葵マガジン |
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◇◆◇◆葵マガジン 2007年12月29日号◆◇◆◇
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昔好きだったアイドルが、突然隣に引っ越してきた。甘酸っぱい青春時代の思
い出を胸に蘇らせながら透は訊いた。「どうして突然引退しちゃったの……?」
妖しく微笑みながら彼女は答えた──「私のレコードにオバケが出るからよ」
●「アイドルの秘密」
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◇◆◇◆多重人格の急須◆◇◆◇
第13話(全32話)
舞子、旅立つ 5
「でも――」
「ね、遥香、そうじゃないのよ」優美が大きな掌を広げて舞子と遥香の間にか
ざした。その手を見て舞子は、やはりこの女は本当は男なのではないか、と思
った。たくましい手だ。
「え?」
「あたしがいったのは“あなたが真央子ちゃん救出に行っていいかどうかを決
められるのは舞子だ”ってことじゃなくって“舞子の命令がなければあたし達
は動けない”ってことよ」
「あっ――そうか」遥香は両方の手で口をかくし、肩をすぼめた。テストで満
点をとり損ねた秀才のようだった。
「そ、だから、あたし達を使って真央ちゃん取り戻すには、どうしても舞子が
行くしかないのよ」
「――」遥香は唇を噛んでうつむいた。
「ま、もっとも、老婆心でアドバイスさせてもらや、いったん舞子に“これ”
を放棄してもらって、その後あなたが拾って持ち主になるって手もあるけどね、
そしたらあなたが真央ちゃん救出に行ける」
遥香がぱっと顔を輝かせ、優美を見、舞子を見た。
「そう……しようか……」
が、その明るさはすぐにしぼんで行き、彼女はまたうつむいた。何ごとか考え
ている眼だ。
「今度こそ、手放せなくなるかも、ってか?」優美の声は柔らかく、遥香の肩
にその手が置かれた。
「――」遥香はただ、唇を噛む。
舞子は、ぽかんと突っ立っていた。
「遥香が前にこれを拾ったのはね、この子が結婚する、二ヶ月前だったのよ」
優美は、別段命令を受けずとも、勝手に説明をしはじめた。
「それで――いわゆるマリッジ・ブルーってのに陥ってる時でもあったんだろ
うけど、正吾と恋におちちゃってね」
「マリッジ・ブルーのせいじゃないわ」遥香はいく分ムキになって反論した。
「そんなのでなくったって……幸せで申し分ない状況にあったとしても、あた
し達はきっと……」
「――ま、たまには召使いとご主人の相性が、必要以上によすぎるってことも
あるもんよ」優美はまたウインクしてみせる。
「え……じゃ、真央子ちゃんていうのは正真正銘正吾さんの……?」
「そう」遥香は頷いた。「もちろんうちの人には何も知らせてはいないけど……
あの子は、正吾さんの子なのよ」
「なんせ彼“情緒”の係だかんね、自分のたった一人の娘のこととなるともう、
掟もクソもなくなっちゃうのよねえ」優美が、それまで使っていた柔らかく慈
しみに満ちた声をかなぐり捨てたかのように、元の身も世もない蛮声に戻って
云った。
「ほんと? ほんとに真央子は彼の、たった一人の子なの?」そう訊く遥香は、
浪漫の涙に濡れていた。
「え……そう……なんじゃないの?」優美はとたんにボソボソと声をおとした。
――あ、他にもいるんだな、“子”が。
舞子はとっさに判断した。
――娘でなくて息子……か?
