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ポピーは魔法世界に住む少女。彼女たちは、キャビッチという不思議な野菜を使って魔法を行使する。ある時、親友のヨンベが恐ろしい鬼魔(キーマ)にさらわれてしまう。優しいウールー、どこかずるがしこいユエホワ、そして幾人ものハンサムな神様たちとともに、ポピーの旅が始まる。冒険ファンタジー『魔法野菜キャビッチ』8月2日連載開始!




葵マガジン*ガアラムの流れる島 3

発行日: 2005/12/31


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      ◇◆◇◆葵マガジン 2005年12月31日号◆◇◆◇

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ぼくは君の笑うのが、好きなんだ。
君の、黒御影のような瞳と、スノードロップのような鼻と、さくらんぼのよう
な唇のついたその顔のところに、ぼくはいつでも笑いをもってきてあげたいん
だ。

●「やさしく手をつなごう」
http://www.bookin.jp/data.php?gid=0000000239

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         ◇◆◇◆ガアラムの流れる島◆◇◆◇

              第3話(全38話)


「じゃあ」黒い目が、くりっと動いて私を見た。
「うん」私は頷いた。
 彼は一旦背を向けたが、二、三歩行ってすぐに振り向いた。
「名前は?」彼は訊いた。「俺、ラミリオ。ラミイでもいい」
「あたし、トレシア。皆、トウって呼ぶ」
「じゃあね、トウ。――明日もここ、来る?」ラミイは後ろ向きに遠ざかりな
がら訊いた。
「うん。来る」私は笑って、片手を挙げた。
 ラミイも一瞬破顔して、くるりと背を向け、走り出した――脚と同様、細い
腕を高く上にさしあげて、クルクルと回しながら。
 私はしばらく、小さくなったラミイが、波打ち際につないであった舟に乗り
込み沖へ漕ぎ出していくのを目で追っていた。
 舟は、音もなく拍手を続ける海面の光の中を進んで行った。
 聞こえるのは、ガアラムだけだった。

 次の日も、その次の日も、私は言葉通り砂浜の上に腰掛けて石を覗いていた。
 そしてラミイも、やって来た。
 手ぶらの時もあったし、塩漬けにした魚をぶら下げて来る時もあった。
 私たちは、かげることを知らない恒星の放射光の下で、海を眺め、砂に触れ、
時には膝まで水に浸かりながら、いろいろな話をした。
 ラミイは、漁での冒険話をいくつか聞かせてくれた。
“大目玉”と呼ぶ巨大な魚に出喰わし、命からがら逃げたこと。
 私も覚えているけれど、前の大嵐の時に、その前兆である“黄色いカーテン”
を水平線上に見た話(私は、そういう云い伝えを聞いたことはあるが、実際に
見たことはなかった)。
 それに、夜の海上で迷った時、目印とすべき星座の形や、季節ごとにそれら
の見える位置などを、教えてくれたりもした。
 私はもちろん、石の秘めたる力について、誇らしげに語った。
 石の“海”の中に浮かぶ小さな粒子のこと。
 それが様々に並び変って示す形の簡単な意味。
 それは、ラミイも説いてくれた星座の位置とも関連があること。
 魂の力が高まるほどその粒子は数多くハッキリと見えるようになること。
「トウのお母さんもじゃあ、石を使うの?」ラミイは訊いた。
「ううん、父さんの方。母さんは、ピュイ族なの」
「――じゃ、大陸から来た人?」心なしか、ラミイの眉がかげったようだった。
 私は、明かすべきではなかったかなと一瞬思い、少し鼓動が速まるのを感じ
た。
 けれど、仕方がない。事実は事実だ。
「えっと確か、母さんの、お祖父さんの代の時にね。母さんはここで生れたの
よ」
「ああ。……じゃあ大陸は知らずに育ったんだ、君の母さんは」
 私は肩をすくめた。「見たことはないって云ってるわ」
「でも、じゃあ」
「何回“じゃあ”って云うの?」私は意地悪く話の腰を折って、ケラケラ笑っ
た。
 私は彼、ラミイの、一生懸命に自分の想うところを相手に正しく伝えようと
する、熱心な話し方がとても気に入っていた。
“じゃあ”を繰り返すのも、どのような言葉をもってすれば、目の前の相手
(つまり私)に、いちばんよく理解してもらえるだろうか、と考えるための時
間かせぎなのだ。
 ラミイも、私のケラケラ笑いにつられて、少し困りながら笑った。
「変かなあ、俺の喋り方」
「ううん、別に。“でも、じゃあ”、何?」
「えーっと。何て云おうとしたんだっけ」彼は黒い目を海の方にちらっと投げ
た。
 その日のその時の海はもう、花びらを潰して出した色水で染めたような色に
変っていた。
 日ごとに、私たちが一緒に話をする時間は長引いていたのだ。
「そう、結婚する時が大変だったんじゃないかって」だし抜けに黒い瞳が私に
戻ってきた。
“結婚”という言葉を聞いた時、私はなぜか胸をどくんと叩かれたような気が
した。
 思わず、花びら色の海の方へ目をそらした。「えっ、なんで?」顔が熱い。
「だって、大分反対されたんじゃないの? ジェノイ族とピュイ族の結婚なん
て」
 彼がその時どういう気持ちでいたのかはわからなかった――今でも、そして
永遠に――けれど、とにかくラミイも再び海を見た。
「どうかなあ。そんな話って、聞いたことないもの」
「そう」
「ああそうだ、母さんがね、今度ラミイを夕食に招待したいって」
“塩漬け魚のお礼”と母は云っていた。
「本当?」ラミイは照れたように笑った。「おれなんか行ってもいいの?」
「いいわよ、でも馬を盗んだりしないで」私はわざと真面目くさって云った。
「盗まないよ、そんなことしないよ、絶対」意外なほどにラミイは慌てふため
いた。
「冗談よ」
「ああ、なんだ……」彼は、ものすごく安心したかのようにホッと肩を落した。
「何をそんなに慌ててるの? 前に盗んだことがあるの?」これも冗談のつも
りで、訊いてみた。
 ラミイは押し黙った。
 うつむいて、まだ温もりを残す砂を見つめている。
 私は、悲哀のような、畏れのような、何かわけのわからない不安に襲われた。
 自分の不用意なひと言が、彼を傷つけてしまったのかも知れなかった。
「そろそろ帰るよ」ラミイは薄く笑うと、片手を挙げて歩き出した。
「ごめんね」私の口から思わず、そういう言葉が溢れ出た。
 彼は立ち停まり、ほんのしばらく背を向けて佇んでいたが、思い切ったよう
に振り向いた。
「母さんが死んだのは、おれのせいなんだ」ラミイは、何の感情も籠らないよ
うな、平板な喋り方でさらっと云った。「おれが、他人の畑の果物を盗ったか
ら――ピュイ族の、貴族の」
「――」私は、足元の砂の中にめり込むかと思うほどの衝撃を受けた。


