をぽりぽり掻
いていたであろう口ぶりで、自信なさげに答えた。「それがムー大陸その他の
遺跡だっていう確たる証拠はないんですけど、取りあえずはまだ当分地球人類
に発見されそうもないですし、このさい利用できる遺跡は最大限利用してです
ね」
「バチあたんないの、そういうことして?」舞子は眉を寄せた。「そのムー大
陸に住んでた人の亡霊とかに、祟られるかもよ」
「非科学的ですよ」急須くんはケタケタと笑った。
「あんたがそれを言うわけ?」舞子は呟いた。
「でもとにかく、さしむきの暫定的措置としてってことですからね、"主"さん
が次の住処(すみか)を見つけるまでの」急須くんの言葉に、舞子たちは改め
て"主"を見やった。
「ありがとうございます」"主"は小さな声で言った。「何とお礼申し上げれば
いいのか」
「しかしひとつだけはっきりさせておきたいのは」急須くんは相変わらず可愛
らしい声で話を続けた。「もう二度と、地球人類との接触を試みないでおく、
ということです」
「――」"主"は、押し黙った。
「あなたには気の毒ですが――今の状況ではまず百パーセント、地球人たちが
あなたを友好的に迎え入れることはないでしょう。せっかくあなたのコンタク
ト法に希望の光が見えてきたところではありますが――地球人に、あれだけの
犠牲を出してしまったあとですからね」
「――はい」"主"は、消え入りそうな声で答えた。「それは、承知しました」
 舞子たちも、仕方ないという風に頷き合った。
 少しの間、沈黙が訪れた。
 これですべては、一応の解決を見たのだ。
 その時舞子の耳に、微かな風鈴の音が届いた。


                       ◇◆◇◆次号へ◆◇◆◇

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            ◇◆◇◆後記◆◇◆◇

葵むらさきです。ご購読ありがとうございます。

生活パターンが今月から変わり、朝の6時だとか5時だとかに起床する必要が出
て、ために夜は11時とか、下手をすると10時だとかに就寝するという、世にい
わゆる「早寝早起き」の日常となりました。

とたん、カゼを引いてしまいました。

それも喉と鼻にだけきて、熱は出ず体は楽で食欲もがっつりあるという、まあ、
大概わたくし葵むらさきは心身に如何なる悪徴候現れようとも食欲だけは落ち
たためしがないのですが、そんな微妙な状態です。

それが理由というわけではないのですが、ひとつ新たなる決意をしました。

「外食を、やめる」。

自動車メーカーが軒並み値上げをしましたが、まあそれと無関係といえば無関
係に、外食って……高い、高すぎる!
ということに最近ようやく気づきまして、おうちでごはん&手弁当、という、
なんだか世に言う「いい奥さんになれるね」ぽい生活になってしまいつつある
今日この頃です。

それにしても弁当を作るとなるとさらに早起きする必要がありそうなので、目
覚まし時計では生温いかも知れません。
朝になったら「起きろ! そして飯を炊け!」とたたき起こしてくれる、ロボ
ットが欲しいです。

……、あ、弁当作るロボットの方が、いいのか……

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           それでは次回をお楽しみに。

             発行者:葵むらさき
             aoi@xi.peewee.jp
       ◇◆◇◆葵むらさき言語凝塊事務室◆◇◆◇
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発行者プロフィール

ペンネーム : 葵むらさき

  • ネット小説屋。2002年8月より小説を公開。オンデマンド書店「e-ペンギン」より「葵マガジン文庫」発売中。

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