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◇◆◇◆葵マガジン 2008年5月24日号◆◇◆◇
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やつらは「何か」に取り憑かれている──
オムニバス・ホラーコメディ
「ハーイ皆死んだ魚の目でチ〜ズ」(作/葵むらさき)
連載中!
おりおん☆
http://de-view.net/pc/
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◇◆◇◆多重人格の急須◆◇◆◇
第25話(全32話)
舞子、使役する 5
「それは――そうだけども」遥香は首を横に振った。「きっと地球人たちはそ
れでも彼を許さないわ――すでにあれだけの生命を奪ってしまったんだもの」
「う――」
「地球人たちが彼を捕えるか――地球人対ブライド人の戦いになるか、どっち
かだわ」
「で……も……」
「私は」遥香は、真央子の顔を見つめた、「木多丘くんに、今ここでブライド
人たちをやっつけてもらうべきだと思うわ」
「――」舞子は、言葉を失った。
「可哀想だけど、それしかないと思う」遥香は再び舞子を見た。
舞子は遥香を見、それからブライド人たちを見た――彼らは約三メートル離
れた周囲をぐるりと取り巻いていた。
その位置に、木多丘の張った"膜"があるのだ。
ブライド人たちはおよそ百人近くはいるように思われた。
その各々の眼が代わる代わるに白く輝く。
殺人ビームはそのたび、膜に跳ね返るのだった。
舞子は、頭を抱えた――文字通り、自分の頭を鷲づかみにした。
「どうしたらいいの――」
「とりあえず逃げましょう」遥香が提案した。「安全な場所に」
「そ……かな」舞子も、そうしたい気分だった。「じゃあひろみちゃん、あた
したちをどっか安全な場所に連れてって」
「かしこまりました」木多丘は素早く、この星へ来た時のように舞子と、今度
は真央子付きの遥香を両肩に乗せ、軽くジャンプした。
ジャンプ自体は軽かったが、その後起きた事態は決して"軽く"なかった。
すなわち木多丘はそういう状態でその部屋の天井を破壊し、その建物自体を
も次々にぶち破って行き、ついに土中へ脱け出たのだった。
そして来た時同様、来た時とは逆に、地表へ向けて地殻を掘り進んで行った。
むろん舞子たちは例の"魔法の膜"に守られていたので、何ら不快な目に遭う
ことはなかった。
しかし舞子の胸中は、安心してはいなかった。
――どうしたらいいの――
その想いは相変わらず彼女の内に燃えつづけていた。
「さてさて」木多丘が、土中を突き進みながら呟いた。「一体どこに行きゃあ、
安全なんだかなあ」
「どこでもいいよ」舞子は吐息混じりに答えた。「あいつらが追ってこないと
こなら、どこでも」
「しかしあいつら」木多丘は、ちらりと肩越しに後ろ――というか下――を振
り向いて言った。「“どこまでも追って来る”つもりらしいぜ」
「へっ?」舞子と遥香は驚いて振り返った。「うわあっ」
さっきの何十人というエイリアンたちが、少し遅れて束になって、木多丘に
劣らぬスピードで、木多丘の掘ったトンネルを昇って来るのだ。
何十、何百という眼を、代わる代わるに光らせながら――
「そっ、そういえばさあ」遥香が、呆然と呟いた。「あの“主”ってやつ、あ
のエイリアン――人格たちって、いつでも、どこにでも、現れることができる
みたいなこと……言ってなかった?」
「あ……」舞子も、口をあんぐりと開けた。「そういや……」
「てことはさ」遥香と舞子は、木多丘のつるつるした頭を挟んで顔を見合わせ
た。「“どこへ逃げてもそこは安全じゃない”ってこと?」
「あらま」木多丘は昇りつつのんびりと言った。「いかがいたしましょう、ご
主人様」
「いーっ」舞子は歯を噛みしめて後方のエイリアンたちを見た。「ど、どうし
よう? どうしよう?」そして木多丘を見、遥香を見、遥香の腕の中の真央子
を見、うろたえにうろたえた。「どうしよう?」
「やっぱりやっつけるしかないわ」遥香は眉を厳しくして答えた。「舞ちゃん、
木多丘くんに命令するのよ。エイリアンどもを駆逐しろって」
「う――」舞子は喉を詰まらせた。
「それしかないでしょう。早く」
「――」
「あのさ」だし抜けに木多丘が言葉を挟んだ。「もうすぐ地上に出るからさ、
目ぇつぶっててね」
「あ」
「うん」
舞子たちはぎゅっと目を閉じ、遥香は真央子の目を手で覆った。
約十秒後、木多丘は「出るよ」と予告し、その通りにした。
舞子は目を閉じたままだったし“膜”に守られているので、暑さや寒さを感
じることもなかったが、地表にわずかばかり注がれる恒星の光が、瞼の皮膚を
透って感知された。
「しばらく目つぶったままでいろよ」木多丘はそう言い、大地の上に立って、
舞子たちを下ろした。
「エイリアンたちは? 来てるの?」舞子は訊いた。
「うん」木多丘は簡潔に答えた。「いかがいたしましょう、ご主人様」
「――」舞子はまだ迷っていた。「どう、すれば――」
「俺はねえ」木多丘が、舞子の頭の上から意見を述べはじめた。「やっぱし遥
香の言うように、叩くべきだと思うのよ」
「えっ、なんで?」舞子は目を閉じたまま、声のした方に頭を向けた。
「やらなきゃ、やられるからさ」木多丘が両手を広げ肩をすくめる姿が、目を
閉じていても見えるようだった。「俺たちがさしむき今選べるのは二つに一つ
――ここで闘うか、地球まで逃げ帰るかどっちかだ。そんで逃げ帰った場合は
――そろそろ目開けていいぞ、ゆっくりな」
「あ、うん」舞子は言われた通り、少しずつ瞼を開いていった。砂漠の砂が足
元にあった。「逃げ帰った場合は?」
「あのエイリアンたちもまた、ついてくる」木多丘は、つ、と指を上げ前方を
指した。
「――」舞子は指された方向を見た。
ルネサンス期の名画を眺めるようだった。
“膜”の向こうに、ぼんやりと輪郭の定まらぬエイリアンたちの影が映ってい
る。
その眼が、ぴかぴかぴか、と、あっちでもこっちでも点滅をくり返す。
不気味ながらも、一種の美しさを、その光景はかもし出していた。
◇◆◇◆次号へ◆◇◆◇
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◇◆◇◆後記◆◇◆◇
葵むらさきです。ご購読ありがとうございます。
Wiiフィットネタの続きです。(強制)
このゲームソフト(って言い切ったらメーカーさん的には悲しむかもですが)、
毎日続けて起動しないと、ナント、一緒にエントリーしている他のキャラクタ
ーに向かって、陰口をたたくのです。
「ここだけの話ですが、もけさん(注:私のキャラの名前)は最近、運動して
いないようです」
とかなんとか……
で、くそッと奮起して再びヨガなどをやってみました。
重心移動を示す点が、体の安定度のくずれにともなってガクガクブルブルと震
えるわけですが、これが、移動許容範囲の限界を超えるトコまでいったりして、
もう震えどころかその点が「匠」という字を描いたりします。
まあそれはともかく、最近では、ちょっと長時間歩いてきたとか自転車こいで
きたとかいう日には、もう意地になってWiiフィットに報告するようになって
います。
「今日はこんだけ運動したんだからな! もう、文句は言わせない!」
うーむ、やはり機械(というかゲームソフト)に、支配される生き様……
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それでは次回をお楽しみに。
発行者:葵むらさき
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