                       ◇◆◇◆次号へ◆◇◆◇


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 私は我が体内において、ドーパミンが次々とアドレナリンを作ってゆき私の
血管内に放り込んでいるのを強く認識した。
 ルルドールがわざとらしく私の顔を覗き込み、眉を吊り上げて目を半眼にし
た。

●「スペースドライヴァー坂本」
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            ◇◆◇◆後記◆◇◆◇

葵むらさきです。ご購読ありがとうございます。

年末の慌しい中、コンタクトレンズをぽろっと紛失してしまい、眼科で作って
もらうことにしました。

まず最初に視力検査です。
「リアルのび太メガネ」をかけさせられ、デンキのついたところの字を読んだ
り「C」の切れ目の向きを言ったりするわけですが、「これは?」といわれて
「左」と答えたら「あ、左……」と小さく呟かれました。
そして一段階度の強いレンズをさしこまれて改めて見たら、それはひらがなの
「さ」でした。
この時はさすがに「ギャーーッ」と叫んで頭をつかんでリアルのび太メガネを
かけたまま床をころがりたくなりました。おお恥かしい……

それからコンタクトの度数を決めていただいたのですが、どういうわけか前回
作ってもらったときよりもワンランク軽い度のレンズでも充分よく見えるよう
になっていました……え、視力よくなってんの?
そういえば昔わたしがバカな小学生だったころ、「老眼になったら近眼がよく
なる」というお茶目な伝説が流れていたもんでしたけどね(笑)え? ………

ともあれ、本年の配信はこれで終了です。
今年一年、ご愛顧まことにありがとうございました。
またおかげ様で「葵マガジン1・スペースドライヴァー坂本」を刊行し、予想
数をはるかに上回る皆様にお買い上げいただきました。心から感謝するととも
に、これからも楽しんでいただけるものを書いていこうと決意を新たにしてお
ります。本当に、ありがとうございます。
来年も「葵マガジン」をよろしくお願いいたします。

皆様もどうぞよいお年をお迎えください。

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 ロボットは二銀河秒ほど待ったがそれ以上の猶予を与えるつもりは毛頭ない
らしく、矢庭に拳を引き次の瞬間前方へ突き出した。
 ぐしゃり、と硬質のものがあえなく叩き潰される音がした。

●「闘人サヴィニウス」
http://aoi.peewee.jp/long_story/phyria2nd/phyria2nd01.htm

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             発行者:葵むらさき
             aoi@xi.peewee.jp
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発行者プロフィール

ペンネーム : 葵むらさき

  • ネット小説屋。2002年8月より小説を公開。オンデマンド書店「e-ペンギン」より「葵マガジン文庫」発売中。

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