しかし遥香は、震える吐息とともに、
「よかった、やっぱり……」
と、騙されていた。
――悪い奴だなあ、正吾ってのは。罪つくりだよ“情緒”ってのは。
十六歳の少女の心の内に刻み込まれた、それは教訓であった。
「――で、結局どうする?」優美は、舞子の鋭い視線からさっと目を逸らすと
ともに、話題も巧みに逸らした。「舞子、あんたこの急須、放棄する?」
「えっ、やだ」舞子は首を強く横に振った。「せっかくお友達になったのに」
「そうね」遥香も頷く。「あたしも、もう一度持ち主になりたいのは山々だけ
ど……今は子供のために、家庭を守っていたいから……」目をぎゅっと伏せる。
「――あの時、どんな想いであの人と――正吾と別れたことか……こんなこと
するなんて、ひどいわよねやっぱり……忘れてたのに」さめざめと泣き出す。
「じゃあ、遥香はここで待ってるってことね?」優美が結論を促す。
「そうするしか、ないのなら……」
「え、一緒に行きゃいいじゃん」辛そうな遥香を見て思わず、舞子は甲高い声
を張り上げた。「木多丘さんなら二人くらい、運べるでしょ、楽に。ねえ」優
美に向かっていう。
「そりゃもちろん、舞ちゃんが“ゾウ百頭抱えろ”って命令すりゃその通りす
るわよ」
「じゃ、行こうよ」舞子は、遥香の腕を取った。遥香もにっこりして頷く。
「じゃ、そういうことでね」優美はしゅッと消えた。
舞子は、入れ替わりに木多丘“ひろみちゃん”が出てくるものと思っていた
が、そうではなくて、出てきたのは大石だった。
――なんであんたが出てくんのよ。
舞子は思わず知らず、唇を尖らせた。
「久し振りねえ、大石君」遥香は大石に対してさえ、懐かしそうに目を細めて
いった。
「お元気そうで何よりです」大石はちょっと笑ったかと思うとすぐに真顔に戻
った。「状況説明をしておいた方がよかろうと判断して出てまいりました」
そういって彼は、空中に手をかざした。するとそこに、地球のホログラムが
ぶうんと唸って出てきた。おお、と舞子は思わず声をあげた。遥香はさすがに
“手練”らしく、驚きも叫びもしなかった。
大石がその映像にさらに手をかざすと、地球はぐんぐん小さくなってゆき、
他の惑星――火星、木星、土星といった太陽系の姿がぐんぐん現れて来、さら
にそれも小さくなって、太陽はあっという間に多数の星々の海の中の一点と化
してしまった。その辺りで大石は、映像の動きを止めた。
「真央子ちゃんは今、ここにいます」いつの間にかその手に持っていた棒で、
大石は、光の渦の一点を無造作にさした。「この星は地球から二百光年離れて
おり、移動するには三度のワープを必要とします。それを使って片道所要時間
が約三十分」
「うそお」舞子は目を丸くした。「行けっこないよ、現実」
「行けます」大石は舞子を、眉根を寄せながら振り向いて見た。「そうしてこ
の星系の第五惑星における作業時間――つまり真央子ちゃんの居所を捜しその
星の者たちとコンタクトを取り交渉して返してもらう――これにかかる時間を、
まあ三時間とします」
◇◆◇◆次号へ◆◇◆◇
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恐らく彼にとって、銀河の成り立ちや不思議の解明という深遠な学問への情
熱などは、どうでもいいことなのだ。ただ、
「瞬時にして生物の命を奪う、天然の刑場が存在している」
彼はごく静かにそう呟いただけだった。
●「継承者レミア」約一年ぶりに更新! ……スイマセン……
http://aoi.peewee.jp/long_story/phyria3rd/phyria3rd01.htm
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◇◆◇◆後記◆◇◆◇
葵むらさきです。ご購読ありがとうございます。
あぅぅ〜ッ、浅田真央さんの演技、うっかり見逃してしまいましたぁぁ……
でも見た目的には、わたくし安藤美姫選手の体型が、好きですね〜。
一点のムダも無い! というような……いや、他の選手の皆さんにはムダがつ
いてるとかいう意味では決してないのですが……
それはともかく、世界選手権でも是非がんばって欲しいです。
というわけで、今年も押し詰まって参りましたね。
来年のカレンダーにも予定がすでに大分書き込まれてしまいました。
スーパーで買った豆腐の消費期限も、来年の日付けになっています。
年賀状はいつものごとく、全然できてません。
ごめんね郵政サービス民営化。(正式名称をいまだに知らない)
そして、そう、これが本年最後の「葵マガジン」であります。
皆様、この一年、いや、何年も、もしかしたら発行第一号からのあなたもいら
っしゃるかも知れません、本当に、本当にご購読しつづけていただき、ありが
とうございます。 ……なんか、綾小路きみまろみたいだナァ……
来年からも、楽しんでいただけるお話をお届けして参りますので、どうぞよろ
しくおつき合いくださいますよう、お願い申し上げます。
それでは皆様、どうぞよいお年をお迎えくださいませ!
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それでは次回をお楽しみに。
発行者:葵むらさき
aoi@xi.peewee.jp
◇◆◇◆葵むらさき言語凝塊事務室◆◇◆◇
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