ポピーは魔法世界に住む少女。彼女たちは、キャビッチという不思議な野菜を使って魔法を行使する。ある時、親友のヨンベが恐ろしい鬼魔(キーマ)にさらわれてしまう。優しいウールー、どこかずるがしこいユエホワ、そして幾人ものハンサムな神様たちとともに、ポピーの旅が始まる。冒険ファンタジー『魔法野菜キャビッチ』8月2日連載開始!
- 最新号:2008-10-12
- 発行周期:毎週土曜日
- 読んでる人:17人
- 創刊日:2003-11-29
- Score!:-点
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葵マガジン*多重人格の急須 19
発行日: 2008/2/17*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v
◇◆◇◆葵マガジン 2008年2月17日号◆◇◆◇
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やつらは「何か」に取り憑かれている──
オムニバス・ホラーコメディ
「ハーイ皆死んだ魚の目でチ〜ズ」(作/葵むらさき)
連載中!
おりおん☆
http://de-view.net/pc/
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◇◆◇◆多重人格の急須◆◇◆◇
第19話(全32話)
“主”、現れる 5
"主"、現れる 5
「——」舞子は口をあんぐりと開けて、その様を見つめた。
遥香が、しゃがんだ大石の頭越しに、意味ありげにウィンクをしてよこした。
やったわね、といいたげだった。
「や」舞子はどうしてか、顔から火の出る思いだった。「やめてよ大石くん、
なんか企んでるでしょうアンタ」
大石はちらり、と横目で舞子を見た。
その目は疑うことなくいつもの、人を小馬鹿にした、冷酷な光をたたえるま
さしく大石の目だった。
それで舞子は、いく分ほっとした。
「私たちには、地球に移り住む必要があります」“主”はなおも静かに話した。
「私たちの惑星は、生命が生まれ育ってゆくには“冷えすぎて”きました——
地表をご覧になりましたね?」
「水も空気も、ないみたいだったわ」遥香が答えた。
「そう、土壌中のわずかな水を私たちは、シールドで閉じ込め循環させて使っ
てきました。大気も」
「けちけちと?」舞子はぼそりと呟いた。
「あなた方のように豊富な資源を有する惑星は大変恵まれているのです」“主”
の声は、飽くまで穏やかで、舞子を非難している風にはまるで聞えなかった。
「けれど遺憾なことにあなた方地球人はそれを解っていない」
「そうかなあ」舞子は口を尖らせた。「皆けっこう、省エネとか気ィ使ってる
よねえ、リサイクルとか」同意を求めて、遥香の方を見る。
「うん、そうそう」遥香も頷いた。
「あなた方の意識がその程度のレベルであってもまだ滅亡しないでいられるの
は」“主”はさらりと地球人を見下す発言をした。「ひとえに人口がまだ少な
くて済んでいるからというだけのことです」
「ふうーん」舞子はつい感心して聞き入ってしまい、またもや大石の冷たい眼
光を浴びせかけられた。
「私たちには次なる住処を早急に見つける必要があるのです」“主”はいった。
「しかしですね」大石が意見を挟んだ。「よしんば地球人類との折り合いがつ
いて、地球人が百歩譲ってあなた方に住処を提供したとしても——」
一瞬、沈黙があった。
「それがいざ実現すれば、地球の豊富な資源とて短期間で枯渇してしまうでし
ょう」大石の冷静な声が、未来の予想図を述べた。「そうすれば地球人もろと
も、あなた方は心中するおつもりなのですか?」
“主”は、何の思念も送って寄越さなかった。
「そんなはずはないですよね?」大石は冷笑を含んだ声で、答えぬ“主”の代
りに答えた。
「ど、どういうこと?」舞子は多少頭が混乱しながらも、召使い大石が少しず
つ"主"の化けの皮をはがさんとしているのを感じ、無意識のうちに大石に好感
をすら覚え始めていた。
「あなた方は残念ながら、地球人類より遥かに賢そうだ。少なくとも、あなた
