ポピーは魔法世界に住む少女。彼女たちは、キャビッチという不思議な野菜を使って魔法を行使する。ある時、親友のヨンベが恐ろしい鬼魔(キーマ)にさらわれてしまう。優しいウールー、どこかずるがしこいユエホワ、そして幾人ものハンサムな神様たちとともに、ポピーの旅が始まる。冒険ファンタジー『魔法野菜キャビッチ』8月2日連載開始!
- 最新号:2008-09-06
- 発行周期:毎週土曜日
- 読んでる人:22人
- 創刊日:2003-11-29
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葵マガジン*多重人格の急須 17
発行日: 2008/2/3*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v*v
◇◆◇◆葵マガジン 2008年2月3日号◆◇◆◇
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やつらは「何か」に取り憑かれている──
オムニバス・ホラーコメディ
「ハーイ皆死んだ魚の目でチ〜ズ」(作/葵むらさき)
連載中!
おりおん☆
http://de-view.net/pc/
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◇◆◇◆多重人格の急須◆◇◆◇
第17話(全32話)
“主”、現れる 3
「でも舞ちゃん」遥香が手で制す。「大石くんを呼ぶってことは」
「おいらは消えちまうってことなのよ」木多丘が後を続ける。
「あえっそうか」舞子は頭に手をやり上を見た。「大石くんじゃ土が掘れない
のよね。でも大石くんがいないと地理がわかんないし大石くんが出てきたらひ
ろみちゃんが消える――ああ、どうしたらいいのお?」
「しっかりしてちょうだい、ご主人様」木多丘があきれた声を出した。
「んもう大体ねえ、なんで多重人格なわけ? この急須ってば」舞子は急須を
両手で振った。「一個一個の役目の人しか出てこれないなんて、不便じゃん」
「そんなこといわれたって仕方ねえし。ホラ着いたぜ」木多丘は降下のスピー
ドを急速に下げ、径三メートルほどの円筒状に造られた穴の底に立ち、停止し
た。
「え? どこに?」
「真央子の捕まってるところの上にだよ。観光地に来たとでも思ってんのか」
木多丘は舞子と遥香をすとんと降ろした。土とカビの混じったような匂いがす
る。
「ああ、真央子ちゃんの――え?」舞子は土の中できょとんと佇んだ。
「もう、我慢できない」遥香がついに吹き出し、土の中に声を響き渡らせて爆
笑し始めた。「皆ねえ、舞子ちゃんのこと、いじめすぎだってば」
「え? え?」舞子一人が遥香と木多丘をきょろきょろ交互に見ていた。
「だってこいつ、何でもかんでもすぐ真に受けるんだもん」木多丘も、そっぽ
を向いて可笑しさをかみ殺しながらいった。
「な? え? ど?」舞子にはわけがわからず、ただ意味不明の問いを口にす
るばかりだった。
「ま、とにかくここからが大事ってことよ、舞ちゃん」遥香は努力の末まじめ
な表情を作って舞子にいった。「行きましょう」
木多丘は膝を突いた。足元の砂を手で払うと、白い床が出てきた。
「ちょっと下がってな」木多丘は舞子と遥香の方をちらりと見た。
「さ、下がるっていったってこんな狭いとこ」二人はせいぜい剥きだしの土の
壁に背を押しつけた。とはいえ彼女たちはまだ木多丘の張った“魔法の膜”に
護られた状態なので、土の感触を背に受けることはなく、ただそれ以上後ろに
は下がれないというだけだった。
木多丘は手刀を作って白い床――つまり真央子のいる部屋の天井の“中に”
すぷすぷと沈み込ませた。
「うわっ」舞子は、口に手を当てた。
木多丘は、厚さ数十センチの天井材を、ナイフでバターを切り取るようにさ
っくりと、直径一メートルほどの円形にえぐり取り、舞子たちの足元にどさり
と落とした。
「真央子」遥香が叫び、穿たれた穴の縁から下を覗いた。
彼女の小さな娘は部屋の隅からまん丸い目をぱっくりと開けて天井を凝視し
ていたが、母親の姿が見え声が聞えるや、火がついたように泣き出し、走り寄
って来た。
「真央子」遥香の目にも涙が溢れた。
木多丘は舞子と遥香を再びかつぎ上げ、ふわりと室内に降り立った。
遥香は真央子をかき抱き、真央子はこれ以上母親に近づくにはその内臓を押
しのけて腹の中にもぐり込むしかないというところまで母に強くしがみついた。
その様子を見る舞子も、鼻につんと痛みを感じ、目頭が熱くなった。
しゅッ、と音がした。
「あ?」舞子が音の方に振り向くと、木多丘の姿が消えており、急須が床の上
でかたかたと小刻みに震えていた。
「あっ、ひろみちゃん? ちょっと――」
「遥香! 真央子ちゃん! 大丈夫かい?」崖から落ちそうな正義のヒーロー
のような声を発しながら、正吾が現れた。
「正吾!」遥香もまた、絶体絶命のヒーローに手を差し伸べるヒロインのよう
な声で彼を呼びながら振り向いた。
「なんであなたが出てくるのよこんな時に?」舞子は、二人の間に雷を落とす
魔法使いの老婆のように邪悪げに呟いた。
「ママ」真央子はトリュフチョコのような瞳を一分たりとも隠すことなく正吾
に向けたまま母親に訊ねた。「このおじちゃん、だれ?」
「おじ――」正吾は喉を詰らせ、室内を気まずい沈黙が満たした。
そのとたん、しゅッとまた音がして正吾が消え優美が現れた。
「さあ、感動のご対面タイムは、おしまいよ」ハスキーボイスが、いく分の気
の焦りのせいか今では“われがね声”になっている。
「みじかぁー」舞子は目を丸くして呟いた。
「何いってんの、そんなのは地球に帰ってからいくらでもできるでしょ、いく
らでも感動のご対面まくれるでしょ、さあさあさあ」女にしてはやはり巨大す
ぎる手で優美は三人を、部屋のドアの方へ押して行った。
「あれっ、こっちから出るの? さっき掘ったトンネルから抜ければいいじゃ
ない」舞子は押されながら、天井に開いた穴を指差した。
「あら“主”についでに会いに行くんじゃなかったの?」優美が押す手を止め
て訊き返した。「命令変更? そんならそれでもいいけど」
「あーそうか、忘れてた」舞子は後頭部に手を当てた。「もう地球に来るなっ
ていうんだっけ」
「んもう、しっかりしてよご主人様」優美はオイタをした孫を叱る祖母のよう
に──つまりあんまり怒ってなさそうに怒って、舞子の腕を軽く叩いた。
その科白、前にも誰かにいわれなかったっけか、と舞子は苦笑しながら思っ
ていた。「じゃあ行こう――あれ、でもカギは開いてんの?」出入口と思しき
ドアは真っ平らで、ドアノブも鍵穴も見たところなかった。
その壁を優美はひたひたと手のひらで確認するように触り「ふむ」といった。
しゅッ。
一瞬の間に彼女は消え、木多丘が出てきた。
「――」
舞子が「あれ」の「あ」の字をいう間もなく、木多丘は手刀を使って天井と
同様、そのドアにも大人が通り抜けられるほどの穴を開けた。
「うお」舞子が感嘆して木多丘を見た時、すでに彼は大石と入れ替わっていた。
「もう」舞子は疲れた表情で前につんのめった。「忙しすぎるっていうのよ、
あんたたちゃ!」
◇◆◇◆次号へ◆◇◆◇
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◇◆◇◆後記◆◇◆◇
葵むらさきです。ご購読ありがとうございます。
ヒー!
油断してたらまた配信日をスルーしてしまっていました。
いつもながら誠に申し訳ありません。
実は今、どういうわけか英語の受験勉強に追われております。
しかしなんというか、自分でいうのもなんですが、自分の脳の記憶能力の低下
というものに、つくづくガクガク然でございます。
十代の頃必死で頭に叩き込んだ単語というのは、さすがにこのトシになっても
忘れてないんですねえ。
だからでしょうね、世のお父さんお母さんたちが目を釣りあがらせて我が子に
「勉強しなさいッ!」
と発破をかけるのはね。
自分らのトシになるともう、いくらどこぞの脳科学博士がオトナの脳みそでも
再生可能なのだという事実を発見しようともついぞ関係なく、
・モノオボエ悪く
・モノワスレ甚だしく
なるってことが、身にしみて骨に染みてわかってくるからなのですよ。
かくいうわたくし葵にいたしましてもですね、
1.未知の単語に遭遇する。
2.辞書を取り出す。
3.苦労して件の単語を探し求める。
4.やっとのことで件の単語に遭遇する。
5.件の単語の意味を知る。
6.安心して、件の単語のことは忘れる。
というサイクルをくり返しているのであります。
4.の段階で「あれっ。この単語って、さっきも調べなかったっけか?」と驚き、
テキストを改めて読み返してみれば、三行ほど上に同じ単語が出てきたばっか
りだった、という、もう落語の熊さんの世界といわざるをえないかもです。
それでも模試では7〜8割の正解率です。
なんでかって?
勘です。(開直)
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