は、ね——賢いというより、狡猾というべきかな」大石は、右手の人差し指で
眼鏡をつんと押し上げた。「そういう事態が起る前に、また新たなる住処をど
こかよその銀河にでも見つけ出すでしょう——しかしそれならまだいい方で、
もしかするとあなた方はすでに——」
“主”は無言だった。
「より資源の節約を図るため、地球人類の“処分方法”を練り上げているので
はないのですか?」
「なっ」舞子は憤慨した。「なんて奴?」
「ひどい」遥香も腹を立てていた。「あたし達を食い物にするのね」
「まるでヤドカリですな」大石が所見を述べた。
「哀しむべきことです」"主"は答えた。「私たちの切実な願い、地球人類に対
して抱く誠実な友好の気持ちは、何ひとつ伝わっていない」
「誠実や友好で、お腹は太りませんからね」大石は突き放すように云った。
「そうよ、来られちゃ迷惑よ」舞子もふんぞり返り、尊大な態度でいい放った。
「私も、あなた方と私たちとの共生は、無理だと思います」遥香も意見を述べ
た。
「しかし私たちは生き延びねばならない」"主"の声のトーンが変ったのはその
時だった。
舞子たちははっと構えた。
「私たちには、新たな住処が必要なのです——取り急ぎ、あなた方の地球とい
う、ね——」その声、その思念はまるで、舞子たちの頭上から覆い被さってく
るように聞え、感じられた。「差し向きそこに落ち着かせていただければすぐ
に他の惑星に手を施して、我々は移り住むこともできましょう」
「いいや、移り住むのはあんたらじゃない」大石は断言した。「首にナワをつ
けられた地球人たちの行列こそが、そこに運ばれて行くことになるんだ」
「あなたは何者なのですか」"主"の声は初めて、金属のような硬質の張りをも
って、大石の言葉を撥ね退けた。「地球人類ではないのなら、あなたにこの件
は関係ないことです。口出しを禁じます」
「私に何かを禁じることができるのは舞子さまだけだ」そう叫び返した大石を
舞子は、嘘偽りなくカッコいい、と思った。
「私には分ります」“主”の声は、また元通り静かになった。
それは、何か不気味なものを感じさせる、穏やかさであった。
「あなたは、何か分裂したものの中の一つの“パーツ”にすぎない」
「ふふん」大石は、鼻で笑った。「まったくあなたという人は——というか生
命体は、ああいえばこういう」
「あなたもね」“主”は答えた。
舞子は思わずうんうんと頷き、またしても大石の敵意のこもった目線を浴び
た。
「——なるほど、一つの生命体の中に複数存在する人格のひとつというのです
ね」
「いいっ」舞子はまた“主”の方に目を戻した。「なんで分るの?」
「生命体って——急須の、ことなの?」遥香は、足元にある急須を見下ろして
いった。
誰が抱えて来たわけでもないのに、常に急須はいつの間にか"そこ"に在るの
だ。
「急須」“主”は、遥香の言葉を反復した。「多重人格の、急須」
「人の心を読んでるってわけ?」遥香が低く呟いた。「やな感じ」
◇◆◇◆次号へ◆◇◆◇
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◇◆◇◆後記◆◇◆◇
葵むらさきです。ご購読ありがとうございます。
今回の四大陸フィギュアは、見逃しませんでした。
真央ちゃん、素敵でしたね〜〜! 美しかったです。
顧みてみれば本マガジン連載中の「多重人格の急須」に出てくる2歳の女の子の
名前、奇しくも「真央子」だったのよな〜……と、今更にして気づくわたくし
でありました。
こちらの真央ちゃんも、これからある意味大活躍をします。というか、実はも
うすでに、しているんです。えっ、一体、何の!?(自演)
さてそれは、これからの展開をどうぞお楽しみに!(自宣)
そして最後になってしまいましたが、また配信遅れて、すみませんでした……
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発行者:葵むらさき
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